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9月のプライベートレッスン

すっかり秋らしくなりましたね。
暑くなく寒くなく、過ごしやすい…と思っていたらたまに暑い日もあって「また夏?!」と汗だくになって買い物に行ったり…
今月のプライベートレッスンの報告です(^^♪

1日目
語り「ねこのしっぽ」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
  「ありとこおろぎ」『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』語りの森
2日目
日常語の語り「うりひめの話」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』語りの森
日常語のテキスト「仁王さまの夜遊び」語りの森HP → こちら
3日目
テキスト選び勉強会

今回は初めての内容があります。
〝テキスト選び勉強会〟です。
これは、プライベートレッスンを申し込まれたかたが、たまたま選ばれたテキストが語りに向かないねという話になり、急きょ、ではどこがどういう理由でむかないのかを教えてもらう勉強会になったわけです。
おはなしを覚える時のテキストというのは、特に語ることを意識して編集されている物は少ないので、有名な児童書の中から選ぶことも多いですね。
聞き手が分かるならば問題ないわけですからそのまま覚えるのも一つの手です。
しかしながら、語っているときに聞き手が理解していないと感じることがありませんか?
すてきな話だから選んだのに、聞いていて分かりにくいのはなんでなんでしょうか?
そんな疑問に答えてくれる勉強会が今回の〝テキスト選び勉強会〟でした。
ある有名な外国の昔話を集めた本の中から1話を選んで、話の最初から順を追って説明していただきました。
1行ずつ説明していただいたのですが細かいことは書ききれないので端的に言いますと、語るために再話・編集された本の話が一本道を突き進むがごとくストーリーだけを追って真っすぐ話が前に進むのに比べて、読み物として編集された本の話は、寄り道や脇芽が多くてそちらにもイメージをむけなくてはならず、それはストーリーとは関係ないので結局混乱するだけで、結果として分かりにくいこととなるわけです。
寄り道や脇芽というのは、よくないものというわけではありません。
それは例えば、あることの理由を後になって説明するからなぜそうするのかがよく分からないまましばらく聞いていなくてはならないとか、時間が逆流しているとか、たくさんの形容詞や修飾語とか、翻訳者の特徴的な美しい文体とか、翻訳調とか、説明過多とか、同じ出来事を違う言葉で描写しているなどです。
これらは、読んでいると全く違和感がなくてむしろこれらがあるから読んでいて楽しく美しいと思えるところです。
わたしもこの話は大好きになりました。
でも、翻訳されたかたの美しい文章が完璧すぎて、少々単語を入れかえたりするだけでは耳で聞いて分かりやすくするのは無理であると今回分かりました。
ですから、方法としては自分の聞き手さんたちが分かるならば、このままを覚えるのがひとつ。
それと、今回のようにこのテキストはあきらめて他の話を探すほうに力を入れるか…。

テキストを選ぶというのは、それで聞き手へ伝わるかどうかが決まるのでここをクリアすれば勝ったも同然(笑)という大事なことです。
それだからとても悩みます。
わたしが昔話の語法を勉強するのも再話の勉強をするのもすべてここにつながります。
今回は急に決まったのでヤンさんはたいへんだったと思いますが、他では聞けない内容だったし、本当に勉強になり、かつ楽しかったです。
また、他の既存のテキストを使っても、こんな勉強会があったらいいなと思いました(^_^)

9月の中級クラス

前回の7月は、久しぶりに対面の勉強会でしたが、8月末から始まった緊急事態宣言のために9月はまたしてもオンラインでの勉強会になりました。
メニューは以下の通りです。

「パティルの水牛」 語りの森HP → こちら
「たにし息子」 語りの森HP → こちら
「ブレーメンの音楽隊」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
「手なし娘」『子どもに語る日本の昔話3』こぐま社
ヤンさんの語り
「カメの笛」『ブラジルのむかしばなし1』カメの笛の会編 東京子ども図書館

今回の語りの中にあった「手なし娘」は、日本中に類話があり、世界中にも類話があります。
このように類話がたくさんある場合、初めて読んだテキストや、初めて聞いた語りが素敵で自分もやりたいと思ったとき、その最初の一つだけに注目せずに他の類話やテキストをあたってみるのが良いということでした。
比べる途中で、自分にとってもっと魅力的な「手なし娘」が見つかるかもしれませんし、より良いテキストに出会えるかもしれません。
そのためにいろんな類話を読むのはそれ自体も勉強になります。
「手なし娘」の重要なモチーフ〝ウリアの手紙〟についての説明はHPの昔話雑学にあります → こちら

