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第1回おはなし入門講座

爽やかな秋晴れの今日、2021年度おはなし入門講座の第1を迎えることができました。

おはなしサークルききみみずきん主催となって2年目のこの講座。この報告を書いているわたしは、今年からそのメンバーに加えていただいたばかりで、今回の講座の受講生でもあります。講師のヤンさんやババヤガーの皆さんとの出会いのおかげで、おはなしを一から勉強したいという思いがふくらみ、入門講座を受講させていただくことになりました。…..ということで、受講生としての心の声とともに、会場での学びの様子をお伝えできればと思います。

講師のヤンさんは、核家族での子育てに自信がなかったとき、昔話の知恵助けてもらおうと自己流でおはなしを覚えて、我が子に語り始められたそうです。おはなしの世界を究めておられるヤンさんが、どんな風におはなしおばさんの道への一歩を踏み出されたかをうかがって、感慨深かったです。それにしても、なんて稀有な発想と行動力!おはなしの神様に導かれたのでしょうか!?

その後、*「七羽のカラス」を情景を想像しながら聴きました。この話は小学校2、3年生でも聴くことができるおはなしだそうです。聴き手には思い描く力が必要ですが、どうしたらその力が育つのでしょう?それは、楽しみながら語って聴かせることだそうです。つまり一石二鳥というわけ。

お話を聞いた後に、有名なホフマンの絵本「七わのからす」の絵本を見てみることに。絵本を先に読めば感じることもないのでしょうが、おはなしを聴いていたときには一瞬で変身したように見えた兄さんたちが、絵本では変身する途中の姿も描かれていたり、ガラスの山が思ったよりも小さかったり、といったふうに、自分の想像と絵の間に違和感が生じました。また、女の子が兄さんたちを救うため、自分の指を切って自己犠牲を払う大切な場面は、絵本では描けないため描かれていません。この場面は、おはなしを聴いているときにもえっ!?と一瞬思いますが、具体的に想像することもなく話の先へと興味は集中していきます。おはなしと絵本の違いを感じる体験でした。絵本には絵本のよさがあるように、おはなしにはおはなしでしか味わえない世界があるのですね。

ヤンさんが、このおはなしを子どもたちの前で語られたとき、からすの羽ばたきが聞こえる後半の場面で、子どもが「(はじめと)いっしょやー!」と声に出したそうです。その子には、兄さんたちがからすに変わって飛び去っていく場面で聴いた羽ばたきと同じ音が、後半で(兄さんたちが)降りてくるときにも聴こえたんですね。感動〜!

講義では、この後今日2つ目のおはなし*「あなのはなし」を聴きました。このおはなしは、日常の生活から始まっているので子どもにとって想像しやすく、抽象的に考えることが難しい低学年の子たちにもついてこれる話だそうです。受講生それぞれが想像した「あな」を訊いてみると、一人ひとり違うことがわかって面白いなと思いました。ヤンさんから「全部正解!」と言われると、なんだかうれしい気持ちに。「想像したそれぞれの世界はそのままでいい。表現する必要もない。」とのこと。なんて自由なのでしょう。

子どもたちは繰り返しのある話が大好き。「世の中を見たい」という、子どもにとっては難しい言葉も、ストーリーの中で繰り返し出てくることで意味と結びつき、言葉を獲得させることができるそうです。なるほどー!また、ひとりで聴くのはこわい話でも、家族など身近な人が語れば、はたまた先生も友だちもいて、いつものおばちゃんが語ってくれれば、安心しておはなしの世界に浸ることができます。ひとりの子が次の展開に気づいて口にすると、他の子も瞬時に想像できるし、当たったその子は満足を得られるという、集団で聴く良さもあるそうです。「ストーリーからも学ぶし、一緒に聴いている人からも学ぶ。」という言葉が印象的でした。

それぞれ個性がある子どもたち。「自己肯定感を育てる」ということが言われて久しいですが、ヤンさんのお言葉をお借りすれば「おはなし一つ聴かせたらいい」のかもしれません。

受講生の自己紹介の時間では、受講の動機などをうかがうことができました。朗読などに携わってこられて、語りの森のHPを見ておはなしの世界に心惹かれたという方、お子さんに桃太郎のおはなしをせがまれて、自分なりに語ってみたら難しかったという微笑ましいエピソードを話してくださった方、おはなしおばさんはかっこいいから!と入門された方、子どもと関わるお仕事をされていて、絵本の学びからおはなしの扉が開いた方、と個性豊か。これから一緒に学べるのがとても楽しみです♪

