月別アーカイブ: 2022年11月

11月のプライベートレッスンと再話クラス

今月のプライベートレッスンは再話の再検討だったので、その次の日の本当に久しぶりに行われた再話クラスと一緒に報告させていただきます。

プライベートレッスン
「スウォファムの行商人」の再話の再検討
原話『MORE ENGLISH FAIRY TALES』J.JACOBS
参考『イギリス民話集Ⅱヤラリー・ブラウン』木村俊夫他訳 同朋舎

再話クラス
『妙好人傳』の講読
再話検討
「『わけしり』と『しあわせ』」
原話『世界の昔ばなし・22ドイツ語圏の昔ばなし三人兄弟と巨人』寺岡寿子訳 小峰書店
「海はどうして青いのか(海の青いいわれ)」
原話『中国山地の昔話』稲田浩二他編 三省堂

再話クラスの『妙好人傳』の講読について説明しますね。
これは、もとは天保十三年(1842年)に出版された聖人伝で、たくさんの聖人について書いてある本です。
その中の1話が、今回この話を選ばれた方の地元の話で、子どものころご家族から直接聞いたこともあるそうです。
『妙好人傳』は、江戸時代の本なので古文の授業で習った文章に近く、そのままでは(少なくともわたしは完全に)読めません。そこでみんなで購読をしてまず意味をつかみ、次回の勉強会で再話検討をしようということでした。
話の中には地元の神社が出てきます。話にまつわるお祭りもあったそうで、地元の古い話を今読める形に再話して残しておきたい、地元の子どもたちに聞いてほしいということで、この話を再話出来たらいいなと思ったそうです。
そういう選び方も素敵だなと思いました。

そのあとは、2話の再話検討をしました。
プライベートレッスンも含めて、3話の再話検討をして、両日とも出たポイントが、呼称の統一です。
結論を言いますと、呼称は聞き手のために統一すること!となります。
たとえすぐに「ああ、あっちの人のことね」と分かるとしても、その一瞬でも聞き手を離れさせてはいけない、迷わせてはいけない、集中を途切れさせてはいけないということです。
どうしても話の流れから呼称を変える必要があるときだけ変えます。
例えば、お姫さまが王子様と結婚してお妃さまになるときです。
結婚したのにずーっとお姫さまのままだとおかしいですね。
聞き手も「あれ、結婚したらお妃さまちがうの?」と思ったとしたらどうでしょうか?
一瞬話から離れてしまいますね。
この一瞬がいらない一瞬で、いらないというより邪魔な一瞬ですね。
聞き手を引き付けておくのはとても大事、一瞬でも離すまいぞという気合で語りましょう。
だから、テキストは大事ですね。

再話クラスはコロナが始まってからずっとお休みでした。
その間に、再話の入門講座があり、そこから再話クラスに進んでくださった方がたと今回初めていっしょになりました。
人数が増えて、より活発な議論ができそうでうれしい限りです!(^^)!

11月の中級クラス

おさらに♪ おはしに♪ ぼたもち♪ だんご♪

Hさんの「和菓子の手遊び」で始まりました~

1.ロバの耳をした王子さま  語りの森昔話集4/おもちホイコラショ 語りの森

2.ウサギとオオカミ  おはなしのろうそく29 東京子ども図書館

3.夢の橋  日本の昔話1/はなさかじい 福音館書店

4.金噴き明神  語りの森昔話集5/ももたろう 語りの森

5.ぶんぶくちゃがま  語りの森HP

ヤンさん  わたしがテピンギー  同名絵本

おはなしを解釈するって、語る上でとっても大事だと思うのですが、思い込みや好み、環境や条件に気をとられて取り組むのは惜しい。ここの部分が好き、この言葉が好き、それが原動力になることは、私もそうです、よくあります。でも、おはなしのテーマをちゃんと自分の言葉で言えるかな?ということを考えるといいのかなと思いました。このおはなしを語りたいな直観!を掘り下げると、テーマが浮き上がってくるのですが、それをさらに理解するために言葉にする。ATUもあれば頼りになります。そして、おはなしのクライマックスここ!で間を生かしてばちっと語る。または、噛んで含めるように語るんですね。ヤンさん(笑)

