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10月のプライベートレッスン

あっという間に、もう11月ですね。
今年もあと2ヶ月で終わりなんて、信じられません。
ついこの間まで半袖で暑がっていたというのに…。
10月のプライベートレッスンの報告です(^_^)

1日目
日常語の語りのテキストを作成する
「あちちぷうぷう」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
「きつねの茶釜」『日本の昔話2』おざわとしお再話 福音館書店
2日目
語りの練習
「ヤギとコオロギ」『子どもに語るイタリアの昔話』剣持弘子編訳 こぐま社

一日目はおふたりが一話ずつ日常語のテキストになおす勉強でした。
おふたりとも関西弁というくくりの中では同じでも、自分の日常語テキストにするとなるとやはり言葉が違うということがよく分かりました。
全く同じ言葉というのはだれひとりないんですね。
当たり前のことですが、普段は意識せずに周りはみんな同じような言葉を使っている気になっていました。

奇遇と言いますか、どちらの話にも和尚さんが出てきます。
どんな和尚さんにするかは読み手が決めていいのだそうです。
お寺の規模を想像したり、話の姿から和尚さんの位や性格を想像したりして、どれくらい偉くてどんな話し方をするかを読み手が決め、それによってテキストの言葉を選ぶという作業をしたらいいということでした。
和尚さんの口調とはこんなふうな感じだという思いもあるかと思いますし、いろんな和尚さんがいるなかでどの設定にするかをはじめにきちんと決めておかないと話全体に和尚さんの統一感がなくなるような気がしました。
じつは、「あちちぷうぷう」を知ったときにおもしろくて、日常語テキストにして覚えました。
勉強会以外で語る機会がなかったのでそのまま忘れてしまいましたが、あの時こんなに真剣に和尚さんの設定を考えていたかなと反省しました。
笑い話は、日常語で語られるのを聞きますと、おもしろさ倍増になるのでほんとに日常語って血の通った言葉なんだなと思います。

2日目は残念ながら同席できず、熱心なHさんの語りを聞けず残念でした。
プライベートレッスンをうけられるみなさんが、熱心に勉強されているのでわたしもそのパワーをもらっています。
感謝です(^o^)/

第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」

コロナのために延期されていた対面での勉強会がやっとできました(^_^)
第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」です!
通常は、対面で開催した後にオンラインでも実施するのですが、「白雪姫」は先にオンライン勉強会をしました。
その時のブログがこちらです → 第15回昔話の語法オンライン勉強会

勉強会の内容は先のオンラインの時と同じです。
対面では、初めに語りが入るのでそれが違いなだけです。
今回は、ヤンさんが講義の冒頭で、問いかけを三つホワイトボードに書かれました。
オンラインの時のブログと重複しますが、こちらの方が分かりやすいかと思いますのでQ&A方式で書きますね。

Q1 危険を承知でなぜこびとは白雪姫をひとりにしたのか?
これは不在のモティーフです。こびとたちが出かける→白雪姫がひとりになってしまった→そこに女王が現れる
ここでは時間の一致があります。→ 昔話の語法 一致
もし一人でもこびとが残っていて女王から白雪姫を救ったら、その後白雪姫は一生こびとの家で家事手伝いをして暮らした…となりそうです。
これは、幸せですかね?
昔話は主人公の幸せ(身の安全・結婚・富の獲得)のために一直線に進みます。
ですから、こびとはひとり残らず山へ仕事に出かけて白雪姫をひとりぼっちにし、事件が起こらなければならないのです。

Q2 白雪姫には経験知がないのか?
これは、昔話の孤立性です。→ エピソードの孤立性1
エピソードがそれぞれ孤立して、それぞれで完結しているのです。
ですから、前の出来事が影響を及ぼしません。
しかしながら、白雪姫は死んで生き返るたびに少しずつ成長しています。
だから、最初は女王をウエルカムで迎えていますが、2度目3度目は拒みます。
拒む度合いがクレッシェンドしています。
それぞれのエピソードを貫いているものがあり、それは主人公の幸せを実現しようとする語り手の意思です。
なんど失敗してもそのままのあなたでいいという思いと、最後には幸せになるよという語り手の思い、まさに女の子と母親を物語っています。

