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日常語の語り入門講座

オンラインで開催された2021年度の日常語の語り入門講座の最終回の報告をします!(^^)!
最終回は、いよいよみなさんが覚えた話を発表する日です。
時間の関係で2回に分けて行われました。
今年度の受講者さんは5人。
お一人お一人が違った言葉を持っておられるわけですから、それぞれ味のある日常語の語りが5話できました。

「だんだん飲み」『日本の昔話5ねずみのもちつき』福音館書店
「千人力」 語りの森HP日本の昔話 → こちら
「ねずみのすもう」『日本の昔話5ねずみのもちつき』福音館書店
「しんぺいとうざ」『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』語りの森
「仙人のおしえ」『日本の昔話5ネズミのもちつき』福音館書店

みなさん、しっかり覚えておられ、聞いているわたしとしてはとっても楽しかったし面白かったです。
しかしながら、語った側のみなさんにとってはいろいろ苦労があったようです。
日常語にしたテキストを覚える段階で「やはりこっちじゃないかな」と思って修正し、その修正がしっくりこずにまた修正する。
修正に修正を繰り返していくと、いったいどれが自分の言葉なのか分からなくなります。
そして、ひとつの言葉を言うときに、自分は複数の言い方をする。
両方使うときにどっちにするの?問題が浮上してきます。
練習しながら、覚えながら、これらの疑問が同時に頭を駆け巡り、いろいろ苦しまれたようです。
ヤンさんのアドヴァイスは、大事なのは自分の耳で聞くこと。
この場合は、録音して聞くのではなくて、語っている自分の言葉を耳で聞いて確かめる。
助詞をどうするか迷っているときには、耳で確認していたら分かる。
あとは、これは日常語による語りに限らないけれども、聞き手からどんな反応が返って来てもぶれないように、すぐ元に戻れるように寝ていても語れるようにひたすら練習すること。
子どもの反応があれば、その間に合わせること。
これは、その場にならないと分からないことなので、そのためにもしっかり覚えてどんな風にも(早いとか遅いとか、間の取り方の長短とか)語れるようにしておく必要がある。
それと、日常語のテキストを作るときに再話力も必要になってきますので、そのためには昔話の語法の勉強が重要だということです。
語法の勉強は、おはなしを語るときにはすべてにおいて関係してくると思いますが、日常語の語りを勉強するときにはぴったりとくっついてくる感じですね。

みなさんの感想を聞いて、わたしも同じだったので、戸惑いや迷いが分かります。
とにかくテキストが定まらない。
どこに定めたらいいのか分からない。
わたしは、だいたい定着点を決めるのに、語ってから2~3年かかったかなあと思います。
だからね、みなさん大丈夫!
語っていくうちに何回か蛇行していきながらも、「この辺かなぁ~」というところが見つかります。
マイルールや、あきらめも加わって、「ここでいい!」というところが見つかると思います。
だから、記念すべき第1話を大事にしながらも話数を増やして行って、語ってみて子どもたちの反応を見て修正するを繰り返し、これからも日常語の語りを続けていってほしいと思います(^o^)

第17回昔話の語法勉強会「お月お星」

コロナの感染者が多くなり、みんな恐怖を感じている日々ですが、感染予防を徹底しつつ予定通り語法勉強会が行われました。

「お月お星」
出典『日本の昔話2したきりすずめ』おざわとしお再話/福音館書店
あらすじ
むかしあるところにお月とお星という仲の良い姉妹がいました。
お月は前妻の娘で、お星は今の母の娘でした。
あるとき母親は、お月を亡き者にしようと思いました。
母親はお星に、毒まんじゅうを食べさせて殺すから、お月の饅頭は食べてはいけないといいました。
お星はそのことをお月に伝えて、お月は難を逃れました。
母親は、こんどはお月の寝ている部屋の梁に登って、槍でお月を突こうと思いました。
母親はお星にお月の近くで寝るなと言い、お星はお月に伝えてまたお月を助けました。
母親は、お月を箱に入れて遠くの山に捨てることにしました。
お星はお月の入れられる箱の底に小さな穴を開けてもらい、お月にけしの種を渡して穴から落とすようにいいました。
一年後、お星がお月をさがしに山に登って行くとけしの花が咲いていて、けしの花を道しるべにお月の居場所を突き止めました。
お月とお星は山を下りて大きな家のおかみさんに助けてもらい、その家に住ませてもらいました。
あるとき旅の六部がその家の前にやって来ました。
その六部は、お月とお星をさがしている二人の父親でした。
父親は悲しみのあまり目が見えなくなっていましたが、泣きながら抱きついたお月とお星の涙が父親の目に入ると目が見えるようになりました。
三人が家に帰ると、母親は後悔のあまり目が見えなくなっていました。
お月の涙が母親の目に入り、母親の目が見えるようになりました。
それから四人で幸せに暮らしました。

