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語りの森を作った魔女

授業最後のおはなし会 5年生

グリム童話の「金の鳥」は、高学年で、どうしても聞かせたいと思っている話です。
失敗してもいい、誠実に素直に勇敢に歩いていけ、諦めずに助けてくれる狐が必ずいるから。
子どもに語りながら、先生、狐になってください、私も努力をしますって、思っています。

5年生 45分×2クラス ひとりで
おはなし「金の鳥」 23分
『語るためのグリム童話』小澤俊夫監修/小峰書店
おはなし「カメの笛」 6分
『ブラジルの昔話』カメの笛の会/東京子ども図書館
おはなし「豆のつる」 8分
ババ・ヤガー語りの森 村上再話

予定では「金の鳥」と「カメの笛」の2話だったんだけど、子どもたちがもっと聞きたいって言ったので、「豆のつる」をしました。

これで、「豆のつる」は1、2、3、5、6年生にやったことになります。
1年生:わけわからずに笑ってました。
2年生:わけが分かりませんでした。
3年生:わけを説明しようとしました。
5年生:わけが分かって笑いました。
6年生:わけが分かって、それがどうした〜ん?

昔話を語ってておもしろいのは、ストーリーは簡潔だから何年生でもわかるし楽しめるけど、年齢によって受け止め方が違うこと。

ミニブックトーク 29冊 約10分
わたし「宇宙飛行士になりたい人〜?」ときいてから、毛利衛さんの伝記を紹介。
「スポーツ選手になりたい人〜?」→イチローの伝記。
「漫画家になりたい人〜?」→水木しげる、手塚治虫。
「お医者さんになりたい人〜?」→貫戸明子、ジュノー。
「科学者になりたい人〜?」→ガリレイ、ニュートン、アインシュタイン、レイチェルカーソン、ファーブル。

途中でひとりの子が、「う〜ん、お医者さんにもなりたいけど、迷ってるねん」
わたし「あ、そやね。まだまだ決められへんね」
そこで、伝記を読む意味を少し説明しました。そのうえで、
わたし「けどね、いろいろやりたいと思っても、障害になることってぜったいあるやん?」
子ども「(めちゃ真剣に)うん!」そこで、

『夢をあきらめないー全盲のランナー高橋勇市物語』
『ヘレン・ケラー』
アンネフランク、中沢啓治、キング牧師、マララ、ガンジー。
マザーテレサ、杉原千畝、ザメンホフ、……。

最後に、
「この本がぜんぶ読めるのは、この人のおかげ」と言って、グーテンベルクを紹介して、おしまい。
時間は超過しましたが、みな満足のため息をつきながら、本を抱えて教室に戻っていきました。
みんな、がんばれ〜〜

今年もあとは幼稚園と学童保育、図書館を残すのみ。
語り手のみなさん、がんばろ〜〜

ヤン

12月の屋根裏で 

さすがに師走の、しかもまだおはなし会シーズンなので、集まりは少なかったです。
でも、「明日子どもたちに語るし〜、聞いて〜」って、ご参加くださったかたも
おられました(笑)

「心臓をもたない巨人」 『子どもに聞かせる世界の民話』矢崎源九郎編/実業
之日本社
「ススペチッチッ ススペランラン」 『アイヌの昔話 ひとつぶのサッチポ
ロ』萱野茂編
「ジャックと豆の木」 ババ・ヤガー語りの森 村上再話
「まめたろう」 『おはなしのろうそく』東京子ども図書館
「豆のつる」 ババ・ヤガー語りの森 村上再話

アイヌの昔話は、透明で素朴で広大で激しい空気を持っていますね。
たまに語る人はありますが、私は彼女の語りで聞くのが好きです。
いつものごとく、たくさんの新刊絵本も読んでもらいましたよ〜

