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おはなし入門講座 第1回

まだまだ残暑とは呼べない、夏真っ盛り! と言いたげな日差しが突き刺す本日。
かねてから予定されていた「おはなし入門講座2023」がスタートしました。

今年は4名の受講生さんにお申込みいただきました(本日参加は3名でした)。
皆さま、お忙しい中、初回講座にお越しいただきありがとうございました。
語ることや子どもと関わることに情熱をお持ちの方々が集まってくださったようで、こちらの気持ちもキュッと引き締まります!

どうぞよろしくお願いいたします。


0.はじめに

さて、全4回のこちらの講座、第1回のテーマは、「おはなしってなぁに?」でした。
おはなしを語るとはなんぞや、具体的にどういうものなのかをまずは知りましょう、という趣旨の回です。


1.おはなしとは、「想像力」
まず最初にヤンさん曰く。

”おはなしの語り”とは、
「耳から入ってくる言葉だけで世界をつくる=想像力で楽しむもの」だとのこと。

抽象的ですね。だけどなんだか素敵な香りがプンプンします!


2.おはなし一つ目、「七羽のカラス」
とにかく体験してみようということで、実際にヤンさんの語りでおはなしを一つ聴いてみました。

「七羽のカラス」(『おはなしのろうそく10』/東京子ども図書館)

6~7分ほどの短いおはなしですが、
不気味な魔法とドラマティックな冒険、幻想的なモチーフたちが合わさって、自然と一人一人の頭(心?)の中に、なんとも重層的なイメージが浮かび上がってくるおはなしです。
受講生の皆さんも、きっといろんな想像が膨らんだことと思います。

さて、それらを踏まえて、
次は、絵本バージョンの「七わのからす」(絵/フェリクス・ホフマン)を1ページずつ見ていきました。
すると……、
さっき耳から聴いてそれぞれが思い描いていたイメージと、絵本の絵が……違う!!
カラスの質感、男の子たちの姿、泉の深さ、変身のスピード、ガラスの山の様子……、
なんだかとっても違う! 違和感!!

フェリクス・ホフマン氏は世界的に著名な画家だそうですから、
それぞれのイラスト自体がどれも優れたものであることは間違いないのです。
つまりこのイメージのズレは、彼の画力が足りないとかそういう次元の話ではありません。

人はおはなしを聴くと、それぞれに自分の中で非常に自由なイメージを描きますが、
そのスケールの大きさと自由さは、優れた画家の絵であっても包み込めないものだということです。

ヤンさんは、子どもに実際にこのおはなしを語ったときのエピソードもいくつか紹介してくださいました。
子どもたちには、カラスがバタバタと羽ばたく音が本当に聞こえている。
あらすじを理解するというレベルではなく、世界を本当に体感している。
そんなことが実現してしまうのが、おはなしの、そしてそれを聴く子どもたちのすごさなのですね。


3 .おはなし二つ目、「あなのはなし」
次に語られたのは「あなのはなし」(『おはなしのろうそく4』/東京子ども図書館)です。

同じフレーズが繰り返し使われ、ストーリーの構造も整理されていつので、聴き手は乗りやすく語り手も覚えやすいおはなしです。

聴き終わって、またヤンさんからの問い。
「どんなあなを想像しました?」。

ある受講生の方は、手で丸のかたちを描きながら、「黒くて……」「丸い……」と説明してくださいました。
一方で、別の方は「スケルトン」とおっしゃいました。「枠だけ」「向こう側が透けて見えてる」と。(面白い!)
黒でもスケルトンでもいいのです。どんなあなを思い描きながら聴いていても、それで正解です。
それが、語りというものなのです。

ここでヤンさんから大切なアドバイスが。
子どもたちには、語り終えた後に「どうだった?」と感想を求めてはいけない、ということです。
何故なら、子どもは自分が思い描いたものを適切に説明するだけの言語能力をまだ持ち合わせていないからです。
大人だって、「どんなあな?」と聞かれたら、先の方のように身振り手振りで口ごもりながらの説明になってしまいますものね。子どもならなおさらです。
言語化できずとも、子どもたちそれぞれが自分の中でじっとじっとそのイメージを持っていること、それが大切なのだと。
また、子どもたちが自発的に意見や感想を言ってきたときにも、肯定も否定もせず「うんうん」と聞くだけにとどめましょう。
想像の世界に正解も不正解もないのだから、大人側からのバイアスは極力かからないようにしてあげたいですね。

