「昔話の本質と解釈」カテゴリーアーカイブ

昔話の主人公2👱‍♀️👱‍♂️

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第9章昔話の主人公ー昔話の描く人間像つづき

昔話は人間像を描き、それがどんな人間像なのか理解したうえで、子どもに語る必要がある、というのが前回のお話。
では、昔話にはどんな人間が主人公として登場するでしょう。

陽気で向こう見ずな男、じっとこらえる女、怠け者、狡猾で抜け目のない者、正直で開けっ放しな者、悪賢い者、何があってもびくともしない者、愚か者、やさしい親切な者、無慈悲で信用のおけない者、困難に出会うたびに座り込んで泣き出す者。
王女もいれば灰かぶりもいる。王子もいれば豚飼いもいる。
あまりにも多種多様。昔話は多様性の世界ですね( •̀ ω •́ )✧

さてここから人間像をどうやってとりだすことができるでしょう。

リュティさんによると、じつは、この人間たちは象徴に過ぎないというのです。
こういう人間たちがストーリーを紡ぐ。たとえば、一文無しが金持ちになる、女中が王妃になる、できものだらけの頭をした男が金髪の若者になる、ヒキガエルやクマや猿や犬が美しい娘や輝くばかりの若者に変わる。
それらは、人間を非本来的な在り方から本来的な在り方へ救い出すことを象徴しているというのです。

このストーリーを聞くとき、聞き手は、人間は変化することができるのだということを感じ取る。

「主人公は竜をやっつけて王女と結婚して王さまになりました」と語るとき、語り手も聞き手も、外面的な出来事だけを追っているのではありません。ストーリーに象徴されるものを感じ取っています。
人間は誰でも内なる王国を持っています。こうありたいという目標となるイメージです。王さまになるということは、それを実現することです。
王になるということは、全き自己の実現を象徴するものであるとリュティさんは言います。

だから、本格的な昔話を聞き終わったときの子どもの目が輝いているんだ。
言葉にするのは難しい「こうありたい」自分が、たくさんの課題や困難を乗り越えて目的に達する。大人だって嬉しいのに、子どもはどんなに幸せだろう。
たった20分や30分の話の中で、なんて充実した心の旅路なんだろう。
いままで、語り手として、わが子やたくさんの子どもたちと昔話を共有できたこと、幸せに思います。

みんな、がんばろうね(*^▽^*)

おっとっと。戻ります。

昔話では、王冠とか美しい衣装とかは、心の中で遂げられた高い完成からほとばしる光輝を、目に見える物で表したものなのです。それが昔話の表現方法。
「ホレばあさん」の娘が浴びる金は、娘の美しい魂の象徴。
娘が髪をとかすとダイヤモンドがこぼれるのも、象徴。
そんなん非科学的やということ自体が、昔話ではナンセンスなのです。

そう考えたとき、昔話が表す人間像が見えてきます。

引用
人間は自己を超えて成長しうる存在であり、最高のものへ至る芽をうちに孕(はら)み、その最高のものに到達することすらある存在である、というのが昔話に描かれている人間像である。

子どもは、そんなこと、頭では理解していないけれど、心では感じ取っているって。うん。賛成!
でね、美は心で感じる方が頭で理解するよりずっと大事なのだってo(*^@^*)o

はい、ここまで。
次回はもうひとつの人間像について。

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大きな台風、みなさまの被害が最小で済んでいればいいのですが・・・

昨日はホームページ更新の日。
《外国の昔話》と、ひさしぶりに《昔話雑学》を更新しました♪(´▽`)

 

 

昔話の主人公👱‍♀️👱‍♂️

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第9章昔話の主人公ー昔話の描く人間像

『昔話の本質』で取り上げてきた昔話、主人公は圧倒的に女性が多いのね。
いばら姫、お菓子で夫を作ったお姫さま、地の雌牛の女の子、ラプンツェル、謎解き姫、賢い百姓娘。ね?
リュティさんは、どうして女性が多いんだろうと考えこんではります(笑)

昔話全体を通じても、有名な主人公はほとんど女ではないかって。
いばら姫、灰かぶり、白雪姫、赤ずきん、ラプンツェル、千枚皮、ホレばあさん。
「ヘンゼルとグレーテル」「兄と妹」にしても、主役は女の子だって。
何とか思いつくのは「鉄のハンス」「親指太郎」。「勇ましい仕立て屋」「幸せハンス」なんかは笑い話だし。

でも、「金の鳥」「三本の金髪をもった悪魔」「三枚の鳥の羽」「命の水」「ハンスはりねずみぼうや」はどうだい?
ぱっと思いつく限りでも男いるよ、リュティさん~

ま、私の愚考はおいといてφ(* ̄0 ̄)

女の主人公が多い理由をリュティさんはこう考えています。
〇例えば代表的なグリム童話で、グリム兄弟に昔話を伝えたのはおおむね女性だった。今、子どもたちは主として母親、祖母、幼稚園や小学校の先生(女性が多い)を通じて昔話を聞く。つまり、語り手が圧倒的に女性が多いから。子どもにとっても、幼いころは母親や女性的なものを身近に感じる。
〇世界は男性によって規定されている。男性によって作り出された、世界を支配する技術や経済と均衡を取るために、より自然に近い女性が重要な役割を果たしている。

ううむ。そうかなあ(´・ω・`)?
たしかに今身近なところでは男性の語り手は少ないけど。日本の場合、伝承の語り手には男の人たくさんいたよねえ。
第一、日本の昔話だったら、男の主人公のほうが多いような気がする。
桃太郎、一寸法師、力太郎、浦島太郎。
それに、おじいさんのほうがおばあさんより多いよ?

