「勉強会」カテゴリーアーカイブ

11月の中級クラス

アナンシと五 『子どもに聞かせる世界の民話』矢崎源九郎/実業之日本社

課題やタブーをおさえてきっちり聞き手に伝える。「5と言ってはいけない」小さい子は、数を数える事が嬉しいので5まで数えてしまう。話の仕組みはわからない。2年・3年は「ハトはうまくやったな?おバカだった?」と議論がおこる。年長さんには、「数えてはいけないよ」という目で語ることもある。一番弱い者・数を数えられない者が勝った。というおはなし。

鉄のハンス 『語るためのグリム童話5』こぐま社

男の子の成長のはなし。鉄のハンスは、その成長を見守り導く父性をあらわしている。男の子は、母の枕の下の鍵を取ってきて(母への裏切り、母の庇護の下を出る)、ハンスを檻から出す(禁忌をやぶる)。泉では、檻で挟んだ指が痛み、そのせいで言いつけを守れず失敗する。その後は、ハンスから与えられた試練を通して、母の呪縛から逃れ母離れし、内側を成長させていく。エピソードには大事なことが隠れている。そして、後半スピードアップしないで語ることになる。また、お姫さまとの出会いは、男の子にとって女性の発見。人物が最初に言う言葉には心をおく。この場合、お姫様の言葉は主人公にとって女性の言葉。最後は、結婚の式で本来の姿となった「鉄のハンス」の登場。男の子が一番に祝ってほしいのは鉄のハンス、そのハンスが現れた喜びにあふれた場面。

あずきとぎの化けもん 『日本の昔話3』小澤俊夫再話/福音館書店

語り手がテキストに対して疑問があったので、原話を読んだとのこと。原話に近い言葉を選びたい。ヤンさん→原話と比較して言葉を選ぶのは真っ当なやり方。小澤さんが出典を載せているのは原話と比較してねということ。勉強をしてきている人は、正しいやり方で変えていいと思う。3年生くらいから話が分かると思うから、語ってみて。

白雪姫 『語るためのグリム童話3』小峰書店

長い話だから聞き手がだれないように語るにはどうしたらよいか?

ヤンさん→聞き手は5・6分は聞ける。その辺りで新たなエピソードがあるとまた聞くだろう。この場合は小人の登場。そして、小人が「だれもうちの中にはいれてはいけないよ」という。きをつけや~と聞き手に語る。その後も、子どもたちの知っている白雪姫とは違う、3回のくりかえしの品物の意外性(ひも、くし、りんご)で聞けると思う。長いけど、長さを感じないようなことになるのではと思う。

ヤンさん語り  神の顔 『世界の民話18 イスラエル』ぎょうせい より再話

この度もたくさんの学びをいただきました。語り手みなさんの疑問や課題を共有させてもらって、なんて楽しい時間でしょうか。楽しみで心待ちにできる場所・勉強会があることに感謝です!自分に言い聞かせるために書きますが(いつも同じこと書いてないかと心配になるくらい、書いたこともどんどん忘れていく…)、おはなしの姿やテーマをわかることは大事です。最初から最後まで覚えて、そこからが始まり。段落覚えの時に深く考えられることもあると思いますが、「このおはなしが伝えたいことは何か?」という大事なことは、全体を通してつかむので、そこからどこまで深められるか。早く答えを欲するのではなく、ひたすら考える。関連付ける。時間をかける。ヒントが欲しい時に関連書籍や類話を読んでみる。最近長いおはなしを覚えていなかったこともあってか、大事なことを忘れかけていました。おはなし一つ一つに丁寧に向き合うことをおろそかにしていたなと、姿勢を正されることとなりました。

次回は12月19日㈫です。

 

11月の初級クラス

急に晩秋に突入したような冷え込みの中、今月の初級クラスはご本人やご家族の体調不良での欠席が相次ぎました。その枠を「語りたい方どうぞ~」とのお声がかかると、あっという間に埋まってしまうすばらしさ!(つまり2つお話を語った方が複数いらしたということです。)あっぱれ~!

