日別アーカイブ: 2021年3月20日

昔話の解釈ー賢いグレーテル3👩‍🍳

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第4章「賢いグレーテル」つづき

笑い話について。
昔話を読んでいると、なんだか極端に愚かだったり、極端に残酷だったりして、いいのかなあと不思議に思うことありませんか?
「そんなことないやろ?」って思うこと、ありますよね。そういう場合、多くは笑い話なんですね。もしくは、笑うところ。

緊張からの解放、気楽さ、良心のやましさをちゃっかりごまかすこと、これが、笑話が私たちに提供するものである。

笑い話は、重荷を下ろしたような感じを抱かせてくれるし、高い理想とか難しい要求とかは何もないと、リュティさんはいいます。
落語とか漫才を聞いているときと同じですね。
笑いは、免疫力を高めるっていうけど、その秘密はここにあるんだ\( ̄︶ ̄*\))

昔話では、笑話は、素材がひとりでに展開していくような描きかたをする。もしくは、調子よく連鎖していくように語る。
そういう技法で作られているのね。
たしかに、『おはなしのろうそく』にのってるノルウェーの「ホットケーキ」や、イギリスの「おばあさんとぶた」などなど、そうですね。
連鎖譚とか累積譚ってよばれます。
累積譚については、こちら⇒《昔話雑学》

グリム童話83「幸せハンス」もそうです。
聞いてください。こちら⇒《おはなしひろば》
金のかたまり→馬→牛→ぶた→がちょう→砥石と、連鎖していきます。

「幸せハンス」は、グリム童話集の中で一番人気の高い笑い話だそうです。
終わり近く、ハンスとはさみとぎ屋の会話のなかで、連鎖をもう一度後ろから前へたどっていますね。語り手は、よっぽどこの連鎖を楽しみにしているらしいと、リュティさんは言います。
そうなんです。ここ、語るのとっても楽しいのです。子どもたちを巻き込んで、逆にたどる、その面白いこと!
で、語るときは、そのように語りましょうヾ(^▽^*)))
同じような構造は、「ありとこおろぎ」(こちら⇒)の終わり近く、「六匹のうさぎ」(こちら⇒)の動物たちがライオンに答えるところでも見られます。

それから、牛はミルクやバターチーズを提供してくれるし、豚はベーコンやソーセージがとれるし、がちょうは焼肉や脂が取れます。
つまり、「賢いグレーテル」でみたように、飲み食いの楽しみが原動力になっているのです。快適な生活一般への喜びが大きな役割を演じています。

さて、最後にハンスは無一文になりますね。
砥石を井戸の中に落としてしまいます。
失敗は無意識的な意図から起こる
ハンスは、砥石が重くて重くてたまらなかったんです。それでも、とっても慎重に井戸のへりに置きます。ところが、ちょっとすれただけで、石は井戸の中に落っこちるんですね。こんなうまいやり方でじゃまっけな石を始末してくれた神さまに、ハンスは感謝の祈りを捧げます。
無意識的な意図。昔話は、心理学より先に、このことを知っていたんですね。

ところで、かつて高学年この話を語ったとき、子どもたちが、「ハンスは本当に幸せだったのか」と議論し始めました(笑)
みなさんは、どう思われますか?
いっぽう、「幸せハンス」は、アンチメルヒェンだとも言われています。笑い話の多くがアンチメルヒェンだとも。
はい、次回はこのことについてお勉強します。

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いま、語りの森昔話集を編んでるところなんだけど、せっかくリュティさんから笑い話をお勉強しているんやから、それを意識して目次を組んでいます。
おはなし会のプログラムでも、これ、生かせますね。しっかりしたおはなしの後にばかばかしい笑い話をもってくる。集中の後には重荷を下ろしたような解放感が、必要なんですね。

私たちにとって理論は理論で終わらない。実践で確かめ、実践に生かす。
そのためのお勉強ですよ~

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きのうは、おはなしひろば、春らしく「佐渡のしろつばき」です。
聞いてくださいね~