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語りの森を作った魔女

昔話の解釈ー七羽の烏6👩👩👩👩👩👩

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第1章七羽の烏

なかなか進まへんねえ(笑)
ちょっと急ぎの仕事が入ってね。やっと今日送り出したから、次の仕事の締め切りまでにがんばらなくてはヾ(•ω•`)o

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グリム童話KHM49「六羽の白鳥」とアンデルセンの「野の白鳥」と、口承資料にある類話の三つを比較しています。
口承資料は、スウェーデン生まれでホルシュタイン地方に暮らした74歳になるベント夫人というかたの語りです。リュティさんは、部分的に引用してるだけなので、全文が読みたい。でも、翻訳されたものはどんなに探しても見つからなかったです。残念!

ラストの呪いが解ける直前の場面です。

ベント夫人
王妃は編みに編んだ。荷車の上に乗せられ、その車に罪人用のろばがつけられたときも編んでいたし、車が動き出した時もなお編んでいた。王妃はシャツを全部たずさえていた。町の外れで王妃は焼き殺されることになっていた。そこへ行く途中も王妃は残った袖を編み続けていた。

アンデルセン「野の白鳥」
みすぼらしい馬が王妃の乗った車を引いていた。王妃は粗い麻布の上っ張りを着せられていた。その長いみごとな髪はバラバラになって美しい顔の回りに垂れていた。ほおは死人のように真っ青で、唇がかすかに動いていた。でも指は緑の糸を編み続けていた。死に赴く道すがらも王妃は、手を着けた仕事をやめはしなかった。十枚のチョッキが足もとに置いてあった。今は十一枚目のチョッキを編んでいるところだった。

アンデルセンはかなり書き込んでいますね。
これを、リュティさんは、詳しい描写が、なんと押しつけがましく、弱々しく聞こえることかと言っています。ベント夫人の簡潔で力強い語り口に対して、この大作家(アンデルセン)の言葉がなんとうつろに響くことかと言います。
ベント夫人の語りは、妹の心の苦しみ、自分自身との闘い、疑いと惑いについては一言も触れていないけれど、「編む」という言葉の積み重ねの中に、耐えがたいほどに高められる内面的緊張が表れています。
昔話では、基本動詞を使って行動をあらわす。そして、その行動に内面があらわれるのです。

つぎは、いよいよ火あぶりにされる場面です。

ベント夫人
お妃は一言も口をきかないで、編み続け、とうとう袖を仕上げた。ちょうどそのとき薪に火がつけられた。すると11羽の白鳥がお妃の周りに下りてきて、お妃の膝の上にとまったように見えた。「妹や、さあ、お話し」と、白鳥たちが言った。

グリム「六羽の白鳥」
薪の山の上に立たされ、いよいよ火がつけられるその時、お妃は空を見上げました。すると、六羽の白鳥がこちらへ飛んでくるのが見えました。お妃の心は喜びでいっぱいになり、「ああ、神さま、これで苦しい時が終わりますように」と、心の中でいいました。

グリムでは、妹の内面描写があります。
ベント夫人は、兄たちが助けに飛んでくるときの妹の喜びは語っていません。事柄だけを述べています。
リュティさんは、この場面のグリムの語りを文飾だと批判しています。昔話的でないのです。

とまあこんな感じで、昔話の再話って難しいですね。

次回は、「七羽の烏」にもどって、妹が指を切る場面を考えます。

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今週は日本の昔話を更新しましたよ~

秋の贈り物、おすそわけ~

もひとつ

ふふふ、もうひとつ

ありがと~~~

 

 

高校生に絵本📖

今年も、高校の保育の授業で、絵本の講義に行ってきましたよ~
いつもは1学期なんだけど、今年はコロナ禍の関係で2学期になりました。

昨日はレクチャーと、何冊か読んで、「読んでもらう体験」をしてもらいました。

レクチャーは、絵本とは芸術である、子どもにはホンモノを提供しなくてはならない、というところから話しました。
絵本っていうのは、物語(文学)と絵画とが一体となったもの。文学も絵画も芸術ですよね。子ども向きだからといって、いいかげんに作ってはいけないし、実際、よい絵本はたくさんありますね。