手遊び
「ぐっとちょっとぱー」
*年齢や成長に合わせた導入の仕方をスモールステップで紹介していただきました。この手遊びそのものはYouTubeで探してみて下さい!

語り
1.「風の神と子ども」/子どもに語る日本の昔話①/こぐま社
2.「岩の戸、開け!」/語りの森昔話集②/語りの森
3.「こんこんさまにさしあげそうろう」/森 はな/PHP研究社
4.「クモとゆめ」/子どもと家庭のための奈良の民話①/奈良の民話を語りつぐ会

飛び入りの語り
5.「若返りの水」/子どもに語る日本の昔話③/こぐま社
6.「かきねの戸」/語りの森昔話集①/語りの森
7.「小僧さんとねこの絵」/語りの森昔話集⑤/語りの森

ヤンさんの語り
8.「おはなしかめさん」/朝鮮の民話/太平出版
9.「三枚のお札」/日本昔話百選/三省堂

講評
・「風の神と子ども」は同じ原話から福音館書店で小澤先生の再話がある。こういう場合は読み比べてみて選ぶと良い。
・山の中で栗がどのように落ちているか、柿がどのようになっているか、語り手自身が実体験として知っていることで理解が深まり、語り方にも影響する。
・「岩の戸、開け!」の最後の部分。聞き手が自分の事のように思えるような語り方を心がける事が大事。このお話に出て来る”男たち”は鉱脈を探し当てる事ができる特別な能力を持っている存在なので、そのセリフは語り方を変えると良い。
・文中のセリフ「こんこんさまにさしあげそうろう」は題にもなっているキーワードにもなる言葉なので、そのまま語るのではなく歌うように語るのが好ましい。
・「クモとゆめ」の登場人物は”男”が2人出て来るので、2人の違いが聞き手にはっきりとわかるように語ることが大事。虫のクモのアクセントは関西でも2通りある。
・「かきねの戸」の最後の箇所で、ヤンさんの経験で聞き手の子どもから『お父さんは?』という質問が出たことがあり、それからここは『お母さんとふたりの子ども』の代わりに『みんな』と語っておられるとのお話。

おととい慌てて整えたこたつに入ってパソコンをたたきながら、勉強会を振り返っています。またしばらく我が家のこたつに入って、語りの練習をしたり、本を読みながらうとうとする幸せを味わいます。寒い季節も悪くないはず~♪
今回欠席だった方々が早くお元気になりますように、お祈りしています。

次回は12月12日(火)です。

おはなし入門講座 第3回

入門講座第3回目の報告です。今回のテーマは「おはなしの覚え方」です。

まずは、語りから。

「三びきの子ブタ」 『イギリスとアイルランドの昔話』 福音館書店

◎おはなしの覚え方

1⃣ストーリーを覚える

・(今から覚えるぞ!という気持ちで)声に出して全体を読む。

・テキストを見ないで、あらすじを書く。                    細かく書く必要はありません。書いてから、もう一度読んでみて抜けていた場面を確認します。この時、書き直す必要はありません。

・「意味段落」に分ける。                         筆者が考えた「形式段落」ではなく、大まかな意味で段落を考えます。具体的には・・・A 場面が変わる、B 時間の経過(ex. しばらくすると)、C 人物の出入り(ex. そこへオオカミがやってきた)

実際に「三びきの子ブタ」で考えてみると、

形式段落→①~㉔

意味段落→①~⑨                             ①状況説明 ②一番目の子ブタ ③二番目の子ブタ ④三番目の子ブタ ⑤三番目の子ブタとオオカミとのやりとり ⑥リンゴ ⑦バターおけ ⑧煙突 ⑨終わり

2⃣言葉を覚える

・意味段落ごとに一つずつ完璧に覚える。細かくイメージしながら、声に出して読みましょう。例えば、お母さんブタと子ブタの大きさは?子ブタが住んでいる場所は?温度、手触り、匂い、味など五感をフルに使ってイメージします。すると平面であった映像が立体化されます。

