『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論上』の報告
はい、きのうはお休みしてしまった。
今日は続きやりますよ~
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第2章ファンタジー
《夢みるひとびと》
ハドソン『夢を追う子』1973年発表
実は、読んだことなかったんです。
で、きのう夢中で読んで、おおお~ってなりました。子どもの時に読んでおけばよかった(笑)
読まれた方ありますか?
ストーリーは単純。ひたすら一直線にさすらいの旅をする男の子のはなし。
出版当時あまり評判にならなかったらしい。
が、アン・キャロル・ムアが児童図書館運動を始めたとき、この作品を信念をもって取り上げたそうです。
作者
W・H・ハドソン1841-1922
エッセイスト、作家。
『夢を追う子』は、彼のただひとつの児童文学。書いたのは64歳のとき。
動機
ハドソンは序文でこう語ります。
私の幼いころの気持ちに合うような物語で、私の幼い心に浮かんだ想像や冒険をもとにした、現実にはありそうもない物語です。
つまり、「幼児における自然体験の、作品化」と瀬田先生は言います。
目的
自然のぞくぞくさせる驚きとふしぎを再現すること。
ハドソンの自然観は、人の善悪を超えて力と美を備えたもので、人間をも包み込むというものです。人間は自然の対立物ではない。
これは、ヨーロッパの産業革命以後の自然を克服すべきものという価値観に対抗するものです。
東洋的かもしれない。
瀬田先生は、宮沢賢治との類似性を指摘しています。
引用
一面からいえば迷子の遍歴、ひるがえせば自然の追求。時流に反して自然をあがめ、いうべきことを子どもの物語の形式に借りる。科学者の目と子どもの心を持ち、昔話になじんだ口でモディファイした体験を曇りなく語る
ね、そうでしょ。
たしかに『夢を追う子』を読んでいると、自然描写とそれを畏敬する主人公マーチンの様子が、賢治の作品と重なって見えるのです!
この作品の自然描写には、三つのスタイルがあります。
1、ありのままの観察
一枚の草の葉、一匹のカブトムシ、その動きから何から写実的で、目の前で起こっているようです。
2、比喩的な観察
マーチンの心の状態によって、たとえばカラスが黒いフロックコートを着たしわくちゃな老人たちに見えます。フクロウは、小人の老人・・・
3、擬人化
2のさらに発展されたかたちです。昔話や伝説の人物が登場します。山の精は美しい神秘的な女性で、ヒョウをかしずかせています。永遠の海の老人は海坊主のように登場します。
この物語は、自然の魅力に取りつかれて、前へ前へと進むうちに迷子になり、平原から森、山、海へと遍歴して、唐突に終わります。
瀬田先生は、「おわりがぶっきらぼう」といいます(笑)
故郷へ帰る旅も読みたいけれど、ハドソンは、書きませんでした。
福音館古典童話シリーズ6