いま手元に『龍の子太郎』があります。
紙はもうずいぶん焼けて黄色くなっています。
昭和39年1月15日発行。初版本です。
小学2年生の時に父が買ってくれました。
近くに図書館もなく、貧しくもあったから、新しい本を手に入れることはめった
にありませんでした。
だから、何度も何度も何度も読みました。
文章まで覚えるくらいに。それでも読むたびに心ふるえました。
彼の勇気と優しさと、哀しさに。
この物語で使われているモティーフは、昔話のモティーフだったのですね。
いま気づきましたが、挿絵は安野光雅さんですね。
この絵もなつかしく親しいものでした。
もう一冊、『いないいないばあ』があります。
破れたところをセロテープで貼ってあります。
昭和60年2月5日発行。初版から18年たっています。
娘が3か月のときに買いました。
ふたりの子どもたちに何度読んだことか。
そしてその後出会った数えきれないほどたくさんの子どもたちにも読みました。
いつか孫にも読んでやろうと思います。
もうひとつ、「さるかに」。
これは私の中にあります。
語りを始めて、最初に覚えたお話です。
かあさん蟹がつぶされて、泣いてばかりいた子蟹。
いちばん兄の子蟹がしゃんとして言った「こうしてはおれん」。
下の子が生まれたばかりで、上の子へのわたしからのメッセージでした。
わたしと文学との出会いの節目に、松谷さんはいらっしゃいました。
松谷さんの数多くの作品は、わたしの心の奥深くに生きつづけています。
ほんとうにありがとうございました。
心よりご冥福をお祈りいたします。 合掌
ヤン
また、ヤンさんの「いたちのこもりうた」聴きたいです。