ま、私の愚考はおいといてφ(* ̄0 ̄)

リュティさんも、時代によって差があると認めています。
時代や民族によるんでしょうね。
おもしろい課題です。

ただ、ひとつだけはっきりしているのは、昔話の中心には人間がいるっていうこと。動物昔話は別にしてね。

昔話は人間像を描く。
人間を世界との出会いにおいて示す。

うん、たしかに。
だから、子どもがどんな人間像を昔話から受け取っているかということをかんがえなくっちゃ

は~い。今日はここまでですよ~

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台風10号が日本に接近しています。
備えを十分に!!!

 

 

 

謎かけ姫6

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第8章謎かけ姫ー策略、諧謔、才智 ラスト

いろいろな謎話を見てきましたね。
本書に出てこなかった謎話もたくさんあります。
きっと、みなさんにも心当たりがおありでしょう。
《日本の昔話》で紹介している「化け物問答」も謎話ですね。

ストーリーそのものが謎だったりします。だから、昔話と謎は本質的に近い関係にあると、リュティさんは言います。
ロートリンゲンとかエーガーラント(どちらもドイツの国境地帯)とかの方言では、昔話と謎が同じ言葉だそうな。
昔話にも謎にも、秘密とか神秘のにおいがするし、同時に晴れやかな遊びにも見えます。どちらも、起源はまだわからないんだけど、存在の秘密をあかそうとする努力と美的な形成の喜びが、両者の成立に深くかかわっているようです。
昔話と謎は、世界中の民族で伝承されています。

昔話の中で謎をかけたり解いたりする人物は、お姫さまや百姓女に限りません。
賢い若者、ぼんくらな若者、王さま、羊飼い・・・
笑い話「ラ・レアールの修道院長」(こちら⇒)を見てください。
王さまの、たちの悪い謎に、羊飼いが天才的な答えを出します。
昔話では、目立たない者や軽んじられているものが、思いがけなく本当はたいへん値打ちがあるものです。うわべと中身が違っているのです。
その意味で、昔話の主人公の多くは、謎の人物です。
これは、社会批判とかではなくて、昔話の語り口、語法なのです。
「灰かぶり(シンデレラ)」は謎を地でいった謎かけ姫です。灰かぶりは、三度の舞踏会で、王子に、言葉ではなくて事実で謎をかけています。王子は、行為で謎を解いています。

創作文学の作者は、昔話に特別な魅力を感じてきたと、リュティさんは言います。
なかでも謎話はとくに愛された。
この章の最初に出てきたシラーだけでなく、たとえば、シェークスピア。
「ベニスの商人」のなかのポーシャ姫の謎、「ペリクリーズ」のなかのアンタイオカス王の謎。
民衆の中に広がっている昔話が、創作文学に影響を及ぼし、豊かにしているという面があるようです。リュティさんは、作家たちが昔話から力と励ましを汲みとっているといいます。

はい、おしまい。

次回は第9章昔話の主人公ー昔話の描く人間像 です。

 

謎かけ姫5+α

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第8章謎かけ姫ー策略、諧謔、才智 つづき

今度は、お姫さまが謎をかけるのではなく、お姫さまが解けないような謎を出したものと結婚するという話です。どんななぞでも解ける賢いお姫さまの話。

これはたくさん類話があってね、昨日更新した《外国の昔話》「なぞなぞの好きなお姫さま」もそうだし、グリム童話KHM22「謎」もそうです。
ATU851「謎を解けない姫」で調べてみてね。
で、リュティさんは本書でフランスのしゃれた類話を紹介しています。
こういうのです。

「王女が三日かかっても解けない謎を出したものを夫にする。ただし、王女が謎を解いたら、謎を出したものは命を失う」というお触れが出ます。
王女は赤い服、金の冠、額にはダイヤモンド、手に白い棒。
城の周りには犠牲者の骸骨がずらり。

ブルターニュにケルブリニックという若い貴族がいて、王女のなぞを解きに出かける。
母親は、行かせたくなかったのに、どうしても行くというものだから、強い毒の入った飲み物を息子に持たせる。
ほら~、毒入りだよん。(「なぞなぞの好きなお姫さま」の解説を見てね。こちら⇒
ケルブリニックは、とちゅうでプチ・ジャンという抜け目のない兵士と道連れになる。
プチ・ジャンは毒に気が付き、飲み物を二人の馬の耳に注ぎ込む。
馬たちは倒れて死ぬ。
馬の肉をついばんだ4羽のカササギも毒に当たって死ぬ。
プチ・ジャンは、途中の村で、カササギの肉を入れたお菓子を8個作らせる。
それを持って旅を続け、森の16人の盗賊に晩飯に招待される。おれいにカササギ入りのお菓子を提供する。
盗賊たちはぶっ倒れる。