そうそう、次回までの宿題は、リストにあるおはなしに関する本をできるだけたくさん読むことです。いろいろ読んできたと思っていたけど、まだ必要量の半分にも満たないことが一目瞭然で愕然。韻を踏んでる場合じゃない…

最後までお読みいただきまして、ありがとうございます。
次回は、11月2日(火)です。

※「七羽のカラス」『昔話絵本を考える』松岡亨子著/日本エディタースクール
※「あなのはなし」『おはなしのろうそく4』東京子ども図書館

9月のプライベートレッスン

すっかり秋らしくなりましたね。
暑くなく寒くなく、過ごしやすい…と思っていたらたまに暑い日もあって「また夏?!」と汗だくになって買い物に行ったり…
今月のプライベートレッスンの報告です(^^♪

1日目
語り「ねこのしっぽ」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
  「ありとこおろぎ」『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』語りの森
2日目
日常語の語り「うりひめの話」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』語りの森
日常語のテキスト「仁王さまの夜遊び」語りの森HP → こちら
3日目
テキスト選び勉強会

今回は初めての内容があります。
〝テキスト選び勉強会〟です。
これは、プライベートレッスンを申し込まれたかたが、たまたま選ばれたテキストが語りに向かないねという話になり、急きょ、ではどこがどういう理由でむかないのかを教えてもらう勉強会になったわけです。
おはなしを覚える時のテキストというのは、特に語ることを意識して編集されている物は少ないので、有名な児童書の中から選ぶことも多いですね。
聞き手が分かるならば問題ないわけですからそのまま覚えるのも一つの手です。
しかしながら、語っているときに聞き手が理解していないと感じることがありませんか?
すてきな話だから選んだのに、聞いていて分かりにくいのはなんでなんでしょうか?
そんな疑問に答えてくれる勉強会が今回の〝テキスト選び勉強会〟でした。
ある有名な外国の昔話を集めた本の中から1話を選んで、話の最初から順を追って説明していただきました。
1行ずつ説明していただいたのですが細かいことは書ききれないので端的に言いますと、語るために再話・編集された本の話が一本道を突き進むがごとくストーリーだけを追って真っすぐ話が前に進むのに比べて、読み物として編集された本の話は、寄り道や脇芽が多くてそちらにもイメージをむけなくてはならず、それはストーリーとは関係ないので結局混乱するだけで、結果として分かりにくいこととなるわけです。
寄り道や脇芽というのは、よくないものというわけではありません。
それは例えば、あることの理由を後になって説明するからなぜそうするのかがよく分からないまましばらく聞いていなくてはならないとか、時間が逆流しているとか、たくさんの形容詞や修飾語とか、翻訳者の特徴的な美しい文体とか、翻訳調とか、説明過多とか、同じ出来事を違う言葉で描写しているなどです。
これらは、読んでいると全く違和感がなくてむしろこれらがあるから読んでいて楽しく美しいと思えるところです。
わたしもこの話は大好きになりました。
でも、翻訳されたかたの美しい文章が完璧すぎて、少々単語を入れかえたりするだけでは耳で聞いて分かりやすくするのは無理であると今回分かりました。
ですから、方法としては自分の聞き手さんたちが分かるならば、このままを覚えるのがひとつ。
それと、今回のようにこのテキストはあきらめて他の話を探すほうに力を入れるか…。

テキストを選ぶというのは、それで聞き手へ伝わるかどうかが決まるのでここをクリアすれば勝ったも同然(笑)という大事なことです。
それだからとても悩みます。
わたしが昔話の語法を勉強するのも再話の勉強をするのもすべてここにつながります。
今回は急に決まったのでヤンさんはたいへんだったと思いますが、他では聞けない内容だったし、本当に勉強になり、かつ楽しかったです。
また、他の既存のテキストを使っても、こんな勉強会があったらいいなと思いました(^_^)

9月の中級クラス

前回の7月は、久しぶりに対面の勉強会でしたが、8月末から始まった緊急事態宣言のために9月はまたしてもオンラインでの勉強会になりました。
メニューは以下の通りです。