Q3 「白雪姫」は、何を語っているのか?
この話は〝人の忠告に耳をかたむけなさい〟という教訓話ではなく、そのままの自分でいていい、自分の精いっぱいのその場の対応をするしかないのだということを語っています。
Q1でもありましたが、もし白雪姫がこびとたちの忠告を聞いていたら最後に王子さまに会うことはできませんでした。
でも、ぼ~っとしていたというわけではありませんね。
何も考えていなかったのではありません。
変装した女王のことをこびとたちの言葉を思い出して2度目3度目は拒んでいます。
でも、若い女の子の欲しがるものを選んで持ってくるというところが女王のずるがしこいところですから、欲望に勝てませんでした。
それは罪でしょうか?
もし罪なら、テレビショッピングや、ネット通販は今存在していてはいけませんね。
わたしは重罪人です。
そんなことを問題にしているのではなく、目の前の出来事に一生懸命に対処していくしか方法はないが、時がたてばそれが必然であったということもあるという、人生や人類の根本的なことを語っているのです。
ここでヤンさんはフランス革命のことを例に出して説明されます。
曰く、『飢えに苦しむ人びとはパンを欲しかったから立ち上がった。
暴動を起こしたときは、人びとは苦しい生活を何とかしたかっただけ。
フランス革命を起こそうと思っていたわけではない。
後々、それがフランス革命であったという結果になった。』
なるほどそうですね!
その時その時で一生懸命に考えて精一杯のことをするしか道はないと思います。

最後に、質問が出ました。
昔話のいう最後の幸せ(身の安全・結婚・富の獲得)は、現在の幸せとあわない部分もあると思うが、語るときにどう思って語ればいいのか?ということでした。
この三つの幸せは、幸せの象徴です。
昔話は構造上、初めのところで何らかの欠落があり、それを取り返すとか、埋めるために話が進みます。
その物語が何を取り返したり、埋めたり、獲得しようとしているかによって、最後の幸せも決まるので、三つともある場合もあるし、ふたつやひとつの場合もあります。
主人公にとっての幸せの形が満たされることが大事だということです。

今回、語りを担当させていただきました。
オンラインの勉強会の時も講義に感動しましたし、そのとき自分なりに何かをつかんだと思っていましたが、その後課題も出ました。
「白雪姫」は女の子と母親の物語なので、娘二人の母である自分の子育てを振り返りますと、自分にとってこの話は特別な意味を持ちます。
わたしは悪い女王の自覚がありますので、それを後悔し反省しておりますが、反省しすぎたせいか〝女王の話〟になってしまっていました……_| ̄|○
これは、〝白雪姫の話〟ですから、それではいけません。
主人公が成長して、幸せになる、こんないい話を曲げて語っては行けませんね。
勉強会で感動し、語りで課題が分かり、重要な時間をいただきました。
精進いたします。

次回は1月の予定です。
テーマは「お月お星」です。
これも好きな話なので、とっても楽しみです(*^▽^*)

10月の中級クラス

みなさまお元気ですか?
なんだか急に寒くなって、風邪をひきそうな予感がし、「あかん、あかん、特に今はやば~い!」と、慌ててあったかい服や布団を引っ張り出しました。
10月の中級クラスを報告します。

「三びきの子ブタ」『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子編・訳 福音館書店
「名人四人きょうだい」『おはなしのろうそく31』東京子ども図書館
「ギーギードア」『おはなしはたのしい』田中康子編
「がちょう番の娘」『語るためのグリム童話5』小澤俊夫監訳 小峰書店
「舌切りすずめ」『日本の昔話2』おざわとしお再話 福音館書店
ヤンさん
「元気な仕立て屋」『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子編・訳 福音館書店

どれもこれも、みんな面白く楽しかったんですが、今回は「三びきの子ブタ」にアクシデントというか、ハプニングがあり、このことについて書かせていただきますね。
これは、語り手ならば誰にもあることですが、語っている最中に言葉が出てこなくて、頭が真っ白になったということがまさにこの日、「三びきの子ブタ」の最中におこったのですよ。
語り手さんは十分練習をしてこられていて、覚えたてとかではなかったし、家では滑らかに語れておられたそうです。
しかしながら、最初のほうで一か所小さく引っかかってしまったのを起点に、その後失速してやがて、練習では間違ったりしなかったところでなぜか言葉が出てこなくなったんだそうです。
これは、だれにでもあることなんでしっかり対策を勉強しないといけないと、わたしは気を引き締めたものでございます。

