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おはなし入門講座 第3回

入門講座第3回目の報告です。今回のテーマは「おはなしの覚え方」です。

まずは、語りから。

「三びきの子ブタ」 『イギリスとアイルランドの昔話』 福音館書店

◎おはなしの覚え方

1⃣ストーリーを覚える

・(今から覚えるぞ!という気持ちで)声に出して全体を読む。

・テキストを見ないで、あらすじを書く。                    細かく書く必要はありません。書いてから、もう一度読んでみて抜けていた場面を確認します。この時、書き直す必要はありません。

・「意味段落」に分ける。                         筆者が考えた「形式段落」ではなく、大まかな意味で段落を考えます。具体的には・・・A 場面が変わる、B 時間の経過(ex. しばらくすると)、C 人物の出入り(ex. そこへオオカミがやってきた)

実際に「三びきの子ブタ」で考えてみると、

形式段落→①~㉔

意味段落→①~⑨                             ①状況説明 ②一番目の子ブタ ③二番目の子ブタ ④三番目の子ブタ ⑤三番目の子ブタとオオカミとのやりとり ⑥リンゴ ⑦バターおけ ⑧煙突 ⑨終わり

2⃣言葉を覚える

・意味段落ごとに一つずつ完璧に覚える。細かくイメージしながら、声に出して読みましょう。例えば、お母さんブタと子ブタの大きさは?子ブタが住んでいる場所は?温度、手触り、匂い、味など五感をフルに使ってイメージします。すると平面であった映像が立体化されます。

また、ハリエニシダってどんな木?バターおけは何色でどんな大きさ?知らない場合は図鑑などで確認するといいですね。

何度も間違えずに語れるようになるまで、口に出すという作業を繰り返します。特に曖昧で覚えきれていない場面は抜き出して何度も練習しましょう。

最後まで覚えることができれば、最初から最後まで通して語り、一つの段落を完成させます。

・翌日、次の段落も同じようにして完成させます。この時の注意点として、前日に覚えた段落がきちんと覚えられているか不安であっても戻ってはいけません。戻るとそこの段落の練習量が増え、力が入ってしまいます。ストーリーは最後が盛り上がるのに、最初に力が入り、最後が尻すぼみではダメです。

・最後の段落まで覚えたら、最初から最後まで通して語ります。忘れていても一度は覚えたので、思い出すのも早いはずです。

あとは練習あるのみ!家事をしながら、お風呂に入りながら、電車に乗りながら、etc…よくヤンさんが言われていますが、「寝ても言えるぐらいに」繰り返し口に出して練習しましょう。皆さん忙しいかと思いますが、1日のうち自分で時間を決めて練習に取り組むのがいいかと思います。

◎おはなしの語り方

1⃣上手に語ろうと思わない。

・語り手は俳優ではありませんので、演じる必要はありません。ただ覚えたストーリーを声に出すだけで大丈夫です。ストーリーに力があれば、棒読みでも聞き手を引き付けられます。

間を取ったり、抑揚をつけてたりしない。子どもに語っていくうちに、語り方は自然と変わってきます。初めから意図して変えないようにしましょう。

2⃣最後まで語りきる。

・途中で忘れてしまっても、最後まで聞き手を連れていってください。

おはなし選びから語るまで、時間をかければかけるほど、そのおはなしがよく理解できます。即席で覚えたおはなしを語るのではなく、自分のものにしたおはなしを子どもに提供してあげましょう。必ず、聞き手は答えてくれます。

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毎年入門講座の度に「初心忘れるべからず」と勉強になります。ききみみずきんは主催者ですが、ヤンさんの講座を聞けるのは、大変お得です☺

次回は12月5日、最終回「発表会」です。新しい語り手が4人誕生されます。今年の受講生はどのおはなしを選ばれたのか・・・お楽しみに♪

6月度 中級クラス☂

先月に引き続き、6月度の中級クラスもzoomでの勉強会となりました。

前回同様、「さあ始めましょう」といきたいところですが、発表予定のNさんの声が聞こえず・・・お顔は見えていますし、こちらからの声は聞こえるようですが、肝心のNさんの声が小さすぎて聞こえないトラブル発生。音量設定が低いだけかと思うのですが、原因が分からず・・・結局最後まで声が出ず、発表もできませんでした(´;ω;`)次回までに解決して、「パティルの水牛」を聞かせてくださいね!

