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語りの森を作った魔女

いずれの日にか国に帰らん🌴

小学一年生の夏に引っ越しをして、2学期から通い始めた新しい学校でいじめられた。
毎晩、泣きながら、いつかきっと、ほんとうの家に帰ろうと心に決めた。

遠足のバスが、ふるさとの家の前を通ったことがあった。
ちょうどそのとき、みんなで、♪うさぎお~いし~♪って歌ってたの。
歌詞は、自分の境遇と全然違うんだけど、それから長い間この歌にしがみついていた。

中学生になって「椰子の実」を覚えた。
「ふるさと」と「椰子の実」は、いつか郷愁にひたる入口になっていった。
ときどき口ずさんでは、遠くを見ていた。

先日、その「椰子の実」の最後の一節 ♪いずれの日にか国に帰らん♪ が、書名になっている本を見つけた。
『いずれの日にか国に帰らん』安野光雅著/山川出版社/2018年
著者のふるさと島根県津和野の挿絵に、深い郷愁にひたった。

はい、ここまでが前置きね。
夏休み明け9月12日(木)に、絵本の会主催の勉強会があります。
でね、そう、安野光雅さんの絵本がテーマです。
ヤンは研究者じゃないから、講師というよりコーディネーターね。
『ふしぎなえ』『旅の絵本』などをいっしょに見て、魅力を探ろうっていう勉強会です。
みなさん、来てくださいね~

さて、かのふるさとのほんとうの家は、今はもうわたしの心の中にしか存在しません。
その住所に行っても、どこがどこやらわからなくなってしまいました。
でも、いずれの日にか国に帰ろうと思っています。

まほう使いの弟子 過去から未来へ 空間を越えて 🚀

『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』所収の「まほう使いの弟子」

フランスの昔話研究の大家ポール・ドラリュは、1889年生まれ。昔話の生き残る土地で昔話に浸って育ったそうです。(新倉朗子訳『フランスの昔話』大修館書店刊 解説より)
ドラリュは、そのころフランスで語られていた昔話を集め、大部の叢書としてまとめました。
その叢書の中の一冊が新倉朗子先生の手によって『フランスの昔話』として日本に紹介されました。

どの話もおもしろく、夢中で読んだのですが、なかでも、「12、魔法使いの弟子」を語りたいと思いました。
父親を越えて成長していく少年を描いています。明るくカラッと、しかもハラハラドキドキさせてくれます。
思春期の子どもたちにぴったりだと思いました。
わたしの聞き手たちに、ぜひとも!

きのう、中学3年生に語りました。珍しく、担任の先生が、ひとりの男子に感想を求めました。
「手綱を売るなと言われたのに、お父さんは売ってしまった。そのせいで息子はひどい目にあったけど、息子は自分の力で、魔法使いをやっつけた。ぼくも、お父さんがぼくの言うことを聞かなくて失敗しても、ぼくは自分の力で何とかしようと思いました」
教室は、共感と、楽しい笑い声でどっとわきました。

ドラリュが生まれて130年目です。
この話が語られてから、もっと年月がたっているはずです。

フランスの片田舎での語り手と聞き手を想像してみます。
少年(聞き手)を思う肉親(語り手)の愛情はとても個人的ですよね。
ドラリュの昔話への思いも個人的なものから出発しています。
日本語になって出版されるにも、個人的な思いと出会いがあったと思います。
もちろん、わたしは、個人的な思いでこの話を選び、再話し、語りました。

人は、親を越えて、大人を越えて成長しなければならない。
この普遍的なテーマが、時代を越えて、空間を越えて、あの子たちに届いたことに感動しました。
個人の思いが鎖のようにつながることに、未来を信じようかなと思った次第。

個人の思いって大事だよ。

7月のおはなし会2🎋🎋

7月8日(月)
5歳児 一クラスずつ2回
ろうそくぱっ
おはなし「舌切りすずめ」村上再話(日常語)
ろうそくぱっ
日常語の語りに少し慣れてきました。
わたし「つづらの中からお化けが出てきて、おばあさんをかみ殺してしまいました」
子どもA「なんで?」
子どもB「すずめの舌を切ったからやん」
わたし「(心の中で)Bちゃんありがと~」
おとなになると、子どもの「なんで」の意味が理解できないことが往々にしてあります

7月9日(火)
中学2年生 朝15分
おはなし「まほうつかいの弟子」『しんぺいとうざ』村上再話/語りの森
ブックトーク『クラバート』
きょうの聞き手たちは、完全の中の不完全を現出していました。
全員がピタリと語り手を見つめてファンタジーの世界に遊んでいます。
が、まんなかの一番前にすわっていた彼女だけは、休むことなく持ち物検査をしていたのです(笑)
ときどき、目がピタッと合います。きれいなまん丸い目でわたしを見つめます。
で、また体操着をたたみはじめます。
なんだか彼女とゲームをしているような錯覚に落ちいりました。
話が終わってブックトークの時、「プロイスラーっていったら『おおどろぼうホッツェンプロッツ』を書いた人ね。読んだことある?」ってみんなにきいたら、彼女だけが、こっくりとうなづいてくれました。にっこりほほえんで。
ずっこけましたあ~