練習して滑らかに語れるようになると、自然とリズムが生まれてきます。
この話は、三回の繰り返しがあり、その繰り返しのリズムがうまれます。
そして、1回目から3回目へ進むにつれて子ブタがだんだん強くなっていくクレッシェンドもあります。
こういうことを意識しながら家で一人で練習していると、生まれてきたそのリズムが定着してきます。
そのリズムは、自分にとって心地よいリズムでもあるわけです。
そのリズムで必死に練習しますよね、みんな。
これで大丈夫と思って勉強会でみんなの前で語ったときに、始めのほうの小さな引っ掛かりがその定着したリズムを狂わせてしまい、その後雪崩のようにうまく続かなくなったということがおこったというヤンさんの解説に、大変納得いたしました。
練習しているときは、リズムができたと思ったらそれを疑わずに練習を続けますもんね。
自分だけのリズムというのは、当然聞き手や語りの場のその時の空気を予測できるものではありません。
語りながら、聞き手の様子を見て判断することですもんね。
ですから、一人で練習するときには自分の好きなリズムだけでなく、早口言葉のように早く言ってみたり、反対にゆっくり言ってみたり、いろいろやってみるのがいいそうです。
そうしてどんな風にも語れるように練習しておいて、初めて本番で聞き手が求める間で語れるようになるということです!!
納得!!

このクラスは初心者ではなくて中堅どころが集まっていますがやっぱりいろんなことがありますよね。
他人事ではないので、大変勉強になりました(^_^)

あったかペーチカ(仮)のかたが案内に来てくださって、11月からの会のお誘いをしてくださいました。
初級クラスと中級クラスのメンバーがいっしょに語るというのはとっても面白いと思います。
お世話してくださってありがとう~~(^^)/~~~

9月のプライベートレッスン

すっかり秋らしくなりましたね。
暑くなく寒くなく、過ごしやすい…と思っていたらたまに暑い日もあって「また夏?!」と汗だくになって買い物に行ったり…
今月のプライベートレッスンの報告です(^^♪

1日目
語り「ねこのしっぽ」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
  「ありとこおろぎ」『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』語りの森
2日目
日常語の語り「うりひめの話」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』語りの森
日常語のテキスト「仁王さまの夜遊び」語りの森HP → こちら
3日目
テキスト選び勉強会

今回は初めての内容があります。
〝テキスト選び勉強会〟です。
これは、プライベートレッスンを申し込まれたかたが、たまたま選ばれたテキストが語りに向かないねという話になり、急きょ、ではどこがどういう理由でむかないのかを教えてもらう勉強会になったわけです。
おはなしを覚える時のテキストというのは、特に語ることを意識して編集されている物は少ないので、有名な児童書の中から選ぶことも多いですね。
聞き手が分かるならば問題ないわけですからそのまま覚えるのも一つの手です。
しかしながら、語っているときに聞き手が理解していないと感じることがありませんか?
すてきな話だから選んだのに、聞いていて分かりにくいのはなんでなんでしょうか?
そんな疑問に答えてくれる勉強会が今回の〝テキスト選び勉強会〟でした。
ある有名な外国の昔話を集めた本の中から1話を選んで、話の最初から順を追って説明していただきました。
1行ずつ説明していただいたのですが細かいことは書ききれないので端的に言いますと、語るために再話・編集された本の話が一本道を突き進むがごとくストーリーだけを追って真っすぐ話が前に進むのに比べて、読み物として編集された本の話は、寄り道や脇芽が多くてそちらにもイメージをむけなくてはならず、それはストーリーとは関係ないので結局混乱するだけで、結果として分かりにくいこととなるわけです。
寄り道や脇芽というのは、よくないものというわけではありません。
それは例えば、あることの理由を後になって説明するからなぜそうするのかがよく分からないまましばらく聞いていなくてはならないとか、時間が逆流しているとか、たくさんの形容詞や修飾語とか、翻訳者の特徴的な美しい文体とか、翻訳調とか、説明過多とか、同じ出来事を違う言葉で描写しているなどです。
これらは、読んでいると全く違和感がなくてむしろこれらがあるから読んでいて楽しく美しいと思えるところです。
わたしもこの話は大好きになりました。
でも、翻訳されたかたの美しい文章が完璧すぎて、少々単語を入れかえたりするだけでは耳で聞いて分かりやすくするのは無理であると今回分かりました。
ですから、方法としては自分の聞き手さんたちが分かるならば、このままを覚えるのがひとつ。
それと、今回のようにこのテキストはあきらめて他の話を探すほうに力を入れるか…。