前回は6話の発表で盛り沢山過ぎたため、今回は4話の予定でしたが、急遽Nさんもなくなったので、3話だけの発表となりました。時間的余裕があり、皆さんの意見もお聞きするとことができました。では、報告です。

(語り)

①がちょう番の娘 『語るためのグリム童話5』/小峰書店

勉強会では全員の語りが終わってから、一人ずつ講評をしてくれるのですが、ヤンさんはまず「言い訳どうぞ~」と聞いてくれます。Nさん、個人的に大変なことがあり、練習不足で覚えきれなかったそうです。日々の生活の中で介護や子育てなど諸事情があるでしょう。人それぞれ大変なこともあるかと思いますが、語る時間は現実逃避して、自分のために、ひいては子ども達のために練習しましょう。

練習をしているときは集中して、自分もおはなしの世界に入れますよね。私は毎年胃カメラを受けるとき、苦痛から少しでも逃れたくて、おはなしを心の中で語っています。そうすると、時間が経つのが早く、我慢できます・・・ジミーさん的に言うと、そんなことはどうでもよい。(笑)

本題に戻ります。の町には、大きな暗い門があって、お姫さまは、朝に夕にその門を通って、がちょうたちを野原へ連れて行くのでした』

ストーリーの中にある説明文ですので、そのことを意識して語りましょう。また、「大きな暗い門」、がちょう番の娘が通るたびに話しかける、ファラダの首が打ちつけられている重要な門ですが、皆さんはどんな門を想像していますか?

「グリム童話 メルヘン街道(グリム兄弟が書いた童話の足跡をだどれる全長約600kmの街道)」と検索してみてください。ブレーメンの音楽隊やオオカミと七ひきの子ヤギが舞台の街並み、まりを抱えたかえる、いばら姫やラプンツェルの古城などが画像で確認できます。

また、語るためのグリム童話シリーズ(小峰書店)の挿絵を手掛けた、『オットー・ウベローデ グリム童話全挿絵集/古今社』も参照し、イメージを膨らませてみましょう。

『ガチョウ番の娘は、ストーブから出され、お姫さまの着る着物を着せられました。その美しさは、まばゆいばかりでした。』

この場面は正体が現れた、自分のあるべき姿に戻った瞬間ですので、心を込めて語りましょう。

年とった王さまが腰元に「それはおまえのことだ。おまえは自分に対して裁きを言い渡したのだ。その通りにしてやろう」の言葉は、怒りを込めて語ると残虐的になるので、淡々と語るほうがいいとのアドバイスでした。ヤンさんは悲しみを込めているそうです。

ストーリーは長くて重いです。最後まで緊張感を持って語る必要がありますので、言葉は間違えず、寝ても言えるようにしましょう。

ヤンさんの経験からは、男の子主導ではなく、女の子がしっかりしたクラスなら5年生の3学期からでも語れるとのことです。

②ヘンゼルとグレーテル 『語るためのグリム童話1』/小峰書店

ジェニィが語りました。言葉は入っていましたが、完成度の低い語りでした。全体的に淡々となり、盛り上がりもなく、音読のような感じだったかと思います。これでは子ども達の心に響きませんね。

このおはなしは一回目は小石を拾い、道に落として、無事家にたどり着き、2回目はパンを道にまき、小鳥が食べてしまって道が分からず、お菓子の家にたどりつきます。繰り返しではありませんので、同じ言葉にはなっていません。

例えば、子ども達は目を覚ましていて⇔子ども達は起きていて、親たちが寝てしまうと⇔親たちが眠ってしまうと、もう夜になっていて⇔もう夜で、細かな言葉も気になり、自分の中でどんな風に語ればいいのか分からないまま発表してしまいました。

ヤンさんからのアドバイスとして、急いで正解を求めようとせず、色んな言い方で練習をするとよい、何度も練習しているうちに、自分の中でこれだ!と決まってくるそうです。勉強会で語るときは、このレベルまで持ってきてください、と先月も言われていたのに・・・

