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語りの森を作った魔女

日常語の語り入門講座

寒いですね。みなさまお変わりございませんか?
インフルエンザと花粉症のはさみうちの季節です。

きょうは、日常語による語り入門講座の第2回目でした。
受講者8人が、自分の選んだ昔話のテキストを持ち寄りました。
福音館の『日本の昔話』全五巻から、1話を自分の日常語に書きかえたテキストを作ってくるという宿題。その発表です。
それをさらに検討して自分のテキストを作る、という勉強をしました。

みなさん優秀〜〜
宿題を発表するとき、どなたもみな、ちょっと恥ずかしそうで、でもとてもうれしそうなのが印象的でした。
自分は普段どんな言葉で話しているだろうと、考えに考えて作ったテキスト。
その人以外に正解はわからない。そのテキストはその人だけのものです。
私たち語り手は、常に常に「ことば」と格闘しないといけないと思います。
そして、「ことば」は生き物であることを忘れてはならないと思うのです。
文芸作品は、作者が言葉と格闘してそれを作品として定着させたものですね。
それを朗読するとき、一言一句をおろそかにしてはいけない。

昔話は、語り手が言葉と格闘するのだと思います。
今回気づいたことは、ほぼ共通語を日常語として生活している人がテキストを作るときの注意点です。
原典は書籍ですから、文字で読んでわかるように、また、文字で読んで楽しいように書かれています。文語ほどきつくないけれど、それは書き言葉で す。
ところが、共通語で生活していても、書き言葉でしゃべっているわけではありませんよね。話し言葉でしゃべっています。あたりまえですー笑。
つまり、書き言葉を自然な話し言葉に直す、すると、その人らしいテキストが生まれる、ということです。
人の数だけ語りがある。
おもしろいですね。

第3回は、発表です。
みなさん、覚えて語りこむ段階でまたテキストに手を入れることになると思います。
がんばれ〜
発表会、たのしみです。

ヤン

ゆく年くる年

2015年12月31日(木)
いつものように5時半に起きだし、コーヒーを入れて、スムージーとトーストと納豆でひとり静かに朝食をとる。
一日で最も穏やかな時間。新聞に目を通す。
昨日料理した棒鱈と黒豆に火を入れる。
家人が起きだす前に、語りの練習をする。一時間余り。

「とうふとこんにゃく」「雪女」
何年も前に共通語で語っていたのだが、年明けて5日の日常語入門講座のために、日常語に語りなおしている。
いっつもおんなじ話ばっかりやるのは、自分が許せないのだ。かなしい性だ。
あ、二話あわせても五分で終わる…よいプログラムだ。

「忠実なヨハネス」
一月末に六年生に語る。急にはもどらないから早めにもどしておく。棒鱈と同じ。
祝い鯛を焼きながら、煮しめを始める。
家人が起きだす。あとはわけわからんうちに時が過ぎる。
おせちと昼食と夕食を作りながら、掃除やら片付けやらの指示を出しつづける。

一昨日、息子が帰省。
若者が家に居るのは良い。おなかがよじれるほど笑える。
今年のおせちはいつものおせち。
金時人参とレンコンとこんにゃくと筍の煮しめ。
子芋の煮しめ。
高野豆腐の煮しめ。
干しシイタケの煮しめ。
お焼きの煮しめ。
たたきごぼう。
黒豆。
棒鱈。
海老の甘煮。
鶏の照り焼き。
数の子。
祝い鯛。
かまぼこ。これは切るだけ。

母は干しシイタケの煮しめが上手かった。
父は棒鱈が好きだった。
義父はたたきごぼうが好きだった。
たたきごぼうの作り方は、結婚前に義母に教わった。

娘は今年は帰省しない。新しい家族と賑やかに過ごすはずだ。赤ん坊を囲んで。
光景を思い描くと、嬉しくて目頭が熱い。

夕食は、年越しそばと八宝菜。

以上、個人的な、ごく個人的な日記。

除夜の鐘が鳴り始めた。
年忘れ。
忘れてはならないことと、忘れることで前に進めることと。
ちゃんと考えよう。
みなさま あけまして おめでとうございます。
どうかどうか 幸せな年となりますように。
本年も あいかわりませず よろしくお付き合いくださいませ。

ヤン

今年最後のお話会

図書館のお話会で年が明け、図書館のお話会でその年が終わります。
一昨日の土曜日、最後のお話会でした。
もう冬休みに入っていて、子ども8名、おとな4名と、少なめでしたが、いつものように和やかなひとときでした。

