立ち止まって考える~京都大学オンライン公開講座🎊

先週土曜日から始まった、京都大学人社未来形発信ユニットのオンライン講座φ(* ̄0 ̄)
無料で、こんなすごい話が聞けるなんて~
みなさま、おすすめです!
こちら↓

【オンライン公開講義】“立ち止まって、考える”

えっと、哲学と、倫理学、環境史などなど、人文系の先生方の講義です。
人文っていったら、昔のイメージでは、机に座ってただ考えるだけの実際には役に立たない学問みたいに思うでしょ。
いやいや、そうじゃなくて、アフター・コロナも含めコロナ禍の今を生きる私たちに直接訴えかける学問なんですよ。

たとえば、オリエンテーションで、大学総長の山際寿一さんがね、人間を考えるには一千万年さかのぼって考えたほうがいいって。
それから、ゲストの安藤忠雄さんが、人生は一回限りなんだから、自分で考えて自分で行動しようよって。それって、日本人は苦手だけれど。

わたし、こういう考え方、好きだなあヾ(≧▽≦*)o

講義は、7月4日から8月8日まで。
一コマ約1時間。
ライブで聴けなくてもアーカイブがあるからOKですよ~

 

いばら姫~グリム兄弟の再話✨

『昔話の本質ーむかしむかしあるところに』マックス・リュティ著 報告

「いばら姫」ー昔話の意味と外形 つづき

前々回はテーマ、前回は材料について考えましたね。
今日は、文章についてです。
グリム兄弟が、死と復活というテーマを、世界のあらゆるものを材料に使って、どのように表現したかを考えるのが今日の目標。

グリム兄弟は、口伝えの資料をそのまま本に載せたのではなく、再話して本にしました。彼らの文学的センスをもとに再話したのです。

リュティ氏は、「発端」と「眠りから目覚め」の2か所を例に挙げて説明しています。

「発端」
きのう見た所ですね。冒頭から15歳になるまでの部分。
リュティ氏は、この部分を予言のモチーフでみたされているといいます。

*蛙が娘の誕生を予言する。
*占い女たちが、この子に、徳、美しさ、富などを予言する。
*13番目の女が、姫は15歳になったら死ぬと予言する。
聞き手はここで、はっと息をのみます。
*12番目の女が死の予言を百年の眠りに変える。
聞き手の緊張は和らぐけれども、すぐに、この予言は果たして実現されるのだろうか、実現されるとすればどういう具合に行われるだろうかと疑問が生まれる。
まことに劇的な発端です。

「眠りから目覚め」
姫がつむを刺して百年の眠りに落ちるとき、城のあらゆるものが眠りに落ちます。とても印象的な場面です。
また、姫が目を覚ますとき、全てのものが目を覚まします。この愉快な場面はいつまでも心に残ります。
(子どもたちに語ると、必ず、小僧をひっぱたこうとして手を振り上げる動作をする子がいます。その子たちは、たいてい目をつむっています)

この部分をエーレンベルク稿と七版で比較してみましょう。
エーレンベルク稿は、グリムが口伝えを聞き取ったときのメモ書きです。

エーレンベルク稿
「その瞬間に、王さまと宮廷の人たちも、みなもどってきて、城の中では、あらゆるものが眠りはじめました。壁のハエも眠りはじめたのです。」
七版
「ちょうどその時帰ってきた王さまとお妃も、おつきの人たちとともに眠りました。庭の馬も眠ったし、ブチの猟犬も眠りました。屋根の上の鳩も、壁の蠅も眠りました。台所でメラメラ燃えていた火もしずまり眠りこみました。焼肉はじゅうじゅういうのをやめ、料理人は何か失敗をした小僧をひっぱたこうとして手を振り上げたまま眠りました。お手伝いさんは羽をむしっていた黒い鶏を前に置いたまま眠りました。風も止まり、城の前の木々の葉も眠りました。あたりは静まりかえりました。」

ね、こんなに長くなってるんですよ。
壁のハエが眠ったことを、グリム兄弟は面白いと思ったのでしょう。想像を膨らませたのです。おかげて私たちは、城の中のあらゆる場所を見ることができます。

王子が城に入っていくところはこんなふうです。

エーレンベルク稿
王子さまは、お城の中へ入っていくと、の眠っている王女にキスをしました。すると、みんな、眠りから目を覚ましました。)」
七版
「王子は城の中へ入っていきました。庭では馬が眠っており、ブチの猟犬も眠っていました。屋根の上では鳩が小さな頭を羽の下に突っ込んで眠っています。建物の中へ入っていくと、蠅が壁で眠っていました。台所では、料理人が手を振り上げたまま眠っています。お手伝いさんは、黒い鶏を前に置いたまま眠っていました。王子はどんどん奥へ入っていきました。見ると、おつきの人たちがみな横になって眠っています。玉座では、王さまとお妃が眠っていました。」

