まだまだ暑い日が続いていますが、朝夕の虫の音が涼しげですね。
9名の受講生のみなさんを迎え、今年もヤンさんのおはなし入門講座が始まりました。小さなお子さん連れの受講生の方々もいらっしゃって、主催のききみみずきん一同目を細めて喜んでおります。今回お越しになれなかった受講生の方にも、次回お会いできるのが楽しみです♪
さて、第1回のテーマは「おはなしってなあに?」でした。
⒈語りとは、ストーリーテリングとは
それは上のお子さんがまだ0歳だった頃、ヤンさんは子どもの情緒を安定させてくれる昔話を本来の形で与えたいと思い、ストーリーテリングの勉強を始めました。そう、昔話は絵本や本でも楽しむことができますが、本来は人間の営みの中で語り継がれてきたものなのです。
ヤンさんの語りで「七羽のカラス*」を聴いた後、受講生それぞれが頭の中に描いた風景をシェアしました。女の子が行った太陽、月、星、世界の果て、ガラスの山。受講生のみなさんにはどんな風景が見えたのでしょうか?行ったことないですもんね。でも、頭の中でなら行くことができます。みなさんが想像したガラスの山は、「水晶」の山だったり「針」の山だったり。おはなしの中には、こうした知らないものも出てきます。「大きさ、色合い、質感など、想像したものは一人ひとり違う」と、ヤンさん。
では、絵本はどうでしょうか?
ヤンさんの案内で、ホフマンの絵本『七羽のカラス**』のページをめくっていくうちに、語りと絵本の違いが見えてきました。絵本ですから各場面が(絵で)描かれているのですが、受講生のみなさんの反応をうかがうと、その絵は語りを聴いてそれぞれが想像したものとは異なっていたようです。絵本という性質上、イメージが限定的になってしまうのは仕方がないとも言えるのかな?
以前ヤンさんがこの話を語られたとき、カラスたちが空を切って降りてくる場面で、聴いていた10歳くらいの女の子が、「(最初と)一緒や!」と声に出したそうです。前半の兄さんたちが飛び去っていく場面でも使われている「ばたばたと羽ばたきの音が聞こえ」という表現が、この場面で再び使われています。状況が全く一緒というわけではないのに「一緒」と感じたのは、その子に同じ羽ばたきの音が聞こえていたからかも!この話をうかがうのは2回目なのですが、これってすごいことだなぁと改めて感動しました。去年はちゃんとわかってなかったのかも?
他にも「世界の果て」という言葉を聞いて、「宇宙まで行ったん?」と尋ねた男の子もいたそうです。語っていたヤンさんご本人は、「そこまでは行っていなかった」とか。
このように、おはなしには想像させる余白がたくさんあり、「おはなしの力」と聴き手の「想像力」を使って、聴き手が自由に楽しめます。「テストと違って採点されないのも、おはなしのいいところ」と、ヤンさん。会場では、おはなしの何が子どものどんな力を引き出すのかという話へ。
⒉おはなしと子どもの想像力
ヤンさんの語りで二つ目のおはなし「あなのはなし***」。
この話は、くつ下に開いた穴というとても日常的なところから始まって、非日常の世界に入っていきます。話し始めると、聴いている子どもたちは自分のくつ下を見るそうです。面白いですね。見てしまう大人はまだ子ども心を失っていないということか?聴き終わった受講生のみなさんの想像した穴は、やはりそれぞれだったようです。
この話は、抽象的に考えることが難しい低学年の子たちも楽しめる話だそうで、「子どもは大人以上に想像力があるかも」と、ヤンさん。「見たことないものや見えないものを見る力が、子どもにはある。」という言葉が心に残りました。
「あなのはなし」を子どもたちに語ると、「オオカミなんてこわくない」というところで、誰かひとりは「こわいわ!」と言う子がいるそうです。そして、言葉が繰り返されるとオオカミの登場が予想され、「夜中になると...」で子どもの予想が的中するのです。カエルを飲み込むところで、「ゲ〜ッ」という子がいて緊張が緩和したり、あなを飲み込むところで、「オオカミのお腹に穴が開くやん!」と口に出す子がいて、気づかなかった子も瞬時に想像できたりと、おはなしを集団で聴くよさもあるようです。「子ども同士の教育する力」とヤンさんはおっしゃっていました。
ちなみに、オオカミの登場をヤンさんより先に子どもが言ったとき、ヤンさんは「ところが、」というところを「そう!そのとおり!」ととっさに言い換えて語ったそうです。話がしっかり入っているからこそできること。子どもが展開を予想できるのはいいことなので、先に言われても動揺しないように、練習あるのみでしょうか。
少し戻りますが、「七羽のカラス」では、ひなどりの骨をなくしてしまった女の子が、自分の指を切り落とします。子どもは皆、大事なものをなくす経験をしているので、「主人公と同じ精神状態になって聴いている」そう。ドキッとする場面ですが、ストーリーは先に進んでいき、子どもたちの関心も先へ先へと進みます。おはなしを聴くことで育つ想像力には、予想する力(=考える力)と共感する力(=思いやり)の2つがあるということでした。
では、たくさんあるおはなしの中から、どんなおはなしを選べばよいのか?
ヤンさん曰く「覚えやすい話は、語りやすく、聴きやすい」そうです。聴き手が聴きやすい話を語りたいですね。
はい!ということで〜
次回10月4日(火)の第2回おはなし入門講座のテーマは「おはなしの選びかた」♪宿題は「おはなしのテキスト」をもとに、できるだけたくさんの話を読んでくることです。いいなと思った話には、付箋をつけたりコピーをしたりしておいてください。まだ、おはなしは覚えないでくださいね^^
簡潔に書くはずが、また長くなってしまいました。大切なことばかりでどこを削ればよいやら。ヤンさん、お話しされた内容と違っていることなどありましたら、訂正よろしくお願いします〜💦
* 「七羽のカラス」『昔話絵本を考える』松岡亨子著/日本エディタースクール
** 『七羽のカラス』フェリクス・ホフマン作絵/瀬田貞二訳/福音館書店
***「あなのはなし」『おはなしのろうそく4』東京子ども図書館