7月11日(木)
4歳児 一クラスずつ2回
ろうそくぱっ
おはなし「あなのはなし」『おはなしのろうそく』東京子ども図書館
絵本『はぐ』佐々木マキ作/福音館書店
ろうそくぱっ
幼い子は聞く態勢がしっかり整ってからでないと語り始めてはいけない。
一クラスは失敗。まだごちゃごちゃと用事があったようですが、OKなんだと思って始めてしまいました。
用事をしながら聞くということはまだできないのね。
ストーリーのあるおはなしは冒頭が分からなければ楽しめない。

7月12日(金)
支援学級 朝15分
絵本『ぼくはおこった』ハーウィン・オラム作/きたむらさとし訳/評論社
絵本『こねてのばして』ヨシタケシンスケ作/ブロンズ新社
絵本『はぐ』佐々木マキ作/福音館書店
絵本『うし』高畠純絵/内田麟太郎詩/アリス館
絵本『ほね』堀内誠一/福音館書店
わたし「おはようございます」
子ども「おはよーございます。ひさしぶりや」
ほんと、去年までは毎月あったおはなし会が、今年は学期に一度です。だから、3月以来。
喜んでくれましたよ。
わたしもうれしかった。まるで、嫁に孫をひき離されたようなって、いいすぎか(笑)
あるところに孫がおばあちゃんと住んでいました。ある日、塾の先生がやって来て、きょうからはお勉強をしなくてはいけません。つまらないむかし話はもうやめましょうといいました・・・
いや、ちがうな。『クマのプーさん』の最後やね。クリストファーロビンが学校に行くことになって、森を離れる場面。
とはいえ、めったに会わないから、会えた時は珠玉の時間を過ごせるね。楽しかったよ~

7月のおはなし会1🎋

鹿児島、九州南部にお住まいのかた、不安な日々を過ごしておられることと思います。お見舞い申し上げます。

京都府南部では、梅雨入りは遅かったのですが、めずらしく梅雨らしい梅雨です。
恵みの雨で終わればいいのですが。

7月のおはなし会の報告です。

7月1日(月)
4年生 授業 一クラスずつ2回
おはなし「石になった狩人」同名絵本
おはなし「世界でいちばんやかましい音」
ブックトーク「環境」
先週金曜日に二クラスやって、その残りのクラスです。
ブックトークは、「石になった狩人」で語られている自然の脅威と、「世界でいちばんやかましい音」でギャオギャオ王子が自然の音を気に入ったことに、注意を向けてもらってから、スタートしました。
ブックトークの準備をしていて驚いたのは、市立図書館に行かなくても、学校の図書室にある本だけで十分にプログラムが組めたことです。
しらべ学習用の図書が充実していたのですね。
おかげで、子どもたちに、図書室へ行こうねって自信を持って言えましたよ。
「みんなの図書室は、宝の蔵やでえ!」って。
あ、そうそう、ここの学校のことではないのですが、もう一校おはなしをしに行っている学校では、図書室の貸し出し冊数が多くて、図書室に行けばみな夢中で本を読んでいるそうです。読みたい本はリスエストもするそうです。
本来当たり前の光景なんだけど、活字離れの時代に、心強いです。
おっと、おはなし会の様子は、先週とよう似たもんです。はい、元気いっぱい~

7月2日(火)
中学1年生 朝15分
おはなし「まほうつかいの弟子」『語りの森昔話集3しんぺいとうざ』村上再話/語りの森
ミニブックトーク『クラバート』
5カ月前には、あんなに偉そうにしていたこの子たちが、まあ中学生になったら神妙な顔つきで、ちゃんと一年生をやってるのがおかしくて(笑)

7月5日(金)
5年生 朝20分
おはなし「小石投げの名人タオ・カム」『子どもに語るアジアの昔話2』こぐま社
ミニブックトーク『春はあけぼの』斎藤孝編
5年生に15分以内で終わるおはなしを見つけるのが大変です。
ここの子たちは、耳が肥えているので、高学年になるともっとしっかりした話が聞けるんだけどね。
朝いちでも、すごく集中して聞きます。
ただ、やっぱり朝いちやからね、もうひとつ踏み込んでこないというか、受け身なのね。
タオ・カムの技に、個々に感心しても、みんなでほお~っとはならないし、土の粒が大臣の口に命中しても、個々にニヤニヤ笑うだけで、いつものどっと笑いが起きない。
思わず、「起きてるかあ~!」って肩をゆすぶりたくなった(笑)
聞き手も語り手も先生もなんとなく不完全燃焼で終わりました。