王子が姫を見つけてキスをするところも、七版ではたいへん劇的になっています。
つぎは目覚める場面。

エーレンベルク稿
「すると、みんな、眠りから目を覚ましました。」
七版
「王様とお妃も目を覚ましました。おつきの人たちもみな目を覚まし、びっくりしてお互いに顔を見合わせました。庭の馬は立ち上がって身震いをしました。ブチの猟犬はとびあがってしっぽを振りました。屋根の上の鳩は小さな頭を羽の下から持ち上げ、辺りを見回して野原へ飛んでいきました。壁の蠅はまた動き出しました。台所では火が燃え上がり食べ物を煮始めました。焼肉はじゅうじゅう言い始めました。料理人は手を振り下ろして、小僧のほっぺたに一発食らわせました。小僧は大声をあげて泣きました。お手伝いさんは黒い鶏の羽をむしり終えました。」

この目覚めの場面、おもしろいですよね。
昔話は、本来、描写はしないでストーリーのみで進行しますね。
エーレンベルク稿ではそうでした。
ところが、グリム兄弟は、「いばら姫」のこの「眠りから目覚め」の部分で情景描写を入れたのです。

この部分、リュティ氏は、こう説明しています。
生命が静止し突然また動き出す様を、いかにも面白おかしく描いて見せるが、まるで機械仕掛けのおもちゃが止まってしまったので、ぜんまいを巻いたらまたとことこ動き出したような感じがする。
そして、こう言います。
ふたりの愛はあたりの滑稽などたばた騒ぎにかくれて人知れず清らかに進行する。
まあ~、なんて素敵な解釈でしょヽ(✿゚▽゚)ノ
そして、この描写分は、グリム兄弟が思い切りふざけた部分で、あとは、またすぐに、口承本来の簡素な形に戻しているから、よしとしようとリュティ氏は、いっています。

はい、今日はここでおしまい。
次回はイタリアとフランスの「いばら姫」を読みます。

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今日は月曜、HP更新の日です。
《外国の昔話》を更新しました。
モンゴルの怪談話「知らない旅人」
子どもは恐い話が大好きですね。
でも、恐い話は、信頼する人から、安心できる環境で聞くから面白いんですね。
だから、おはなしひろばにはUPしません。
みなさん、覚えて語ってください(^∀^●)
来週からしばらく、HP更新は、夏に向けての恐い話特集をします。
お楽しみに~

 

いばら姫~含世界性☔

よく降りますね...{{{(>_<)}}}
台風でもないのに、またまた洪水や土砂崩れが起きています。
みなさまのところはご無事でしょうか(⊙_⊙;)

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『昔話の本質ーむかしむかしあるところに』報告

第1章いばら姫ー昔話の意味と外形つづき

前回の最後のところでは、恵みと脅しの極端な対比が書いてありました。
わたしたちが人生で出くわす色んなことには、確かに二面性がありますね。
昔話ではそれが象徴的に描かれているんだと思います。

今日は、昔話は短いけれども、「世界を包括している」ことについてです。
《昔話の語法》のページでは、含世界性という言葉で説明しています。こちら⇒
難しいから、ちょっとずつ進めますね。

「いばら姫」の発端部を見ていくとこんな具合です。
冒頭から姫が15歳になるまでの所で、何が描かれているでしょう。

動物(かえる)ー人間(王、お妃)ー(泉、城)
植物(木の葉、いばら)は、ストーリー進むと出てきますね。
これらは世界を構成している基本的なものです。

目に見える自然としての
ストーリーが進むと、(つむを燃やす)や(城が眠りに落ちるところ)もでてきます。

人間の世界は、子どもで代表される。

物でいえば、
働く日の物(つむ)と、祭りの日の物(金の皿)があります。

感情でいえば、
不足(子どもがいない)、あこがれ(子どもが欲しい)、苦しみ(子どもが生まれない)、喜び(子どもが生まれる)、驚き(13人目の女が入ってくる)、希望(12人目の女が贈り物をしていない)、辛さ(呪いを聞いた王)、短気(13人目の女)、復讐心(13人目の女)、同情(12人目の女)、悲しみ(呪いを聞いた王)。

行為でいえば、
失敗(13人目の女を招待しなかった)、声高い弁舌沈黙慰めの言葉

此岸(人間の世界)と彼岸の世界(予言するかえる、願や呪いをかける賢い女たち)。

こんなふうにして、「いばら姫」というたったひとつの話でも、その発端から、世界のあらゆるものが登場します。世界を包括し(ひっくるめて一つにまとめ)ようという意思が、昔話には働いているようです。

リュティ氏は、このことを、次のように言います。
昔話は小規模な宇宙である。

はい、おしまい。
次回は、グリム兄弟の再話法についてです。

 

 