最初に中級クラスと日常語クラスで勉強されているYさんが語りを聞かせてくださいました。
そのあと、ヤンさんの講義です。
話型は「お銀小銀」で、妹が姉を助けるタイプです。
反対に、妹が母親といっしょに姉をいじめるタイプの話型があり、それは「糠福米福」です。
「糠福米福」の類話はグリム童話の「灰かぶり」です。
「灰かぶり」は世界中に類話がたくさん分布していて有名ですが、日本では「お銀小銀」の話型の話もこうして伝わっているんですね。
この話は継母の殺害方法の描写が何ともショッキングですから、語るのを躊躇したり敬遠したりする語り手さんがいるそうです。
その気持ちも分からないでもないですが、昔話は基幹動詞を使ってストーリーを進めていきます。
基幹動詞というのは、人間の行動の基本的な動きをあらわす動詞です。
「お月お星」のテキストを見ていきますと、起きる、入る、見る、思う、食べる、呼ぶ、知らせるなどが使われていて、その動詞を補足したり詳しく様子を説明したりしません。
動詞だけでストーリーが先に先にと進んでいきます。
無駄なものがないのでイメージしやすく、鮮明です。
ヤンさんはこれを、「お月お星」は感情を追わず出来事だけを述べていく〝叙事(詩)〟としての迫力ある物語になっていると言われました。
Yさんの語りを聞いているとそれがよく分かりました。
お星がけしの花がぽつぽつと咲いているのを辿っていく場面が鮮やかに浮かびました。
語法については、2月のオンライン語法勉強会のブログで書かせていただこうと思います。
お待ちください<(_ _)>

わたしは「お月お星」が大好きで、原話となった鈴木サツさんの語りもずっと音声資料で聞いていました。
(『鈴木サツ全昔話集と語り』小澤俊夫・他編集/福音館書店)
鈴木サツさんの語りを聞いたあとに『日本の昔話2』のテキストを見ると、伝承の語りの何かが失われているように思い、日常語による語りを勉強し始めていたので、日常語のテキストにして語ろうと思いました。
何か月か格闘しましたが結局挫折しました_| ̄|○
最終的にヤンさんの指導は、『日本の昔話2』のテキストを忠実に覚えて語るのがいいということでした。
その後、「お月お星」を語る場がなかったので覚えないままでしたが、Yさんの語りを聞かせてもらって、ヤンさんの言葉がよく理解できました。
わたしの「この話が好き」という気持ちは邪魔だったし、日常語テキストに変えるのもまだ慣れていなかったし、抒情に流れてしまっていたのでしょう。
この機会に気づけて嬉しかったです。

オンライン語法勉強会「お月お星」は、2月8日(火)の10時からです。
まだ申し込めます。
このページの〝オンライン講座昔話の語法勉強会〟のバナーからどうぞ(^o^)

12月のプライベートレッスン

寒波が来ておりますね。
日本海側は大雪だそうで、心配ですね。
遠くのほうに京都の北の方の山々が見えるんですけど、まっ白になってます。
今年最後のプライベートレッスンの報告です。

1日目
「ぽったりもち」語りの森ホームページ → こちら
日常語で語るためのテキストにされました。
元の共通語テキストと格闘していますと、使われている動詞とか登場人物の気持ちとかの細かいところにまで気になってきたりします。
それで、自分的にはこうじゃないかなと思って少し心情表現を足したくなる場合もあろうかと思いますが、今回はそれについて話題になりました。
昔話はできるだけ基本の動詞(食べる、笑う、行く、寝る等)を使い、心情表現はあまり使わない。
使うとしたら、泣く、淋しいなどに限定して用いられています。
これは昔話の語法に則っていて、昔話は行動で表して話が先に進んでいくからです。
そして、それを聞き手はそれぞれの心の中にそれぞれの心情を思い描くのです。
もし語り手が、例えば、あきれて、がっかりして、等の心情表現を入れてしまうと聞き手はそれだけに限定されてしまいます。
そのほかにもあるかもしれない登場人物の気持ち、いろんな気持ちが混ざっているかもしれない複雑な心の中を聞き手がイメージすることを奪ってしまいます。
こういうことを考えていくと、日常語テキストを作るということは再話することにもつながりますので、語りの勉強というのは同時進行でやることがいっぱいなんですね。
おはなしと格闘されているのがすごいなあと思いました。

