おはなしサークルききみみずきんからの報告です。今月から24年度「おはなし入門講座」が始まりました。(報告が、たいへん遅くなって申し訳ありません!今年は、7名の受講者の皆さんが参加してくださいました。
第1回のテーマは「おはなしってなあに?」
ききみみずきんがこの入門講座の運営を引き継いで、今回が五年目になります。毎回、語り手のスタートラインに立たれた方たちと一緒に勉強させてもらい、その度に感じるのは「初心忘るべからず」ということ。
講座初回では、「おはなしってなあに?」と題して、おはなしの成り立ち、おはなしを子どもに聞かせることの大切さ、そして子どもの本来持っている力について学びます。今年も、受講者さんと一緒に耳を傾け、「そうだ、そうだ!」と心の中で喝采しながらびっしりノートを取っていました。
まず「おはなし」がどのような形のものか学んでから、ヤンさんの語りでグリム童話の「七羽のからす」を聴きました。それから、瀬田貞二文/フェリクス・ホフマン絵『七わのからす』(福音館書店刊)を見てみます。想像力をめぐらしておはなしを聴いてから、同じおはなしの絵本を見ると、おはなしの豊かさに驚かされます。おはなしを聴いて想像していたのとは随分違いましたね。主人公の女の子の姿も、兄さんたちが水をくみに行った泉も、ガラスの山も…
受講者の皆さんに、どんな泉や山を想像していましたか?と尋ねると、またそれぞれ違った答えが返ってきます。でも、それでいいのです。間違いなんかなく、聴き手それぞれが心に描いたものが正解です。絵本では絵でイメージが固定されてしまいますが、耳で聴くおはなしにはそれはありません。初めておはなしを聴いた小学校低学年のお子さんが「絵がないのが面白かった」と言ったそうですが、おはなしには、自由に思い描ける楽しさがあります。それは絵本にもアニメにもない、誰にも邪魔されることのない、自分だけのものです。
また「七羽のからす」で女の子が自分の指を切り落とす場面になると、自分の指を握り締める子がいるそうです。その子はおはなしの中でことさらに描かれない女の子の痛みを感じ取ったのです。教育現場では「思いやりが大切」「相手の立場に立って考えよう」とよく言われますが、おはなしはまさにそれを教えられるツールだということがわかります。大人が教え諭すのではなく、子どもが本来持っている力を引き出せるのです。大昔の人びとは子どもにこうして昔話を語ることで、人としての優しさやあるべき姿を伝えてきたのでしょう。子どもにより良い生き方をして幸せになってほしいという愛情を込めて。
そうなんです、私たちがおはなしを語る行為は、単なるエンターテインメントを提供することではなくて、愛を伝えることなのです。
私はおはなしを語り始めて、想像力こそ人間が生きていく上で最も大切な力だと、思うようになりました。本当に他者の痛みや悲しみを想像できれば、相手への理解が深まり、差別も争いもなくなると思うのです。そんなとてつもなく大きな目標達成の一助になればとおはなしを語っています。そんな決意を新たにしてくれる勉強会に携われたことは本当に幸運だと思います。
入門講座のエッセンスを少しでもお伝えしたいと思って書きましたが、「ぴんと来ないな」という方はどうかこのホームページの「おはなし入門」をお読みください。「そんなことわかってるわ」というかたもぜひ!忘れていた大切なことを再認識できると思います。
入門講座第2回は「お話の選びかた」、11月5日です。受講される皆さんは、お配りした資料「おはなしのテキスト」に載っているリストから、なるべくたくさんの本を読んでいらしてくださいね。