日別アーカイブ: 2020年12月9日

昔話の解釈ー金の毛が三本ある悪魔4👿

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第3章「金の毛が三本ある悪魔」つづきだよ~

殺したつもりが元気に生きていた主人公。倒錯。
この倒錯が、ウリヤの手紙に始まるモティーフに明らかに見られます。

「ウリヤの手紙」のもとになった旧約聖書の文章(サムエル記下第11章)では、手紙を届けたウリヤは本当に殺されてしまいます。
けれども、「三本の金髪をもった悪魔」の主人公は、生き延びますね。
それは、こんな具合になっています。

男の子は、森で道に迷い、強盗の家に行きつきます。
おばあさんがひとりいて、「ここにいたら殺されるよ」といいます。
ほら、また、死の危険です。
それでも男の子は疲れて眠ってしまう。そこへ強盗どもが帰ってくる。
強盗は、手紙を盗み読みするんだけど、「この若者を殺せ」と書いてあるのを見て、「この若者と姫を結婚させよ」と書きかえてしまう。正反対に書きかえるんです。
内なる法則が事物を反対物に転化させるかのようだとリュティさんはいいます。内なる法則、昔話につらぬいている法則ですね。
男の子がほかの人間によって無慈悲におびやかされているのを見るからこそ、強盗に反抗の精神がめざめるのである。
なるほどね、強盗の反抗心なんだ。これ、気づいているのといないのとでは、語りかたが変わるよね。

森の中の強盗に助けられるって、「白雪姫」の類話でもあったよね。追放された白雪姫が行きついたのは、七人の小人の家だったり、強盗の家だったり。人食いの小人の家だったりしたよね。あれとおんなじ。

ここで、リュティさんは、シェークスピアの「ハムレット」を引き合いに出します。
ハムレットは自分の破滅を書いてある手紙を、自分で書きかえます。従者が、「ハムレットを殺せ」と書いた手紙を持っていたんだけど、ハムレットは、それを、「従者を殺せ、そして、ハムレットを姫と結婚させよ」と書きかえるのです。
これって、「金の毛が三本ある悪魔」の主人公が寝ているあいだに書きかえられているのとは、ずいぶん意味が違ってきますね。ハムレットのように自分で手を下すのではなくて、知らないうちに救いがもたらされるのです。
それが重要(っ´Ι`)っ

主人公は道に迷ったからこそ、正しい援助者を見出す。と、リュティさんは言います。そして強盗の血に飢えた心と王さまの殺人のたくらみという、二重の危険を逃れる。

このふたつはピタッと組み合わさってるのです。
王さまの殺人のたくらみが主人公を強盗から守るでしょ。で、主人公は、人殺しの強盗の手に落ちたがために、王さまの殺人計画が水泡に帰すのです。
まるで、知恵の輪みたいにがちっと組み合わさってる。

王さまの書いた殺人の手紙(悪)が、強盗の心を和らげる(善)。
王さまの殺人の命令(悪)が、お姫さまとの結婚の命令(善)に変わる。
「白雪姫」のテーマ倒錯と同じ。

苦悩や死との隣りあわせは高度な生への通路なのである。危険、暗やみ、害悪の役目は人間を光へ押し上げることである、と昔話は信じている。

ううう、なんか、泣きそうや。
コロナではっきりしたけれど、わたしらみんな死と隣り合わせに生きてる運命共同体なんや。
こんな時代、もっとひどい時代を生きてきた昔の人は、今の私らに、こんなメッセージを残してくれたんやね。
うん。ちゃんと生きようね。
そして、次に伝えよう。