語っていて楽しい要素が沢山あるのに、細かな言葉にとらわれて、私自身が楽しめていませんでした。

③ヤギとライオン 『子どもに聞かせる世界の民話』/実業之日本社

「ほら、こんな歌ですよ」や「おいしい肉って何のことかわかりますか。」とあるように、聞き手と語り手の間で楽しむおはなしですね。聞かせようとは思わず、肩の力を抜いて語るといいそうです。ただし、ヤギとライオンの立場が逆転していくことを意識することが大切です。

最初のライオンの歌は、ヤギが聞いて怖い(暗い)イメージで歌ってみましょう。一番最後は「ものすごい早口で歌いつづけました」となっていますので、早口で一気に、歌い終わったあとは息が「ハアハア」と出てしまっても構わないそうです。

語り方のアドバイスとして、最初から最後まで同じリズムではなく、まとまりで捉えましょう。例えば、冒頭の場面、

①ある日、ヤギが夕立にあってずぶぬれになりました。②頭からも角からも雨がざあざあたれています。

③ライオンが窓からずぶぬれのヤギを見ました。ライオンはヤギに、

②は①の文を説明しているので、間を短くし、続けて語るほうがいいです。逆に③は場面が変わるので、少し間をとるといいでしょう。

2年生に語られる予定だそうで、2年ならストーリーは理解できるので、テンポよく語りましょう。学年を変えて語ってみると、感じ方の違いがよく分かるそうです。その学年で一番うけたときの語り方を覚えておくといいですね。

個人的な都合で、来月からのブログはジミーさんにバトンタッチさせてもらいます。約3年間、拙い文章にお付き合いいただき、ありがとうございました。

明日は「語りの森のzoomによる語りの会・日常語の巻」がありますね。日常語の語り、聞いているとほんわかした気持ちになります。楽しみです♪

5月度 中級クラス

今月の中級クラスは緊急事態宣言が発令中で図書館が閉館のため、zoomでの勉強会となりました。幸い中級クラスの参加者は全員zoomを利用できるため、開催できました。過去にzoomでおはなし会や語法の勉強会はありましたが、通常クラスの勉強会では初めてでした。

語りの発表の前に、ヤンさんから一言。「zoomのため、いつものような音声に関するコメントはできないかもしれない。そのうえで『理想の語り』をしてください。」

『理想の語り』とは・・・家での練習時、子ども達にはこんな反応をして欲しい、だからこんな語りをするんだ、とイメージしているかと思います。本番で思った通りの反応があった場合は、練習が完璧であったということでしょう。そんな語りのことです。ですから「やっと覚えた」ではなく、本番と同じ語りですね。

では、報告です。

(語り)

①ホットケーキ 『おはなしのろうそく18』/東京子ども図書館

累積譚で、ホットケーキが逃げ出し、おじさんやメンドリなど次々に出会いますが、その時の言葉が少しずつ違います。間違えないよう、そして楽しく語れるよう意識されました。

7人の子どもたちが順番に「ねえ、〇〇〇なお母さん」と言う場面、聞いている子ども達は何度もしつこいと思うだろうと軽く語られました。ヤンさんからは、子どもがおねだりするときの言い方をイメージして、自分が一番に食べたい気持ちを込めて語るとよい、とのアドバイスでした。

最後にホットケーキがブタに食べられて可哀想だ、と子ども達が思わないように語ることが大切です。そのためには、ブタが登場するところから、上手く間を取りながら「何か違うぞ」と子ども達に意識させる必要があります。「ブタがホットケーキをだましている」と感じてもらうと、ブタがホットケーキを食べたときは、思っていた通り「食べられた!」(予想が当たった!)と大いに喜ぶでしょう。

②金の鳥 『語るためのグリム童話3』/小峰書店

城とお城と二通りの言い方がでてきているので、統一されました。

「かわりに金の羽が一枚落ちてきました」とありますが、「鳥が落ちてくるかわりに金の羽が一枚落ちてきました」のように、言葉が省略されている文は、付け足した方がいいのでは?と質問されました。ストーリーは理解できるので不要、ただし、言葉は省いていますが、語り手は情景をしっかりイメージして語らなければなりません。

