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第2回おはなし入門講座

秋も深まり、あちらこちらで柿がたわわに実って、軒先に干し柿が並んでいるお家を見かけるようになりました。

11月2日(火)に開かれた第2回おはなし入門講座の様子をお伝えします。手を引いたりベビーカーに乗せたり、お子さんと一緒に来場される受講生の姿もあり、今回も和やかな雰囲気の中で始まりました。

はじめに、ヤンさんの語りで「さるの海岸見物」と「かめのピクニック」を聴きました。「さるの海岸見物」は岡山県あたりに伝わる話で、猿が呟く「ものいうても返事するもんがおらなんだらあかんなあ」という言葉が心の深いところに響きます。話の筋は低学年でもわかりますが、子どもなりにいろいろ経験している、高学年のおまけによい話だそうです。(←詳しくは語りの森HPの日本の昔話へ)
「かめのピクニック」は、イギリスのジョセフ・ジェイコブズが集めたイギリスの民話集の中の一篇。「3びきのこぶた」や「ジャックと豆の木」が有名ですが、この話を初めて聴いたわたしはまさかの結末にえ〜っ!?と驚きました。新鮮というか斬新というか、きっと一度聴いたら忘れられないおはなしです。昔話にもいろいろありますね。

では、数あるおはなしの中から、自分が語るおはなしをどのように選べばよいのでしょう?

わたしたち現代の語り手は、耳で聴いて自然におはなしを覚えた伝承の語り手とは違います。けれども口で物語を伝えるという点では同じです。そこで、おはなしを選ぶときも語るときも、伝承の語り手から学べることがあるとのこと。
語りには語り手・聴き手・話のテキストの3つの要素が不可欠だということで、それぞれの要素ごとにおはなしの選び方を見ていきました。

一つ目に、語り手である自分の好きな話を選ぶこと
伝承の語り手は耳で聴いた全ての話を覚えているわけではなく、好きな話を覚えています。現代の語り手であるわたしたちも、自分の好きな話を選ぶことが大事だそうです。覚えるまで何回も自分の口に載せるお話です。たくさんの話を自分で一から読んで、何回読んでも何回口に載せても好きだなと思える話を選びましょう。好きな話は人に聴かせたいものですよね。つまり、語り手にとっての選ぶ基準は、自分が好きで人にも聴かせたいおはなしということでしょうか。

二つ目に、聴き手である子どもが求めている話を選ぶこと。おはなしを聴いて育った伝承の語り手も、子どもの頃「あの話して〜!」と大人におはなしをせがんで囲炉裏端で聴いていたのでしょうか。子どもの興味や成長段階に合った、子どもが聴きたいおはなしを選びましょう……とは言いつつ、我が子ならまだしも、聞き手が我が子でない場合、何に興味を持っているのかわからない。ヤンさんは、おはなしの時間が終わった後などに、子どもに話しかけて興味をリサーチするそうです。おはなしを聴かない子がいた場合も、その子を知ることでその子の好きそうな話を選ぶこともできます。語り手であるわたしたちと聴き手である子どもたちが、こうしてつながることは、せっかくのおはなしの場を活かすためにも必要なことだなと思いました。子どもと話すの面白いですし^^

ここで、子どもの成長と大人の関わり方について、ヤンさんのお考えをうかがうことができました。
ヤンさんの言葉をお借りすれば、精神的な発達がはやい子もいればゆっくりな子もいるが、「自分なりにすくすく成長」していればそれでよい。「子どもは好きなことについていく」ものだから、「子どもを引き上げようとしない」で「親はそれについていく」だけでよい。子どもは「親のこうあってほしいという気持ちを忖度」しているので、せめておはなしは子どもの「成長段階に合ったもの」を選んであげたい。

お子さんと一緒に参加の受講生さんが、頷きながら熱心に聴いていらっしゃるのが印象的でした。
つい引き上げようとしてしまうんですよね(^^;;
反抗期真っ只中の我が子。まだ遅くないかな?