  ヤン

今年も歌った歓喜の歌♪ 

おはなし会の最後に、おはなしのろうそくを消します。
「このろうそくにはふしぎな力があって、お願い事をひとつだけ、一生懸命しな
がら消したら、かならずかなう、かもしれない」
といって、子どもたちにお願い事を決めてもらいます。
「大事な願い事は人には言わないで、心の中で」
「ひとつだけ。いっぱいはだめ」
全員の願い事が決まるのを待って、
「みんなの願い事がかないますように」
といって消します。
厳粛な瞬間です。
子どもたちは何を願っているでしょうね。
わたしの願いは、いつも同じ。
「この子たちが、戦争で苦しむことがありませんように」
・・・・・・・・・・・・・・・・・・
世の中がどんなに不穏でも、自分のこと、家族のことがどんなに不安でも、第九を歌うとき、その間だけは歓喜に震えてくださいと、合唱の先生はおっしゃいます。
きのう、京都コンサートホールに、私たちの声が響き渡りました。
指揮者を信じ、仲間と声を合わせる幸せ。
今年も歌えた、幸せ。
夫が観客席の片隅で、斜め45度に傾いて寝ています。あ、いや、聞いています。
ときどき、夫を見ながら歌います。
どうか、私と、夫と、娘と息子と、孫と、それに連なるみなが、戦争で苦しむことがありませんように。
今年の締めくくりに、歓喜の歌を歌いました。
どうぞ、みなさま、よいお年を!
あ、まだ早すぎるな。
まだ3学期のおはなし会の最中や〜

  ヤン

12月更新 天地を結ぶ植物

なぜ12月、師走、年末は気ぜわしいのだろうか……
といいつつ、更新のお知らせです。

といいつつ、その前に。
12月9日に、ババ・ヤガーで、再話比較勉強会「ジャックと豆の木を読む」が
あります。
私たち語り手は、再話されたテキストを覚えるという宿命がありますね。
ちょっとでもいい再話を探しましょう、それにはどうしたらいいのかな、というのがテーマの勉強会です。
その準備のために「ジャックと豆の木」の再話集めをしていたときのことです。
豆のつるを登って天に行くというモティーフの話がいくつもあることに気付きました。
それで、ちょっと寄り道して、このモティーフのある話を集めてみました。
そうしたら、日本にも外国にもありました。
豆のつるだけでなく、植物が天と地を結ぶ話。
たくさんあったんですが、ここでは4話だけ紹介します。

≪日本のおはなし≫

「豆の大木」
新潟の昔話です。
おじいさんとおばあさんが豆を植えるとか食べるとか言ってけんかをするところから話は始まります。
いかにも日本の昔話ですね。このパターンってよくあります。
このサイトでは日本の話として「豆さんころがれ」を紹介ているので、見てください。秋田県に伝わる話です。
天上の世界で出会うのは、雷さま。で、雨を降らせる手伝いをするのです。
話型でいうと、「傘屋の天のぼり」。「鴨とり権兵衛」「源五郎」なんかとおなじ。

「たなばた」
奈良県吉野に伝わる話。
「天人女房」のはなしです。
ここは、豆のつるではなくて、「ユゴの木」を伝って登っていきます。
このユゴって、何の木のことなんでしょう。ご存知のかた教えてください。
植物の名前は、その土地によっていろいろに変化しますね。
木に登って天にいく話は、外国のおはなしで「天まで届いた木」を紹介しています。ドイツの話です。

≪外国のおはなし≫

「豆のつる」
リトアニアの昔話。
こぼれた豆が芽を出して天まで届く。天上の世界にいたのは神さま!笑い話です。
音声は小学3年生。
子どもたちの声、聴いてください〜
「ハッピーエンドと違うやん」っていってるでしょ。
その向こうでおじさんの声が聞こえませんか?これは担任の先生の声。
「世界にはいろんな話があるいうことやなあ」っておっしゃってる(笑)
なぜお父さんが一人になってよかったのか、自論を展開してる子もいましたよ。

「日と月と星」
朝鮮半島に伝わる話。
「天道さん金のくさり」の類話です。
これは、上からカボチャのつるが下りてくるのです。怖い話ですねぇ。
子どもに語るのが、めっちゃ楽しみ〜

