日別アーカイブ: 2020年8月7日

動物物語2🦊

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第6章動物物語ー自然民族の物語 つづき

前回、大きく強い動物が小さく弱い動物に一杯食わされる話が、自然民族には多いということでした。
きょうもこのグループの話で、チリのアラウカニア族が伝えている話を読みます。

前回ちょっと紹介した大阪の昔話「たにしとたぬき」と似ています。(こちら⇒

でも、「たにしとたぬき」は笑い話なのに、チリの話はどう考えても笑えないことないですか?
自然民族では、このように、強いはずの動物が負けて、最後は殺されてしまう話が多いそうです。
同じく南米のはなしで、亀がジャガーを殺す話を紹介しています。

子亀がジャガーの爪を欲しがる。爪で遊びたいのだ。
親亀が、ジャガーの目の前で、とげのある高い木に登ってころがり落ちる。ケガひとつしない。
ジャガーは面白がって、自分でもやってみる。
ジャガーは、とげではらわたが裂けて死んだ。
カメの子はジャガーの爪で遊んだ。

インディアンの話は多く憂うつである。あるいはまことに苦い味がすると、リュティさんは書いています。

どうしてなのか、考えてみました。
最初にうかんだのは弱肉強食ということば。
自然界では、生きものは人間も含め、共生しているけれど、弱肉強食の世界です。
人間はその中で、弱者として生き延びないといけない。
殺すんじゃなくてただ逃げるという方法が、現実でしょう。
アブがきつねを殺す、亀がジャガーを殺すなんて現実にはあり得ない。
でも、昔話はファンタジーだし、極端に語ります。
聞き手はきっと、わらったと思うし、スカッとしたと思います。
じゃあ、現代人の私たちはどうかというと、ずいぶん自然から遠ざかっているから、この感覚が分からないんだと思います。
生活の土台が違うから、いっぽうでは笑い話なのに、いっぽうでは同じ話を憂うつ・苦いと感じるのではないでしょうか。
ジャガーがはらわたが裂けて死ぬのと、悪い母親がまっかに焼けた鉄のくつをはかされて死ぬまで踊らされるのと、感覚として、どう違うのでしょう。

ところで、「あぶと狐の駆け比べ」はATU275B「キツネとザリガニの競走」に分類されます。
かなり古くから広範囲に伝承されています。北欧を始めヨーロッパ全土、アジア、南北アメリカ、オセアニア、アフリカ。世界じゅうですね(笑)
ぜんぶ集めて結末がどうなってるかリストアップしたい!

さて次回は、動物は出てこなくって、人間の長い物語です。
とっても印象的な話なんだけど、また原話が分からない≡(▔﹏▔)≡

はい、おしまい。