同じように、接続語も入れた方いいのでは?と質問がありましたが、耳で聞くときは、出来るだけ省くほうがいいです。特にこのおはなしのように長い場合は、ストーリーをどんどん前に進めていくためにも不要です。

テキスト→わたしのしっぽに乗ってください。そのほうがはやく村に行けますから語り→わたしのしっぽに乗ってください。そのほうが村にはやく行けますから

テキスト→ため息をついていると、目の前にきつねが現れていいました。        語り→ため息をついていると、きつねが目の前に現れていいました。

テキスト→だから、あなたはやすやすと馬を引きだすことができるでしょう。    語り→だから、あなたは馬をやすやすと引きだすことができるでしょう。

のように、間違って言葉を逆にして語られていました。その文が誰の視点でみているかは重要であり、よって逆になってはいけないのです。ただストーリーを伝えるのではなく、聞き手は心で聞いているので、イメージが自然に入っていくよう、どの言葉を立てるか、意識して語ることが大切です。

語り方のアドバイスとして、

〇きつねのキャラクターは軽く、明るく。

〇3回の繰り返し 「髪の毛が風になりました。」は軽やかに。丁寧に語る必要なし。

〇末の王子が失敗する度に言う、きつね(援助者)からの言葉(贈り物)の繰り返し 「あなたはいくら言ってもだめですね」はお母さんが子どもに怒っているときのように、真剣に語る必要はない。

③舌切りすずめ 『日本の昔話2』/福音館書店

ばあさまが自分のことを「おれ」や「わたし」と言い方が違っていたので、統一されました。自分の語りやすいほうにしてよい、とのことです。

ちょんこを探しにいく場面で、じいさまのときは主語と述語が書かれていますが、ばあさまのときは省かれて、会話文だけになっています。じいさまのときは子ども達にストーリーをしっかり理解してもらうよう、きちんと書かれています。後半は同じことの繰り返しと分かっており、それよりも、ばあさまがどうやってやっつけられるのかを知りたいので、ストーリーを前に進めるよう省いています。Hさんは主語述語を付け足そうとしましたが、不要です。

また、機織り機の音「キーッカッカン、トントン、」と書かれていますが、どのように語るかは動画で本物を確認し、リズムを再現するといいでしょう。

④マーシャとくま 同名絵本/福音館書店

大好きな絵本だが、読み聞かせには向いていない(絵に対し、文章量が多いため)ので、語りで子ども達に伝えたいと思い、このおはなしを選ばれたそうです。

テキストに手を入れたほうが良いところとして、

「切りかぶに こしかけて、 まんじゅうをたべよう!」・・・(くまの視点)

すると、つづらのなかから、マーシャがいいました。・・・(マーシャの視点) →すると、マーシャがつづらのなかから、いいました。

視点がくまからマーシャに変わるので、マーシャを先にもってきたほうがいいでしょう。

「見えるわ 見えるわ! 切りかぶに こしかけちゃ いけないわ。~」はマーシャは本当はつづらのなかにいますが、遠くから見て言っているように意識するといいでしょう。

⑤ジャックと豆の木 『語りの森昔話集1』/語りの森

覚えやすく、楽しみながら練習できたそうです。20分と長いおはなしですが、子ども達はよく聞いてくれますね。2年生に語られる予定です。

語り方のアドバイスとして、

〇3回の繰り返し 「ふん ふん 生きている人間の血のにおいがする~」は、練習の時は普通でよいが、本番では子ども達の様子を見ながら、面白がって怖がらせるような気持ちで語るといいでしょう。ただし、わざとらしくではなく、ストーリーが怖いので、本気で怖がらせてはいけません。1回目は説明するよう丁寧に、2回目は軽く、3回目は力を入れましょう。

〇最後は、ジャックが大男から逃げるスリリングな展開ですが、子ども達の反応を見ながら、ストーリーについてきていない子どもがいれば、スピードを落として語りましょう。ついてきているのであれば、早口気味にどんどん前に進めましょう。そのためにも、寝ても言えるぐらい言葉はしっかりと覚えなければいけません。

最後の場面はジャック、大男、お母さんと短時間で視点が次々と変わります。視点が切り替わることで、子ども達はジャックが大男に捕まるかもしれない、とよりスリリングを感じることができるのでしょう。

