月別アーカイブ: 2020年5月

おかゆの岸のつくり方🍚

ロシアの昔話「がちょうはくちょう」『おはなしのろうそく27』東京子ども図書館

うん、きのうは黒パン、今日はおかゆ^3^

あのミルクの川がおかゆの岸の間を流れてるってやつ。
私のイメージでは、おかゆって、やわらかいのね。
トロっとしたおかゆの岸がイメージしにくい。で、硬めのおかゆって、考えてたの。

調べました。

「がちょうはくちょう」の他の人の翻訳。翻訳者のみなさん、おかゆ?
「ババヤガーの白い鳥」『ロシアの昔話』内田莉莎子編訳/福音館書店
⇒ゼリーの岸
「鵞鳥白鳥」『ロシアの民話上』中村喜和編訳/岩波書店
⇒ゼリーの岸
「魔法の白鳥」『ロシアの怪奇民話』金本源之助訳/評論社
⇒ジェリーの岸

あらら。ゼリーなんだ。
おかゆって訳したり、ゼリーって訳したりってことは、私たちの知らないロシア独特の食べ物なんだろうね。

で、きのうの『悪魔には2本蝋燭を立てよ』で確認。
「ロシアの『白米城』」にこうあった。
「ミルクの川が流れ、川岸はキセーリでできていて、野には焼けたシャコがころがっていた、そんな昔のこと・・・」
これ、ロシアの魔法昔話の発端句なんだって。
ミルクとキセーリと焼いた野鳥は、かつてロシア人の食卓になくてはならない物だったそうです。

ロシアの伝統的な食べ物キセーリ。
キセーリって、いまは果物なんかをピュレ状にした飲み物で、ジュースやミルクを入れたくず湯みたいなものなんだって。
やっぱり固形物じゃないね≡(▔﹏▔)≡

ところが、かつては違った!
『ロシア料理物語』(N・I・コヴァリョフ著)につくり方が書いてあって、その訳を引用させてもらうね。

カラスムギのひきわり100グラムに熱湯300グラムを注ぎ、暖かいところに一昼夜置いたものをふるいで濾す。これに塩2グラム、砂糖8グラムを加えてまぜ、バターを塗った深皿に移して涼しい場所に置く。冷めてからそれを切り分ければキセーリの出来上がり。

切り分けるんだから、固形物だ!
レシピからイメージすると、日本の「ういろ」に似ているって。たしかに!

ほら、調べると、イメージがしっかりしてくるでしょ。
ミルクの川が流れているのは、昔のキセーリの岸なんだ。
ういろの岸。
ああすっとした。
ういろにミルクをかけて食べるんだ。可能ですね。味は知らんけど。

伝統的なキセーリはゼリーのようなデザートでも飲み物でもなくって、栄養価の高い滋養に富んだ食べ物、腹持ちのする食べ物だったのです。

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今日のレパートリーの解凍
「ギーギードア」『おはなしはたのしい』たなかやすこ

《ステップアップ》をリニューアルしたので、活用してくださいね~
いつお話会が始まってもいいように、がんばろう(✿◠‿◠)

マーシャと黒パン🍞

今日は日曜日。本読んでたの。
面白いこと発見。
『悪魔には2本蝋燭を立てよ』齋藤君子著/三弥井書店
副題が「ロシアの昔話 俗信 都市伝説」

そのなかに、「パンとパスタ」っていう項があってね。
ロシア人にとって、パンは神聖な食べ物で、豊かさの象徴でもあるんだって。
日本でいえば神棚のようなところに、いつもパンが供えられて、パンは、神様からの贈り物でもあるし、神様そのものでもあるんだって。

パンを切り分けるのは一家の主人、パンをこねて焼くのは主婦の仕事。
パンを焼くのにペーチカの中に入れるときはしゃべらない。床をはいてもいけない。
タブーが色々あるそうです。