最後にジャックと関係ない話。

≪日本のおはなし≫

「くさかった」
全国に分布する笑い話です。おまけのおはなしとして、重宝しています。
音声は4歳児。
「ホットケーキ」のおはなしのあと、もっとしてほしがったのでおまけです。
オチはぜんっぜんわかってませんね(笑)
2年生ではわかりますよ。

ではみなさま。
聞いてください。
語ってください。
そして、ご感想をお願いします。

  ヤン

逢魔がどきに  byヤン

ゆうがた、そろそろ魔物が出てくるという逢魔がどき、わたしは、歩いて15分のところにあるスーパーに買い物に出かけた。
スーパーの階段下まで来ると、携帯にメールが入った。ぽんからだった。
返信しようとしたとき、勉強会の仲間Nさんに声をかけられた。
メールのことはそのまま忘れた。

買い物を終えて、階段下までくると、ぽんメールを思い出した。
確認して、ふと、マナーモードにしていないことに気づいた。
これはいけない。
いちばん下の左端を長押しして、マナーモードにした。
と思った瞬間、防犯ブザーが鳴った。

ふぁん、ふぁん、ふぁん、ふぁん、

とまらない。
どこを押してもとまらない。
電源切ってもとまらない。
音は、波のように大きくなり少し小さくなったかと思うとさらに大きくなり
ふぁん、ふぁん、ふぁん、ふぁん、
わたしは走りだした。
なんでや!
しらんがな!

近くにauショップはない。

家まで15分、鳴らし続けるのか?
だが、帰ったからと言ってだれが止めてくれるのか!
家には夫しかいないではないか。

まっ赤な画面はロックナンバーを入れろと脅迫してくる。
しらんがな!

いきなり、メールを送信しましたの画面表示がでて、つぎの瞬間またまっ赤な画面に。
お、あんた、どこに、メール送ったんや?
そのとき、むうこうからパトカーが走ってきた。
おお、、メール見て救いに来てくれたんや〜

ここですう〜!
さけぼうとした瞬間、パトカーも私と同じ音を立てて走り去ってしまった。

これやったら、防犯ブザーの意味がないがな。
わたしの足は家とは逆の方に向かっていた。
防犯、パトカー、、消防車
そう、走って5分で消防署に着いた。
が、ドアが開かない。ドアホンを押す。

ピンポン、ピンポン、ピンポン

のどかな音だ。
消防署にドアホンがあるのを初めて知った。

すぐに、おっちゃんが出てきてくれはった。
あのう、これ、きゅうに鳴りはじめたんです。……違うやろ、自分で押したんやろと、心の中で自分に突っこみを入れる。
ロックナンバーは?
まったく覚えてないんです。……覚えてたら押すがな(涙)
すると、後ろからまたふたり署員さんが出てきて、一番若い兄ちゃんが、ふぁんふぁん携帯を受けとったとたん、音がやんだ。
みなで、へ?
にいちゃんいわく、初期設定のままやったらナンバーは1,2,3,4ですわ。
ああ。1,2,3,4

もうしわけございませんでした。おさわがせしました。ありがとうございました。
いえいえ、無事でよかったです。
ぶ、ぶじ。たしかに。

帰りかけると夫から電話。
いまそっちに向かってる!無事か?
ぶ、ぶじ。

携帯からのメールは夫と娘と息子に、防犯ブザーが鳴ったことの知らせだった。
娘がすぐに気づき、ブザーが鳴った場所をGPS機能で>突きとめて、家に電話した。そこで初めて夫も気づき、スーパーに向かって探しに来てくれたのだ。
東京で仕事中にもかかわらず即座に対応してくれた娘よありがとう。
ふたりとも、心配させてごめんね。

夫は、もうこの時間帯には出歩くなといった。
わたしは、もう自分がおばあさんになったと、落ち込んだ。
息子は、メールに全然気づかなかった……

逢魔がどきには出歩くな

おしまい

付けたり:何でもかんでも消防署に走ったらええというわけではありません。

ヤン