くまぜみとあぶらぜみ  byヤン

ごみを出してから、門柱で立ちどまり、やかましい垣根を見あげた。
虫おんちのわたしでも、ぱっとひと目で五匹発見!
シャンシャンシャンシャンシャン……
ずっと鳴きつづけているのかと思ったら、交代で鳴いている。
おお、みごとなカンニングブレス!
体を震わせ、ここぞとばかりに鳴いている。
体=声=いのち。
なにも、なにも、考えず。
体=声=いのち。
「あれって、だれやったっけ?」
毎年尋ねるわたし。
毎年答える夫。
「くまぜみ。昔はあぶらぜみのほうが多かった。温暖化でくまぜみが増えたんや」
「あぶらぜみは、ジージージー、やな?」
毎年尋ねるわたし。
毎年答える夫。
「そや。見たらわかるやろ。くまぜみは羽が透明やから値打ちもんやねん」
半世紀以上むかしの少年の目をする夫。
繰り返される年中行事。
平和。
ちなみに息子は、虫のプロ。
三歳からの興味を失うことなく、今はそれで食べている。
なんの役にも立たないことで……?
どうか、文科省に切られませんように。
どうか、戦場に行きませんように。
つくつくほうしが鳴くのを心待ちにしている ヤン

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