手遊び 「かれいこやいて」
お話  「にんじん、ごぼう、だいこん」
『松谷みよ子のむかしむかし』/講談社
絵本  『じごくのそうべえ』田島征彦/童心社
絵本  『なんでやねん』中川ひろたか文/世界文化社
お話  「かきねの戸」 ババ・ヤガー語りの森 村上郁再話
絵本  『おべんとうめしあがれ』 視覚デザイン研究所
手遊び 「さよならあんころもち」

わたしは手遊びと「かきねの戸」『おべんとうめしあがれ』だけ。
あとは、ヤンの所属サークルの初級講座のメンバーがやりました。
ずいぶん慣れてきて、頼もしい限りでしたよ〜
初級講座は、おはなしを始めて5年以内の人たちの勉強会です。
って、前にも紹介しましたよね〜?

勉強会でいくら学んでも練習しても理解できないことがあります。
それは、子どもがどのようにお話を楽しむかということです。
それと、語りの場での厳しい現実です。あ、自分のふがいなさって言ったほうがいいのかなー笑
実感しないとわからない。
それで、ときどき、講師役のヤンと一緒に、図書館で子どもに語ってもらいます。実習みたいなもんです。
無責任! とか、子どもが迷惑! とかの声が聞こえてきそうー笑
大丈夫ですよ。子どもの守備範囲はめっちゃ広いです。広い心できいてくれます。
で、事後、反省会をやります。
以前、ある役者さん(だったかな?)が言ってた言葉、
「百回の練習よりも一回の本番」。
もちろん百回練習して初めて本番に臨む。
そうすると、百回の練習で分からなかったことが、一回の本番でバアッとわかる。
その話を聞いたとき、私のやってることも同じだと思いました。
「場」で成り立つ芸術(だと私は思う)は、「場」を抜きにしてはモノにならないと思います。
ヤン

三びきの子ブタ

さっき、幼稚園の5歳児のお話会に行ってきました。

20分×2クラス
手遊び  「ろうそくぱっ」
おはなし 「三びきの子ブタ」
『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子訳/福音館書店
手遊び  「ろうそくふっ」

さてさて、「三びきの子ブタ」。
12月13日のぽんちゃんのブログにもありましたね〜
子どもたちは、題名を聞いただけで「しってる〜」っていいます。
でも、たいていは改ざんされたストーリーなのですね。
きょうも、「しってる〜〜〜」で始まりました。
わたし 「ああ、そうかあ。すごいなあ。でもこれからするお話はちょっと違うかもしれんよ〜。よう聞いてね〜」

子ども 「うん!」 「し〜っ!」 「だまってぇ〜」
子どもたちは、時どき、「同じ」 とか 「違う」 とかつぶやきながら聞きはじめますが、すぐに 「とんとんとんでもないよ」 を楽しんだり、次のこぶたは食べられるんだろうかどうだろうかと息をひそめたりして聞きます。
かぶ、りんご、バター桶のモティーフは、知らない子が多いので、背筋をしゃんとして集中します。
オオカミが鍋に落っこちるところでは、やった〜って感じで喜びの声をあげます。
オオカミをぐつぐつ煮て晩ごはんに食べてしまうところは、おもしろそうにケラケラ笑います。
みんな満足して 「おしまい」 。

「みんなの知ってるのとおんなじやった?」 ときくと、「おんなじ」 という子もいますが、たいていは 「違うかった〜」
幼い子は三匹の子ブタを親や園の先生から読んでもらうのが初体験です。
子どもにとって親や先生は絶対的な存在です。
だから、たとえ改ざんされていても、その話が「正しい」 のです。当たり前です。
では、どうやったら、おはなしのおばちゃんがそれに太刀打ちできるでしょう
か?−笑

わたしの工夫をこっそり伝授いたしましょ〜

ひとつめ。
昔話にはいろいろな類話や再話があることを教えます。
って、特別なことは言わなくていいーいってもわからないー笑
わたしは、「三匹の子ブタ」は5歳児の12月にします。
それで、10月か11月に、「三枚のお札」を語ります。
「三枚のお札」には、類話・再話がいっぱい。
子どもたちは、自分の知っているストーリーと違っても、めっちゃ面白いし恐いので、「違う〜」ってそっぽ向くことは絶対ありません。
終わってから、自分の知ってる話はどんな話かを口々に教えてくれたりします。
その時を逃さず、わたし 「いやあ、お話っていろいろあるねんなあ」 としみじみ言います。すると、たいていは一緒にしみじみしてくれます。
だから、ちがう 「三匹の子ブタ」 も受け入れられるのです。
「三枚のお札」 でなくても、「カチカチ山」 や 「サルカニ合戦」 でもいいでしょうね。
類話・再話の多い話をやる。
おお〜、いかにもババ・ヤガーのサイトですね〜