三つ目に、語りに向いたテキストを選ぶこと。
内容が子どもにとって結末が満足できるもので、ハッピーエンドがいいそうです。子どもはお話を聴いているとき、主人公になって聴いています。「子どもは物語を生きるんです。………(だからこそ)最後は幸せにならならなければいけない。」というヤンさんの言葉に胸打たれました。本当にそうですね。
おはなしはさまざまで、ハッピーエンドではないものも多くあります。例に挙げられた、鶴女房や猿婿などの異類との結婚話はたいてい破綻するそうで、思春期を過ぎて(より繊細な)美しさや悲しさを感じとる力がついてくれば、こういったおはなしも楽しめるようになるそうです。
思春期に、今まで気づかなかったものの魅力に気づいたりした覚えがあります。身体だけでなく感受性もより豊かに成熟していくのでしょうね。

文章は耳で聴いてわかりやすいことが大事だそうです。情報は音声だけなので、耳に入ると次々に消えていきます。音だけでおはなしの世界を想像するので、聴いてサッとわかる文章でなければ伝わり損ねます。伝承の語り手が伝えてきた昔話は、聴いてわかりやすいから残り、少しずつ変化しながら他民族にも伝わってきたとのこと。「聴いてわかりやすい」ためには?
筋が単純であること。幸せな結末に向かって速いスピードで一直線に進む。
登場人物が少ないこと。例)サルとカニ、カメ大中小
情景描写と心理描写が最低限であること。その方が異なる美意識を持った人にも伝わりやすいし、その人の思いで解釈できるので抵抗が少なく、広がり奥行きがある。例)ガラスの山 どんなガラスの山かはその人の感性で!

つまりは「何が言いたいかわかることが大事」なので、「ストーリーを前に進めるためにも必要なものだけ表現」してある方がいいということでした。ヤンさんが「説明しなければ、おもしろい捉え方もできる。」とおっしゃったんですが、これは芸術にも通じることだなあと思いました。

最後に実際におはなしを選ぶときの手順について説明がありました。
テキストを読んでいて、いいなと思うおはなしを見つけたら付箋を貼っておきます。次にその中から厳選したおはなしをコピーします。このとき作者、再話者、出版社、出版年月日などの奥付を記録しておくこと。
こうして選んだおはなしを、声に出して読んで自分の耳に聴かせてみる。これで、口に載りやすいか耳で聴いて心地よいかがわかるそうです。

また長〜い報告になってしまいました。お読みくださりありがとうございます。

次回は12月7日(火)です。
宿題は、今日学んだことを踏まえて自分でおはなしをひとつ選んでくることです。いよいよですね〜!!

 

10月のプライベートレッスン

あっという間に、もう11月ですね。
今年もあと2ヶ月で終わりなんて、信じられません。
ついこの間まで半袖で暑がっていたというのに…。
10月のプライベートレッスンの報告です(^_^)

1日目
日常語の語りのテキストを作成する
「あちちぷうぷう」『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』語りの森
「きつねの茶釜」『日本の昔話2』おざわとしお再話 福音館書店
2日目
語りの練習
「ヤギとコオロギ」『子どもに語るイタリアの昔話』剣持弘子編訳 こぐま社

一日目はおふたりが一話ずつ日常語のテキストになおす勉強でした。
おふたりとも関西弁というくくりの中では同じでも、自分の日常語テキストにするとなるとやはり言葉が違うということがよく分かりました。
全く同じ言葉というのはだれひとりないんですね。
当たり前のことですが、普段は意識せずに周りはみんな同じような言葉を使っている気になっていました。