「パティルの水牛」 語りの森HP → こちら
「たにし息子」 語りの森HP → こちら
「ブレーメンの音楽隊」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
「手なし娘」『子どもに語る日本の昔話3』こぐま社
ヤンさんの語り
「カメの笛」『ブラジルのむかしばなし1』カメの笛の会編 東京子ども図書館

今回の語りの中にあった「手なし娘」は、日本中に類話があり、世界中にも類話があります。
このように類話がたくさんある場合、初めて読んだテキストや、初めて聞いた語りが素敵で自分もやりたいと思ったとき、その最初の一つだけに注目せずに他の類話やテキストをあたってみるのが良いということでした。
比べる途中で、自分にとってもっと魅力的な「手なし娘」が見つかるかもしれませんし、より良いテキストに出会えるかもしれません。
そのためにいろんな類話を読むのはそれ自体も勉強になります。
「手なし娘」の重要なモチーフ〝ウリアの手紙〟についての説明はHPの昔話雑学にあります → こちら

それともう一つ印象的だったのは、素敵な語りを聞いたときに「自分もあの人のように語りたい」とお目々キラキラで感激したとしても「しばし待て!」と言われたことです。
しばし待って、ちょっと考えてみろというその理由は、「あの人のように語りたいと思った時点で、あの人の語りを超えることはできない」からです。
まったくもって、そのとおりかもしれません。
過去を振り返ってみると、わたしは心を打たれた語りを聞いたときは、決してその話に手を出せませんでした。
挫折することがわかっていたんでしょうね(笑)
ですから、「自分は自分の語りをしよう!!!」が正解だと今日教わって、「おおお~~~☆☆☆!」と思うとともに、これなら(目標低く自分なりに)できそうだと思ったのでした。
確かに、本日聞いた5話の中にひとつ、わたしはこの話は語れないと思う語りがありました。
それは、自分は主人公の素直さや素朴さがとうてい今日の語り手さんのようには出せないと分かってしまったからです。
魔女や山姥なら何とかなりそうですが、素直さなんてどうやって出せばいいのか全く分かりません。
もちろんどんな話も素直に語ってるつもりですが、話によってはそれとは別に、にじみ出る語り手さんの素直さが話の内容に絶妙にあらわれていて聞き手の心に直撃するものなんですね。
そういう語りを聞いてしまって、「ああ、無理無理、絶対ムリ~~」とあっさり諦めました(笑)
ということで、本日のだいじな言葉は、「自分は自分の語りをする!」です(`・ω・´)ゞ

来月は、対面で勉強会ができるかもしれませんね。
そうなることを願っています。

9月 初級講座報告

会場が使用できない状況でしたので、初級クラスとしては初めてのオンライン勉強会となりました。4月の初級講座以来、ヤンさん自身がみなさんと会えていなかったこともあり、思い切ってオンライン勉強会をして頂きました!パソコンを前にして語るのは難しい、どこを見ればよいかわからない、変に雑念がわく、対面より緊張しない、いや緊張する!などなど、人によって色々感じる事があるかと思います。画面越しではありますが、マスク無しでみなさんにお会いできる点では、ありがたいツールですね。

 

1.うりひめの話『ねむりねっこ/語りの森昔話集2』語りの森

2.かめのピクニック『ねむりねっこ/語りの森昔話集2』語りの森

3.三枚のお札『ねむりねっこ/語りの森昔話集2』語りの森

4.ねこのしっぽ『おもちホイコラショ/語りの森昔話集4』語りの森

5.しんぺいとうざ『しんぺいとうざ/語りの森昔話集3』語りの森

6.油取り『しんぺいとうざ/語りの森昔話集3』語りの森

 

ヤンさんの語り アリョーヌシカとイワーヌシカ 『まほうの馬 A・トルストイ文』岩波書店

 

ヤンさんからのアドバイス

ちょっとした時にそばにいる子どもたちに語る場合

子どもが反応して声をだしてくるので、それにしっかり応えてあげて、最後まで語ること。語り手には語る責任がある。そうやって語っていくことで、こなれてくる。

練習について

昔話は耳で聞かれてきたもので、言葉と言葉の繋がりがある、言葉による文学。テキストを覚える時、なんでこの言葉なのかを考えると良い。全部覚えてしまったら、そこからが出発。練習練習、また練習。ウォーキングしてても、掃除してても、料理してても、声に出してぶつぶつ練習。テキストを身体に入れる。そうすると、おはなしが自分のものになり、モティーフなどが理解できるようになる。そのおはなしの風景に自然と入れるようになる。また、自分の実際の経験も重なる。これから先も、この覚えた話から得られるものがあると感じられる。