ちなみに、このおはなしには印象的なフレーズが繰り返し出てきます。――「別にどこへも。ただ世の中を見たいと思ってね」。
これは子どもの好奇心のほとばしりを端的に表わす言葉で、シンパシーを感じるのでしょうか、子どもたちはすぐに覚えて、3度目ぐらいの繰り返しから一緒に口に出すようになるそうです。
「世の中を見たい」なんて洒落た言い回し、小さな子どもたちがその意味を理解しているとは思えないのですが、
それでも子どもたちはちゃんとその言葉のニュアンスをつかんでしまうんですって。
子どもはとっても耳と勘がいいんですね。

さらに言えば、子どもとはこうやって新しい言葉を学んでいく生き物でもあります。
ですから、このフレーズは小さい子には通じないかも、とか、この言葉は早すぎる、などと大人が勝手に先回りして遠ざけるのではなく、
「今ここで、この新しい言葉を知ればいいじゃない」という気持ちでおはなしを語ればいいんじゃないかしら、ともヤンさんはおっしゃっていました。


4.もう一度、「想像力」とは
さて、2つの魅力的なおはなしを聴いたところで、「想像力」というキーワードに立ち戻ります。

人は、語られるおはなしを聴きながら、先々の展開について自然と考えをめぐらせています。
「あなのはなし」の例で言えば、「オオカミはあなを飲みこみました」と聴いた瞬間、「どうなるんだろう!?」とその先の流れを読もうとします。
利口な子であれば、「オオカミのおなかにあながあいちゃう!」ということに気づくことだってできます。

このような「先の展開を読む力」すなわち「想像力」は、
他者を思う「思いやり」と、物事を論理的に考える「思考力」の礎となる力です。
これは人が生きるうえで欠かすことのできない大切な能力です。言うまでもないですね。

その大切な力の基が、
たった5分や10分の短いおはなしの中を聴くうちに育っていく。
なんてすごいんだろう。

そして何より尊いのが、
それは大人が子どもに上から目線で与える力ではなく、
おはなしを聴くうちに、子どもたちが自発的に獲得していくことができる力だ、ということです。

語り手の役割は、”おはなしを手渡すこと”だとヤンさんはおっしゃいました。
何かを教え諭すのではなくって、私たちはただおはなしを語るだけ。
ただそれだけで、自然と子どもたちの「想像力」を引きだす手助けができます。
それで十分によいことをしているのだと。

励まされるような、誇らしくなるような素敵なお話でした。


5.まとめ
ということで、本日のテーマは「おはなしってなぁに?」でした。
その答えは……、「想像力」にあり!!
おはなしとは一体何なのかが、感覚的に伝わればそれで本日の目標は達成です。


6.宿題
さて、次回(10/3)に向けての宿題が出ています!
本日配布された「おはなしのテキスト」リストに載っているおはなしたちをできるだけたくさん読んできてください。
いいな~と思うおはなしには付箋を貼るなどしてキープしておいてくださいね。
でも、まだ覚える必要はありません。
とにかくいろいろなおはなしに触れて、おはなしってどういうものがあるのか、肌身で感じてみてください。

 

以上です。
受講生の皆さま、次回またお会いできることを楽しみにしております。
大変お疲れ様でした!

けじめ😊

ようやく9月の声を聞いたけど、ぜんっぜん夏は終わらない。
つくつくほーしもこおろぎすずむしも鳴きだしたけど、ぜんっぜん涼しくならない。
なんで(⊙x⊙;)

ヤンは8月に一個歳をとるんですよね。
一個歳とるごとに先のことを考える、っていう年代に差し掛かっております。
8月はババ・ヤガーの勉強会がお休みでした。だいたいが暑さが苦手なのでね、お休み。
そのあいだに、一個歳をとって、がく然として、考えた。
体力集中力が衰えても一番やりたいことをやるにはどうしたらいいか。

答え
勉強会の運営をやめる。
あ、運営って、日取りを決めたり会場を確保したりそれを会員に伝えたり、会費を集めたり支出したり、出欠連絡に対応したりなど、会を維持存続させるためのもろもろの仕事ね。