奇遇と言いますか、どちらの話にも和尚さんが出てきます。
どんな和尚さんにするかは読み手が決めていいのだそうです。
お寺の規模を想像したり、話の姿から和尚さんの位や性格を想像したりして、どれくらい偉くてどんな話し方をするかを読み手が決め、それによってテキストの言葉を選ぶという作業をしたらいいということでした。
和尚さんの口調とはこんなふうな感じだという思いもあるかと思いますし、いろんな和尚さんがいるなかでどの設定にするかをはじめにきちんと決めておかないと話全体に和尚さんの統一感がなくなるような気がしました。
じつは、「あちちぷうぷう」を知ったときにおもしろくて、日常語テキストにして覚えました。
勉強会以外で語る機会がなかったのでそのまま忘れてしまいましたが、あの時こんなに真剣に和尚さんの設定を考えていたかなと反省しました。
笑い話は、日常語で語られるのを聞きますと、おもしろさ倍増になるのでほんとに日常語って血の通った言葉なんだなと思います。

2日目は残念ながら同席できず、熱心なHさんの語りを聞けず残念でした。
プライベートレッスンをうけられるみなさんが、熱心に勉強されているのでわたしもそのパワーをもらっています。
感謝です(^o^)/

第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」

コロナのために延期されていた対面での勉強会がやっとできました(^_^)
第14回昔話の語法勉強会「白雪姫」です!
通常は、対面で開催した後にオンラインでも実施するのですが、「白雪姫」は先にオンライン勉強会をしました。
その時のブログがこちらです → 第15回昔話の語法オンライン勉強会

勉強会の内容は先のオンラインの時と同じです。
対面では、初めに語りが入るのでそれが違いなだけです。
今回は、ヤンさんが講義の冒頭で、問いかけを三つホワイトボードに書かれました。
オンラインの時のブログと重複しますが、こちらの方が分かりやすいかと思いますのでQ&A方式で書きますね。

Q1 危険を承知でなぜこびとは白雪姫をひとりにしたのか?
これは不在のモティーフです。こびとたちが出かける→白雪姫がひとりになってしまった→そこに女王が現れる
ここでは時間の一致があります。→ 昔話の語法 一致
もし一人でもこびとが残っていて女王から白雪姫を救ったら、その後白雪姫は一生こびとの家で家事手伝いをして暮らした…となりそうです。
これは、幸せですかね?
昔話は主人公の幸せ(身の安全・結婚・富の獲得)のために一直線に進みます。
ですから、こびとはひとり残らず山へ仕事に出かけて白雪姫をひとりぼっちにし、事件が起こらなければならないのです。

Q2 白雪姫には経験知がないのか?
これは、昔話の孤立性です。→ エピソードの孤立性1
エピソードがそれぞれ孤立して、それぞれで完結しているのです。
ですから、前の出来事が影響を及ぼしません。
しかしながら、白雪姫は死んで生き返るたびに少しずつ成長しています。
だから、最初は女王をウエルカムで迎えていますが、2度目3度目は拒みます。
拒む度合いがクレッシェンドしています。
それぞれのエピソードを貫いているものがあり、それは主人公の幸せを実現しようとする語り手の意思です。
なんど失敗してもそのままのあなたでいいという思いと、最後には幸せになるよという語り手の思い、まさに女の子と母親を物語っています。

Q3 「白雪姫」は、何を語っているのか?
この話は〝人の忠告に耳をかたむけなさい〟という教訓話ではなく、そのままの自分でいていい、自分の精いっぱいのその場の対応をするしかないのだということを語っています。
Q1でもありましたが、もし白雪姫がこびとたちの忠告を聞いていたら最後に王子さまに会うことはできませんでした。
でも、ぼ~っとしていたというわけではありませんね。
何も考えていなかったのではありません。
変装した女王のことをこびとたちの言葉を思い出して2度目3度目は拒んでいます。
でも、若い女の子の欲しがるものを選んで持ってくるというところが女王のずるがしこいところですから、欲望に勝てませんでした。
それは罪でしょうか?
もし罪なら、テレビショッピングや、ネット通販は今存在していてはいけませんね。
わたしは重罪人です。
そんなことを問題にしているのではなく、目の前の出来事に一生懸命に対処していくしか方法はないが、時がたてばそれが必然であったということもあるという、人生や人類の根本的なことを語っているのです。
ここでヤンさんはフランス革命のことを例に出して説明されます。
曰く、『飢えに苦しむ人びとはパンを欲しかったから立ち上がった。
暴動を起こしたときは、人びとは苦しい生活を何とかしたかっただけ。
フランス革命を起こそうと思っていたわけではない。
後々、それがフランス革命であったという結果になった。』
なるほどそうですね!
その時その時で一生懸命に考えて精一杯のことをするしか道はないと思います。