聞き手の子供たちにおはなしを聞いてもらうこと、喜んでもらうこと、そっと手渡すことを誰もが目指しているかと、私もいつもそうしたいです。おはなしをそのように語る。…書いている最中、なんだか霧が晴れてきました。この内容は、繰り返しの練習ではない部分のところだと思うので、時間がかかるんですね…。体験したり類話をあたったり、語法を考えたり、内側を膨らませるイメージです。また、ヤンさんが「ぜひとも、子どもに語ってくださいね~」と言われているのが印象的でした。時間をおいて身に沁みてきました。勉強会の振り返りは大事です。やりっぱなしは忘れてしまいますよー!そして、私は忘れっぽいので、さまざまなクラスに顔を出し、語りを聞くためにおはなし会に行きます、神出鬼没。知っての通り、理論と体験の両方がびちっと繋がると感銘を受けて忘れなくなるんですよね。少しずつですが、これが語りを変える…はず。と思っています。

今日は感想になってしまいました。今後もテキストに向き合って、かじりついて考えていって、時にはおしえてー!と、ぶんぶんゆすぶってみたりしながら、面白がっていこうと思います。今回もみなさんのさまざまな語りを聞けて、語り手さんの思いや悩みを共有できて、深くて楽しい学びとなりました。

来月は12/20㈫です~

『チャンス』ユリ・シュルヴィッツ📕

絵本『よあけ』の作者ユリ・シュルヴィッツの自伝がでました。
幼いころから14歳までの暮らしがつづられています。

『チャンス はてしない戦争をのがれて』ユリ・シュルヴィッツ著/原田勝訳/小学館/2022.10.03
児童文学です。

ユリ(本書では元の発音に近いウリ)はユダヤ人で、ポーランドのワルシャワに生まれました。
4歳の時に第二次世界大戦が勃発しました。
副題が「はてしない戦争をのがれて」と訳されていますが、「war」ではなくて「holocaust」です。
ホロコーストとは、ナチスドイツによるユダヤ人大虐殺のことです。
両親は、幼いユリを連れてソビエト連邦へ脱出します。その危険な逃避行の苦しみは尋常ではありませんでした。

書名の「チャンス」という語には、「好機」「可能性」という意味のほかに「偶然」という意味があります。
ユリと両親が戦争を生き延び、ユリが画家になったことは、「偶然」の重なりによるものという意味です。
どのような「偶然」なのか、ぜひ読んでみてください。
人生って「偶然」の連続でできているのかもしれないと感じます。

本書の随所に、のちのシュルヴィッツを彷彿とさせるエピソードがあります。
ちょっとだけ紹介しますね。

何日も食べるものがなくて飢えに苦しんでいた幼いユリを支えてくれたもの。
ひとつは、お母さんが物語を語ってくれたことでした。
ギリシア神話、おとぎ話、お母さんが見聞きした話、映画のストーリー・・・

(引用)
こうした物語には、ぼくをどこか遠いところへはこび、知らない人たちの人生を味わわせてくれる力があった。おかげで、ぼくの想像力はかきたてられ、今も変わらない物語への愛情と、物語がもつ力への信頼をはぐくむきっかけとなった。(p140)

もうひとつ、ユリに空腹をわすれさせてくれるものが、絵を描くことでした。
食べるものがないくらいだから、まともな絵筆や紙はありません。それで、焦げた木片を使って、木の皮や枯葉に描き、花びらや葉をつぶして絵の具の代わりにしました。地面に棒で絵を描くこともありましたが、空腹で、体力がついていきませんでした。