え、なんで?って(っ °Д °;)っ

子どもに語ること、再話すること、このふたつが、わたしのやりたいことのすべてで、もうこれだけをやっていたい!
わがままかね?
再話は、資料を読んで見つけた話を多くの人に伝えることやから、子どもに語ることと同じ意味が、わたしにはあるのね。
許されるなら、最後まで、伝承する者として生きていきたいなと思ってる。

もちろん、培ってきたスキルを後輩につたえることは全然嫌じゃない、お役に立ててもらえればうれしい。
だから、たのまれれば、可能な限り講師やアドヴァイザーとして勉強会に出向きたいです。
どんな遠くでも行くよ~

ただ、勉強会やおはなし会の運営は、もう卒業させてもらってもいいかな。
エネルギーのある次の世代に任せたいと思うのよ。
ヤン、もう十分やってきたからね。

ほんと、年を取るとね、今までやって来てたあれもこれもはできなくなるのよ。
みんな、覚えておいた方がいいよ。

ババ・ヤガーの運営は、ジミーさんとふたりでやっています。
いま、どんなふうにフェードアウトしようか、ふたりで考えています。

どんなグループでも、世代交代って難しい課題だと思います。
次の世代が気持ちよく、時代にあった活動をしてくれるように、先輩世代はでしゃばらず、でも的確なサポートをしたいですね。
そして、若い世代の人たち、先輩を上手に使ってやってくださいね。

 

 

8月のプライベートレッスン

こんなに暑いのに、もうすぐ2学期が始まりますね。
もちろん、学校はクーラー完備でしょうが行き帰りはまだまだ酷暑じゃないかと心配な気がします。
そんな暑さでもオンラインで行うプライベートレッスンは自宅から動かなくていいので楽ちん(笑)
今月は3話の参加がありました。

1日目
語り
「ひなどりとねこ」『子どもに聞かせる世界の民話』実業之日本社
語り手さんが、もうね、”お母さ~ん”と叫びたくなるような雰囲気のあるかたなもんでこの話にぴったりあっててとってもほんわかした気持ちで聞かせていただきました。
わたし自身もお母さんではあるんですが、わたしは”オカン”とか”かあちゃん”という感じかな、ちょっと違うのでこの語り手さんの味は出ない(笑)
それぞれ語り手の違いを楽しむとともに、自分のマイナス個性を自覚してもあらがわず受け入れるということを再確認しました。
2日目
日常語の語り
「命のろうそく」語りの森HP → こちら
今回の学びは、自分の日常語に忠実に語ろうと思うと、たまたまそれがとても難しい語り方を習得しなくてはいけなくて、もうそれはプロの域に達しないといけないレベルとなるので、聞き手が確実にわかるテキストに何か所か修正するというものでした。
毎月着実にレッスンを受けられていて、力をつけていかれているのがよくわかり、すごいなと思います。
語りの力は、少しずつしか前に進めないとはいえ、毎月続けられているのでこれはもう爆進なんじゃないかな!
「りくでも海でもはしる船」『かぎのない箱』J.C.ボウマン文、M.ビアンコ文、瀬田貞二訳/岩波書店
6月のプライベートレッスンで、読み物としての文章を聞いて分かりやすい文章にするために少し手を入れるという作業をされた、その2回目です。
長い話ですから大変だったと思うんですが、今回「これで覚えてみましょう!」となりました。
覚えているときや語った時に修正したほうがいい箇所がまた出てくると思うので、そのときに修正をするという次の段階に進まれました。
勉強会で、また聞かせていただきたいと思います(^_-)-☆

今回も楽しい勉強会でした!
来月も楽しみです~~

メモ✏️

ババ・ヤガーの勉強会のとき、ヤン、メモってますね。
あれ、やっぱり気になります?

