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語りの森を作った魔女

グリム童話「ホレおばさん」👱‍♀️

昨日は月曜日。HPの更新の日でしたよ~
《ステップアップ》に、「耳からの読書」について書いたので、読んでくださいね。ちょっと長いけど。

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今日は、グリム童話「ホレおばさん」について書きますね。
えっ、季節外れ~って?
まあいいやん。
ちょっと面白い文章があったので、冬まで覚えてられないと思ってね

KHM24ホレおばさん

美しくて働き者の娘と醜くて怠け者の娘がいて、母親は怠け者の娘のほうをかわいがるの。実の娘だからね。
もう結末は分かりますね(笑)

私が好きなのは、井戸の底に美しい野原があって、ふつうに家が建っているところ。それと、パンが「私を出しておくれ。もうすっかり焼きあがってるんだ」っていったり、リンゴの木が「私をゆすっておくれ、もうすっかり熟してるんだ」っていって、主人公はちゃんというとおりにしてやるところ。適期を見る目があるのね。

それと、ホレおばさんっていう存在に興味があったので、きちんと調べてみました。
きちんとっていうのはね、グリムさんが童話集を作った当時、ホレおばさんがどういう存在だったかを、調べたの。

資料1、「昔話の本質」ヴィルヘルム・グリム著/1819年
グリム兄弟の弟の論文です。グリム童話の2版を出した年ですね。
その論文の「異教的な信仰の痕跡」っていう項に、こんなことが書いてありました。

引用
彼女は、慈悲深く親切であるが、恐ろしい驚くべき女神でもある。彼女は深みや高み、湖や山に住み、不幸あるいは祝福そして多産を、人間がそれに値するかどうかという判断に従って、分配する。
彼女は大地全体を包括し、ベッドを整えるときには、羽毛が飛び、そうすると人間界に雪が降る。同じように、露と雨を降らせ、ヴァルキューレ(神話の中の武装した乙女)たちの雲の馬が身を震わすとき、国土を豊かにする。

つまり、ホレは女神さまなんですね。
自然をつかさどる神。自然信仰の神は、両面性を持っています。人間に恵みを与える面と、脅威となる面と。
日本の山姥も両面性があるけれど、今はもう信仰の対象ではなくなっていますね。

そうすると、昔話「ホレおばさん」の中の、ふたりの娘は、自然神に愛されるやりかたと、罰せられるやり方の両極端を教えていることになります。
人間が自然に対してどうであるのがよいかを伝える話だということがわかりました。

資料2、『ドイツ伝説集』グリム兄弟編著/1816年
グリム兄弟が集めた伝説集。
伝説は、各地で信じられている口承ですね。
その中に5話、ホレ伝説が載っています。
「ホッレ小母が池」「ホッラ小母の巡回」「ホッレ小母の水浴び場」「ホッラ小母と忠実なエッカルト」「ホッラ小母と農夫」
ホッレとかホッラとか呼ばれてる。

おもしろかったのは、ホレは、クリスマスやお正月に各地を巡回するんだって。で、娘たちが糸つむぎに精を出していれば福を授けてくれるし、怠けていれば罰を受ける。
なんだか、なまはげみたい。

糸つむぎ、とっても興味がありますね。いつかまた改めて調べて報告します。

ATU480
話型名「親切な少女と不親切な少女」
この話型名をきけば、きっと知ってる話に心当たりがあると思います。
世界じゅうに類話がいっぱい。

はい、きょうはここまで。

『オットーウベローデグリム童話全挿絵集』古今社より「ホレおばさん」
娘が井戸のわきで糸を紡いでいますね。
ウベローデの挿絵には、グリム兄弟の当時の情景が忠実に描かれているそうです。

 

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今日のレパートリーの解凍
「いい夢とつまらない旅」『空に浮かんだお城 フランス民話』山口智子訳/岩波書店
あかん、覚えて数回やっただけの話、もどってこないよ~

おはなしひろばのこと🎇

ここ京都府南部でも、小学校が再開されました。
ほんと、おそるおそるやと思います。
集団感染が起きませんように!!!

