7月のあったかペーチカと赤ずきんミニ講座

暑いですね~元気でいたいんですけど、連日のこの暑さはこたえます。うちの犬、毛がふさふさ長めの犬種なんですけどね、真夏に毛皮のコートを着ているようなもんで、さぞ暑かろう!と気にかけていますが、涼しい場所を知っているので、玄関かエアコンの風がくる所に寝そべっております。さてさて、今回は10人の参加でした~

「ひなどりとねこ」『子どもに聞かせる世界の民話』矢崎源九郎/編 実業之日本社

「ほうび半分」『かたれやまんば藤田浩子の語り第5集』藤田浩子の語りを聞く会

「おおかみと七ひきの子やぎ」『子どもに語るグリムの昔話1』こぐま社

「びんぼうこびと」『おはなしのろうそく26』東京子ども図書館

「ヤギとライオン」『子どもに聞かせる世界の民話』矢崎源九郎/編 実業之日本社

「くさった風」『こんにちは、昔話です』小澤俊夫/著 小澤昔ばなし研究所

「おおかみと七ひきの子やぎ」『語るためのグリム童話1』小峰書店

「赤ずきん」『おいしいおかゆ』子ども文庫の会

「暗~い、暗~い」『語りの森昔話集4』 語りの森

Mさん絵本紹介

「おにぎり ぱく!」 はらぺこめがね 白泉社

「あーん」下田昌克/え 谷川俊太郎/ぷん クレヨンハウス

「しずかなおきゃくさま」ヌリア・フィゲアス/文 アンナ・フォン/え 宇野和美/訳 光村教育図書

「1だけかぞえるえほん」カスパーサーモン/作 マット・ハント/絵 今井悟朗/訳 フレーベル館

いつも通り、語りと絵本でほっこりし、おはなし談議を楽しみました。それぞれのおはなしへの思いやエピソードを伺うと、自分もそれらのおはなしを身近に感じ、新たな感覚を得ました。「おおかみと七ひきの子やぎ」は出典が違う二つを聞き比べることになりました!大筋は同じですが、ちょこちょこ違います。おおかみが落ちる所も、井戸と泉とでイメージが変わりますので、へー!と驚きでした。ここまででも十分実りある時間でしたが、今回はさらに、ミニ講座をヤンさんにしていただきました。「赤ずきん」はおらふさんに語ってもらっていましたので、首尾よく始まりました。

話型はATU333「小さな赤ずきん」、グリム童話では、初版(1812年)からKHM26です。私たちがよく知っているのはこちらです。みなさんご存知フランスのシャルル・ペロー(1628-1703)の「赤ずきんちゃん」の方が時代は前です。なんと、グリムが聞き取りをした語り手は、16世紀にフランスから亡命してきたハッセンプフルーク家の姉妹なのです。ですので、ペローの話が元になっていると。ですが、ペロー童話の赤ずきんは、食べられてしまう所で終わります。猟師に助けられることはありません。グリム童話初版の注釈に、ティークの童話劇の影響がみられると書いてあり、そちら「赤頭巾ちゃんの生と死-ある悲劇」をみますと、赤ずきんは助かりませんが、猟師が狼をしとめて終わるのです。そして、赤ずきんとおばあさんが助かる場面、おおかみのお腹に石を詰め込む場面は、グリムが意図的に入れたのではないかということでした。「子どもと家庭のメルヒェン、グリム兄弟によって集められた」は、ペローを元に、近代国家を作るために規範として、グリムが再話したものということをヤンさんは話してくれました。対象と目的に向けての再話。ペローは、宮廷のお姫様に向けて再話し教訓を付けています。誰のために再話をするかが、テキストの違いからよく分かりました。では、ペローは誰から聞いたの?ということで、民間伝承の物を4つ紹介してくれました。主人公の女の子は頭巾を被っていません!そして、女の子が食べられて終わる話と、逃げ出して助かる話とあります。逃げ出す場面は、「おしっこがしたくなった」と言って足に紐や毛糸を結んで、外に出るのです。三枚のお札と同じですね~。こちらも古いモティーフだそうです。他にも色々おもしろいことがテキストからわかるのですが、長くなるのでこの辺にしておきます。今回参考にされた一冊は以下です。