やめてもいいんやけどね。
やめたら講評の質が落ちる、というか、ただの感想になってしまうのね。
まあ、感想でいいんやったら、わたしもそのほうが楽やけど。

あれね、何をメモってるかというと・・・
語ってるのを聞いていて、「あれ?言葉はあれでよかったのかな?」とか、「その間(ま)やったら聞き手が誤解するよ」とか「そこ、がんばりすぎ。そこはおさえた方が生きてくる」とか、「その言葉、立てんとあかん」とかいろいろ思ってしまうわけ。
それをあとで伝えるためには、コメントを覚えとかんとあかんでしょ。
で、語りを聞きつつコメントすべき内容も覚えておくってけっこうたいへんでね。以前は指を折って数だけをメモってたんだけど、それが5人とか7人とか連続で語るのを聞いてると、片っ端から忘れていくのよ(;´д`)ゞ

だから、テキストを提出してもらって、コメントしたい箇所に傍線いれたりしてチェックしてるの。内容は書かなくでも大丈夫。
ずっとテキストに目を落としてるわけは、コメントすべき箇所をすぐに見つけるため。だって、「あ、そこね~」って思ってテキスト見ても、それがどこなのか、ページを繰らないとだめでしょ。
テキスト通りに語ってるかを見張ってるんじゃないのよ、と、声を大にしていいたい。

それでも、気になって嫌なら、そういってくださいね。
いつでも勉強会のありかたを変えますよ~
ヤンはみなさんの求めに応えたいだけやからね(❁´◡`❁)

 

 

七月の再話クラス(訂正あり)

夏が暑いのは当たり前ですが、今年の夏はちょっと度が過ぎると思いませんか?皆さんちゃんと眠れていますか?とにかくまめに水分補給を心がけてくださいね!

たいへん遅くなり申し訳ありません。七月の再話クラスの報告です。

猛暑にもめげず、再話クラス、去る7月25日いつもの部屋に集いました。

 

 再話の検討2回目

 「石を投げてお嫁さんを決めた王子たち」

(原題「石を投げてお嫁をきめた王子たち」)

山室静訳/『新編世界むかし話集4フランス・南欧編』文元社)

 「死人のミサ」

山室静訳/『北欧の民話』 岩崎美術社

 再話の検討1回目

 「黄金の騎士」

関楠生訳/『新装世界の民話19 パンジャブ』 ぎょうせい

 

再話をグループですることの意義について少し話したのですが、やはり自分だけではない異なる視点の意見をもらえるのが面白い点であり、最大の利点だということになりました。今回の再話の検討でもいくつもそういった場面がありました。

 「石を投げてお嫁さんを決めた王子たち」では、最後にカエルの娘が馬車もろとも変身する場面を思い描いて、どんな言い回しにすればイメージが伝わりやすいのか、白熱の議論?になりました。ここで拠りどころになるのが語法です。昔話の語法どおり「変化は一瞬にして起こる」表現を追求して意見を出し合いました。

 また、再話に行き詰まったときには、似たモチーフの良い再話(語りに適した再話)を参考にしても良いそうです。そのためには、たくさん読み、そして語って、自分の中にストックを作らなければと思いました。語りと再話はどちらか一方では成立しないのではないでしょうか。

 とっても怖い、暑い夏にぴったりな「死人のミサ」では、教会から逃げ出す奥さんとそれを狙う死人たちの描写がポイントになりました。奥さんが恐れおののきながら抜け出そうとするのを今にも襲い掛からんばかりに見つめる死者の群れ、この恐ろしい情景を耳で聴いて思い浮かべるには、奥さんが歩いていることと、死人たちがそれに気付いていることを明示しなければなりません。さらにミサが終わると同時につかみ掛かってくる死人というホラー映画さながらの場面。一文一文を簡潔にして繋いでいくことで、恐怖感や緊迫感が出ます。いやー怖かった。完成した語りをぜひ聴かせていただきたいです。

 

 「黄金の騎士」、タイトルからもう魅力的なこのおはなしは、現在のインドとパキスタンの国境をまたぐパンジャブ地方の民話です。シーク教徒の多く暮らす地域ですが、類話はヨーロッパに多そうです。私はこの再話は、省略するところ、付け足すところ、語順を変えるところが的確で、完成度が高いと感じました。このおはなしでも変身(正体をあらわす)場面があり、鮮やかに印象深く語るにはどう表現すれば良いか活発に意見が出ました。原話も整った形の昔話ですが、文化的に身近ではないため、登場する道具や建物の形状をイメージを持って語る工夫が必要だと思いました。

次回は11月28日。「黄金の騎士」再話二回目検討、「鳥うちわ」再話一回目の検討の予定です。皆さま、この夏を無事に乗り越えて、元気にお会いしましょう。涼しくなっていますように!!

※次回日程に誤りがありました。お詫びして訂正いたします。