日別アーカイブ: 2020年12月14日

12月初級講座報告

1.白ばらとばら赤 『語りの森昔話集4 おもちホイコラショ』語りの森

覚えたい話ばかりなのですが、冬というこの季節を理由に選びました。前回の指導を受け、形容詞を強調しないように気を付けた。聞き手のイメージにおいて大事な所を考えて語った。また、自分の発する言葉に癖があるようで…

暮らしていました(テキスト) →住んでいました とついつい言ってしまう

出かけました(テキスト) →行きました     とついつい言ってしまう

お母さんと二人の女の子の暮らしがある、行くのではなく出かける。そういうテキストの言葉を味わっていきたいとのことでした。

ヤンさん…『森のまんなかに、小さな家がありました。そこに、まずしいお母さんと、ふたりの女の子が暮らしていました。』語法における孤立性の表れによって、聞き手にすっきりとイメージが見えてくる。登場人物たちの暮らしが描かれている。短いわりにドラマチックなので、語りに切り替えが必要。グリム童話にも〝白雪とばら紅〟ある。

また、小人の存在はどのようなものか?主人公をさらおうとする悪者らしさがある、不思議な事ができる、老人の顔をした小さい人…小人の存在を性格付けすると、奥行きが出て語りに表れるとのことでした。

小人に「白ばらちゃん」と呼ばれて白ばらが行きそうになると、ばら赤が「わたしたち、どんなことがあってもはなれないのよ」と白ばらを引き留める。名前を呼ばれると行きたくなるところを、くっと引き留める3回の繰り返しシーン。語り手さんも好きなところという事でしたが、私もイメージができ、大事さが伝わって引き付けられました。ヤンさんが「本当は一人の話で、二面性を表している」という深いことをポロっと言われました。

 

2.半分のにわとり 『語りの森昔話集1 おんちょろちょろ』語りの森

子どもは繰り返しの話が好きという事を意識して選んだ。つなぎの言葉(しばらくいくと、やがて、夜が明けると、朝になって、など)色んな表現が覚えられなかった。

ヤンさん…表現言葉の違いは、なぜそうなのか、なぜ…しばらくいくとなのか、なぜ…やがてなのか、なんでかなと考えると覚えられる。本番で間違ってもかまわない、後で反省すればよい。

にわとりを半分に分ける、鳥たちがにわとりのお尻からもぐりこむ。この出来事に聞き手の子供たちは笑う。軽くリズミカルに語ると良い。鳥たち→オオカミ→池…その場面をイメージすることで自然と語りの言葉が変わる(変えるのではない)。会話文より前の地の文からそのイメージをする。…とちゅうで鳥のむれに会いました。鳥たちが「半分のにわとりくん~」とききました。たくさんたくさん練習したらリズムが出てくるとの事でした。

3.大歳の火『語りの森昔話集2 ねむりねっこ』語りの森

季節に合うかなと思って選んだ。後半死人が出てきてびっくりしたが、一般的に不穏な言葉も昔話には普通に出てくるのだなと思った。追い込みでやっていたところがあり、自分のモノにするにはいくつものステップがあると感じた。ボイスレコーダーで聞いて、文脈を抑えられるようにし、楽しむことを目標にした。また、お姑さんがどのように厳しいかの説明がなくても、その厳しさがお嫁さんの言動や行動に表れていると思った。そして、元旦の朝、みんなでお祝いをしていた時、お嫁さんが預かってきて隠していた死人(金の棒)に気づかれて「こんなものどうしたんだ」と、だんなさんが言う。その言い方に迷った。お嫁さんの視点で、咎められてるような言い方になる、とのことでした。

ヤンさん…だんなさんは誰に対して言ってますか?だれがどうやってあんなところにおいたのか?とみんなに聞いてますね。語り手が主人公に感情移入するのではなく、自分は主人公のそばで共感はしているけれど、聞き手の子供にあんたはどう感じるか~?という形で語る。深いところでどう感じるかは聞き手大歳の火の昔話は日本中にあり、火に対する信仰みたいなもの。火を消さないということが大事なこと。語り手の一生懸命さが伝わったので、もう少し手放してみて、とのことでした。

4.アナンシと五『子供に聞かせる世界の民話/実業之日本社』

初級クラスに入ってすぐの頃に語りを聞いてやりたかったもの。長い期間で準備していたが、途中面白くなくなった時があった。キャラ設定で演技に走りすぎて、お話の面白さが薄くなったと感じた。しばらく放っておいて、再び練習に向かい脱演技でした。自分が語りを聞いたときは面白かったのに…。また、普通のマスクをして練習し、途中で息苦しくなるのですが、今回使った〝歌えるマスク〟は、声もこもらず語りやすい。東京混声合唱団も使っているマスク。

ヤンさん…演じなくては面白くない話もある。なまくらトック、松岡享子さんの語りを聞いた時もとても面白かった。〝演じる〟というのは完全に登場人物になるのではなく、こんな風に語ったら面白いだろうなと思って語る

