「昔話あれこれ」カテゴリーアーカイブ

おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか🧙‍♀️

 

岩波ジュニア新書

著者のウェルズ恵子さんは、英米文学・比較文化が専門の研究者です。
立命館大学の研究者学術情報データベースには、著者のメッセージが以下のように載せられています。

「声で広まる歌やお話は人間を苦しみから救う力があるから、それを文学研究として立証したいと考えています。また、そうした文学の地域性や文化的特色も考察したいと思います。 人間はいつでも、音楽と物語とともに生きている。その事実について探求し、人の幸福との関連から考察していきます。」

いいですねえ。ドキッとしますね。
そうだよ、だから、わたしたち、がんばって語りを広げようって思ってるんですよね。
もうちょっと若かったら、にせ学生で講義を受けたいヾ(≧▽≦*)o

それはさておき、『おとぎ話はなぜ残酷でハッピーエンドなのか』ですが、だれもが疑問に思うことをばっちり書名にしてありますね。
そして、ちゃんと自分で答えが導けるように書かれています。
ぜひ読んでほしいです。
ジュニア新書なので、わかりやすいです。

ちなみに、第1章《話してはならない呪い》では「ざくろ姫」や「くるみ割りのケイト」など、第2章《異世界から来た恋人》では「太陽の東、月の西」など、第3層《暴力と奇跡》では「腕のない娘」など、第4章《開けてはいけない部屋》では、「ミスター・フォックス」などが、とりあげられています。
ね、読みたくなるでしょ。

もっと読みたくならせてあげようか?
コラムがおもしろいのよ。
「なぜ主人公はいつも美しいのか」
「主人公と悪役以外はどんな人なのかもわからないのはなぜ?」
「つじつまが合わなかったり、とちゅうで話がずれるのはなぜ?」
「おとぎ話の語り手にとって『幸せ』とは?」
思わず笑ってしまわない~?
あるあるあるってo(*^@^*)o

今日は本の紹介でした~

昔話の役割‍

リュティ理論を学んでいると、そのなかに、昔話には人間のあらゆる姿が映しこまれていると書かれています。
ヤンは、その考え方に癒されます。

ただ、あらゆる姿といっても、その具体的な姿を、ちゃんと見て、ちゃんと見つけて、伝えるのはとても難しいと思います。
きのう、再話クラスの勉強会があって、痛感した次第です。

きのうの内容は、そのうちジミーさんがここに報告してくださいますので、今は、それは置いておいて、さっき読んだ本の中で見つけたことを、ここに書きます。

トンプソンの『民間説話ー世界の昔話とその分類』

トンプソンさんは、話型番号ATさんです。ちなみに、は、アールネさん。

昔話を「超自然的敵対者」「超自然的援助者」「魔法と怪異」・・・と分類して説明してあってね、そのなかの「神々」の章に「願望の成就と懲罰」っていう項がある。

わたしたちが子どもに語るとき、最後に悪いやつが懲罰を受けるのを、どう語るか、話題になるでしょ。
そのヒントになることが書いてあった。
きのうの再話勉強会でもその部分をどうするかってことが、ヤンは気になった。

トンプソンさんはこう書いています。引用します。

昔話のよい語り手のひとつの目標は、悪が当然の罰を受けるのを見とどけることである。真の価値のないもの、または邪悪の行為を見破ることは必ずしも容易ではない。しかし人の心を探るもっともよいひとつの方法を語り手は知っている。それは無限の力をどう役立てるかを見ればよい。生来謙虚でやさしい人ならばその力はただ強味となるだけだが、傲慢な不人情な者ならばその力は必ず彼に破滅をもたらすことになろう。

昔話は極端に語るという法則があるため、日常現実に暮らしている私たちには抵抗があることが多いです。あいまいにしたくなる。
でも、「はっきり言わんと分からん」ことがある。
大事なことほどはっきり言わないとあかん。
真の価値のないもの、または邪悪の行為を見破ることは必ずしも容易ではないからです。

引用文を読むと、はっと気がつくことがあります。
それは、昔話の価値観と子どもの正義感が合致しているということです。
幼い子は、親や大人の価値観をオウム返しにしているだけのことが多いけど、小学校も中学年くらいになると、自分の中の本来の正義感がむくむく目覚めて来るような気がします。

「ジャックと豆の木」のラスト、大男が豆の木から落ちて頭がぶっつぶれたとき、「ヤッター」って立ち上がった4年生の男の子を思い出します。

生来謙虚でやさしい人ならばその力はただ強味となるだけだが、傲慢な不人情な者ならばその力は必ず彼に破滅をもたらすことになろうっていうのは、昨日再話をここころみた「弓の名人と友だち」/『ソビエト民話選』にぴったりですね。

昔話のよい語り手のひとつの目標o(*^@^*)o
よい語り手になりたい、よい再話者になりたいですね。

難しいけど・・・

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きょうの《おはなしひろば》は、新美南吉の「たけのこ」です。
聞いてね~