第12回語法勉強会「まほうの鏡」🐟🐦🦊

12月18日の金曜日、語法勉強会がありました。
人数制限をしましたので、いつもより人数は少ないです。
久しぶりにお会いした方々と、お互い話したいことは山ほどある中、会場の設営とともに机といすを消毒し、ひたすら準備を手伝ってくださったみなさんにまず感謝です<(_ _)>

今回の話はギリシャの「まほうの鏡」(『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』)です。
主人公は狩人です。ある時狩人は海辺で魚を助けます。魚はお礼にうろこを一枚くれて、助けが必要になったらうろこを燃やせと言います。次に狩人はわしのひな鳥を助けます。親鳥がお礼にしっぽの羽を一枚くれました。さらに、きつねを助けます。きつねは背中の毛を一本くれました。
狩人は、ある国につきました。その国のお姫さまは、なんでも見えるまほうの鏡を持っていました。お姫さまは、かくれんぼをして三日たってもみつからなかった人と結婚する、みつかった人は打ち首にする、というおふれを出していました。狩人は挑戦しました。
まず、魚を呼んで口の中に隠してもらいました。もうちょっとのところで見つかってしまいました。でも惜しかったのでお姫さまは許してくれました。また狩人は挑戦し、わしを呼んで背中に乗せてもらい天の果てまで行きました。が、また見つかってしまいました。狩人はもう一度挑戦します。きつねを呼んで、お姫さまのいすの下まで穴を掘ってもらい、みごとにかくれおおせ、お姫さまと結婚しました。

まず最初に、語法とは何かですが、昔話の語法とは、昔話が持つ独特の言葉の選び方やつながり方のことです。
国語の時間に勉強した文法のように、昔話にも耳で聞いて分かりやすように言葉の選び方やつながりに法則があります。
昔話の語法を学ぶことで、語りがより聞き手にわかりやすいものとなるために、がんばって勉強しましょう(^_^)

テキストに沿って、冒頭部分から順に文法指摘をしてもらいました。
とても全部は書けないので、昔話の抽象性についてまとめてみます。

昔話は、物事や登場人物の気持ちを詳しく説明したり描写したりしません。
抽象的に語ります
どういうところが抽象的なのかというと、名指すだけというのがあります。
たとえば「森」と語る場合、針葉樹林なのか広葉樹林なのか、大きいのか小さいのか、するどい山かなだらかなのか、連なっているのかとか、小説のように森自体の描写はしません。そうすると、聞き手には、聞き手のイメージする山が即座に出て来ます。描写があればそこに注意が行ってしまいますし、聞き手のイメージと違えば修正しなくてはなりません。そんなことは話を先に進めるための妨げになります。
ストーリーを速いテンポで進めるというのもあります。
狩人は、獲物が取れずにひと晩森の中で寝ますが、ただ「森の中でねました」とあるだけです。木の下で寝たのか、木の上に登ったのか、ご飯は持ってたのか、全く説明せず、次の行では、「朝になって、海辺までやって来ると、…」ねたらすぐ朝です。もう、話が進んでいます。余分な文章が全くありません。ぜんぶそぎ落とされています。
昔話の場面は1対1で構成される
これも、小説と大いに違うところですね。耳で聞いて分からないといけませんから、登場人物が多いと分かりにくいし、覚えてられません。語るときも、登場人物が3人以上いるととっても語りにくいですよね。
三・七・九・十二・丸い数を好む
これは、「三びきの○○」「三枚のお札」「三つのねがい」など、タイトルにすでに出ているものも多いですね。話の中にも、特に3は、しょっちゅう出て来ます。3人兄弟・姉妹とか、「まほうの鏡」のように3日以内に見つけなければいけないとか。こういう数字が出てきたらいかにも昔話らしいです。また出て来た!と思うと、かえって安心するように思います。
正確さ
この話でいうと、きつねが正確にお姫さまのいすの真下に穴を掘ったことです。ピンポイントです。少しもずれていません。ずれていたら話が成立しないやんか、というまさにその通りなんです。「ヘンゼルとグレーテル」で、森で迷った二人がたった一軒の小さなお菓子の家にちゃんとたどり着くとか、「白雪姫」が、いばらを踏んで目暗めっぽうに森を走っていたら、小人の家についたとか。よく考えると、確率的には非常に小さくて、昔話の主人公たちはほぼ遭難で終わってしまいそうです。でもちゃんとつくんですね。不思議ではなくて、抽象性の表れなんです。
物理学を無視している
これは、狩人が魚ののどの中に隠してもらうところです。どんだけ大きな魚なんだよ、クジラ級?と思って語る必要はありません。最初に魚が出て来た時のイメージは、そんなに大きな魚ではないと思います。仲買人が競り落とす巨大マグロとかではなくて、スーパーに並ぶくらいの魚をイメージしてるんではないでしょうか? そのイメージでいいんです。その小さい普通の魚が狩人を飲みこんで隠すのです。物理学を無視して。ここで、大きさの整合性を追求する必要は話の筋からいうとありません。はあ、なんとうまく処理されていることでしょうか。
属性にぴったりの隠し方をする
これは、魚は狩人を飲みこんで深い海の底へもぐります。わしは背中に乗せて天の果てへ飛んでいきます。きつねは穴を掘ります。無理なこと、むちゃなことをしていませんね。聞いていて、まったく違和感ありません。「なんで○○が✖✖なんてするの?!」と聞き手が思う暇があってはいけません。その「なんで?!」は、話の筋には全く関係ないので、邪魔なだけです。話をスムーズに進めないといけないんですからね。
そういうわけで、昔話の語法というのは聞き手にわかりやすいために成立しているので、抽象性についての説明も、どれをとっても耳で聞いて分かりやすいためなんだと改めてお勉強できました。

語りの森HPの昔話の語法のところでは、検索機能がついています。そこで、抽象性とか気になるフレーズを入れるとさっと該当箇所が出て来ますので、気になったその都度に調べてみるのがいいかと思います。
語法は確かに難しいです。
あるいは私が覚えられないだけですけど、何度もこの勉強会で違う話を解説してもらうと、薄紙を一枚ずつ重ねるようにではありますが、少しずつ分かってきた…、ように…、ちょっとは思います(笑)
同じ内容を1月19日にオンラインでやってくださいます。
こちらは人数制限ありませんので、お問合せのところで詳細をご覧いただき、お申し込みください。

いよいよ年の瀬も迫ってきましたね。みなさん、お体に気を付けられて、どうぞよいお年をお迎えくださいませ(^o^)/

3 thoughts on “第12回語法勉強会「まほうの鏡」🐟🐦🦊

  1. ジミーさん、渾身の、めっちゃわかりやすい「親しめる語法」、ありがとうございますヾ(^▽^*)))
    昔話は抽象的様式の文芸ですね。まずは抽象性について知ることが大事ですね。

    定員をいつもの三分の一以下だったので、初めて定員オーバーしましたね~

  2. ヤンさん、さっそくコメントをありがとうございました。
    内容に間違いがないでしょうか?
    いまさら遅いですが、心配しながら書いてました。
    まだまだ修行が足りませんので、今後ともご指導よろしくお願いいたしまする

  3. しゅ、しゅぎょう~
    仙人になるおつもりか?
    でも、たしかに、どこまでが正解かわからん部分もあるしねえ。昔話というか、語りは生きものやからねえ。ばちっと計算できない。
    わたしも学びながら講義している次第(m´・ω・`)m

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