おはなしひろばは、耳からの読書の目的で始めたんだけどね。
休校中のお役に立てればと、今、ほとんど毎日更新しています。
毎日、20~30人が来てくれてます。
そのうち何人が子どもなのかわからないのが不安やけど(笑)
学校が始まったから、毎日やらなくてもいいか、再話が大変やし。なんて思ったりもするんですが、学校始まっても行かない子はいるものね。
登校しても疲れ果てる子もいるかもしれない。
そんな子がひとりでも聞いてくれるなら、やれるところまでやろうか。

今日のおはなしひろばは、「ルンペルシュティルツヒェン」のフランス版。
笑い話に再話してます。
語りたいなと思う人は連絡ください。テキストを公表します。

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今日のレパートリーの解凍
「アリョーヌシカとイワーヌシカ」『まほうの馬』岩波書店

 

グリム童話「かえるの王さま」👑

京都府南部は、朝からしとしと雨です。

きょうは、「かえるの王さま」について書きます。
この話は、なぜか、子どもだけでなく、学生さんやおはなしなんて聞いたことがないという大人の人たち、などなど、いろいろな場所で語りました。
おかげで、私自身のなかに深く入ってきてくれました。
それを全部書ききれないのが残念です。

KHM1「かえるの王さま あるいは鉄のハインリヒ」

エーレンベルク稿では25番ですが、初版から1番、7版までずっと冒頭を飾ります。
グリム自身、この話を、ドイツ最古のものだと、注に書いています。古くは、「鉄のハインリヒ」という題の口伝えだったそうです。

今、私たちの中には、最後のハインリヒの部分を語らないという考えの人がいます。でも、もともと「鉄のハインリヒ」として伝えられてきたのだから、ハインリヒの場面には意味があると思います。どんな意味があるのか、自分で考え、納得したうえで、省略しないで語りたいものです。

私は、この部分に私自身の思いを乗せています。
同時に、子どもたちは、最後のこの部分でぐっと集中して聞きます。
私の思いも、子どもたちのとらえたものも、その時その時で異なっているでしょうが、それでいいのです。それがお話。一期一会。
ただ、力のあるこの部分をぬきにして、「かえるの王さま」は語れないと思います。

さて、この話をずっと第1番に持ってきたグリムの思いは、ヨーロッパ近代国家の成立とかかわってきます。大きな話になるので、興味のある方は『グリム童話と近代メルヒェン』竹原威滋著/三弥井書店をどうぞ。

ここでは、細かいことを書きますね。
エーレンベルク稿から7版まで、文章が改訂されています。
「まだ人の願い事がかなったころ」とか「菩提樹の木の下には泉が」とか、版を重ねるにつれどんどん書き込まれていくのですが、私自身が気になったのは、王さまの言葉です。

かえるが近づこうとすると、お姫さまが拒否しますね。その時の王さまの言葉です。
会話文というのは、語りの中で強いインパクトを持つので、無視できません。

エーレンベルク稿では、王さまはお姫さまに、かえるの言うとおりにするように命令しますが、発語はありません。
初版と2版では、ドアを開けるように命じるところで、
「約束したことは守らなくてはならない」。
ベッドに連れて行くように命じるところでも、
「約束したことは守らなくてはならない」といいます。
7版では、ドアを開けるように命じるところで、
「約束したことは守らなくてはならない」。
ベッドに連れて行くように命じるところで、
「おまえが困ったときに助けてくれた者を後になって粗末にしてはいけない」といいます。

寝室で、エーレンベルク稿から2版までは、かえるはしゃべりません。
ところが、7版では、かえるは、お姫さまにベッドに上げてくれといいますね。そのときに、「お父さまに言いつけますよ」といいます。

この会話文に、父親の権威とか道徳心の養成とか、恣意的なものを感じてしまうのは、私だけでしょうか?
昔話ならばストーリーのみで語るのが本来ではないでしょうか?

でもね、正直なことを言うと、子どもはこの部分でハッとするんですよ。
ストーリーに集中するだけでなくて、自分の内面に入っていく感覚が、語り手としてわかるんです。
ならば、グリムさんのこの再話は成功といえるのではないか、と思います。今はね。

ATU440「カエルの王様、または鉄のハインリヒ」
ヨーロッパを中心に世界中に広がっています。
いつかこんど、イギリスの類話「世界の果ての井戸」を紹介しますね。

「かえるの王さま」を子どもがどんなふうに聞くかについては、『ノート式おはなし講座 語り この愉しき瞬間』にも書いてるので見てね。持ってない人は買ってね(あ、『おもちホイコラショ』も一緒にねーついでの宣伝  \(@^0^@)/)。

はい、おしまい。

『オットーウベローデグリム童話全挿絵集』古今社より「かえるの王さま」

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今日のレパートリーの解凍
「ついでにぺろり」『おはなしのろうそく6』東京子ども図書館

きょうはなんだかぼ~っと😉

おはなしひろばにUPした「イワンの夢」を気に入ってくださった方がいたので、《外国の昔話》に載せました。
解説とテキストが読めますよ~こちら⇒
私も、この話、好きなのです(^∀^●)ノシ
ありがと~~o(*^@^*)o
みなさま、リクエストしてくださいね~
リクエストいただくと、めっちゃうれしいです。

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新聞に載っていた音楽のサイト。
朝比奈隆のタクトが今だけ無料で聴ける。
CURTAIN CALL こちら⇒
大フィルの定期演奏会のところクリックしたら、小鳥の鳴き声と渡辺橋からフェスティバルホールに向かう動画。
いきなり泣けてきた。
席についてちゅんちゅん鳴き声を聞いてわくわくする。なんだか遠い昔のことに思える。
終息したら、すぐに行く!