最後に、質問が出ました。
昔話のいう最後の幸せ(身の安全・結婚・富の獲得)は、現在の幸せとあわない部分もあると思うが、語るときにどう思って語ればいいのか?ということでした。
この三つの幸せは、幸せの象徴です。
昔話は構造上、初めのところで何らかの欠落があり、それを取り返すとか、埋めるために話が進みます。
その物語が何を取り返したり、埋めたり、獲得しようとしているかによって、最後の幸せも決まるので、三つともある場合もあるし、ふたつやひとつの場合もあります。
主人公にとっての幸せの形が満たされることが大事だということです。

今回、語りを担当させていただきました。
オンラインの勉強会の時も講義に感動しましたし、そのとき自分なりに何かをつかんだと思っていましたが、その後課題も出ました。
「白雪姫」は女の子と母親の物語なので、娘二人の母である自分の子育てを振り返りますと、自分にとってこの話は特別な意味を持ちます。
わたしは悪い女王の自覚がありますので、それを後悔し反省しておりますが、反省しすぎたせいか〝女王の話〟になってしまっていました……_| ̄|○
これは、〝白雪姫の話〟ですから、それではいけません。
主人公が成長して、幸せになる、こんないい話を曲げて語っては行けませんね。
勉強会で感動し、語りで課題が分かり、重要な時間をいただきました。
精進いたします。

次回は1月の予定です。
テーマは「お月お星」です。
これも好きな話なので、とっても楽しみです(*^▽^*)

10月の中級クラス

みなさまお元気ですか?
なんだか急に寒くなって、風邪をひきそうな予感がし、「あかん、あかん、特に今はやば~い!」と、慌ててあったかい服や布団を引っ張り出しました。
10月の中級クラスを報告します。

「三びきの子ブタ」『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子編・訳 福音館書店
「名人四人きょうだい」『おはなしのろうそく31』東京子ども図書館
「ギーギードア」『おはなしはたのしい』田中康子編
「がちょう番の娘」『語るためのグリム童話5』小澤俊夫監訳 小峰書店
「舌切りすずめ」『日本の昔話2』おざわとしお再話 福音館書店
ヤンさん
「元気な仕立て屋」『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子編・訳 福音館書店

どれもこれも、みんな面白く楽しかったんですが、今回は「三びきの子ブタ」にアクシデントというか、ハプニングがあり、このことについて書かせていただきますね。
これは、語り手ならば誰にもあることですが、語っている最中に言葉が出てこなくて、頭が真っ白になったということがまさにこの日、「三びきの子ブタ」の最中におこったのですよ。
語り手さんは十分練習をしてこられていて、覚えたてとかではなかったし、家では滑らかに語れておられたそうです。
しかしながら、最初のほうで一か所小さく引っかかってしまったのを起点に、その後失速してやがて、練習では間違ったりしなかったところでなぜか言葉が出てこなくなったんだそうです。
これは、だれにでもあることなんでしっかり対策を勉強しないといけないと、わたしは気を引き締めたものでございます。

