日別アーカイブ: 2025年11月6日

語法クラス3回目

ちょっと報告が遅くなりましたが、10月に第三回語法クラスがありました。4カ月ぶりですので、記憶の引き出しをひっくり返して、がさごそ。奥の奥にあるものを思い出します。前回取り扱った昔話の「平面性」については、みなさんが提出された課題プリントを頂きましたので、非常に勉強になります。自分では到底気が付かない、考え及ばない部分がありますし、色んなおはなしがあげられていますので、そうなのかー!と感心するばかりです。

さて、今回は『昔話の語法』p220

「 抽象的様式」です。冒頭を少し言い換えました。

「平面性が決定的に一貫しておこなわれると、昔話は現実から離れた性質をおびてくる。昔話はそもそも昔から、私たちの現実世界を、そのさまざまな観点のまま、感情移入的に行動や振る舞いを真似しようとめざしているものではない。昔話は、現実世界をつくりかえ、その色々な要素に魔法をかけて別な形を与え、独自な特徴をもった世界を作り出す」

絵画でいうと、昔話は抽象画と似た描き方をします。

抽象画とは、人物、風景、静物などの具体的な対象をそのまま描かず、色、線、形といった要素を用いて、作者の内面や感情、あるいは抽象的な概念を表現する芸術です。具象画(現実の形を描く絵画)とは対照的で、観る人によって様々な解釈や感動が生まれるのが特徴です。

●小説は具象的

文学の場合で言えば、小説のほとんどは具象的です。主人公の生活を細かく描写したり、町のようす、あるいは列車の中のようすを具体的に描写していきます。

●昔話は抽象的

それに対して昔話は、具体的に語ることをやめ、独特の語り方でもって、いわば魔法をかけて、世界を抽象的な世界へと作り変えてしまいます。

【抽象的用様式】

世界を作り変えてしまう魔法のしかけ①〜⑥(今回は)

①名指すだけ (描写しない)

昔話は話のすじの展開を楽しむものなので、図形的登場人物を、ある点から次の点へ導いていくばかりで、描写のためにどこかに立ち止まることはしない。どのような人物か、どんな場所か、どのように事件が起きたかという説明はしない。単純な統一された言葉で事柄のみを述べる。耳で聞かれる昔話としてはこの方が分かりやすい。

②するどい輪郭、個体、柔らかいものも固く

一寸法師の針の刀、御椀の舟、桃太郎の、にぎりめしころころではおにぎりは鋭い輪郭線で転がってもばらばらになりません。「弥三郎婆」→HP、「炎の馬」大木→日本の昔話⑤おざわとしお再話(以下五巻本)

③小さな空間にとじこめる

登場人物は、堅固な家やお城、あるいは地下の宮殿などに住む。「馬方やまんば」山姥のすまい、「さけのおおすけ」一件の家→HP

昔話は、主人公を塔の中や、あるいは宮殿の中、トランクの中、あるいは箱の中にとじこめる

「ラプンツェル」、「ひひ神退治」お棺、長持「三枚のお札」「お月お星」木の箱

④固いものを好む

「へっぴりよめご」石の臼→HP、「仙人のおしえ」石の玉→五巻本⑤、「おしらさま」→HP、「天の庭」酒樽→五巻本③、「海行こう、川行こう」目玉→HP、「きじない太郎」目玉→HP、「山姥とくし」くし→HP

⑤高貴なものを好む

黄金や銀、銅など、めったにないもの、高価なものは周囲よりもひときわ目立って見える。孤立性が強調されている。

⑥原色を好む(灰色はある)

金、銀、赤、白、黒、(紺青)

「白雪姫」、「きもだめし娘」「ぼっこ喰いあねさま」→HP、白雪姫の白、赤、黒の極端な美は、一歩あやまればその極端のゆえに人を震え上がらせるような性質ではないでしょうか。また、馬は黒か白、あるいは赤です。「師番の馬」→五巻本②

*白と黒は、非個体的対照(色というのは中間色で微妙な差を持つ、連続的な違いがある。白と黒はそれがなく、二つにはっきり分ける)

⑦鋭く明確なすじの線

昔話のすじは遠方へひろがっていき、登場人物を長い道のりをこえた遠い国へ連れて行く。また、援助者が主人公に与える贈り物のなかでは、とくに移動手段となるものが多い。ふしぎな馬や車・靴・マントなどが主人公を遠くへ運び、指輪は主人公が望むところへ連れて行く。「かくれみの」→HP、「夢見小僧」千里車・万里車→五巻本①、「灰坊」→五巻本⑤、「イワンの夢」魔法のじゅうたん、いだてん靴→HP

今回はp230まで読みました。これは孤立性、あれは極端性と決めすぎずに、いくつかの性質を兼ねている場合もあることも教えて頂きました。

口頭伝承であった時代、語り手一人一人の中にテキストがありました。昔話は本来そういうもので、自分の中に素養があると語れるもの。時代は移り変わり、私達はテキストを覚えて語りますから、よく考えれば、本当の語りではないですもんね。ちょっと痛く刺さります。長い年月をかけて、何度も語り、子どもたちの反応から教えてもらって、自分のテキストに手を入れることで、良く聞けるようになれば、それが自分のテキストであり、それは一人一人がする作業です。(そうすることで本来の語りに近付けると理解しました)語りクラスでヤンさんが私達に伝えてくれている事が、さらに深く根を下ろした学びとなりました。時間をかけて細かい所まで丁寧に勉強会の準備をして頂き、本当にありがとうございます。そして、こうしてブログを書かせてもらうことで数日かけて復習をしたら、勉強会の時とはまた違う感覚です。ちゃんと合っているかは不安な部分もありますので、皆様コメントにてご意見、ご感想、補足などよろしくお願いします!

宿題は、上記①〜⑥(⑦は昔話のほとんどがそう)を自分のレパートリーのテキストから探してA4一枚にまとめて、11/30までに提出です。

次回の語法クラスは12/24(火)です。