2日目
「プレッツェモリーナ」語りの森ホームページ → こちら
5年生に語られるそうです。
これはイタリアのフィレンツェの昔話です。
グリム童話ですと「ラプンツェル」ですね。
類話ですが、おはなしの姿としてはかなり違います。
明るくて楽しいおはなしです。
「ぼくにキスしてくれたら、元通りにしてあげよう」なんて、こんなきざなセリフどの口が言うねん!って思いますが(わたしだけ?)、イタリアと聞いたらそれも納得ですね。
語りのアドヴァイスです。
語り手が、疑問を持ちながら語っていたり、細部のイメージをスルーして語っていた場合、聞き手もその箇所はイメージし辛いようです。
語り手が納得して語る、細部までイメージして語ることで、聞き手もイメージできるということを心にとどめて練習しましょう。
今回、語り手さんは主人公やその他の登場人物の人物像がしっかり設定されていて、聞き手はイメージしやすかったです。

いよいよ今日は仕事納めですね。
わたしは仕事してないんで関係ないんですけど、気持ちは年の瀬だと実感してきました。
スーパーでは、少し前から正月用品がどんどん増えてますし、特に何もしないと決めているのですが気持ちだけが追いつめられるような(笑)
今年はババ・ヤガーの勉強会も再開してうれしい事でした。
でも、まだまだソーシャルディスタンスを保たないといけないので以前通りということでは開催できません。
来年は、元通りになりますよう祈っています。
ではみなさま、どうぞよいお年をお迎えくださいませ。

12月の中級クラス

今年最後の、そして1月と2月は勉強会がお休みなので(コロナのためにお部屋の換気が必要で、さすがに厳寒の中、扉も窓も開けっぱなしは辛い。そのために風邪をひいても困るので…)みんなとはしばらくお別れね、の気持ちの中級クラスの報告です。

「マーシャとくま」『ロシアの昔話』福音館書店
保育園の5才児さんに語ったそうです。
語り手さんによると、今まで楽しくおもしろい話を中心にして語られてきて、そろそろ物語を聞いてもらおうと思ってこの話を選ばれました。
ストーリーはかわいいですし、よく聞いてくれたそうです。
後半に〝青髭〟モティーフが出てきますので、小さい子どもさんには怖い話と受け取られるようだとおっしゃっていました。
でも、一回しかそのモティーフは出て来ませんので、小さいお子さん向けですね。

「がちょう番の娘」『語るためのグリム童話5』小峰書店
わたしなんですが、は~~~、難しいです(でっかい溜息!)
夏に「がちょう番の娘」の語法勉強会があり、先月はこのクラスでメンバーさんがこの話を語られましたので、どのように語るかの知識はばっちりなんですよね。
練習もいろんなことを意識しながらしましたが、なんせ練習は一人ですからね。
で、人前でやるとそれができてんのかな、どうかな? という感じですよね。
(いやに共感を求めますが、それだけ不安な気持ちをお判りくださいませ<(_ _)>)
結果、あんまりできてませんでした(笑)
頭で分かってるけども、表現はできてないという素人として当たり前の結果でした。
ヤンさんの「分かっていて語ることが大事」というお言葉を頼りに、(できなくても開き直って)今後も練習を重ねようと思います。

「ロバの耳をした王子さま」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
幼稚園の年長さんに語られるそうです。
楽しくてかわいい話ですね。
悪い人は出て来ませんし、王子さまの耳をロバの耳にするようにと言ってしまった妖精も、クスッと笑えますし。
語りを聞いていて、ほ~んわかと楽しい気持ちになりました。

「首の短い男の話」語りの森ホームページ → こちら
この話は、アイヌの昔話で中学生に語るそうです。
そうですね、アイヌの話は独特で、入れ子といっていいのかどうか分かりませんが、死を目前にした人が語るという形式になっています。
だから、最後は神妙な感じで終わりますので、それだけでも語り方が難しいと感じます。
この話は、教訓を教えている話でまじめなんですが、そこに至るまでの前半で「小便の飛ばし比べ」が出て来まして、始めのほうはおもしろい話なんかなと思いました。
ですからよけい難しいんじゃないかと思いました。
本番はこれからのようですから、どうぞ頑張ってください!