それともう一つ印象的だったのは、素敵な語りを聞いたときに「自分もあの人のように語りたい」とお目々キラキラで感激したとしても「しばし待て!」と言われたことです。
しばし待って、ちょっと考えてみろというその理由は、「あの人のように語りたいと思った時点で、あの人の語りを超えることはできない」からです。
まったくもって、そのとおりかもしれません。
過去を振り返ってみると、わたしは心を打たれた語りを聞いたときは、決してその話に手を出せませんでした。
挫折することがわかっていたんでしょうね(笑)
ですから、「自分は自分の語りをしよう!!!」が正解だと今日教わって、「おおお~~~☆☆☆!」と思うとともに、これなら(目標低く自分なりに)できそうだと思ったのでした。
確かに、本日聞いた5話の中にひとつ、わたしはこの話は語れないと思う語りがありました。
それは、自分は主人公の素直さや素朴さがとうてい今日の語り手さんのようには出せないと分かってしまったからです。
魔女や山姥なら何とかなりそうですが、素直さなんてどうやって出せばいいのか全く分かりません。
もちろんどんな話も素直に語ってるつもりですが、話によってはそれとは別に、にじみ出る語り手さんの素直さが話の内容に絶妙にあらわれていて聞き手の心に直撃するものなんですね。
そういう語りを聞いてしまって、「ああ、無理無理、絶対ムリ~~」とあっさり諦めました(笑)
ということで、本日のだいじな言葉は、「自分は自分の語りをする!」です(`・ω・´)ゞ

来月は、対面で勉強会ができるかもしれませんね。
そうなることを願っています。

オンライン日常語入門講座

9月から全5回でオンラインで「日常語による語り入門講座」が始まりました。
5回のカリキュラムは以下の通りです。

第1回目は、初めて顔を合わせる方もおられるので簡単な自己紹介から始まりました。
今回の参加者は5人で、まず伝承の語りについて勉強しました。
事前にヤンさんから送ってもらって伝承の語りを宿題でみんな聞いていました
いろいろな地方の言葉で語られる昔話を聞いたうえで、現在わたしたちが昔話を語るという行為をするのに至った歴史を勉強しました
その二つのあいだで何が起こって何が違うのか、言葉が違う以外に何がどう違うのかを勉強し、そのうえでこれからやろうとしている日常語による語りとは何か、日常語とはどう定義したらいいのかを勉強しました。

宿題は、『ノート式おはなし講座』の語りノートの☆13自分のことばの履歴をやってくること。
次回はその発表をみなさんにやってもらいます。
最初の関門と言いますか結構悩むところですね。
ふだんなにげなく言葉をしゃべっているから、宿題だからと「あなたはいつ誰に影響を受けて今のことばになったのか?」と聞かれましても、そんなこと考えていませんからね、普通は(笑)
そして、その今しゃべっている言葉を自分が昔話を語るときの言葉と決めるのか、それとは違う思い入れのある言葉(例えば親が使っていた言葉とか)に決めるのか、日常語のテキストを作るために決めないといけません。
一か月のあいだにみなさんどんなふうに考えてこられるのかなあ。
どうかがんばってください。
楽しみにしています(^_^)

8月のプライベートレッスン

夏が急に秋になったかのような朝晩の気温になりましたね。
ほんとうにこれで夏が終わったのか、外出自粛で夏らしいイベントが何もなく今年も過ぎたので、何ともメリハリのない夏でした。
そんな夏の終わりのプライベートレッスンは4人のかたが申し込まれました。

1人目さん
再話「ふしぎな子ねこ」『新装世界の民話14ロートリンゲン』ぎょうせい
7月にも再話のプライベートレッスンをされています。
その時のテキストをさらに練り直してこられました。
最終的におはなしの題は「白い小ねこ」になりました。
原話の前半部分を相当カットする大手術を必要としていましたが、見事に手術成功といったところです。
わたしも、覚えたいと思ったかわいいお話にまとまりました。
再話はほんとうに難しいけれど勉強になりますし楽しいです。
となりで見ている者が楽しいというのも申し訳ないのですが…。

2人目さん

語り「勇敢な娘」語りの森HP外国の昔話こちら
話型はATU956B「家にひとりでいた賢い少女が強盗たちを殺す」です。
これだけで勇ましいかんじがしますね(笑)
話型名になっている内容はおはなしの前半部分で、後半は『おはなしのろうそく』に所収の「金の髪」のような内容になります。
主人公が馬に乗って「パタタ、パタタ…」と走っていく場面が印象的な話ですね。
「勇敢な娘」は、この後半に重きを置いた話ですのでそれを踏まえて語るのがいいそうです。

3人目さん

語り2話
「ホットケーキ」『おはなしのろうそく18』東京子ども図書館
プライベートレッスンでこのおはなしを語るのは辛いものがありますが、がんばって語ってくださいました。
おみごと、あっぱれ!
勉強会でもこの話を大人の前で語るのは反応が薄いからやりにくいですもんね。
勉強したい気持ちが素晴らしいし、ヤンさんのアドバイスにたくさんのものをつかんでくださったと思います。
「なら梨とり」『おはなしのろうそく6』東京子ども図書館
語りかたと同時にお話会のプログラムのことを質問されていました。
お話会といってもいろいろあります。
図書館のお話会、小学校の授業のお話会、朝学習の短時間のお話会、それぞれのパターンで「なら梨とり」をどう生かしていくかの話が聞けました。