いばら姫~恵みと脅し👸

『昔話の本質ーむかしむかしあるところに』(マックス・リュティ著)報告

第1章いばら姫ー昔話の意味と外形

昔話は、なんだ、おとぎばなしか!ってバカにされたり、わお、おとぎばなしみたい!ってほめられたり、評価が両極端です。
また、いわゆる教養のある大人は、昔話は子どものものって思ってるけど、すぐれた作家は昔話からインスピレーションを得て創作する。
そして、子どもって、昔話年齢(だいたい5歳~10歳くらい)のときは夢中になるけど、それを過ぎると、現実的な話を好むようになって、昔話なんて見向きもしなくなる。

受け入れ方にこういう両極端があるのことは、昔話の本質的な何かと関係があるんだと、リュティ氏はいいます。だから、しっかり考えていかなくてはならないと。

昔話が子どもの生活の中で演じている役割や、本のない時代に何千年ものあいだ演じてきた役割、それを考えると、昔話は、人間そのものにかかわる特別な文学だといいます。

そこで、「いばら姫」を読んで、昔話の根本的な特徴をいくつか取り出してみましょうというのが、この章の目的です。

++++++++++

「いばら姫」のストーリーは知ってることとして進めますね。
おぼろ~って人は完訳で読んでね。

まずテーマ
おお~、最初から、でましたね!

グリム兄弟は、この話は「古い神話のかけら」で、「人生と世界に対する太古の直感的な見かたが、かわいらしい姿で残ったもの」と考えたそうです。

でね、いばら姫は、素晴らしい才能を授けられるのに、死のような眠りに落とされ、でも目覚めて新たな盛りを迎えて(王子との結婚ね)同時に周囲の世界も栄える・・・これは、死と復活を物語っていると、リュティ氏は言います。
それがテーマなんだ(*^▽^*)

冬、死んだように横たわっている大地も春になると若々しく美しい新たな命に目覚める。そして、盛りの夏~実りの秋~眠りの冬~と、永遠に繰り返される自然。
人間を取り巻く自然界のすがた、それがテーマ。

と同時に、いばら姫は15歳で眠りに落ちますね。つまり、この年頃の少年少女は、精神的な危機に遭遇する。そして、いばらの垣根を自分のまわりにめぐらして閉じこもる。経験ありませんか?ところが、時が来ると目覚めて、新たな生活を始める。
つまり、成長期の人間のすがたが、テーマ。

すごいね、自然界と人間がオーバーラップしてる。
人間も自然の一部だから。

昔話の人物には固有名詞がない。つまり、ある個人じゃなくて、だれにでも起こりうることで、時間も特定されてないから、一度きりとは限らない。
引用
この話は一人の娘が才能を恵まれ、脅かされ、麻痺し、救われるところを描いているばかりでなく、それをあらゆる人間に通ずる問題として描いている。
そして、こんな経験は、人生で何度も起こる。
で、結末なんだけど、実人生では失敗で終わることもあるけれど、昔話は、
死の眠りのあとには一層力強い新たな命がよみがえり、孤独の後には新たな形の接触や連帯がうまれる、という信頼で(聞く人の心を)満たす。

テーマ、はっきりしましたね。

そして、「いばら姫」には「恵みと脅し」が、形を変えて繰り返し出てくる。
*賢い女の贈り物=祝福と呪い。
*王の城=いばら姫を守る天国であり、牢獄でもある。
*100年の眠り=この世からの追放であり、保護でもある。
*いばらの垣根=人(他の王子)を殺すし、すばらしい花も咲かせる。
特に、いばらの垣根はあらゆるものにしみとおっている死と復活の両極性を一番はっきり表していると言います。

はい、今日はこれでおしまい。
次回は、「いばら姫」の含世界性についてです。

 

 

文字が縦に書いてある書物📚

バレアス諸島に伝わる「この世の光」って素敵な話。
『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』に入れてあるんだけど。
何年か前にここでも話題になったんだけどね。
文字が縦に書いてある聖なる書物っていったいなんだろうって。

幽霊は、それを読まなかったがために幽霊になったのよね。

民族学博物館まで文字を調べに行った。

で、先日「この世の光」を語ってくれたババ・ヤガーのメンバーが情報をくださいました。
トルコ系のウイグル文字が似ているんじゃないかと。
ウイグル文字が主に使われれたのは西ウイグル王国の時代(9~13世紀)。
確かに縦書きなんだけど、版図が中央アジアなのね。
天山山脈の南側。
まてよ。ということは、シルクロード!
ローマに通じる道!
ローマまで来たら、地中海を通ってバレアス諸島は目と鼻の先。
そのウイグル文字で書かれた本が渡った可能性はある。
たとえば『聖者伝』とか。仏典とか。
そしたら本と一緒に宗教も伝わるし、こっそり一部の人たちが信じ守ってきたという可能性はないかな。
はい。たんなる、想像です。でも、ファンタジック!

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