日別アーカイブ: 2020年10月25日

10月度 中級クラス

初級クラスに続き、約8か月ぶりに中級クラスが再開されました!初級クラスで5年間勉強し、進級した私たち5名も加わり、また見学に来られた方もおり、14名での勉強会となりました。

長期休暇でおはなしを温めてこられたのでしょう。すべて15分以上の本格的昔話ばかりで、聞きごたえたっぷりでした。主人公もテーマも国も違うからでしょうか、飽きることなく、おはなしの世界を存分に楽しむことができました。では、報告です。

①まほうの馬 『まほうの馬』/岩波書店

・以前はテキスト通りに覚えたそうですが、今回は語りにくい部分にかなり手を入れられての発表でした。

・何度も登場する「うつくしいエレーナひめ」ですが、『うつくしい』を一部省かれました。「うるわしのエレーナひめ」と訳されている場合もありますが、ロシアの昔話にはよく出てきます。これは「うつくしいエレーナひめ」で一つの言葉(名前)であり、毎回だとしつこく感じるかもしれませんが、削除しなくてもいいのでは、と提案がありました。

また、「おとぎばなしにでもでてこないような、どんなふででもかきあらわせないような」という文言があり、削除されたのですが、これもロシアの昔話特有の言い文句なので、残したほうがいいそうです。

・最後にうつくしいエレーナひめが「ほら、おとうさま、わたしのおむこさんがみつかりました」という言葉は感情をおさえて語りましょう。盛り上がって、ついエレーナひめになって語ってしまう気持ち、分かります。私も好きな場面では、興奮気味に自分の気持ちを押し付けてしまうことがあります。が、語り手は一歩引き冷静になって語る、聞き手が自分のイメージで楽しむことが大切、なんですよね。

②マリアの子 『語るためのグリム童話1』/小峰書店

「子どもに語る グリム童話」では三位一体など、難しい言葉が出てくるので、こちらのテキストを選ばれたそうです。しっかり言葉が入り、情景もイメージできて、おはなしに引き込まれた素敵な語りでした。

あけてはいけないと言われた十三番めのとびらをあけてしまう、女の子。聖母マリアに聞かれても「あけていない」と言うばかりです。言いつけを守らず、うそをついた女の子は下界の荒れ野に捨てられ、口もきけなくされてしまいます。

しかし、王子に拾われ、結婚し、おきさきとなります。子どもを三人産みますが、その度に聖母マリアが現れ、「とびらをあけたか」と聞かれます。が、今回も三回とも「あけていない」とうそをつき、聖母マリアに産まれた子どもを連れ去られてしまいます。口がきけないため、大臣や王子に説明することができず、おきさきが子どもを食べたと疑われ、火あぶりの刑にされます。しかし、火が燃え始めたとき、ついに「とびらをあけた」と正直に答えます。

「おおマリアさま、わたしはとびらをあけました」と言う前に『おきさきの心のなかに強い後悔の気持ちがわきおこり、死ぬ前に白状しようと思いました』と書いていますが、「なぜ白状したか?」は聞き手自身が考えればいいので、削除しましょう、とのアドバイスでした。

嘘を一度もついたことがない人はいないのでないでしょうか。正直に言わなければいけないのに、白状できない気持ち。小学校の高学年で語られるそうですが、子ども達がどんな反応をするか気になります。Kさん、また機会があれば教えてくださいね。

③ドシュマンとドゥースト 『子どもに語る アジアの昔話2』/こぐま社

・イランのおはなしです。タイトルを言ってから、ドゥーストとドシュマンの意味を説明されましたが、余計なことは言わず、ドシュマンは「敵」、ドゥーストは「友」と辞書的な意味を言うだけでいいそうです。

・耳で聞いているので、登場人物が複数名出てくる場面は、誰が言った言葉か分かるように会話文の前に主語をもってきましょう。

例えば、小屋の中でライオン、トラ、オオカミ、キツネが会話する場面があるのですが、

「〇〇〇」とキツネがいった。 → キツネが「〇〇〇」といった。

になります。誰が言った言葉か分かる場面では、主語を言う必要もありません。

・このおはなしの前半は二人で旅をし、後半は「隣の爺譚」型でドシュマンの話としてストーリーが進んでいきますが、

◎ドシュマンは、ドゥーストの幸せな生活がうらやましくて、自分も同じ幸運を得ようと・・・

◎べつのひみつを聞き出し、ドゥーストにおとらず金持ちになれるかもしれない・・・

◎まもなく、ドゥーストがいったとおり、・・・

のように、ドゥーストという言葉が度々出てくるので省きましょう。

・一文に行動が多く書かれており、聞き手はイメージしづらく、語り手は息が続かない文が沢山あります。その場合は二文に分けるといいでしょう。

例えば、Yさんが語りにくかった一文

「ドゥーストは、金貨をポケットにつめられるだけつめて、すぐ馬に乗り、近くの村まで行って、朝になるのを待った」

→「ドゥーストは、金貨をポケットにつめこんだ。そして、馬で近くの村まで行って、朝になるのを待った。」

自分のレパートリーである、「小石投げの名人 タオ・カム」や「マカトのたから貝」(どちらも同じアジアの昔話に集録)にも語りにくい長い一文が多くありますが、このように手を加えればいいのだと勉強になりました。

④シン・シン・ヤンドンマ 『語りの森昔話集』

ブータンの昔話で、シンポという妖怪が出てきます。前半は「大工と鬼六」のような名前当てのおはなしです。後半はシンポに捕らえられたシン・シン・ヤンドンマが、知恵をいかして逃れ、また、他に捕らえられていた人々も逃がしてやり、最後は領主の三人目の息子と結婚します。

久々の語りで、活舌が悪いことを気にされていました。子ども達があまり耳にしない言葉、「わたりどり」や「シンポ」ははっきりと発音しましょう。練習のときからマスクをして、活舌を意識するといいですね。

☆五分次郎 『語りの森HP』(ヤンさんの語り)

日常語での語りで、味付けの違うハンバーグを食べたあと、和菓子のデザートを食べたようなほっこりした気分なりました。

初級クラスでは、なんとなく語りにくかったけれど、どのように変えればいいか分かりませんでした。もしくわ、どうしても語りにくい部分はヤンさんに変えてもらっていましたが、中級では自分で変える作業をするのです。口にのらない言葉、例えばはらっぱ→野原、ごてん→お城と言い換えたり、不要な接続詞や文は削除し、足りないところは付け足す、文の前後を逆にして分かりやすくしたり、三回の繰り返しは同じ言葉でそろえる、などなどです。そして、自分だけのテキストができるのです!

中級クラスでは発表された方から、手を加えたテキストのコピーをもらえます。そのテキストを見ながら勉強しますが、家に帰ってからもこの人はこんな風に手を加えている、と新たな発見や復習もできます(^^♪

次回中級クラスは11月24日(火)、商工会館にて9時~12時です。場所と時間がいつもと違いますので、間違えないようお気をつけください。