よい、子どもの文学の条件は、
1、人生を肯定的にとらえていること
2、主人公と一体となって主人公の体験を追体験できる力を持っていること
3、結末が満足できること
これが、幼い子どもの育ちにとって、よい文学の条件だと思うのね。

絵は、物語をより詳しく、豊かに、拡大し、補うものであってほしい。

そんな話をした後で読んだのが、以下の本です。
コロナ対策で机を離して座っているので、いつもの親密感がなくて寂しかったけど。それでも、幼い子と同じようなキラキラした瞳で聞いてくれましたよ。

1、『ぐりとぐら』 なかがわりえこ・おおむらゆりこ 福音館書店
2、『はらぺこあおむし』 エリック・カール作/もりひさし訳 偕成社
3、『おにぎり』 平山栄三 福音館書店
4、『かあさん、だいすき』 シャーロット・ゾロトウ文/シャーロット・ヴォーク絵/松井るり子訳/徳間書店
5、『いない いない ばあ』 松谷みよ子 童心社
6、『ばいばい』 まついのりこ 偕成社
7、『よあけ』 ユリ・シュルヴィッツ作/瀬田貞二訳 福音館書店
8、『とらっくとらっくとらっく』 渡辺茂男文/山本忠敬絵 福音館書店
9、『やさいのおなか』 きうちかつ  福音館書店
10、『もこ もこもこ』 谷川俊太郎文/元永定正絵 文研出版

来週は生徒たちがお好みの一冊を持ってきて、読んでくれます。
楽しみ~~~

 

10月のおはなし会🌰

10月12日(月)
幼稚園4歳児 ラス
ろうそくぱっ
おはなし「三匹のくま」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』村上再話
ろうそくぱっ

今年度2回目。まだ2回目なのに、なんて上手に楽しそうに聞いてくれるんでしょ。
子どもたち、嬉しくて仕方がないんですね。
わたし「はい、おしまい」
子ども「おもしろかった~」
さようならをした瞬間、ひとりの子が抱きついてきて、それを合図にわらわらと子どもたちが抱きついて来て、窒息しそうになった(@^0^)
あ、コロナやしね、内緒よ。ここだけの話ね(笑)
帰宅後の手洗い洗濯。長く続けるために、がんばろ~

園長先生の、子どもは今を逃してはいけないという時期があるんですという言葉が、心に深くしみこみました。
小学生だって同じだと思うんだけど、学校ではどうして言葉と心の教育は後回しになるんだろう。

10月15日(木)
幼稚園5歳児 1クラスずつ2回
ろうそくぱっ
三枚のお札
ろうそくぱっ

さすが年長さんですね~
きちんと並べた椅子に、おりこうさんにちゃんと座っていました。
小学生みたいやなあと思いました。
それでも後ろの列の子は横から顔を出したり、ちょっと立ち上がったりして、一生懸命見て(聴いて?)いました。
絶対はずさない「三枚のお札」なんだけど、前回が半年ぶりだったし、座り方もソーシャルでスタンスだし、わたしはマスクだし、最初は少し緊張しました。
でも、鬼婆が出現するころには、いつもとおんなじ(^∀^●)
約10分の熱演(笑)を2回は、窒息しそうになった(@^0^)

今月はおはなし会はこれでおしまい。
なんだか寂しいけれど、それでも報告ができるようになって嬉しいな。

 

 

