先週のストーリーテリング中級講座、ご参加くださった方々、熱心に聞いてくだ
さってありがとうございました。
研究者なら、蛇の道は蛇で、もっと面白い発見があったと思います。
が、そこはそれ、しろうとの悲しさ、語り手の視点からのアプローチしかできな
かったのが、申し訳ない。
感想文に質問がありましたので、お答えします。
ひとつめ。
「手を切られた娘」グリム7版(2版も)の最後の場面で、王さまが顔からハンカ
チを落としますね。するとお妃が息子に、そのハンカチを拾ってお父 様の顔に
かけてあげなさいといいます。
ところが息子は「これは僕のお父さまじゃな」いと、口答えします。
類話を読むと、世界中の「手なし娘」の多くの話で、最後の場面に息子が登場し
ています。そして、誰に教えられたわけでもないのに「おとうさん!」 と駆け
寄ったり、お父さんですよと教えてもらって抱きついたりします。
子はかすがい、って感じ。
わたしの読んだ限りではグリム7版だけが、息子が反抗して父を認めないのです。
それはなぜか?
以下推論にすぎませんが私見を書きます。
じつは、ヨーロッパの「手なし娘」の類話の多くが、キリスト教の色合いを帯び
ているのですが、特にグリムは宗教性の高さでは断トツです。
「神さまのお恵みによって」「神さまにおいのりをしました」「神さまが支えて
くださっていました」等の表現が随所に出てきますし、天使が援助者と して娘
を保護してくれます。
息子の言葉もこれに連動するものです。
主の祈りの冒頭「天にましますわれらの父よ」をあげて、「お母様も言ったじゃ
ないの。ぼくのお父さまは天にいらっしゃる優しい神様だって」と息子 はいい
ます。
つまり、母はマリア、息子はキリストにたとえられているのです。
だから、人間の王さまが父親ではだめなのです。「この人は僕のお父さまなんか
じゃない」ということになるんでしょうね。
宗教的な啓蒙の意図があっての再話、と考えていいんじゃないかと思います。
ちなみに、初版では、息子が駆け出していって父親を招き入れ、母親と対面させ
ています。
ふたつめ。
むすめが切られたのは手なのか腕なのか?
また手を切るということに特別の意味があるのか?
グリムでは手首を切らせたとあります。
類話を見ると、指先だったり、腕だったり、いろいろです。たいていは「手」と
し書かれていません。
どちらにしてもショッキングですよね。
手を切ることが刑罰であった時代や民族もあるので、そのような社会的モティー
フが昔話に取り入れられて昔話モティーフになった例かなと思います。
耐える女性を語るとき、手を切られて捨てられるという状況は最も我慢が難しい
状況なわけで、効果的でしょうね。
耐えなければならない状況を極端に語っているわけです。
民俗学的、心理学的には、勉強不足で分かりません。何かありそうですけどね。
ああ、固い固い内容になってしまいました。
だれか何かコメントしておくれ。
byヤン
堅いおはなし、勉強家の語り手さんたち大好きですよ、きっと。
ところで、ブログに書いておられた
講義の準備をしていてめちゃおもしろいことを発見したのです
ヨーロッパあちこちの「手なし娘」それらを集めて読んでみたら、なんと!なんと!
あとは聞いてのお楽しみ~
について、少しまとめて書いてもらえませんか。結局その世紀の大発見は何だったのか、わたし、わかりませんでした・・・講義中意識が寝てしまったのか、読解力がないのか。
ブログで広げた風呂敷をブログでたたまないのは、講義に行けない全国200万人の読者を(そして私を)置き去りにしてしまうではありませんか。
講義の方はサッパリでしたが、語りを拝聴してわかったことはいろいろありました。
再話によって、同じプロットでも受ける印象がずいぶん変わること。
テーマをどうとらえるかで、選ぶ再話も語り方も変わること。
「手なし娘」のテーマが、「耐える女性」だと言われて、
えっ!そうなん?!これ、女性問題なん?
と思ったのはわたしだけ?
私は、「悪意に苦しめられた人を救うのは、人の善意、まごころなんだよ」かと思ってました。
そしてグリムの方は、{苦しみはすべて神への信仰によって救われる。ハレルヤ!」
私の選んだ日本の「手なし娘」では、貧乏で身分の低い姑と夫の、徳の高さ、愛情の深さが強調されていて私はいつもここで大泣き(笑)、グリムの精神性の高さを凌駕します。手が生えるところはわりとあっさりです。失った手がもどってくるのは、救われた象徴なのかなと思ってました。その直後に夫が来てくれるのです。
でも気に入った再話を見つけても、そのまま語りに使えないモノって多いですよね。私のような初心者は、やっぱりこぐま社やろうそくに頼らざるを得ない。
ヤンさん、テキストたくさんアップしてくださいね~
ひようさママさん
コメントありがとうございます!
ああ、コメントもかたいですね…(笑)
えっと、女性問題ではないです!
主人公が女性だから、「女性」が耐える話。
男性でもいいんですけどね。
耐える男性の話……どんなんがあるかなあ。
「熊っ皮」?
男とか女とか関係なく、普遍的なことを語っていると思っていますよ。
言いたかったのは、主人公が肉親との葛藤に耐えて(反抗したり仕返ししたりするのではなく)幸せになることがテーマの話群だということです。
で、その幸せになり方が、民族によって違うし、一つ一つの話によっても微妙に違う。
グリムと日本、フランス、違うかったでしょ。
で、あなたはどれを選びますか?
ということなんです。
その話を聞いてどのように受け止めるか、受け止めた人がどのように伝えるか、そうやって時代と地域を超えて伝わっていくうちに、変化していく。昔話って生きていますね~
変化していくけれど核心にあるものは変わらない。
人の心(人生?)の核心にあるものは普遍的だからでしょうね。
ブログでのまとめは、やります。
もうちょっと待ってね。
とりあえず今は女性問題のことだけ(笑)
あ、ユング的に言えば女性問題かもしれない。
ごめんなさい。固い、固い、かちん。
byヤン
よくわかりましたあ!
やっぱり読解力の欠如だな。
それで、「あなたはどれを選びますか?」の答は、「好きなやつ」 でいいんでしょうか・・・
ブログのまとめ、楽しみにまってまあす。
そうそう。
好きなやつ、です。
参加されたかた、好きなやつ、ありました~?
byヤン