⑥ものをいうたまご 『語りの森昔話集4』/語りの森

原話も確認してイメージを膨らませられた、完成度の高い語りでした。ヤンさんは幼稚園でも語ったことがあるそうですが、イメージしづらい場面があり、1,2年生向きとのことです。

途中で一人の方の画像が見えなくなったりもしましたが、大きなトラブルもなく、無事終わりました。今回図書館が利用できないと分かったとき、勉強会をなしにするか、zoomでするか、ヤンさんは悩まれました。zoomの場合、ヤンさんは通常より労力を使われ、大変かと思います。が、参加者からはオンラインでも勉強会をしてもらえるのは有難いと言われていました。次回は6月15日、図書館でできるか分かりませんが、継続は力なり!オンラインでつながりながら、頑張りましょう。

4月度 中級クラス

コロナの変異株が猛威を振るい、緊急事態宣言も発令されましたね。息子達の学校では行事が次々と延期になり、高校は時差登校になりました。そして、このブログを書いている最中に、図書館が明後日から5月11日まで休館との連絡がありました(><)

さて、火曜にありました中級クラスの報告です。いつもより少ない11名での勉強会となりました。

♬手遊び ぎおんの夜桜パッと咲いた~♬

(語り)

①金の子牛 『語りの森昔話集2 ねむりねっこ』/語りの森

イタリアの昔話です。父親が、自分が死んだあと何を残してほしいかと三人の娘に聞きます。上の二人の娘は百スクーディのお金を、末の娘二コリーナは父親からの祝福を希望します。二人の姉さんは祝福をもらった二コリーナを妬み、王子に嘘をついて懲らしめようとします。二コリーナは、王子に魔法使いから金のカナリア、金の毛布、金の子牛をぬすんでくるようにと言いつけられます。援助者のおじいさんに助けられ、課題を成し遂げた二コリーナは王子と結婚するというおはなしです。

用事があり退出されたので、講評はありませんでした。残念・・・

②黄泉平坂 『語りの森HP』

今回、ヤンさんから語り癖を指摘されました。皆さんは自分の語り癖を分かっていますか?練習のとき、自分の語りを録音して聞いているのですが、全く気づきませんでした。助詞を強調しているときがあるそうです。(再度録音した自分の語りを聞くと、気になりました。癖ですので、口にしみついており、意識して直さなければ、ついついそのままになってしまいます。)

語り癖がない人はいませんし、その癖がその人の語りになります。が、自分の癖を意識して語るのと、知らずして語るのでは違います。癖を全くなくす必要はないそうですが、おはなしによって、その癖を出さないようにした方がよいときもあるそうです。

③がまんの石と刀 『子どもに語る トルコの昔話』/こぐま社

以前初級クラスでこのおはなしを語られているのですが、その時は初級クラスは手を入れないというルールのもと、ほぼそのままのテキストで語られました。今回覚え直していると、気になるところが多々出てきたため、何か所も手を入れられました。しかし、手を入れた文に気をとられ、練習不足もあってか、ストーリーを楽しめないままでの発表になってしまいました。

テキストに手を入れる前に

1、そのままで語れるか考える。 2、どうしても無理な場合は、文ごと変えるのではなく、2、3語付け足して(削除して)みる。

手を入れるときに大切はことは、「何度も口に出して、自分の耳で聴いて確認する」です。文を見ているだけでは読んでいることになり、聞き手の立場で考えなければなりません。

また、翻訳者の世界観があるので、その世界が崩れないよう変える必要があります。例えば、このおはなしには「若者が自分のことを召使などというので、悲しくてたまりませんでした。それでもやっと気を静めて言いました」とあります。昔話は心情表現をあまりしないという点から、Yさんは削除しましたが、他にも心情表現が沢山出てくるので、削除しない方がいいとのアドバイスでした。