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オペラやバレーを観てみたい人には、新国立劇場が、サイトをつくっています。
その名も「巣ごもりシアター」こちら⇒
聴きごたえ、見ごたえあるよヽ(✿゚▽゚)ノ

 

 

 

グリム童話「ルンペルシュティルツヒェン」😈

KHM55「ルンペルシュティルツヒェン」

あらすじ
1、冒頭:父親が見栄を張って、娘がわらを紡いで金にすることができると、王に言う。
2、王からの課題は、わらを紡いで金にすること。
3、小人が助けてくれる。最初に生まれた子どもと引き換えに。
4、娘が拒絶すると、小人は、名前を当てろという。
5、娘の使者が森の中で、小人が叫んでいるのを聞く。
6、名前は、ルンペルシュティルツヒェン。
7、ラスト:小人は、自分の体真っ二つに引き裂く。

エーレンベルク稿では、
1、糸を紡ぐと、みな金になってしまうので、娘は困り果てている。
2、なし。
3、4、6 同じ。
5、忠実な召使女。
7、玉杓子にのって、窓から飛んで出ていく。

初版では、
1~4、6 同じ。
5、王が森の中で聞く。
7、怒り狂って走って行って、二度と戻ってこない。

2版以降はほぼ同じ。
グリムさんは、この形にするまでに、いくつかの口承を足したり引いたりしたんですね。

興味深いのは、1と7。
1、父親が見栄を張って、娘が犠牲になるという設定。
7、自分の体を真っ二つにするところ。1からのシリアスな雰囲気を引きずると、7は残酷に聞こえる。だから、直前の名前あてのところで、お遊びの雰囲気を楽しんでおくことが重要。そうすれば、子どもは、おお~って、びっくりしておもしろがります。

ATU500話型名は、「超自然の援助者の名前」
古いところでは、1705年に記録があるそうです。
世界じゅうに類話があって、日本の「大工と鬼六」も、この話型ですね。
類話をすこし紹介します。

イギリス『イギリスとアイルランドの昔話』
これは皆さんご存じ。
1、娘がパイを5つも食べてしまう。母親が、一日5かせ糸を紡ぐと、王に見栄を張る。
2、一日5かせの糸紡ぎを一か月。
3、娘自身と引き換えに、黒い小鬼が助けてくれる。
5、王が森の中で聞く。
6、名前は、トム・ティット・トット
7、暗闇の中へさっと出ていく。
冒頭から、間抜けな娘の笑い話になっていて、グリムのような重さはありません。ラスト、お妃が指を突き付けて名前を言うところ、ちょっとかっこいい(笑)

スペイン『スペイン民話集』岩波文庫
1~5は、グリム7版とほとんど同じ。
6、名前は、名無しの悪魔。
7のラストは、地団駄踏んで地中に沈んでいき、二度と娘の前に現れなかった。となっています。

フランス『フランス民話集』岩波文庫
1、怠け者の娘。母親は見栄を張って、娘が何もかも紡いでしまうという。
2、王は、麻の詰まった部屋に入れてすべて紡ぐように言う。
3、4 一年と一日経ったら名前を当てるという約束で、糸を紡いでやる。
5、王の狩人が聞く。
6、名前は、リカベール・リカボン
7、おならをして出ていく。三日間というもの、ひどく臭かった。

ほかに、オーストリアの「シュピッツバルテレ」、デンマークの「トリレウィプ」、ロートリンゲンの「アントニウス・ホーレクニッペル」
どれもおもしろいけれど、活舌がネックかもq(≧▽≦q)

名前を言い当てることの意味を考えると、これって真面目な話かもしれない。
中国にはかつて本名は呼ばないという風習があったし、日本も、万葉の時代は、女性に名前を尋ねることは、結婚を申し込む意味があった。
ここで思い出すのは、ル・グウィンの『影との戦い』。
主人公ダニーは、オジオンから「ゲド」っていう「真の名」をもらいますね。
だから、ヨーロッパでも、名は体を表すのかもしれない。ごめんなさい、ちゃんと調べたいのですが。。。
情報をお持ちの方、教えてください。

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今日のレパートリーの解凍
「ボタンインコ」完成!