タブーを守って焼き上げたパンは、お守りになるから、新生児のゆりかごに入れたり、旅に持って行ったり、引っ越しに持って行ったり。

その神聖なるパンが、黒パンなんだって。
ライムギや大麦で作る。
19世紀になってやっと、ロシアの南部に小麦栽培が増えてきて、小麦のパン,つまり白パンが食べられるようになった。それもぜいたく品だったわけ。
ロシア中部北部では、ほとんど黒パン。
大麦しか取れない地域の黒パンは、翌日になると斧でたたき割らなければならないほど固くなってしまうそうです。

ロシアの昔話「がちょうはくちょう」『おはなしのろうそく』で、マーシャとペーチカのやり取りのところ。
マーシャは黒パンは嫌、うちには柔らかなふわふわした白パンがあるっていうでしょ。
たしかにここはマーシャが我儘でぜいたくだってわかるところだけど、そんな食糧事情もあったのね。
そしてそれだけじゃなくて、宗教的にも意味があったんだ。
神さまの贈り物に対する不敬。
それを戒める目的が、このモティーフにはあった。

背景を知ると、話が深まるね~ φ(* ̄0 ̄)

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今日のレパートリーの解凍
「さんびきのこぶた」『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子編訳

おはなしひろばはお休みですm(__)m

 

 

 

 

グリム童話「おおかみと七匹の子やぎ」🐐

きょう2回目の投稿。
いや、別に、ヒマなんじゃないんですよ。
おはなし会がないので。
あ、ひまか(^人^)

KHM5「おおかみと七匹の子やぎ」
私のレパートリーとしては、けっこう新しい。
既存のテキストで、ちょっと気になるというか、嫌いな個所があったので、覚える気にならなかったの。
『語るためのグリム童話』(小澤俊夫編訳/小峰書店)が出て、ああ、そうだったのか~って、納得できたから、覚えました。第1巻です。でも、これもちょっと整理して語っていますけど。
おはなしひろばにあります。

そのあたりについて書きますね。

ATU123「オオカミと子ヤギたち」
この話型は、起源がとっても古くて、12世紀、14世紀の文献にあるんだって。
今では、ヨーロッパが中心だけど、世界中に類話があります。
ラスト、おおかみは池に落ちるんじゃなくて、母ヤギが戦いを挑んで勝つとか母ヤギが家に誘い込んで炭火の中におおかみを落っことすとかのバージョンがあるそうです。
子ヤギたちが母ヤギの言うことをきいて、最後までおおかみを家に入れなかったっていうのも。

テキストの問題。
グリム兄弟は、1812年に初版を出してから、1857年の7版まで改訂してますね。45年間テキストが変わり続けている。
7版が決定版として、岩波文庫とかあちこちから翻訳出版されています。おはなしのろうそくやこぐま社の子どもに語るシリーズも、7版ね。

小澤俊夫編訳の『語るためのグリム童話』シリーズは、2版をもとに7版の良いところをとって、再話してある。

ここで、2版と7版を比べてみます。(2版は小澤俊夫訳、7版は高橋健二訳)
初版は短かすぎるのでここでは使いません。
ざっとです。


2版:無し
7版:(冒頭の段落)人間のお母さんが自分の子供をかわいがるのと同じように、
これ、嫌だったんです。ストーリーにすっと入っていきたい。


2版:おおかみは、悪い計略を考え付きました。
7版:無し
石灰を買ってくる直前ね。計略なんて、いわずもがな。不要。グリムさん、消去したんですね。


2版:無し
7版:ほんと、人間ってそんなものです。
粉屋がおおかみの足を白くしてやるところ。
これも、嫌だったんです。いきなストーリーからはずれて現実に戻ってしまう。


2版:なんて悲しいことでしょう。狼が来て、かわいい子どもたちを食べてしまったのです。「まあ、わたしの七匹の子ヤギたちは、みんなしんでしまったわー」と、お母さんヤギは、すっかり悲しくなってさけびました。
7版:つぎつぎと名前を呼びましたが、だれも返事をしません。
家が荒らされているのを見たお母さん、2版は短絡的ですね。筋の運びに無理があります。7版は、「名前を呼ぶ」という具体的な行動を示しています。イメージしやすい。