テキストを選ぶというのは、それで聞き手へ伝わるかどうかが決まるのでここをクリアすれば勝ったも同然(笑)という大事なことです。
それだからとても悩みます。
わたしが昔話の語法を勉強するのも再話の勉強をするのもすべてここにつながります。
今回は急に決まったのでヤンさんはたいへんだったと思いますが、他では聞けない内容だったし、本当に勉強になり、かつ楽しかったです。
また、他の既存のテキストを使っても、こんな勉強会があったらいいなと思いました(^_^)

9月の中級クラス

前回の7月は、久しぶりに対面の勉強会でしたが、8月末から始まった緊急事態宣言のために9月はまたしてもオンラインでの勉強会になりました。
メニューは以下の通りです。

「パティルの水牛」 語りの森HP → こちら
「たにし息子」 語りの森HP → こちら
「ブレーメンの音楽隊」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
「手なし娘」『子どもに語る日本の昔話3』こぐま社
ヤンさんの語り
「カメの笛」『ブラジルのむかしばなし1』カメの笛の会編 東京子ども図書館

今回の語りの中にあった「手なし娘」は、日本中に類話があり、世界中にも類話があります。
このように類話がたくさんある場合、初めて読んだテキストや、初めて聞いた語りが素敵で自分もやりたいと思ったとき、その最初の一つだけに注目せずに他の類話やテキストをあたってみるのが良いということでした。
比べる途中で、自分にとってもっと魅力的な「手なし娘」が見つかるかもしれませんし、より良いテキストに出会えるかもしれません。
そのためにいろんな類話を読むのはそれ自体も勉強になります。
「手なし娘」の重要なモチーフ〝ウリアの手紙〟についての説明はHPの昔話雑学にあります → こちら

それともう一つ印象的だったのは、素敵な語りを聞いたときに「自分もあの人のように語りたい」とお目々キラキラで感激したとしても「しばし待て!」と言われたことです。
しばし待って、ちょっと考えてみろというその理由は、「あの人のように語りたいと思った時点で、あの人の語りを超えることはできない」からです。
まったくもって、そのとおりかもしれません。
過去を振り返ってみると、わたしは心を打たれた語りを聞いたときは、決してその話に手を出せませんでした。
挫折することがわかっていたんでしょうね(笑)
ですから、「自分は自分の語りをしよう!!!」が正解だと今日教わって、「おおお~~~☆☆☆!」と思うとともに、これなら(目標低く自分なりに)できそうだと思ったのでした。
確かに、本日聞いた5話の中にひとつ、わたしはこの話は語れないと思う語りがありました。
それは、自分は主人公の素直さや素朴さがとうてい今日の語り手さんのようには出せないと分かってしまったからです。
魔女や山姥なら何とかなりそうですが、素直さなんてどうやって出せばいいのか全く分かりません。
もちろんどんな話も素直に語ってるつもりですが、話によってはそれとは別に、にじみ出る語り手さんの素直さが話の内容に絶妙にあらわれていて聞き手の心に直撃するものなんですね。
そういう語りを聞いてしまって、「ああ、無理無理、絶対ムリ~~」とあっさり諦めました(笑)
ということで、本日のだいじな言葉は、「自分は自分の語りをする!」です(`・ω・´)ゞ

来月は、対面で勉強会ができるかもしれませんね。
そうなることを願っています。