プチ・ジャンは、これを謎にするわけです。
「家を出たとき、私たちは四つでした。
四つのうち二つが死にました。
その二つから四つが死にました。
その四つから八つを作りました。
その八つから十六が死にました。
今はまた四つになって私たちはあなたのところに突きました。」

この謎を、ケルブリニックは、必死で覚えながらお城へ向かうのです。

かなり長くて笑いどころが満載。
リュティさんは、フランスの昔話は風刺の味を好み、ドイツのようにひたむきでなく、ロシヤのように原初的でもない。粋なところがあるかと思うと、ある種の写実的な表現もあると言います。興味深いですね~

それはさておき、この類話、たくさんあるけど、共通点があるそうです。
それは、謎が話の筋からできていること

主人公は、解決の方法も知らないで出かけていくんですね。
すると、ひとりでに謎が出来上がる。
つまり、ストーリーを重んじる昔話は、謎さえもストーリーから生まれる。

なるほど。確かに、これは面白い。
はい、今日はここまで。
つぎは、昔話と謎の関係です。

ところで、前回の宿題の答え、分りましたか?
オーストリアの「賢いお百姓の娘」
1、いちばん太っているものは何か?
2、いちばん美しいものは何か?
3、いちばん豊かなものは何か?
おっとっと、答えは来週月曜日HP更新で紹介することにしよう。
おもしろいから再話したのよ。

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おはなし会の報告
9月1日(火)
幼稚園5歳児 2クラス合同
ろうそくぱっ
おはなし「かきねの戸」
ろうそくぱっ
人数が多かったので力技だったけど、よう笑ってくれました~
笑いは大事!
感染予防をしっかりしてのおはなし会です。
わが市ではまだ新規感染者が出ているので、ほんと、勇気が要ります。
でも、語りが子どもに必要と考えてくださってるのが、泣きたいほどうれしいヾ(≧▽≦*)o

謎かけ姫4👸👸👸👸

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第8章謎かけ姫ー策略、諧謔、才智 つづき

トーランドット姫の出す三つの謎々は、内容的に宇宙の領域が関わっています。
前回のブログを見ていただくとわかるように、謎の答えが、太陽、海、年ですね。

謎といえば有名なのがスフィンクスの伝説。
スフィンクスは、顔が女性で体がライオンで翼がある怪物で、エジプトのテーベの近くに住んでいて、通り過ぎる人に謎をかけては、解けない者を殺していました。
そのなぞというのは、
「朝は四つ足、昼は二本足、夜は三本足で歩く動物は何か」
というもので、だれも答えられない。
あるとき、ギリシャのオイディプスが通りかかって、そのなぞを解き、スフィンクスをやっつけます。

え?
答え?
そう、人間。
赤ちゃんの時はハイハイで、大きくなると二足歩行で、年を取ると、つえをついて歩くから。

リュティさんは、伝説に対して、昔話は宇宙を相手にしているというのです。
例として、「賢い百姓娘」の類話をあげています。
二人の百姓が、畑とか牛とかを取り合っている。裁判官は、謎を解いたものを勝ちとする。
たとえば、こんな謎。
謎1、いちばん肥えているものは何か。
金持ちの答え:ベーコン
賢い娘の答え:大地
謎2、いちばん甘いものは何か。
金持ちの答え:はちみつ
賢い娘の答え:眠り
謎3、いちばん白いものは何か
金持ちの答え:牛乳
賢い娘の答え:太陽
謎4、いちばん高いものは何か
金持ちの答え:教会の塔
賢い娘の答え:星

でね、金持ちは自分の環境と所有するものの範囲を出ないんですね。
でも、賢い百姓娘は、宇宙全体を考えています。
これは笑い話ですが、笑い話ですら宇宙を語るのが昔話です。

「トーランドット」は個性のあるひとりの人間としてトーランドット姫を描いているけれど、昔話は役柄に過ぎないということを前回説明しました。
ここでも、リュティさんは、言います。
賢い百姓娘を実際の人間とばかり考える必要はない。貧しい百姓の魂と見なすこともできる。

さて、ここで、宿題です。
賢い百姓娘のオーストリアの類話にこんな謎があります。
答えを当ててください~q(≧▽≦q)

1、いちばん太っているものは何か?
2、いちばん美しいものは何か?
3、いちばん豊かなものは何か?

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暑いですねえ
雨が降っても、まるで梅雨時みたいにむしむしします。
熱中症に気をつけようね~

昨日のおはなしひろばは、「お姫さまとはらぺここびと」。
飛行機が出てきたり、とっても現代的なの。
グリムの「金のがちょう」のスイス版ですo(*^@^*)o