第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」

コロナのために延期されていた対面での勉強会がやっとできました(^_^)
第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」です!
通常は、対面で開催した後にオンラインでも実施するのですが、「白雪姫」は先にオンライン勉強会をしました。
その時のブログがこちらです → 第15回昔話の語法オンライン勉強会

勉強会の内容は先のオンラインの時と同じです。
対面では、初めに語りが入るのでそれが違いなだけです。
今回は、ヤンさんが講義の冒頭で、問いかけを三つホワイトボードに書かれました。
オンラインの時のブログと重複しますが、こちらの方が分かりやすいかと思いますのでQ&A方式で書きますね。

Q1 危険を承知でなぜこびとは白雪姫をひとりにしたのか?
これは不在のモティーフです。こびとたちが出かける→白雪姫がひとりになってしまった→そこに女王が現れる
ここでは時間の一致があります。→ 昔話の語法 一致
もし一人でもこびとが残っていて女王から白雪姫を救ったら、その後白雪姫は一生こびとの家で家事手伝いをして暮らした…となりそうです。
これは、幸せですかね?
昔話は主人公の幸せ(身の安全・結婚・富の獲得)のために一直線に進みます。
ですから、こびとはひとり残らず山へ仕事に出かけて白雪姫をひとりぼっちにし、事件が起こらなければならないのです。

Q2 白雪姫には経験知がないのか?
これは、昔話の孤立性です。→ エピソードの孤立性1
エピソードがそれぞれ孤立して、それぞれで完結しているのです。
ですから、前の出来事が影響を及ぼしません。
しかしながら、白雪姫は死んで生き返るたびに少しずつ成長しています。
だから、最初は女王をウエルカムで迎えていますが、2度目3度目は拒みます。
拒む度合いがクレッシェンドしています。
それぞれのエピソードを貫いているものがあり、それは主人公の幸せを実現しようとする語り手の意思です。
なんど失敗してもそのままのあなたでいいという思いと、最後には幸せになるよという語り手の思い、まさに女の子と母親を物語っています。

Q3 「白雪姫」は、何を語っているのか?
この話は〝人の忠告に耳をかたむけなさい〟という教訓話ではなく、そのままの自分でいていい、自分の精いっぱいのその場の対応をするしかないのだということを語っています。
Q1でもありましたが、もし白雪姫がこびとたちの忠告を聞いていたら最後に王子さまに会うことはできませんでした。
でも、ぼ~っとしていたというわけではありませんね。
何も考えていなかったのではありません。
変装した女王のことをこびとたちの言葉を思い出して2度目3度目は拒んでいます。
でも、若い女の子の欲しがるものを選んで持ってくるというところが女王のずるがしこいところですから、欲望に勝てませんでした。
それは罪でしょうか?
もし罪なら、テレビショッピングや、ネット通販は今存在していてはいけませんね。
わたしは重罪人です。
そんなことを問題にしているのではなく、目の前の出来事に一生懸命に対処していくしか方法はないが、時がたてばそれが必然であったということもあるという、人生や人類の根本的なことを語っているのです。
ここでヤンさんはフランス革命のことを例に出して説明されます。
曰く、『飢えに苦しむ人びとはパンを欲しかったから立ち上がった。
暴動を起こしたときは、人びとは苦しい生活を何とかしたかっただけ。
フランス革命を起こそうと思っていたわけではない。
後々、それがフランス革命であったという結果になった。』
なるほどそうですね!
その時その時で一生懸命に考えて精一杯のことをするしか道はないと思います。

最後に、質問が出ました。
昔話のいう最後の幸せ(身の安全・結婚・富の獲得)は、現在の幸せとあわない部分もあると思うが、語るときにどう思って語ればいいのか?ということでした。
この三つの幸せは、幸せの象徴です。
昔話は構造上、初めのところで何らかの欠落があり、それを取り返すとか、埋めるために話が進みます。
その物語が何を取り返したり、埋めたり、獲得しようとしているかによって、最後の幸せも決まるので、三つともある場合もあるし、ふたつやひとつの場合もあります。
主人公にとっての幸せの形が満たされることが大事だということです。

今回、語りを担当させていただきました。
オンラインの勉強会の時も講義に感動しましたし、そのとき自分なりに何かをつかんだと思っていましたが、その後課題も出ました。
「白雪姫」は女の子と母親の物語なので、娘二人の母である自分の子育てを振り返りますと、自分にとってこの話は特別な意味を持ちます。
わたしは悪い女王の自覚がありますので、それを後悔し反省しておりますが、反省しすぎたせいか〝女王の話〟になってしまっていました……_| ̄|○
これは、〝白雪姫の話〟ですから、それではいけません。
主人公が成長して、幸せになる、こんないい話を曲げて語っては行けませんね。
勉強会で感動し、語りで課題が分かり、重要な時間をいただきました。
精進いたします。

次回は1月の予定です。
テーマは「お月お星」です。
これも好きな話なので、とっても楽しみです(*^▽^*)

2 thoughts on “第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」

  1. ジミーさん、報告ありがとうございます。
    語りもありがとうございました。
    「白雪姫」を語りで聞くことはあまりないので、みなさんにも貴重な経験だったと思います。

    フランス革命の例は小澤俊夫氏が『昔話の語法』のなかで書かれています。持ってる人は確かめてくださいね~
    パンをくれ~って集まった人たちは、それが民主主義の萌芽だったことを知らなかったってことね。

  2. ヤンさん、コメントありがとうございます。
    こちらこそ、語る場を与えていただいて感謝です。
    勉強会が延期になったこともあり、今回は長い期間「白雪姫」と向き合うことができてよかったです。
    途中で忘れてしまうというような不安はなく語れるのですが、それでもまだまだです。
    流れるように語れるようになってからが、本当の練習ですね。

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