先輩方にテキストに手を入れることについてお聞きしたところ、

〇基本的に最初から変えない。何度も語って、どうしても納得のいかない部分だけ変える。

〇(語法的に間違っていないと)自信のあるところだけ変える。手を入れなくて済むテキストを選ぶ。自分が好きなおはなしでも、語れるテキストかどうかを見極める。

と言われており、安易に手を入れるべきではない、テキスト選びが重要であるか、また再話との違いを再認識しました。

④おおかみと七ひきの子やぎ 『語るためのグリム童話1』/小峰書店

小学校1年生に語る予定で、「小間物屋」や「石灰」を言い換えたほうがいいのか、と質問がありましたが、そのままでいいとのことです。子ども達から質問があったときは、「お店」や「薬」と答えてあげましょう。

語り方のアドバイスとして、七ひきの子やぎ達が隠れる場面では

子ども達はどこに隠れるか知らないので、淡々と語らず、微妙な(わざとらしくではありません)間をとって語りましょう。しっかりとイメージを持つと、かくれんぼをする面白さが出てきて、子ども達は喜ぶそうです。

微妙な間とは、、、ヤンさんが少し実演してくれ、「なるほど~」と思ったのですが、自分が習得するには何度も子ども達に語る必要があると思いました。

⑤鷹のフィニストの羽 『語りの森昔話集3 しんぺいとうざ』/語りの森

3回の繰り返しが5セットも出てくるおはなしで、力を抜くことができず、最後まで語るのがしんどかったそうです。これはロシアの昔話ですが、ロシアはこのようにモチーフが重なり、次々と展開していく長いおはなしが多いそうです。グリムのように一つのテーマがあるわけではないので、聞き手(おはなしに聴き慣れ、展開を喜ぶ子ども達向け)を選ぶおはなしだそうです。

☆ハエ打ちの勇者 『世界の民話18』/ぎょうせい(ヤンさんの語り)

毎年「子ども読書の日」に合わせて、年に一度中学校でおはなし会をさせてもらっています。今日、そのおはなし会がありましたが、1日でも遅ければ、中止になっていただろうと思います。私は「黄泉平坂」とあわせて「やまたのおろち」を語ってきました。日本の神話を知らない子がほとんどでしたが、真剣に耳を傾けてくれました。また、Aさんは3年生に「年とった栗毛の馬」(語りの森HP)を語られたのですが、自分が語りながら子ども達の聞いている世界に飲み込まれそうになったそうです。

図書館や学校でのおはなし会が再開された時には、思う存分おはなしの世界を楽しんでもらえるよう、今のうちに磨きをかけたいと改めて思いました。

 

3月度 中級クラス

桜が綺麗な季節になりましたね🌸3か月ぶりに中級クラスが開催されました。胃腸炎で数日寝込んでしまい、報告が遅れすみません(>_<)

♬手遊び やまごやいっけんありました~♬

(語り)

①石になった狩人 『子どもに語る モンゴルの昔話』/こぐま社

白ヘビをトンビから助けたお礼に、世界中の鳥やけもののことばが分かる宝の石を手に入れたアンチンフー。そして、山が爆発して大洪水が起こることを、事前に知ったアンチンフーが村の人たちのために石になってしまうという、自己犠牲のおはなしです。心に響く、完成度の高い語りでした。

語り手さんは東北大震災を思い起こすので3月は語らないほうがいいのでは、と心配されていました。日本は自然災害が多い国であり、それを語ることも大切であり、アンチンフーの想いをのせて語ればいいのでは、とヤンさんよりコメントでした。

語り方のアドバイスとしては、ヘビ達が集まっている場面で「わたしたちの王さまが、あなたをお招きしています」のヘビ達の言葉と、アンチンフーが助けた、小さな白ヘビの言葉は雰囲気を変えて語るといいでしょう。また、後半のアンチンフーが村人たちに大洪水が起こることを知らせていく場面から、最後まで同じ調子にならないよう意識しましょう。一番の盛り上がりはアンチンフーが石になってしまうところです。

②イワンの夢 『アファナーシエフ ロシアの民話下』/岩波書店

私が語ったのですが、テキストへの手の入れ方に悩みました。「手を入れる」とは、テキストを活かしながら、意味が理解できない場合は文を加えたり、削除したりするのです。自分のイメージで勝手に変えてはいけないのです。