ふたつめ。
「しってる〜」 って言ったら、「へえ、どんなやったっけ?」 と、尋ねます。
すると、たいていは改ざんした話を口々に言いはじめます。
ときには私も、「そうそう、オオカミがあちちって逃げていくねんね」 と話を合わせたりします。
そして、ひとしきり言わせておいて、
「それって、小さい子向きのお話やねん。みんなもう年長さんだから、本当の「三匹のコブタ」 をするね 」 といって、おもむろに語り始めます。
子どもの自尊心をくすぐる心理作戦です。でも、これ、うそじゃない。本当のことですからね。
これは、小学生でも使えますよ。
小学生は、おはなしが終わった後にこう言うと、とっても嬉しそうにします。

みっつめ。
自信を持って語ること。
「しってる〜」 「ちがう〜」 のコールが起こったら、ニタッと笑うくらいの余裕がほしいですね〜
いろいろな再話を読み比べ、テーマも言葉もこれが一番だと思うテキストを選ぶ。
ときにはテキストに手を入れる。 ときには自分で再話する。
その努力をすることで、自分の心にテキストへの信頼が生まれます。
「知ってる」 「違う」 と言われたら、
「うん、知ってるでしょう。うん、違うでしょう。でも、これから語る三匹の子ブタは、最高に面白いんだぞ」と言い切れる余裕です。
あ、いいませんよ。そんなことはね。心の中で言うんですよー笑
みなさん、再話の勉強しましょうね〜
おお〜、いかにもババ・ヤガーの……

さて、「はじめの二匹はどうなったの?」 ってきかれた経験、皆さんおありと
思います。
わたしは、「どうなったんやろねえ…」 といって、お茶を濁しますー笑
そして、子どもたちの言葉を楽しみます。
きょうも、1つのクラスできかれました。
わたし 「どうなったんやろねえ」
子ども 「オオカミを食べたから、自分が食べちゃったんや」
すごいですね。子どもが 「三匹目」 と言わずに 「自分が」 といったことに感動ですね。
〈子どもは主人公になりきって聞く〉 ってことを証明してくれましたね。
「消えたんや」
「またおなかから生まれてくるわ」
おもしろいですね〜
小学生の忘れられない名言→ 「消化した」 「うんこになった」

長くなりました。
みなさまの子ブタ体験、聞かせてくださいね〜

ヤン

もっかい!

きょうは幼稚園の4歳児。

20分×2クラス
手遊び 「ろうそくぱっ」
おはなし「かきねの戸」 ババヤガー語りの森 村上再話
おはなし「かきねの戸」
手遊び 「ろうそくふっ」

え? 書き間違え?
いえいえ。
「かきねの戸」を語って「はいおしまい」って言ったら、「もっかい!」の連呼。2クラスともね。
ほんとは「おいしいおかゆ」をしようと思ってたんですが……
「もっかい!」コールに乗せられて、もう一回やりました。
そしたら、2回目のほうが盛り上がった〜笑
で、「はいおしまい」って言ったら「もっかい!」
いえいえ、3回やる時間はありませんでしたよ。

お話会が終わって職員室で。
先生方は全員出払っておられて、ひとりでお茶をいただいていると、4歳児のAちゃんがそっと入ってきて「ひとり?」とききました。
わたし 「うん。ちょっとさびしい」
Aちゃん「お話しに来たの」
わたし 「何のお話?」
Aちゃん「おにぎり君のお話」
わたし 「へえ〜」
Aちゃん「昔むかし、あるところに、おにぎりくんがいました」
Aちゃんは、おにぎり君が転がっていって、穴に落っこちて、お化けに食べられたり、みんなに助けてもらったり、オオカミが空を飛んでったり、ず うっと話してくれました。そして、
Aちゃん「はいおしまい」
わたし 「もっかい!」
Aちゃん「もうお帰りの時間ですよ」

ヤン