すいかたろう 🍉

畑ですいかを作っている。
今はすべて収穫して、少しずつ食している。
自分で作ったものだから、夫はうまいうまいという。
ひと玉を割るのがうれしいから、息子もうまいうまいという。
しかたがないから、わたしもあまいあまいという。
でも他人様にさしあげる勇気はない。

今朝、台所に下りていくと、何かがちゅんちゅん鳴いておる。
あれ? 
まだ雨戸は閉まったままだ。
ちゅんちゅん、じゅう、じゅう
あれ?
家の中だ。

鳴いているのは、すいかだった。
中にねずみが巣を作ったか?
あやちゅうちゅうが間違ってすいかに飛びこんだのか?
いや、これは、すいかたろうに違いない。

放っておいたら、いつまでも鳴いておる。
自分で出てくる気はなさそうだ。
しかたがない、おばあさんは、すいかをまな板にのせると、包丁でそうっと切れ目を入れて中をのぞいた。

おばあさんは、むかし、こんな話を聞いたことがある。
桃を半分に切ったら、ももたろうがまっぷたつになったという話を。
こんな話も聞いたことがある。
ももたろうは、まっぷたつになりたくないので、端に寄って待っていた。
おばあさんは、ももたろうをまっぷたつにしないように、端を切った。
ももたろうは、まっぷたつになった。
こんな話もある。
おばあさんは、今度こそ、ももたろうをまっぷたつにしたくなかったので、何もしないで待っていた。
ももたろうは、くさってしまった。

だから、おばあさんは、すいかに包丁でそうっと切れ目を入れたのだ。
ふつうのすいかだった。
ただ、焼酎の香りがした。
夫「熟れすぎて、発酵したんやな」

以上、夏の早朝の夢。

7 thoughts on “すいかたろう 🍉

  1. 「すいかたろう発酵編」を楽しく読ませていただきました。
    そのまま置いておけば、スイカ酒になるかもしれませんね。
    ところで、ほんとにそんな桃太郎の類話があるんですか?
    都市伝説でしょうか?
    おもしろすぎます。
    そこまで桃太郎を追い詰めたいんですね( ̄_ ̄|||)

  2. 「すいかたろう」きっといたんだと思います。
    絵が描けたら絵本にしたいです!

  3. かぶさん、絵本にしてくれ~ 笑

    ももたろう三題は、『おんちょろちょろ』掲載の「たこやき」を語ってくれた人から聞いた話。現代の民話ね~

    ジミーさん、小村さん、コメントありがと~

  4. 桃太郎が真っ二つになる話、子どもとふざけておはなし作ったりしましたが、ホンマに類話があったとは(笑)

  5. これ、とっても古い現代の民話ですよ~
    「ももたろう」とはぜんぜん別でね。だから「類話」とは言わない(笑)
    「あおいち」とか「あくのじゅうじか」とかと同じようなもんね。
    あ、「ねこのおんねん」って語ったことあったっけ?
    「いぬのいんねん」も、同じようなもんやね。
    夜中に校庭を走る金次郎とか。
    ヤンは、しょーもない話をいっぱい知っているのだ。

  6. ねこのおんねんも、いぬのいんねんも聞いたことがないで~す。金次郎さんが夜中に校庭を走るのは、壁のベートーベンが抜け出して音楽室のピアノ弾いたり、理科室の標本が踊ったり……と同じノリの怪談だと思っていました~

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