このおはなしの原題は「正夢」です。イワンは見た夢のはなしをせず、父親に柱にしばりつけられ、それを助けてくれた王子にも夢のはなしをしないため、牢屋に入れられてしまいます。けれど、エレーナ姫と結婚したい王子を手助けし、無事エレーナ姫と結婚させ、イワンも富を手に入れます。

王子はエレーナ姫と結婚をするために、3つの課題をクリアしなければいけません。1回目と2回目は『エレーナ姫に届くものと、そっくり対になるものを持ってきてください。』と課題の内容を言うのですが、3回目は何も言いません。3回目が一番重要ですので、何も言わないままでいいのかと気になりましたが、子ども達は繰り返しをよくわかっているので問題ないとのことでした。

③雌牛のブーコラ 『語りの森昔話集4』/語りの森

幼稚園で語りたいと思い覚えられたそうです。

男の子がブーコラを呼ぶ3回の繰り返し、

1回目→はるか遠くで、かすかに、モウとひと声

2回目→さっきよりずっと近くで、モウ

3回目→岩山のすぐ下で、モウと、大きな声がしました。

小さい子どもは言葉だけでイメージしにくこともあるので、極端にする必要はありませんが、声の大きさを変えた方がいいでしょう。

トロル女が追いかけてくる場面は、逃げているイメージをしっかり持ち、言葉が途切れないよう意識されたそうです。自分は一歩先をイメージして語ると、より緊迫感がでてくるそうです。

お弁当を3回食べる場面は子ども達が「またか!」と喜ばれるそうですよ。

④屋敷こびと 『子どもに語る 北欧の昔話』/こぐま社

ご主人⇔主人、こびとにスープを⇔スープをこびとに、など統一されていない言葉をそろえられました。

テキストに手を入れたほうがよい例として、「〇〇〇」と言いました。「〇〇〇」のように、翻訳調になっているときは、語りにくいので会話文と会話文の間の言葉を削除するか、会話文の前にもってくるといいでしょう。このおはなしの中では、

「出ていけ!この役立たずめ!」と、主人はどなりました。「だが、おまえはこれで・・・」⇒主人はどなりました。「出ていけ!この役立たずめ!だが、おまえはこれで・・・」

となります。

このおはなしを読んだときは「面白いし、語りたい!」と思ったそうですが、時間が経つにつれ、また、覚え始めるとその気持ちが薄れてきてしまったそうです。しかし、最初に面白いを思ったときに気持ちを大切にして語ると、会話文は生き生きしてきますよ、とヤンさんよりアドバイスでした。

⑤ヘンゼルとグレーテル 『語るためのグリム童話1』/小峰書店

そのままのテキストでは長く、不要な部分が多く語りにくいためヤンさんが整理されたテキストに、さらに手を入れられました。

2回目にお父さんとお母さんがヘンゼルとグレーテルを捨てにいく話をしている場面で、『お父さんは、心が重くなりましたが、最初の時、お母さんのいいなりになったので、今度もそうするよりほかありませんでした。』と書かれていますが、昔話は内面を表しませんので、削除しましょう。

最後のお父さんとの再会の場面、喜び過ぎず語るほうが子ども達にはストーリーが届くので気を付けましょう。

「まま母」に関してはヤンさんが「昔話の解釈ー白雪姫」のブログで詳しく説明されているので、ぜひ参照にしてください。こちら⇒

☆ちいちゃい、ちいちゃい 『イギリスとアイルランドの昔話』/福音館書店(ヤンさんの語り)

小学校のおはなし会で語る予定にしている私にとって、聞けてラッキーでした。最後はどうなるか分かっているのに、いつ聞いてもドキドキして、楽しいです(笑)

我が子の中学校と小学校の卒業式にいってきたのですが、どちらも今までとは違った形での開催でした。中学校は保護者は一人だけの参加(ユーチューブで式の様子を配信)、在校生不在、合唱はなく、来賓も一人だけ、式辞や挨拶には「コロナ」という言葉が何度も出てきました。式が終わっても保護者は教室に行けず、クラスでの写真撮影がないなど、寂しい感じでしたが、これも仕方ありませんね。

さあ、気持ちを切り替えて、新年度です!4月から7月までは毎月のクラス&語法の勉強会がありますので、どんどん新しいおはなしに挑戦したいと思います。