アヒルのおくさん、ウサギのおくさん…「一、二、三、四、五」はっ! って顔になり、盛り上げていく。3匹同じように言うが、ハトのおくさんは数えられなかった。

…「一、二、三、四、それから…(なんだった?ごまかして)私の乗ってるいるぶん」

ハトのおくさんは五が分かりたい、自分が数えたい。テキストにある…を考える

そして、イライラしてくるアナンシが数えてしまう。「一、二、三、四、五(あ“)」ばったり。というところに向けて語りを盛っていく。聞き手を巻き込む語り方や間が大事になる。幼い子に語ると五!といってしまうので、アナンシをやっつける事を一緒に楽しめる年齢がいい。ハトのおくさんの時に図らずもやっつける、その手があったか!と子供は喜ぶ。語り手は聞き手との駆け引きを楽しむとステップアップできる、まだ皆さんには難しいかな~?!とのことでした。

5.とらとほしがき『語りの森昔話集2 ねむりねっこ』語りの森

以前語った話で、期間がだいぶ空いていたのですが、語れる気がしていた。前にやっていても期間が空くと同じくらいの練習量がいると思った。集中できなくて、次の言葉が出てこなかったり、言葉が抜けたりしてしまった、とのことでした。

ヤンさん…言葉のリズムがついてこないと、本番に抜ける。その場合は、うまいこと後で抜けた言葉を入れて、自然に語る。少し戻っての言い直しは好ましくないので、思わず出たらそのまま語る。そうなると、リズムが変わってしまい、また立て直すのが大変だが、子供たちには“テキストの抜け・表現違い”は分らない。基本テキストの言葉をしっかり覚える、練習に練習を!また、このはなしは朝鮮半島の有名な話。

6.かめのピクニック『語りの森昔話集2 ねむりねっこ』語りの森

覚えきれてなかったので、語りがゆっくりになった。間が難しいと思った、とのことでした。

ヤンさん…高学年はそのまま語ってもいいが、演じないと面白くない話なので、語りで笑わせる、思いっきり楽しむ。18カ月(道のり半分)という期間が分かっていなさそうだったら、教える。分かる子がいたら「一年半やん!」と言ってくれる。また、缶詰のところで、他に何の缶詰を持っていくかという形で、子供たちに「みかんの缶詰!」など言わせて、やり取りを一緒に楽しむ。小さい子には“缶切り”の説明がいる。

~ノート式おはなし講座~

p32ステップアップ 一.おはなしの姿 (抜粋と聞き書き)

おもしろい話、ハラハラする話、心が温まる話、ロマンティックな話…     昔話をはじめ、おはなしの世界はなんと個性豊かに様々に彩られていることでしょう。つまり、文学は、人間のさまざまな生き方を語っています。

語り手は、一つのおはなしを文字の連なりとして覚えているのではなく、イメージとストーリーと、それらが訴えかけるテーマや感覚などすべてを受け止めて自分のものにしているはずです。だから、語り手の中には一つひとつが個性を持ったおはなしとして生きています

それならば、語り手がある一つのお話を表現する時、そのお話が他のお話とは異なる顔・形を持っているのが自然です。

おはなしの持つ、その自然な姿に敬意をもって語りましょう。その姿は、昔話ならば、語り継いできた人々の伝えたい思いの表れであり、創作文学ならば、作者の訴えたい心そのものだからです。

1.おはなしの周辺を手掛かりに

創作文学なら作者の略歴や社会背景を知ったり、また、同じ作者の他の作品を研究者による作家論や作品論を読みましょう。すると、作者の言いたかったことがわかります。私たちは、他の人に伝えるために語るのだから、努力をするのです。完璧にするのではなく、充たそうと努力をする。昔話なら類話(主要モティーフや構造が同じ話)を読み比べます。グリム童話の“幸せハンス”(持たざる者の幸せがテーマ)なら、類話を集めて読み比べてみれば、実はどんでん返しのある笑い話の結末が変化したものだと分かります。グリムはこれを宗教的倫理的な姿に再話しました。それを知ったうえで、どう語ればいいのかを考えるのです。

2.子供の受け止めを手掛かりに

自分がこうだと捉えた姿で自然に任せて語る一方で、語っている自分とは別の自分が、子供たちに、「これはどんな話なのか」と心の中で問い掛けます。子供は真実を捉える力が鋭いので、問いかけにはちゃんと返してくれます。子供に語って初めて、その話の真の姿やテーマを知ったという経験はよくあります。ここに、深い部分での語り手と聞き手の育ち合いが生まれるのです。

ヤンさんが5年生に“幸せハンスを”語った時「ハンスは本当に幸せだったか」という声があがったそうです。

ヤンさん 手遊び どんぐりころちゃん(リクエスト) クリスマスツリー  

     語り はらぺこピエトリン 『子どもに語るイタリアの昔話 /こぐま社』

 

こんなに長引いてしまいましたが許しを…。内容が深いのです。そして、みなさんが語るおはなしへの熱い思い、丁寧な向き合い方、その姿勢にいつも力をもらいます。語りを聞かせてもらう心地よい時間、みなさんに感謝です。個人的には井戸掘りをしているような気がしました。お話を深める事と語りを通して自分を知る事、一つの同じ水脈からじんわり水が湧き出るのかもしれない、と。

Try to do  充たそうと努力する ですね! ありがとうございました。

次回は3月9日(火)の予定です。