両手いっぱいの・・・
とくれば、感動もんの話かと思ったあなた。
ご期待にお応えいたしましょう。
一昨日、大阪にでかけた。
阪神デパートは幼少のころからのなじみの百貨店だ。
が、きょうは、その隣にあるA銀行から出発する。
少し西に歩いて四橋筋につきあたり、渡辺橋にむかって南下しようとしたとき、目に留まったのがヒルトンホテルだ。
ああ、あの日もホテルランチを予約していた。
ここ、この建物だ。
キタからミナミまでホテルが乱立していていちいち名前は憶えていなかったが、ここだ、まちがいない。
わたし「ここや!」
夫「ここや!」
わたし「ここのランチビュッフェ、よかったね」
夫「ソフトクリーム」
時は数年前にさかのぼる。
おいしいもんいっぱい載せたお皿を前に、気持ちよく座っていると、むこうから夫が呼んでおる。
「はよきて!」
わたし(はずかいいなあ。ヒルトンやで)
夫「はよ、はよ」
いってみると、夫が両手いっぱいにソフトクリームを受けておった。
わたし「なんでそんなとこに入れてるのん」
夫「知らんがな、止まらへんねん!」
わたしは、レバーをカタンとあげて、すぐさま大皿をとってこようとした。
夫は両手を前に出してテーブルにいそいでおる。
わたし「あかん、こぼれてる!待って~」
すぐにウェイトレスが駆けつけてくれたが後の祭り。
床をモップで拭いてくれてはるすがたを、わたしは正視出来なかった。
目の前には山盛りのソフトクリーム。
ウェイトレス「(笑いをこらえながら)どうされますか?」
ふたり「食べます」
それからしばらくはソフトクリームを見るのも嫌だった。
それいらい、夫はこわくて自分でソフトクリームをとることができない。
で、一昨日にもどる。
渡辺橋から中之島公園を西の端まで歩いてリーガロイヤルでランチビュッフェを楽しんだ。
ソフトクリームがあるかとわくわくしたが、なかった。
夫がデザートにとっても上品にイチゴソースをかけたアイスクリームのお皿を運んできた。
わたし「お、うまいやん」
夫「入れてもろてん」
リーガから国際美術館へ、歩く。
ベネツィア・ルネッサンスの絵画を堪能した。
主題の背後に描かれている山や畑や農夫に心ひかれた。
ガラス越しでなかったので、それらを丹念に見ることができた。
偉大な神や奇跡を描きながらも日常を生きる名もなき人の姿を忘れない、その精神がうれしく、親しみを感じた。
美術館の隣には科学館。
わたし「なあ、プラネタリウム、入ろう」
夫「あかん、夜になる」
わたし「プラネタリウムって、いつでも夜やで」
しかたなく淀屋橋まで遊歩道を歩く。
めずらしく空気がきれいで、ふり向くと大阪の夕日が美しかった。
わたしは大阪人だと、しみじみ思った。
ね、感動もんだったでしょ~
ヤン