「びんぼうこびと」『おはなしのろうそく26』東京子ども図書館
クリスマスという言葉は出て来ませんが、この時期によく語られるということを聞いて、なるほどなと思いました。
日本では、大晦日や元旦あたりに、貧乏神が去ったり、福の神と入れ替わったり、大金をつかむチャンスをもらえたりという話があります。
外国(この話はウクライナ)も日本も、年末年始に似た話を語っていたというのはおもしろいというかすごいですね。
昔話の伝わり方というのは諸説ありますが、〝人類の意識下の共通する総意〟とかいうものが、本当にあるんじゃないかと思います。
いや、ようわかりませんが(笑)

ヤンさん「はらぺこピエトリン」『子どもに語るイタリアの昔話』こぐま社
これはもうね、ヤンさんが図書館で子どもたちに語られるのを何度も聞いていますから、安定の面白さなんですが、でもそのたびに面白いなあと思うのですよ。
子どもたちも、大きい声で笑ったり、伸び上がったり、体じゅうで喜んでます(^_^)
かつて小澤先生が昔ばなし大学で「子どもたちは知っている話にまた会いたがっている」とおっしゃり、うわあ~なんかすごいこと聞いたなァ、と思いました。
ヤンさんの語りを聞いているとね、また聞きたいなと思うんですよね。
そういう語りをしないといけないなと、思うんですね。
自分を振り返って思うわけですよ。
出来てませんよ、出来てませんけどね。
拗ねてませんよ(-_-メ)

そして、初級クラスに続いて中級クラスでも宿題です。
内容は同じ、3月の勉強会までにたくさん本を読みましょうということでおはなしの本のリストが渡されました。
わたし、おおかたは読んでますが、おおかた忘れてます(あかんがな)
がんばって読もうと思います。
次は3月15日です。
そのころはコロナの状況はどうなってるかな?
みんな、元気でいられますように。

12月の研究クラス

今年2回目の研究クラスの報告です(^_^)
研究クラスでは、当番さんが事前に一話を選んでその話についてレポートを作成します。
勉強会当日はそのおはなしを語って、レポートの説明をして、語りの講評という流れになります。
今回は、語りではなくて研究クラスでずっと読みあわせている〝呪的逃走モティーフ〟について、勉強しようということになった最初のころに、「三枚のお札」でレポートを作成されたかたの呪的逃走モティーフを追いかけた続編でした。
タイトルは、「ぎょうせいの『世界の民話』における呪的逃走の考察」です。

調べ方を説明します。
まず、『日本昔話通観第28巻昔話タイプ・インデックス』(同朋舎)をみます。
すると「三枚のお札」は、IT347とあります。
(ITとは、共同編集者の稲田浩二先生のIで、稲田タイプということです。)
そして、同一タイプとしてAT313H、参照タイプとしてAT313D、AT314、AT334があげられています。
ATというのは、研究者のアールネさんのAと、トムソンさんのTです。
AT番号を調べるために、『世界の民話25解説編』(ぎょうせい)をみます。
索引Ⅰアールネ=トムソン「昔話の型」による索引の11ページに
AT313、A,B,C 主人公の逃走を助ける少女
AT314 馬に変身させられた若者
そして14ページには、AT334 魔女の家事
と、載っています。
それぞれには、『世界の民話』1巻~24巻までの該当する話とグリム童話の該当する話が記載されています。
これらの話を、当番さんは一話ずつ読んでいって、呪的逃走モティーフが含まれているかどうかを確かめてレポートを作成されたのでした。
加えて今は、AT番号を進化させたATU番号があるので、『国際昔話話型カタログ分類と文献目録』(小澤昔ばなし研究所)のATU313呪的逃走の項もあわせてレポートにまとめられました。

手順を追っていくとこんなかんじですが、なかなかに細かい作業でたいへんです。
呪的逃走モティーフのあった話を一覧表にまとめられましたが、わたしは説明について行くのがやっとというところでした。
もう、目が、目がぁ~~。
ほんとに、作成お疲れさまでしたとしか言いようがないのですが、呪的逃走モティーフというのは全く奥が深くて、掘っていくほどに先が伸びるみたいな感じがします。
だからこそ面白いんですが。
呪的逃走のモティーフの話は〝忘れられた花嫁〟モティーフとくっついていることが多いというのは今までの読みあわせでわかってましたが、今回わかったのは、「ラプンツェル」の魔女のように、許す代わりに将来子どもを渡せという約束をする内容のモティーフや、主人公の髪が金髪である、または金髪になるという〝金〟(極端に高価な物、一番尊い物)のモティーフとつながっていることが多いということです。
〝呪的逃走〟のモティーフが入ったおはなしは世界中にたくさんありますから、結び付くほかのモティーフが持つ意味というのもきっとあるんでしょうね。
最後に、まだまだ読むおはなしはリストアップできるから、〝呪的逃走〟を考察する旅はこれからも続くという話になりました。
わたしも根気の続く限り、というか、なんとしても続かせて(笑)、自分は調べないでいて、いいとこどりをさせてもいただこうという魂胆<(_ _)><(_ _)><(_ _)>
今回も力強いレポートをありがとうございました。
勉強した!という気になりました(^o^)/