4人目さん

語り(日常語)「さかべっとうの浄土」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』
テキストを日常語になおす「うりひめの話」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』

4日目は残念ながら同席できなかったのでどんなことがあったのか書けません( ;∀;)
いっしょにいて聞いているだけで勉強になるのですが、用事があって参加できず残念でした。

今回のように、短い話ですと1時間で2話ということもできました。
主婦感覚でいうと2話もできてお得な感じですよね(笑)
プライベートレッスンはこんな使い方もできますので、ご遠慮なくご相談くださいね。
9月の申し込みを受け付け中です。
詳しくは秘密基地の日程を確認してくださいね。

コロナの緊急事態宣言、どうなるんでしょうね?!
感染者数は少~し減ってきていますが、このまま減り続けてくれるのでしょうか?
そうであることを祈っております。

第16回昔話の語法勉強会「がちょう番の娘」

毎日暑いですね。
みなさん、お元気ですか?
第16回昔話の語法勉強会がありましたので報告しますね。

今回取り上げられたおはなしは、グリム童話「がちょう番の娘」[KHM89]です。
この話の中でわたしが一番勉強したかったのは、血のついた小ぎれをどう考えるかでした。
魔法のアイテムのように思えるけれども、主人公を助けることはしないのであいまいなイメージしかもてませんでした。
それなら小ぎれをどうイメージしたらいいのかが今回分かりました(^_^)

主人公のお姫さまが結婚することになり、母親の女王と別れるとき、女王は自分の指を切って白い小ぎれに血を三滴落とします。
その小ぎれを持ってお姫さまは腰元をつれて花婿のところへと旅に出ます。
旅のとちゅうで、お姫さまが腰元に水をくんで来てくれとたのむと腰元は拒否します。
すると、血のついた小ぎれは「あなたの母親がこれをお知りになったら、心は、はりさけてしまわれるでしょう」といいます。
このことがもう一度繰り返され、2回目の終わりにお姫さまは小ぎれを小川に落としてしまいます。
腰元は小ぎれをなくすとお姫さまの力が弱くなることを知っていたので(これでお姫さまをいいなりにできる)と思います。
お姫さまは腰元に立場を逆転させられてしまい、王子のお城に向かうことになります。

大事なのは、お姫さまが母親の思いが詰まった小ぎれを川に落としてしまった。
この時のお姫さまの「ああ、大事なものを落としてしまった」という気持ちをイメージして語る。
そして、血の小ぎれをなくすことによってお姫さまと腰元の立場が逆転するというストーリーが進んでいくことが大事だということ。
当初わたしが思った、「魔法のアイテムなのにあとあとお姫さまを助けることなく流れて終わってしまうのはいいの?」ではなくて、ストーリーが進んでいくための一要素として登場しているのだということ。
語法的には、白い小ぎれに赤い血がぽとぽとと三滴落ちるという鮮やかなイメージが、ストーリーをよりはっきり聞き手に印象付けるということ。

昔話の中に出て来る〝血〟や〝涙〟は、その場面の状況を生々しく語るのではなくて、必要な時にだけ出て来る(平面性こちら)もので、何に必要かというと、昔話は中身を抜いて語るので心情表現をしない代わりに、象徴として〝血〟や〝涙〟を出てこさせるのだということです。(純化作用こちら

語法の説明は、ほかにもいろいろ出てきますがいつものように書ききれません。
それなので、主だったものだけしか紹介できませんが、語りの森HPの「昔話の語法」ではヤンさんが「がちょう番の娘」を例にとって「エピソードの孤立性」を説明してくれています。→こちら
「がちょう番の娘」の終わりのところで腰元が自分で自分に罰を下すという「自己への判決」の場面の語法のことが書かれていますので読んでおいてください。
(丸投げともいう…笑)

「がちょう番の娘」はとっても好きな話なのに手が出ませんでした。
どう語ればいいのか考えても自分では分からないままで、あるいは理解しているつもりでも「この話はもっと何かあるはず…」という予感というか不安がいっぱいあって、そんなんでは語れなかったからです。
そしてついにこの語法勉強会で取り上げられて、ああもうスッキリ、これで覚えられると思いました(^O^)/
今回はオンラインのみでした。
まだまだコロナは予断を許さない状態ですから仕方ないですね。
語りの森では、勉強会のオンデマンドを試験中なので録画しています。
それでわたしは試験配信してもらって何度も見ているんですが、家事をしながらイヤホンで聞けるのでこれってとっても便利です!
昔話の語法は難しいので、何度も繰り返すことが大事ですしそのたびに勉強になります!
便利な時代になりましたね(*^^)v