マックス・リュティ『昔話の本質』報告
第9章昔話の主人公-昔話の描く人間像 つづき
昔話に描かれるもうひとつの人間像。
主人公は本来旅人である。
なんか、かっこいいですね~
伝説では、事件は故郷の村やその周辺で起きる。でも、昔話は、主人公を広い世界へ送り出す。といいます。なるほど。
まず旅立ちの理由。
親が貧しくて家に置けない。
仕事や競争で、むりやり。
単純に、冒険しよ~
悪者や動物にさらわれる。
さまざま(笑)まあ、何でもいいわけです。
大事なのは、主人公はたいして考え込まないで、さっさと出かけるということです。太陽の東、月の西、海底、地下、世界のはて・・・とにかく遠くまで行くんだけど、深く考えないでいくものだから、印象がとても軽やかで自由です。気持ちをのびのびとさせます。
他に旅の特徴としては、こんなことが書かれています。
主人公は、たいてい一人で旅します。兄弟二人で出かけるときでも、十字路で別れます。孤立しているんですね。
故郷に帰ってこないことが多い。故郷から孤立している。伝説が故郷に密着しているのに対して、昔話の主人公は、新たなレベルに向かって成長するのですね。
目的のある旅でも、どうやって成し遂げたらいいのか知らないまま歩いていく。それでも、彼岸者と出会って道が開ける。
途中で出会う彼岸者との関係について、リュティさんはこう言います。
昔話の主人公は孤立した人間として異郷へ出かけ、そこで決定的な出会いを持つ。
その出会い、つまり人を助ける動物や彼岸の存在も、主人公と同じように孤立しています。孤立した者同士だから結合が可能なんですね。(普遍的結合の可能性 こちら⇒)
具体的には、主人公は、
彼岸の存在に驚かない(一次元性こちら⇒)。狐が人間の言葉で話しかけてもびっくりしませんね。
贈り物を当然のようにもらう。
危機一髪のところで贈り物を使い、その後はもう思い出しもしない。
援助者の素性に興味がない。
彼岸の不思議な力についてあれこれと思い煩わない。
はい、ここまで。
次回は伝説と比較しての昔話の描く人間像の説明です。