(引用)
そのうちに、指で空中に絵を描けばつかれずにすむとわかった。通りかかった人には、頭がおかしくなってしまったように見えただろう。でも、ぼくは気にせず、せっせと指を動かした。・・・
それにもつかれると、ぼくは部屋に引っ込んで休んだ。土間に横になっているときは、今度は目をとじ、頭の中で絵を想像した。
それが木の葉の上でも、想像の中だとしても、絵を描くことはただの気晴らしじゃなかった。
ぼくにとっては、いつでも帰れる家のようなものだった。(p146)

引用が長くなりました。
シュルヴィッツのあの美しい輪郭と色が、こんな幼児体験を経て生まれてきたのだと考えると、涙がでます。

戦争が終わって、一家はふるさとのポーランドに帰ってきますが、ユダヤ人であるということで、差別を受けます。ふるさとも安住の地ではなく、親族を頼ってフランスに行きますが、そこでも長くは暮らしませんでした。
そのころ、ユリは14歳。難しい年頃です。
親友が欲しかったのに、得ることができなかったので、それならばと、友を作らず孤立します。そして、彼の真の友となったのは、『三銃士』の作者アレクサンドル・デュマであり、ポール・ファベルでした。どんどん冒険物語にのめりこみます。
そして、決して彼を裏切ることのない忠実な友、それは、絵でした。絵のおかげで、寂しがる暇などありませんでした。

春になったら、シュルヴィッツを読む会をしたいな。
お気に入りの絵本を持ち寄って、語り合いたいと思いました。

 

 

半そでで💉

もういっこ、終わった~
図書館の絵本入門講座が終了しました~

受講されたかたから学ぶことが多かった年でした。
とういうか、高校の講座でもそうだったけど、コメントされた言葉から触発されて感じることが多かったと言えばいいのかな。
絵本を読むことの意味を深く感じ取った年でした。コロナの経験も影響してるのかなと思います。
充実した1か月が終わりました。ありがたいことです。

さてさて、年末にかけては、ババの定期の勉強会とおはなし会、がんばります。
へっへっへ、うまくいけば、落語会と、温泉と、民博も。
と、遊ぶために、きょう、コロナワクチン接種に行ってきました~
オミクロン対応のやつね。

下に半そでを着て行ったら、お医者さまがほめてくださいました。
お医者さま「半そで、ありがとうございます」
わたし「いえいえ、こちらこそありがとうございます」

皆さん、予防接種は半そでで行きましょう~。ほめてもろたら嬉しいよ。

 

 

いっこ終わった~😊

高校の保育、絵本読み聞かせの授業が終わったあ
まあ、たった5時間だけなんだけど、手は抜けないし。
毎年、どんな生徒が選択しているのか、顔合わせてみないと分からない。
高校生の発するエネルギーって、半端ないし。
講評するの、けっこう神経つかうのですよ。

でも、おもしろかった。

最終回の今日は、地元の図書館に行って本を探してくるのが宿題。それを読み聞かせしてもらった。そして、なぜその本を選んだか、どの場面が一番好きか、対象年齢は何歳を想定したかを、話してもらう。

『マスクをとったら』いりやまさとし/講談社/2021年刊
を読んでくれた子がいてね。
マスク生活が子どもの育ちによくない影響を与えてますよね。だから、こんな本が出てたんだって、感心した。
パンダやライオンやカバなどがマスクをしてて、マスクをとったら何をしたいかってだけのことなんだけど。
最後のページで子どもたちがマスクをとる場面が一番好きとのコメント。
じつはこの高校生たちが入学した年からマスク生活が始まった。
素顔を知らないまま卒業するんやなって、ちょっとつらかった。この本を読んでくれたから余計にね。

授業を機会に、思いがけない絵本との出会いが生まれてくれたことを願っています。
わたしも新しい本を教えてもらったよ。

************

きょうのHP更新は《外国の昔話》「くまのしっぽはどうして短くなったか」
冬に向けて準備してくださいませ~