『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論 上』の報告つづき。
第1章子どもに本を手わたすこと
その5アメリカの児童図書館運動の原動力
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児童図書館が生まれたのはアメリカなんだって。
上の写真は、フランスの文学研究者ポール・アザールの『本・子ども・大人』
(1957年/矢崎源九郎訳/紀伊国屋書店刊・原著は1932年)
児童文学の基本図書として読まれた方も多いと思います。
アザールは言います。
時流が激しい狂いを見せて流れるなかでしっかりと子どもを守るもの、魂と精神をきたえる憩いの場所、人種と貧富とを問わない自由な楽しみの一画、学びくつろぎ楽しみにいく本の家。
それがアメリカに誕生した児童図書館だといいます。
そんな昔から、そんな夢のような場所がアメリカにはあったんですね。
図書館は、きのう書いた三つの活動に心血を注ぎます。
そして、アメリカ国内に素晴らしい児童図書館が次々と生まれるのです。
生まれるには、生み出そうとする力のある図書館員が必要です。
小さな家庭文庫のようなものを始めたビンガムさんが、最初です。
キャロライン・ヒューインズさんは、全国の図書館員にアンケートを取ります。
「子どもたちを本好きにさせるためにどんなことをしていますか?」
その回答は、「何も」。つまりゼロだったのです。
そこから、児童書のリスト作りを始め、児童図書館の設立に向けて動いていったのです。
そのあと、アン・キャロルムーア。
彼女は子どもの読書に一生を捧げました。
そして、フランシス・ジェンキンズ・オルコット。
児童図書館員の養成学校があちこちで開かれ、優秀な専門員が、アメリカだけでなく外国へも派遣されていきました。
それらの、子どもの読書を支える図書館は、みな公立です。
税金によって、誰でもがその恩恵に浴することができるのです。
なけなしの小遣いで高額の受講料と交通費を払って、それでも十分に学べない、だから専門家にはなれない、素人のボランティアが、今の日本にどれだけ多くいる事でしょう。
子どもの読書環境が保証されてさえいたらと思わずにはいられません。
あああ、またフラストレーション(笑)
最後に、瀬田先生の言葉を引用します。
館員が積極的に自然に子どもに本を読ませ、本好きにさせていく実際的な技術のなかで、お話をすること(story-telling)がいかに大きいか。・・・出版社へよい出版をアピールすること、児童文学賞選定に全き実権を持っていること、指導や文学史の研究をおおやけにしていくことなど、私たちの瞠目するばかりである。