2版:(子ヤギは母ヤギに)どんなに悲しいことが起きたか、話してきかせました。
7版:(子ヤギは母ヤギに)おおかみがきて、ほかの子ヤギをみんな食べてしまったことを話しました。
具体的でイメージしやすいのは7版。出来事が言葉で繰り返されていますね。


2版:お母さんヤギは、かしこくて、なかなかちえがありました。そして、いろいろ考えてみました。なんとかして、子どもたちを助け出せないかしら?
7版:お母さんヤギが、かわいそうな子どもたちのためにどんなに泣いたか、みなさんおわかりでしょう。
どっちもいやですね(私見だよ)。2版は説明がくどすぎ。7版は「みなさん」なんて呼び掛けて、いきなり現実にもどっています。


2版:なし
7版:ふくれあがったおなかの中で何かが動き、もがいているのがわかりました。
寝ているおおかみの描写です。7版、リアルですね。これは避けたい。


2版:すると、六匹の子ヤギは、ちっとも傷つかずにとびだしてきました。おおかみが空腹のあまり、丸のみにしてしまっていたからです。
7版:ひとはさみいれると、もう、一匹の子ヤギが頭を出しました。切り進んでいくにつれ、つぎつぎと六匹が全部飛び出しました。みんな、生きていたばかりか、傷ひとつ受けていませんでした。怪物おおかみは、がつがつして、まるのみにしてしまったからです。それは嬉しいことでした!
7版は言葉も多く、リアルですねえ。子ヤギが出てくるところ、残酷です。それと、両方とも、なぜ子ヤギが生きていたかを説明しています。これ、嫌ですね。昔話は切り紙細工のように語るのです。「え~~、生きてたん?」という聞き手の驚きは、驚きのままにしておきましょう。「噛まないで、丸のみにしててん」なんて語り手として言えない。リアルすぎ。


2版:無し
7版:「おおかみが死んだ!おおかみが死んだ!」とさけびました。
「喜んだ」というだけより、具体的に会話文で表現するほうが、よくイメージできます。

まあ、こんな感じです。
2版より7版の方がストーリーの矛盾がないように整理されているが、言葉数は多くてやや描写がリアルです。

子どもたちは、題名を言うと、「知ってる~!」っていいます。
わたしは、「お、よかった。これ、おもしろいよなあ」といって、共犯者に仕立て上げてから、おもむろに語り始めます。
スリルのある話なので、すぐに世界に入ってきます。
ラストの「おおかみ死んだ」では、大喜び。「やったー」っていう子も、躍り上がる子もいます。

いい再話が出版されてよかった。自分でも整理することができてよかったと思います。
先生に感謝しています。

『オットーウベローデグリム童話全挿絵集』古今社

 

みなさん、アンケート・・・
そんなにはずかしい?^0^

日常語で語ろう🤗

《日常語で語ろう》リニューアルしました。
スマホでも見やすくなったので、訪れてくださるとうれしいです。
自然な語りを目指しています。

今日のレパートリーの解凍。
「世界でいちばんきれいな声」『おはなしのろうそく11』東京子ども図書館
こがもが、どんな声にも驚きとあこがれを持っていること、いいなあと思います。
自分以外の何かを素直に受け入れる力が、本来、あるんだなあと思います。
そんなふうに生きていけたらいいな(✿◕‿◕✿)

《絵本のこみち》📚

絵本のこみち、リニューアルしました。
出版社が了解している本については、表紙絵をつけました。
活用してくださるとうれしいです。

今日のレパートリーの解凍
「おおかみと七匹のこやぎ」『語るためのグリム童話集1』小澤俊夫監訳/小峰書店

昔話集のアンケート、皆様の参加を心からお待ちしています。ほんとに。