「児童文学を読む」カテゴリーアーカイブ

魔女がやってきた!🧙‍♀️

『魔女がやってきた!』
マーガレット・マーヒー作 尾崎愛子訳 はたこうしろう絵
徳間書店

わたし、マーガレット・マーヒーのファンなんです。
『足音がやってくる』『めざめれば魔女』『贈り物は宇宙のカタログ』『クリスマスの魔術師』などなど
翻訳が出るのを待って夢中で読みましたね。
「魔法使いのチョコレートケーキ」「葉っぱの魔法」は覚えました。子どもたちに語るチャンスはなかったけど。

そのマーヒーの、魔女の出てくる短編を5話集めた本がこれです。
しかも、挿絵が、大好きなはたこうしろうさん!
これは買わんわけにはいかんでしょ╰(*°▽°*)╯

どの話も、とっても楽しいです。
一番好きなのは「魔女のお医者さん」
サビナみたいな美しくて強い魔女になりた~い。

3年生の孫に送ります。

 

 

風がはこんだ物語🐎

ジル・ルイス文/ジョー・ウィーヴァ―絵/さくまゆみこ訳/あすなろ書房

世界じゅうにたくさんの難民たちがいる。
平和の祭典であるオリンピックでもそれを思い知らされました。

この絵本に描かれているのは、故障してしまったボートで海を漂う人たち。
幼い子ども二人を抱きかかえている夫婦。
小さな白い犬を抱いた老人。
おとなになりかけの暗い影を顔にやどした二人の若者。
そして、胸に長いケースをかかえた、主人公の少年。
たまたま同じボートにのりあわせただけの、おたがいに見知らぬ人たちです。

戦争や紛争のために、日常を追われて逃げて来た人たちです。
ひとりひとりがその日常をぽつりぽつり語ります。

主人公の少年は、ケースを開けてヴァイオリンを取り出します。
そして、弾きながら、スーホの白馬の物語を語ります。
それは、自由の物語。

11月に赤羽末吉の勉強会をするんだけど、これは、その準備をしていて見つけた絵本なんです。
モンゴルの昔話「スーホの白い馬」の、がっつり深い解釈とでもいうのかしら。

8月15日、敗戦の日に、戦争はぜったい嫌!とのメッセージとして紹介しました。

 

ロンドン・アイの謎

シヴォーン・ダウト著 越前敏弥訳 東京創元社 2022年

ロンドンには、1周30分かかる観覧車がある。ロンドン・アイっていうんだって。
それにサリムという少年が乗り込んだんだけど、30分後、その子は下りてこなかった。
本格ミステリーです。

この謎を解く主人公は、サリムのいとこの12歳の少年テッド。
テッドは本人言うところの「症候群」のせいで、頭脳の働きがほかの人とは違っています。
人の感情を読み取るのが苦手。それで、日々とまどったり、友だちができなかったり、家族とうまくいかなかったりするのですが、ひたすら誠実に、自分に正直に生きています。

テッドは、ものすごいこだわりを持って、この失踪事件を解決しようとします。
彼の頭脳は、びっくりするほど明晰です。
彼を取り巻く人々、姉のカット、両親、サリムの両親の想いや行動が生き生きとリアルに描かれていて、読みごたえがあります。

ラストは、危機一髪でサリムの命が救われます。

いま、その続編の『グッゲンハイムの謎』を読んでます。
読む本があるのは、いそがしいけど、し・あ・わ・せ!

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今日のホームページ更新は《日本の昔話》「山の神と童子」。
日本のはなしにしては15分と、けっこう長いです。
語ってくださいね~

 

死の森の犬たち🐶

アンソニー・マゴーワン作 尾崎愛子訳 岩波書店 2024年

『荒野にヒバリをさがして』でカーネギー賞を受賞したアンソニー・マゴーワンの作品です。⇒こちら

表紙絵の背景に見えているのは、チェルノブイリ原発です。
1986年、ウクライナのチェルノブイリ原発が大事故を起こしたとき、ニュースで聞いて震え上がったことを思い出します。
日本でも雨が降ったら放射能が降ってくるってうわさが駆け巡りました。

『死の森の犬たち』は、ナターシャの7歳の誕生日、真っ白で片目が青色、もう片方の目が茶色の子犬をもらうところから、物語が始まります。
ナターシャは、子犬がほしくてたまらなかったから、プレゼントしてもらって天にも昇る思いでした。
ゾーヤと名づけられたその子犬は、オオカミの血が混じっているということでした。

ちょうどその晩、原子力発電所が事故を起こします。
朝になると、ナターシャの村の人たちは全員、避難することになりました。動物を連れて行くことは禁止されていました。
ナターシャはリュックサックにこっそりゾーヤを入れて避難用のバスに乗り込みますが、兵隊に見つかってしまいました。
走り去るバスを追って、ちいさなゾーヤは走ります。
ナターシャは泣きながら見えなくなるまでその姿を追いました。

じきに村に帰れるはずだった人びとでしたが、放射能汚染は深刻でした。村を離れた人々が帰還することはなく、年月がたっていきます。

物語は、ゾーヤが成犬になり、母親になり、子どもたちを育てるという犬の人生(?)と、原発からの避難者だということでいじめられ差別されるナターシャの人生が、並行してつづられます。

人が住まなくなることで新しく原生林ができ、また、放射能のせいで動物の住めない赤い森ができます。
野生化した犬や家畜たちと、本来野生のおおかみたちとが、大自然の中で生きるために戦います。
まさに、手に汗握る・・・です。

後半は、なみだなくしては読めなたったです。
ふしぎな出会いが重なり、犬たちと人とをつなぎます。愛の物語です。

 

 

闇に願いを🕯️

『闇に願いを』
クリスティーナ・スーントーンヴァット作/こだまともこ・辻村万実訳/静山社/2024年3月

その都市は、大火で燃え尽きて闇が広がった。
そこへ、光を操る男があらわれ、総督となって、都市を復興させた。
総督は、人びとを火災から守るために、火を使うことを禁じた。そして、すべてのエネルギーは、総督の作り出した光の玉から発せられるようになった。
つまり、総督がすべてを支配したのだ。
総督は、法を作り、法のみが正義だと人々に信じさせた。

光の玉には、序列があって、貧しい人たちは弱い光の玉しか買えない。
だから、いつまでたっても貧しいままだ。

というような背景のもと、法を犯した母親から生まれた少年ポンが、刑務所から脱走するところから、話は始まります。
ファンタジーです。
つぎからつぎへと、手に汗にぎる事件が展開します。

どんなに絶対的な能力があっても、使い方次第で、世の中の役に立ったり世の中を滅ぼしたりする。
善良であれ。

テーマははっきりしていて、気持ちがいいです。
ただ、翻訳のせいかもともと原典がそうなのかわからないけど、言葉がちょっと軽いかな。それが残念。

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きょうのHP更新は、《日本の昔話》「阿波の清左衛門と京の古金屋伝兵衛」
語ってくださいね~