昔話の解釈ー七羽の烏5👩👩👩👩👩

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第1章七羽の烏

KHM「七羽のからす」では、妹は、兄さんたちを救うために世界の果てまで旅をし、最後はガラスの山に行きます。
他の類話では、妹にはどんな課題が課されるでしょうか。

KHM9「十二人兄弟」
七年間、口をきいてもいけないし、笑ってもいけない。

KHM49「六羽の白鳥」
六年間、口をきいてもいけないし、笑ってもいけない。そして、その間にエゾギクで兄さんたちのシャツを六枚縫わなければならない。

アンデルセン「野の白鳥」
11人の兄さんたちのために、教会の墓地に生えているイラクサでシャツを編まなくてはならない。その間、口をきいてもいけないし、笑ってもいけない。
うう。墓地は怖いし、イラクサはトゲトゲで痛いよ。手は傷だらけ(⓿_⓿)

「野の白鳥」は、アンデルセンの創作だけど、昔話に基づいて書かれたものです。

昔話は、極端に語るという性質があるけれど、これらの類話をみると、競い合って極端化しているみたいね。条件がどんどんきつくなっている(笑)

「口をきかない」という課題については、ふたつのことが言えると、リュティさんはいいます。
1、がまんしたりあきらめたりする力と意志を象徴している。
なるほど~
2、葛藤の芽をはらんだモティーフである。
がんとして口をきかないから、疑いをかけられても中傷されても、すべて受け入れないといけないんですね。口をきかないから妹は火あぶりにされる。葛藤の芽をはらんでいる。
昔話は、モティーフのつながりによってストーリーが作られます。口をきかないことが、ストーリーを前に進めています。

ところで、王の妻になった妹は、義母(魔女)の中傷で、火あぶりにされることになります。刑場に引き出される馬車の中でも、妹はシャツを編み続けます。火あぶりになる瞬間、シャツが編みあがり(もしくは最後の六or七年が過ぎ去り)白鳥たちが飛んでくる。
このクライマックスの描き方について、リュティさんは、グリムもアンデルセンもとっても感傷的(センチメンタル)だと批判しています。
本来の口伝えの昔話では、もっと簡潔で力強いといいます。

ここでリュティさんは、ドイツのフェーマルン島に住むエンマ・ベントさんの語りを引用して、グリムやアンデルセンと比較しています。
めっちゃ面白いんだけど、長くなるので、次回にまわします。

はい、ここまで。

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一昨日は、HP更新。
絵本のこみちと外国の昔話、見てね~

昨日は、今年度最初の初級クラス勉強会。
メンバーによる報告があるので、ちょっと待ってくださいね(。・∀・)ノ゙

 

 

ハイジ⛺

中村桂子さんの『「ふつうの女の子」のちから』(2018年/集英社クリエイティブ)を読んでたらね、ハイジについて書かれてたの。
そういえば『ハイジ』はちゃんと読んでなかったって気がついて、読んだ。

子どものとき家になかったから、きっとどこかで借りて読んだんだろう。
なんども読んだ作品は、登場人物や風景が見えるんだけど、ストーリーしか覚えてなかったからね。

ヨハンナ・シュピリ作/上田真而子訳/岩波少年文庫/2003年

涙、涙。
久しぶりに号泣したよ。
ストレスも発散した(笑)

わたし、小学生のとき、読書感想文が嫌いでね、提出しなかった。
いや、書かなかった。
感動すると書けないもの。書きたくないもの。
だから、いま、『ハイジ』の感想書かない!

ふたつだけ。
人の心のほんとうのあり様は、美しいのだということ。
アルムの自然の美しさは、映像では分からない、ヨハンナ・シュピリの筆による描写が最高だっていうこと。

みなさん、ぜひ読んでみて。
高学年以上の子どもをお持ちの方は、寝る前に読んであげて。
親子で感動するの、いいと思う。

ヨハンナ・シュピリ(1827-)は、スイスのヒルツェルという小さな村で、生まれます。父親は医者、母親は牧師の娘です。
44歳ごろから小説を書き始め、『ハイジ』は53~4歳のとき世に出ました。74歳で亡くなるまで子どもの本や小説を書き続けたそうです。