日別アーカイブ: 2020年7月21日

竜殺し4🐉 おしまい

マックス・リュティ『昔話の本質』報告

第3章竜殺し-昔話の文体 最終回

物語はこのあと、こんなふうに進みます。
木の上に逃げた従者が、自分がトロルをやっつけたのだ、だから自分はお姫さまと結婚する資格があるといいたてる。
お姫さまは無理やり沈黙させられる。が、結婚は1年間待ってくれという。
ちょうどぴったり1年後に銀の白がもどってくる。

もどってきた主人公が、どうやってお城のお姫様のもとに出頭するかという場面を、オーストリアで記録された類話で、説明します。
あ、昨日まで読んでいた話とは、別の話ですヨ。

なんか楽しいでしょ。
この話では、主人公の名前はゼップになってますね。
自分が来たことをお姫さまに知らせるために、犬、クマ、ライオンを順番に行かせます。
気づいたお姫さまの様子が描写されていますね。
喜びのあまり大きな笑い声を立てた。⇒前よりもっと嬉しそうに笑った⇒心の底から笑った。
描写だけど、ほら、昨日考えたように、ちゃんとクレッシェンドしている。最後部優先の法則にのっとっている。型通りというわけです。
ストーリーは確実に前に進んでいて、停滞していない印象を与えます。

それから、けっこういろんなものが出てきます。
犬、クマ、ライオン、焼肉、ぶどう酒、お菓子、紙切れ、かご。
これは、細部の描写と言えないでしょうか。
動物、とか、食べ物、とかでいいのではないのか。
いえ、だめなのです。
昔話は、目に見えることを強く求めるからです。具体的でないとだめなのね。
そう、わたしたちがおはなしを語るとき、イメージが大事って、いつも言われますね。見えるように語ること。そのためには、見えるように書かれたテキストでなければならないのです。
だから、昔話は、ストーリーだけで進むくせに、こういう具体的な物はきちんとはめ込んでいくのです。
性質は筋で、関係は贈り物であらわされる。
というわけです。

もうひとつ、昔話の文体の特徴がここで見えてきます。
主人公は、ぴったり1年後に帰ってきますね。
これは?
そう、時間の一致!

グリム童話9「十二人兄弟」(こちら⇒)の最後の場面もそうですね。呪いの解けるきっかり7年後、娘は火刑の処刑台に上がり、そこへ12羽の白鳥が飛んでくる。なんて都合よく(笑)

リュティさんの言葉を引用します。
きっかり期限に間に合わせること、最後の瞬間にぴたりとあうことは、~昔話にしみとおっている。的確な線の鋭い描写にしっくり会う。
つまり、
昔話は真の芸術作品
だというのです。

それでね、こういうふうに、現実の世界とは違った、はるかに広い視野(壮大なストーリー)で、物事がぴたりと合う世界を描くこと、それが人間の心にとって大事なんだって。
絶対に確実であること。それが昔話の世界なのね。
現実の生活はめっちゃ不確実ですよね。コロナだって、これからどうなるかわからない。水害に遭った人たち、これからどう片付けていけば生活が元通りになるかわからない。
でも現実はどうあれ、昔話だけは、確実なの。

昔話から流れ出る信頼は、昔話を語ったり、聴いたりする人々に移る。
昔話は人を喜ばせるだけではない。人を形成し、はげます。

そうだよ、うつるんだよ~
ウイルスなんかなくたって、語るだけでうつるんだよ~

ね、語ろう。
語りの森昔話集、読んでほしいなあ。
おはなしひろば、聴いてほしいなあ。
って、そうくるか?(笑)

引用
北ドイツのある語り手が、病院で昔話をすると静める力、治す力が病人に働くようだ、と報告しているが、私たちはこれを信じたい。

はい、おしまい。
リュティさんの引用している竜殺しの話は私には見つけられませんでした。
類話のグリム「二人兄弟」をぜひ読んで見てください。おもしろいです。

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蒸し暑いですねえ(;´д`)ゞ
遠くで雷がゴロゴロ言ってる。
京都もそろそろ梅雨明けかしら。

きょうのおはなしひろばは「へこきばあさん」(こちら⇒
笑ってくださいq(≧▽≦q)