→おはなしの練習

笑い話 ねこのしっぽ

連鎖譚で、みんなで最後に笑う話。ねこは善悪の両方を持ち合わせたトリックスターの存在。笑って許されるのが昔話で、「えー!おかしい~!」と思われるような語り方をする。

→トリックスター    →笑い話

怖い話 油取り

怖い話を求めている子、本当に怖がってしまう子、子どもに合わせてどんな風にでも語れるようにするのは良い。最後には、夢だった!となるから。本気で語ると怖いから、怖がらせて楽しめる話として語る。

→怖い話

オンラインで聞く楽しいおはなし会でした。みなさんの姿に私も元気づけられて、モチベーションも上がりました。増えた自分の時間をどのように使うか。なんのために、なにを、どれくらいするか、自分で決めて取り組むことの再確認ができましたように感じます。今のうちに、おはなしのレパートリーを増やしつつ、お話を育てるための勉強会を続けたいですね。

次回は10/12(火)の予定です

8月のプライベートレッスン

夏が急に秋になったかのような朝晩の気温になりましたね。
ほんとうにこれで夏が終わったのか、外出自粛で夏らしいイベントが何もなく今年も過ぎたので、何ともメリハリのない夏でした。
そんな夏の終わりのプライベートレッスンは4人のかたが申し込まれました。

1人目さん
再話「ふしぎな子ねこ」『新装世界の民話14ロートリンゲン』ぎょうせい
7月にも再話のプライベートレッスンをされています。
その時のテキストをさらに練り直してこられました。
最終的におはなしの題は「白い小ねこ」になりました。
原話の前半部分を相当カットする大手術を必要としていましたが、見事に手術成功といったところです。
わたしも、覚えたいと思ったかわいいお話にまとまりました。
再話はほんとうに難しいけれど勉強になりますし楽しいです。
となりで見ている者が楽しいというのも申し訳ないのですが…。

2人目さん

語り「勇敢な娘」語りの森HP外国の昔話こちら
話型はATU956B「家にひとりでいた賢い少女が強盗たちを殺す」です。
これだけで勇ましいかんじがしますね(笑)
話型名になっている内容はおはなしの前半部分で、後半は『おはなしのろうそく』に所収の「金の髪」のような内容になります。
主人公が馬に乗って「パタタ、パタタ…」と走っていく場面が印象的な話ですね。
「勇敢な娘」は、この後半に重きを置いた話ですのでそれを踏まえて語るのがいいそうです。

3人目さん

語り2話
「ホットケーキ」『おはなしのろうそく18』東京子ども図書館
プライベートレッスンでこのおはなしを語るのは辛いものがありますが、がんばって語ってくださいました。
おみごと、あっぱれ!
勉強会でもこの話を大人の前で語るのは反応が薄いからやりにくいですもんね。
勉強したい気持ちが素晴らしいし、ヤンさんのアドバイスにたくさんのものをつかんでくださったと思います。
「なら梨とり」『おはなしのろうそく6』東京子ども図書館
語りかたと同時にお話会のプログラムのことを質問されていました。
お話会といってもいろいろあります。
図書館のお話会、小学校の授業のお話会、朝学習の短時間のお話会、それぞれのパターンで「なら梨とり」をどう生かしていくかの話が聞けました。

4人目さん

語り(日常語)「さかべっとうの浄土」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』
テキストを日常語になおす「うりひめの話」『語りの森昔話集2ねむりねっこ』

4日目は残念ながら同席できなかったのでどんなことがあったのか書けません( ;∀;)
いっしょにいて聞いているだけで勉強になるのですが、用事があって参加できず残念でした。

今回のように、短い話ですと1時間で2話ということもできました。
主婦感覚でいうと2話もできてお得な感じですよね(笑)
プライベートレッスンはこんな使い方もできますので、ご遠慮なくご相談くださいね。
9月の申し込みを受け付け中です。
詳しくは秘密基地の日程を確認してくださいね。

コロナの緊急事態宣言、どうなるんでしょうね?!
感染者数は少~し減ってきていますが、このまま減り続けてくれるのでしょうか?
そうであることを祈っております。