6月のおはなし会4🐸🐸🐸🐸

ふうふうふう。
梅雨入りして、蒸し暑いのなんの。
全国のみなさま、京都の夏ほど蒸し暑いところはありませんのよ。ほんとです。
それでも子どもは元気です。
ほな、いってみよ~

6月26日(水)
学童保育 30分
おはなし「あまがえる」村上再話/語りの森HP(仲間)
おはなし「かも取り権兵衛」『日本の昔話』小澤俊夫再話/福音館書店 (日常語)
絵本『すいかのたね』さとうわきこ/福音館書店
絵本『チキンライスがいく』はらぺこめがね/あかね書房
絵本『まるくておいしいよ』こにしえいこ作/福音館書店
おはなし「たこやき」村上再話/語りの森HP
いかにもこの季節のプログラム。
Oさんと、「田植えした田んぼがきれいね~」といいながら、学童へ向かいました。
「あまがえる」おわったとたんに、子どもたち、「みじかっ!」
きっと、どうなるんかなって、考え始めたとたんに終わってしまったんでしょうね(笑)
でも、この話は、子どもたちに、一生に一度でいいから聞いてほしい話やなと思っています。
その後を引き継いで、上やら下やら行って、なかなか終わらない「かもとりごんべえ」(笑)
この話のくすぐりは、中学年以上にしか分からないです。それでも、一年生が、分らんくせに、やいやい言って喜んでいました。
梅雨時の話を楽しんでから、そろそろスーパーの店先に並び始めた、みんなの憧れのすいか!
ばばばあちゃんは、絶対外しませんね~
高学年までが、すいかのつるに、「おお!」
あとはもう、食べ物の話で、子どもたちをつりましたよ(笑)
『チキンライスがいく』『まるくておいしいよ』は、どちらもクイズみたいにして読みました。
で、なぜか時間があまってしまったので、「たこやき」。
子どもたち「おじいさん、なんで棺桶のふたにひっついたん?」
わたし「さあ~?」
子どもたち「ソースでかな?」
(ソースでひっつくか?)と、ひとり心の中でつっこむヤンでした。

6月28日(金)
4年生 授業 一クラスずつ2回
おはなし「石になった狩人」同名絵本/福音館書店(仲間)
おはなし「世界でいちばんやかましい音」『おはなしのろうそく10』東京子ども図書館
ブックトーク「環境」
先生から4年生で「環境」のテーマをいただくと、たいていこのプログラムでやります。
「石になった狩人」はモンゴルの昔話。昔話といっても、最後は主人公がみんなの犠牲になって死ぬので、伝説的な話だなと思います。
主人公は、ヘビを助けることで、竜王から、宝の石をもらいます。この石を持っていると動物の言葉が分かるのです。まずこのモティーフ、「ききみみ」ですが、自然の声が聞こえる力をもらうんですね。
その力を使って、村人たちを大洪水からすくうのです。
昔ばなし大学で、昔話は自然と人間について語る、と学びましたが、その通りですね。
そのあと、エイキンの創作「世界でいちばんやかましい音」。
ギャオギャオ王子が、生まれて初めて自然の音を聞いて、すっかり気に入ったというオチ。
オチに行くまでが楽しいおはなしです。
お説教くさくしないために、「だれもかれもが、仕事は他の人に任せて、自分はその結果だけを楽しもうとしたのです」の一文は、省きました。
この一文で、子どもたち、いつもしらけるのです。だからテーマは「自然」にしぼって、不要なお説教はしません(笑)
ブックトークは、ギャオギャオ王子の気に入った身近な自然を写真で紹介している、今森光彦の『里山』からスタートです。
『アマゾン・アゾン』今森光彦写真・・・「熱い暑いジャングルから」
『アラスカ物語』星野道夫写真・・・「寒い寒い氷の国まで」
とつづき、世界じゅうに人間が様々な自然環境で暮らしていることを紹介します。
いつも大うけするのは『世界あちこちゆかいな家めぐり』福音館。
今回初めて使った『すごいね!みんなの通学路』西村書店、これもウケてましたね。みなさんもぜひ読んでみてください。人間って、強いな、捨てたもんじゃないなって思うこと、請け合い!
全23冊紹介しましたが、ここでは書ききれませ~ん。
ブックトークは、おはなしの時とは違って、子どもたちとのやり取りがひんぱんにあるので、楽しいけれど、声がでなくなって困ります。

こうやって報告をしていると、このところ、子どもに語るよりも大人対象の講師の活動のほうが多いのに気がついた。
ううむ。これでいいのか?