また、ハリエニシダってどんな木?バターおけは何色でどんな大きさ?知らない場合は図鑑などで確認するといいですね。

何度も間違えずに語れるようになるまで、口に出すという作業を繰り返します。特に曖昧で覚えきれていない場面は抜き出して何度も練習しましょう。

最後まで覚えることができれば、最初から最後まで通して語り、一つの段落を完成させます。

・翌日、次の段落も同じようにして完成させます。この時の注意点として、前日に覚えた段落がきちんと覚えられているか不安であっても戻ってはいけません。戻るとそこの段落の練習量が増え、力が入ってしまいます。ストーリーは最後が盛り上がるのに、最初に力が入り、最後が尻すぼみではダメです。

・最後の段落まで覚えたら、最初から最後まで通して語ります。忘れていても一度は覚えたので、思い出すのも早いはずです。

あとは練習あるのみ!家事をしながら、お風呂に入りながら、電車に乗りながら、etc…よくヤンさんが言われていますが、「寝ても言えるぐらいに」繰り返し口に出して練習しましょう。皆さん忙しいかと思いますが、1日のうち自分で時間を決めて練習に取り組むのがいいかと思います。

◎おはなしの語り方

1⃣上手に語ろうと思わない。

・語り手は俳優ではありませんので、演じる必要はありません。ただ覚えたストーリーを声に出すだけで大丈夫です。ストーリーに力があれば、棒読みでも聞き手を引き付けられます。

間を取ったり、抑揚をつけてたりしない。子どもに語っていくうちに、語り方は自然と変わってきます。初めから意図して変えないようにしましょう。

2⃣最後まで語りきる。

・途中で忘れてしまっても、最後まで聞き手を連れていってください。

おはなし選びから語るまで、時間をかければかけるほど、そのおはなしがよく理解できます。即席で覚えたおはなしを語るのではなく、自分のものにしたおはなしを子どもに提供してあげましょう。必ず、聞き手は答えてくれます。

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毎年入門講座の度に「初心忘れるべからず」と勉強になります。ききみみずきんは主催者ですが、ヤンさんの講座を聞けるのは、大変お得です☺

次回は12月5日、最終回「発表会」です。新しい語り手が4人誕生されます。今年の受講生はどのおはなしを選ばれたのか・・・お楽しみに♪

エズラ・ジャック・キーツを読む📖

図書館主催の絵本講座を受講された方がたで絵本の会というサークルを作っておられます。
ヤンは講座の講師だったご縁で、年に一度、勉強会にお呼びいただいています。
毎年、ひとりの絵本作家についてお話します。
きのうは、その勉強会の日でした。
テーマは「エズラ・ジャック・キーツ」でした。
わたしの好きな作家を選べるのも、この勉強会のありがたいところ(笑)

キーツの作品は50冊ほどあるんだけど、日本で訳されているのはその半分ほど。
そのほとんどが市の図書館にあります。

この勉強会のあと、会の皆さんが、毎月の例会でキーツを読みあって学びを深めるという形になっています。
だから、わたしがすることは、キーツの作品リストを作って簡単に説明して、キーツのプロフィールを説明することくらいかな。解釈はしないし、専門家の評価も紹介しません。
なにより大切なのは、キーツの世界を共有すること。それで、何冊かピックアップして皆さんに読み聞かせをしました。

『ゆきのひ』
『ピーターのめがね』
『アパート3号室』
『いきものくらべ』
『にんぎょうしばい』
『ルイのうちゅうりょこう』

キーツの作品は、年代順に読んでいくとおもしろいです。
とくにピーターシリーズでは子どもの成長が見えてきます。
ピーターやアーチーやルイが、創作された本の中の人物に過ぎないのが不思議でたまらなくなります。
俳句を絵本したものもあります。『春の日や庭に雀の砂あびて』とっても美しい色合いです。

みなさんもぜひ読んでみてくださいね。

絵本の会のみなさま、お世話になりました。
みなさまの子どものようなキラキラの瞳にいやされましたO(∩_∩)O
ありがとうございました。

さて、来年はだれをテーマにしようかな~~~

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きのうは《おはなしひろば》更新しました。奈良の民話「へび女房」です。