『赤頭巾ちゃんは森を抜けて』ジャック・ザイプス  廉岡糸子・横河寿美子・吉田純子/訳 阿吽社

赤ずきんの変遷を通して、語り手が今の時代について考える事が大事だと、ヤンさんはまとめられました。講座を受けられた方、感想はコメントにどうぞよろしくお願いします。

次回ペーチカは、8/3(日)です。

6 thoughts on “7月のあったかペーチカと赤ずきんミニ講座

  1. ウーカーさん、報告をありがとうございます。
    以下蛇足

    口承の赤ずきんで食べられておしまいの話は、恐いことを楽しむタイプのお話です。それで、この日は「暗~い暗~い」を語りました。面白くって怖いでしょ~。おおかみに「おまえを食べるためさ~!」って言ってわっと手をつかまれる。そういえば、田辺聖子さんのエッセイに、聖子さんの夫のかたを「かもかのおっちゃん」ってかいてはりましたね。大阪では、こどもに「嚙もか~!」って恐がらせることがよくあったんですよ。わたしも幼いころ、父親にやられました(笑)

  2. ウーカーさん、報告ありがとうございます。
    「おおかみと七ひきの子やぎ」の小峰書店のほうを語りました。
    こぐま社はベッドの中に隠れるのに、小峰書店はベッドの下でしたので、帰ってから確認したら、やっぱりベッドの下でした。
    ということを報告します。
    「赤ずきん」のミニ講座、ほんとにためになりました。
    どんだけ、グリムさんが意図があって再話し、元になったフランスの昔話から変わっているかよくわかりました。
    「赤ずきん」を覚えるときに心理学的解釈の本を読み、解釈もいくつかあることを知りました。
    わたしは語る相手を考えて、かつ自分も納得のいく解釈を参考にしたんだけど、それは昔話の解釈というよりも、グリムさんの作った話の解釈だったんですね!
    わたしはこれからも「赤ずきん」を語ると思いますが、変遷を知って、その上で子どもたちにグリムの「赤ずきん」を語っていこうと思います。
    いま、昔話から、語られた時代の民衆の生活実態を解き明かそうとする民族学者さんの本をちょっとずつ読んでるんですが、とても面白いです。
    「赤ずきん」のこともたくさん出てきて、ミニ講座を受けた今のうちになんとか読んでしまいたいです。
    でないとせっかく教えてもらった記憶がなくなってしまう〜〜
    焦りながら頑張ります。

  3. 今回のミニ講座はミニと言っても内容はとても濃かったです。
    語りはペーチカの時にグリムの「赤ずきん」を聴かせていただきました。
    語り手の方は急に語りを頼まれたそうで、いつでもすぐに語れるらしくて、すごいですね。
    今回は民間伝承の「赤ずきん」の類話をどれも再話して下さっていたので分かりやすく、おもしろくて、すぐに語れそうなのが嬉しかったです。
    昔から大人の人達は子どもたちを喜ばせようと怖がらせたり、笑わせたりしてたんだなと愛情を感じました。

    グリムの「赤ずきん」を語ると子どもたちはいつもよく聴いてくれるし、私も大好きなのですが、主人公が機転と知恵を使って、おおかみを出し抜く力強さもいいなぁと思いました。
    今度は「トロットリーナとおおかみ」を語ってみたいと思います。

  4. ヤンさん、コメントありがとうございます。「かもか~」と怖がることを楽しむ事を聞いて、私の父も「おばけだぞ~」と怖がらせに、寝部屋にきていたのを思い出しました。聞き手との間にそんな身近な関係が築けたら素敵ですね~。大人になって覚えているおはなし会のヒトコマ。

  5. ジミーさん、コメントをありがとうございます。「おおかみと七ひきの子やぎ」は、1年生あたりはほんと喜んで聞いてくれますね。みんなで感情の共有、みんなでおおかみをやっつけることで、生きる力を自ら育んでいるなと、いつも感じます。そんな聞き方のできるテキストであるかは大事ですね。
    また、他の先輩も「赤ずきん」は子どもはみんな好きよね~と言われていて、そうか、グリムの再話は、成功しているんだなと再び認識しているところです。言葉で説明してもらって分かる部分。民間伝承の方は、私は姪っ子に語って反応を見てみます!ジミーさんの読んでる本の民俗学者さんの解釈、また教えてください~!

  6. キリリさん、コメントをありがとうございます。ほんと、面白かったですね。赤ずきんだけでも、表に出ていない沢山の事があって、与えられたものだけで済ませるのではなくて、自分で探っていけばいいんですね~。得られる本当の学びを示してもらって、嬉しい限りです。キリリさん、またペーチカで語ってほしいです~!

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