練習して滑らかに語れるようになると、自然とリズムが生まれてきます。
この話は、三回の繰り返しがあり、その繰り返しのリズムがうまれます。
そして、1回目から3回目へ進むにつれて子ブタがだんだん強くなっていくクレッシェンドもあります。
こういうことを意識しながら家で一人で練習していると、生まれてきたそのリズムが定着してきます。
そのリズムは、自分にとって心地よいリズムでもあるわけです。
そのリズムで必死に練習しますよね、みんな。
これで大丈夫と思って勉強会でみんなの前で語ったときに、始めのほうの小さな引っ掛かりがその定着したリズムを狂わせてしまい、その後雪崩のようにうまく続かなくなったということがおこったというヤンさんの解説に、大変納得いたしました。
練習しているときは、リズムができたと思ったらそれを疑わずに練習を続けますもんね。
自分だけのリズムというのは、当然聞き手や語りの場のその時の空気を予測できるものではありません。
語りながら、聞き手の様子を見て判断することですもんね。
ですから、一人で練習するときには自分の好きなリズムだけでなく、早口言葉のように早く言ってみたり、反対にゆっくり言ってみたり、いろいろやってみるのがいいそうです。
そうしてどんな風にも語れるように練習しておいて、初めて本番で聞き手が求める間で語れるようになるということです!!
納得!!

このクラスは初心者ではなくて中堅どころが集まっていますがやっぱりいろんなことがありますよね。
他人事ではないので、大変勉強になりました(^_^)

あったかペーチカ(仮)のかたが案内に来てくださって、11月からの会のお誘いをしてくださいました。
初級クラスと中級クラスのメンバーがいっしょに語るというのはとっても面白いと思います。
お世話してくださってありがとう~~(^^)/~~~

10月 初級講座報告

4月を最後に対面では出来ていなかった初級クラス、にんまり再開しました。

1.とらとほしがき 『語りの森昔話集2/ねむりねっこ』語りの森

1番で語るのは気が楽ですね!その後、私はみなさんの語りをまったり聞くことができました。そして、語りについて…とらのユーモアなところを楽しむ語りになったらいいなという事が一つ。後半に入るところで、どろぼうが牛をねらって忍び込んでいる、とらが牛小屋に入っていくと、どろぼうは牛と間違えてとらのせなかにとびのる、この場面を聞き手がイメージできるように意識して語った。

ヤンさん…とらが子どもをさらっていくのは諦めて、牛をおそうことにしたところを、そのように語りの雰囲気を変える。その上で、しっかりイメージして語れば聞き手に伝わる。とのことでした。

2.仁王さまと夜遊び 語りの森HP

個人レッスンで一度ヤンさんに聞いてもらったはなし。その時は、おばあさんがおならをした後「におうか?」と聞いて仁王さまが「仁王か」というが、洒落だとすぐに分からないかもしれないと思い、この度テキストをいじってみた。「におうか、仁王か」…とイントネーションを変えて2回言う事をこの場で試してみたとのことでした。

ヤンさん…聞き手の子どもがその時分っても良い、後で分かっても良い。わかったか?今のしゃれやで!と言ってもいい。聞き手への理解の程度(全体のどのくらい)は語り手が決めて良い。ちょっと全体的に語りが上品だったかな、最初ないしょ話のようにしていたのはなんで?

語り手さん…『おもしろいはなしやで』という雰囲気の自分の語りを抑えて、聞き手に任せるようにした。

ヤンさん…そういう事なら、おばあさんのおならから雰囲気を変えて語って、はじける意外性で笑わせるような、ねらった語り方でも良い。それでも語りは、色を付けずに語る練習をして、子どもの前に出して、子どもの反応で語りが決まるもの。子どもへの問いかけで定着する間がある。

3.なぞの歌 『日本の昔話2/したきりすずめ』おざわとしお再話

歌が語りづらい。心情に訴えかけるような、若い二人が恋に落ちるストーリー構成になっている。そんな中で度々出てくる歌『恋しくば、たずねきてみよ十七の国。くさらぬ橋のたもとにて、夏鳴く虫のぼたもち』この大事なポイントとなる歌を、言い方を変化させて語ろうと思った。