《ヤンの読書日記》も時々更新してますよ~

見てね~

 

 

10月の中級クラス

ヤンさんは目がらんらん、昨夜はほとんど寝ていないとのことでした。「夕方に濃いコーヒーをたっぷり飲んだからだと思う」と…。カフェインの力すごいですね。

ひねくれもののエイトジョン 『おはなしのろうそく33』東京子ども図書館

言うことを聞かないエイトジョンのおかげで、悪いことが起きます。その内容もクレッシェンドしていきます。最後、言うことを聞かなかったエイトジョンは魔法使いに「テーブルの油のしみ」にかえられてしまい、お母さんにごしごし拭き取られてしまいます。「いうことをきかない、ひねくれものの子どもには、いつもこんなことが起こるのだそうです」で、おしまい。語り手さんは、恐い話がテーマの時や、恐い話するよ~と前もって言ってから語るそうです。本能的に怖がりたいというものがあるのはある。それでも、語り手と聞き手の信頼関係ができていることが大事とヤンさんからお話がありました。

おはなしカメさん 『朝鮮の民話』太平出版社

語り手さんご本人の課題としては、聞き手が発した声に対して答えられるようになりたいということで、どうしているか、どうしたらいいかをみなさんで話しました。「うんうん、と目を合わせて頷くだけにしておく(その先を忘れるのがこわいから)」「それなに?と聞かれそうなワードに対しては答えを用意しておいて、答える」ヤンさんが子どもから教えてもらった事は「一言で返して、おはなしに戻る」こと。毎週のおはなし会の常連さんに「それなに?」と聞く子がいて、ある時その返しを長々やっていたら、「もういいからおはなしして」と言われたそうです。そして、おはなしを自分のものにしてしまえば自然と子どもの声に応えられるようになるとのことです。テキストについては、カメの死はさらっと優しく語る。ここで悲しそうな顔をする子がいる、そして、お墓を作ってあげるところでホッとする。そのイメージをする。

かきねの戸 『語り森昔話集1』語りの森

前もって「かきねの戸」の説明をする。かきねの戸のイメージをしっかりさせておく。そして、かきねの戸を外して森へでかけるところで、「え~そんなことするの」という反応があるとよい。木の上の二人が静かにしているその下で、どろぼうがいる緊張した場面、兄が「おしっこがしたい」という。この緊張の緩和で、笑いが起きる(桂枝雀の「緊張の緩和」論)。身をひそめるような語り方をすると、緊張が大きくなるので、さらに笑いの解放感も大きくなる。間の使い方も大事で、間を置くことで「次は何を言うかな?」と考えさせる。おしっこ<うんこ<戸 期待も大きくなる。自分と聞き手の関係でどんな風に語ったら楽しむかなと考えるとよい。

とびこみの語り

かにかにこそこそ 『日本の昔話2』福音館書店

はえの御殿 『語りの森昔話集5』語りの森

ブレーメンの音楽隊 『語りの森昔話集4』語りの森

ヤンさん

美しいワシリーサとババヤガー 『おはなしのろうそく4』東京子ども図書館

今回もたくさんのおはなしを聞かせてもらいました。この学びと実践と反省の継続は、語り手それぞれをゆっくり着実に育てていってくれると漠然と感じました。みなさんすごいなぁ、おはなしと向き合う在り方が誠実です。やる度にこれでいいのかな?と心配したり、新たな課題が生まれたり、うまく着地しなかったのはなんでだろう?と考えたりします。そして、また次に向けて練習して準備して語ります。それで、子どもが教えてくれたり、力が抜けたときにふと気が付くことがあったりする。自分で体感して分かるしかないので、講評を共有させてもらって、自分の語りに活かしつつ、勉強会で言っていたのはこういう事か!と納得したいです。さまざまな昔ばなしがいっぱいありますが、自分が語らない話は仲間が語ってくれるので、安心というか、嬉しいというか、そうやって語り手皆さんで(世界中のね)語りをしてるんだなと改めて思いました。

次回は11月21日㈫です。