日別アーカイブ: 2021年5月22日

5月度 中級クラス

今月の中級クラスは緊急事態宣言が発令中で図書館が閉館のため、zoomでの勉強会となりました。幸い中級クラスの参加者は全員zoomを利用できるため、開催できました。過去にzoomでおはなし会や語法の勉強会はありましたが、通常クラスの勉強会では初めてでした。

語りの発表の前に、ヤンさんから一言。「zoomのため、いつものような音声に関するコメントはできないかもしれない。そのうえで『理想の語り』をしてください。」

『理想の語り』とは・・・家での練習時、子ども達にはこんな反応をして欲しい、だからこんな語りをするんだ、とイメージしているかと思います。本番で思った通りの反応があった場合は、練習が完璧であったということでしょう。そんな語りのことです。ですから「やっと覚えた」ではなく、本番と同じ語りですね。

では、報告です。

(語り)

①ホットケーキ 『おはなしのろうそく18』/東京子ども図書館

累積譚で、ホットケーキが逃げ出し、おじさんやメンドリなど次々に出会いますが、その時の言葉が少しずつ違います。間違えないよう、そして楽しく語れるよう意識されました。

7人の子どもたちが順番に「ねえ、〇〇〇なお母さん」と言う場面、聞いている子ども達は何度もしつこいと思うだろうと軽く語られました。ヤンさんからは、子どもがおねだりするときの言い方をイメージして、自分が一番に食べたい気持ちを込めて語るとよい、とのアドバイスでした。

最後にホットケーキがブタに食べられて可哀想だ、と子ども達が思わないように語ることが大切です。そのためには、ブタが登場するところから、上手く間を取りながら「何か違うぞ」と子ども達に意識させる必要があります。「ブタがホットケーキをだましている」と感じてもらうと、ブタがホットケーキを食べたときは、思っていた通り「食べられた!」(予想が当たった!)と大いに喜ぶでしょう。

②金の鳥 『語るためのグリム童話3』/小峰書店

城とお城と二通りの言い方がでてきているので、統一されました。

「かわりに金の羽が一枚落ちてきました」とありますが、「鳥が落ちてくるかわりに金の羽が一枚落ちてきました」のように、言葉が省略されている文は、付け足した方がいいのでは?と質問されました。ストーリーは理解できるので不要、ただし、言葉は省いていますが、語り手は情景をしっかりイメージして語らなければなりません。

同じように、接続語も入れた方いいのでは?と質問がありましたが、耳で聞くときは、出来るだけ省くほうがいいです。特にこのおはなしのように長い場合は、ストーリーをどんどん前に進めていくためにも不要です。

テキスト→わたしのしっぽに乗ってください。そのほうがはやく村に行けますから語り→わたしのしっぽに乗ってください。そのほうが村にはやく行けますから

テキスト→ため息をついていると、目の前にきつねが現れていいました。        語り→ため息をついていると、きつねが目の前に現れていいました。

テキスト→だから、あなたはやすやすと馬を引きだすことができるでしょう。    語り→だから、あなたは馬をやすやすと引きだすことができるでしょう。

のように、間違って言葉を逆にして語られていました。その文が誰の視点でみているかは重要であり、よって逆になってはいけないのです。ただストーリーを伝えるのではなく、聞き手は心で聞いているので、イメージが自然に入っていくよう、どの言葉を立てるか、意識して語ることが大切です。

語り方のアドバイスとして、

〇きつねのキャラクターは軽く、明るく。

〇3回の繰り返し 「髪の毛が風になりました。」は軽やかに。丁寧に語る必要なし。

〇末の王子が失敗する度に言う、きつね(援助者)からの言葉(贈り物)の繰り返し 「あなたはいくら言ってもだめですね」はお母さんが子どもに怒っているときのように、真剣に語る必要はない。

③舌切りすずめ 『日本の昔話2』/福音館書店

ばあさまが自分のことを「おれ」や「わたし」と言い方が違っていたので、統一されました。自分の語りやすいほうにしてよい、とのことです。

ちょんこを探しにいく場面で、じいさまのときは主語と述語が書かれていますが、ばあさまのときは省かれて、会話文だけになっています。じいさまのときは子ども達にストーリーをしっかり理解してもらうよう、きちんと書かれています。後半は同じことの繰り返しと分かっており、それよりも、ばあさまがどうやってやっつけられるのかを知りたいので、ストーリーを前に進めるよう省いています。Hさんは主語述語を付け足そうとしましたが、不要です。

また、機織り機の音「キーッカッカン、トントン、」と書かれていますが、どのように語るかは動画で本物を確認し、リズムを再現するといいでしょう。

④マーシャとくま 同名絵本/福音館書店

大好きな絵本だが、読み聞かせには向いていない(絵に対し、文章量が多いため)ので、語りで子ども達に伝えたいと思い、このおはなしを選ばれたそうです。

テキストに手を入れたほうが良いところとして、

「切りかぶに こしかけて、 まんじゅうをたべよう!」・・・(くまの視点)

すると、つづらのなかから、マーシャがいいました。・・・(マーシャの視点) →すると、マーシャがつづらのなかから、いいました。

視点がくまからマーシャに変わるので、マーシャを先にもってきたほうがいいでしょう。

「見えるわ 見えるわ! 切りかぶに こしかけちゃ いけないわ。~」はマーシャは本当はつづらのなかにいますが、遠くから見て言っているように意識するといいでしょう。

⑤ジャックと豆の木 『語りの森昔話集1』/語りの森

覚えやすく、楽しみながら練習できたそうです。20分と長いおはなしですが、子ども達はよく聞いてくれますね。2年生に語られる予定です。

語り方のアドバイスとして、

〇3回の繰り返し 「ふん ふん 生きている人間の血のにおいがする~」は、練習の時は普通でよいが、本番では子ども達の様子を見ながら、面白がって怖がらせるような気持ちで語るといいでしょう。ただし、わざとらしくではなく、ストーリーが怖いので、本気で怖がらせてはいけません。1回目は説明するよう丁寧に、2回目は軽く、3回目は力を入れましょう。

〇最後は、ジャックが大男から逃げるスリリングな展開ですが、子ども達の反応を見ながら、ストーリーについてきていない子どもがいれば、スピードを落として語りましょう。ついてきているのであれば、早口気味にどんどん前に進めましょう。そのためにも、寝ても言えるぐらい言葉はしっかりと覚えなければいけません。

最後の場面はジャック、大男、お母さんと短時間で視点が次々と変わります。視点が切り替わることで、子ども達はジャックが大男に捕まるかもしれない、とよりスリリングを感じることができるのでしょう。

⑥ものをいうたまご 『語りの森昔話集4』/語りの森

原話も確認してイメージを膨らませられた、完成度の高い語りでした。ヤンさんは幼稚園でも語ったことがあるそうですが、イメージしづらい場面があり、1,2年生向きとのことです。

途中で一人の方の画像が見えなくなったりもしましたが、大きなトラブルもなく、無事終わりました。今回図書館が利用できないと分かったとき、勉強会をなしにするか、zoomでするか、ヤンさんは悩まれました。zoomの場合、ヤンさんは通常より労力を使われ、大変かと思います。が、参加者からはオンラインでも勉強会をしてもらえるのは有難いと言われていました。次回は6月15日、図書館でできるか分かりませんが、継続は力なり!オンラインでつながりながら、頑張りましょう。