ヤンさん…歌が大事になるので、考えたりせずに、さらっと語る。特に一番最初は、ゆっくり和歌らしくなめらかに語る。聞き手に、なんやろか?と思わせるようにする。また、若者が座頭さんに尋ねた時の、座頭さんのセリフとしての歌は聞き手に説明するように、はっきり相手に伝わるように語る。

4.犬とねことうろこ玉『子どもに語る昔話1』こぐま社

語りを聞いた時におもしろいなと思って覚えた。長らく初級クラスを休んでいたが、また参加できるようになり勉強したい。

ヤンさん…以前の語りとは違って、言葉の切れ目はなくなっていたと思う。自分の癖は自分で聞くと分かるので録音して聞いてみるのも良い。一方で、なめらかになりすぎていて、起伏がない気がした。聞き手に聞かせるのに、おもしろいところ、山場をつかんで語る。この場合は前半・後半と二つの山場があり、後半の山の方が高い。なので、この山の頂上に向かって語っていく。また、テキストの一文一文のおもしろさに違いがあるので、自分の心も動かしながら聞き手が興味を持つように語る。ここが大事!というところを意識して語る。小さなおもしろいところは聞き手が見つけてくれる

しっかりした長い話は、『テキストが求める間』で語る。また、長い話は、自分の解釈に自信を持ちがちになるので、どう~?という聞き手への問いかけのように語る。

5.白雪姫『語るためのグリム童話3』小峰書店

時間があったので、ジミーさんがリクエストに応えて語ってくれました。

ヤンさんの語り カメの笛『ブラジルのむかしばなし1』カメの笛の会編 東京子ども図書館 手遊び どんぐりころちゃん

ノート式おはなし講座 語りこの愉しい瞬間p36

語り手が仕掛ける間…聞き手が求める間をつかむことが大事であって、子どもとの関係性も出来ていないといけません。子どもの目を見て、分かっているな、分かっていないな、ということが、語りながら分かるようになるので、どの程度の理解で済ますかは自分で決めて、その自然にできるポーズが間となります。敢えて間をおいて仕掛ける事もできます。

笑い話の語り方…笑い話も怖い話も間がすべてです。ヤンさんの『ホットケーキ』失敗談では、笑わせようと意識しすぎて、イメージを伝えきれなかったそうです。笑わせたい気持ちを優先したために、聞き手が返してくる間を待って返せなかったとの事です。イメージを伝えることを基本に置いたうえで、聞き手の返してくる息づかいを落ち着いて読み取り、聞き手の求めているものに誠実に返せば、間が生まれます。

『間』については、初級クラスには早いかな~とヤンさんは言われていましたが、知っておいた上で、実践に臨めるのはありがたいですね。失敗したり、なんかうまくいったりした理由が、その場で理解できる訳ですから、納得して次に向けて練習できます。うーん、聞き手とのやりとりができるようになったら、本当の「語り」ですね。おはなしを覚えてイメージを伝えて、最後まで行くことがなんとかできる段階では、おはなしの醍醐味に到達してないわけですね。難しい!ノート式タイトルにもあるように 語りこの愉しい瞬間 に向かって進んでいきたいです。

この度も盛り沢山な内容で、おなかいっぱいになりました。そして、初級講座が行われていなかった間に、自主トレ会の開催や、zoom活用などのおかげで、気持ちが途切れることなく、この10月再開に繋げる事が出来たように思います。心を寄せて行動してくれるヤンさんやみなさんに感謝です。その自主トレ会が新たな形となり「中級・初級クラス合同の語りの場」となって定期的に行われる運びとなりました。クラスの垣根を越えてのおはなし会・交流の場となります。楽しみです。

次回、初級講座11/9(火)