月別アーカイブ: 2020年12月

昔話の解釈ー金の毛が三本ある悪魔3👿

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第3章 「金の毛が三本ある悪魔」つづき

「白雪姫」と「金の毛が三本ある悪魔」の共通テーマ、分かりましたか?
死の危険に陥った者だけが、死の現実を知った者だけが、人間として完成することができる。でしたね。
これは、「白雪姫」では、よいことが悪いことになる、逆に、悪いことがよいことになるという倒錯の連鎖によって描かれているのでした。では、「三本の金髪をもった悪魔」ではどうでしょうか?

主人公は、ウリヤの手紙をきっかけとするモティーフのみならず、もともとの最初から、死の手にゆだねられています。

王さまは、男の子を買い取ると箱に入れて川に流すのです。もちろん、殺すためです。
ところが、死の川は、箱を命の岸へと運びます。箱は、棺にはなりませんでした。箱が開かれたとき、男の子は、生きていたばかりか、元気だったのです。
はい、倒錯です。
悪い意図が善い結果を招いています。

この男の子発見の場面を類話比較します。
グリム童話:元気いっぱいだった。
ホルシュタイン地方の類話1:みんなが箱を開けると、中に男の子がいて、笑っていた。
ホルシュタイン地方の類話2:箱の中には生きた男の赤ん坊が入っていて、顔じゅうで笑っていた。そして手足をばたばたやっていた。
ロシアの類話:(男の子を雪の原に捨てます。)子どもの回りには草が生え、花が咲いていた。それなのにほかは雪がひざまであった。ふたりは不思議に思って行った。「これは尊い子どもだ」

ね、グリム童話では、子どもは川に流されたけど死ななかった、元気だったというだけだけれど、ほかの類話を見ると、箱が明けられたとき復活したんですね。復活、再生のイメージです。

ここんとこ、けっこうさらっと語ってたんだけど、そうだったんだ!
奇跡の子だった!

次回はシェークスピアとの比較です。

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グリム童話のテキストについて。
昔話を知るために、グリム童話を読むことは重要です。
そのとき、こぐま社や小峰書店の語るためのテキストじゃなくて、全話の載っている完訳本を手元に置いておくといいと思います。
たとえば。
岩波文庫(金田鬼一訳)、角川文庫(関敬吾・川端豊彦訳)、偕成社文庫(矢崎・大畑・植田・山室・国松訳)、ちくま文庫(野村泫訳)、講談社文芸文庫(池田香代子訳)
これらはすべて七版(決定版)です。あと、初版と二版の翻訳もありますが、図書館で借りられたらいいでしょう。エーレンベルク稿(初版の前のメモ)も図書館に入れてもらいましょう~

幼稚園のおはなし会🎈

2か月分の報告です

子どもたちに語ると、めっちゃ生き返るわ(❤´艸`❤)

4歳児
11月2日(月)
「ひなどりとねこ」『子どもに聞かせる世界の民話』矢崎源九郎編/実業之日本社
12月7日(月)
「おおかみと七匹の子やぎ」『語るためのグリム童話集』小澤俊夫編著/小峰書店

5歳児
11月5日(木)
「アナンシと五」『子どもに聞かせる世界の民話』
12月1日(火)
「三びきの子ブタ」『イギリスとアイルランドの昔話』石井桃子訳/福音館書店

どちらの学年も、子どもたちがソーシャルディスタンスとってるので、距離が遠くって、う~~~むって感じだったのね。
なんで、「ひなどり」や「アナンシ」で、ぼーっとする?
特に4歳児は語りの経験が浅いので、聴ける子とそうでない子の差が大きい。
そして、離れて座ってるので、聴ける子のオーラが部屋全体に広がらない。

環境は大事やねo((⊙﹏⊙))o.

で、考えた。
とにかく目線を近づけよう。
声に力をつけよう。

12月は、立って語った。

前の列の子が「やったー。見える!」っていったら、後ろの列の子も、「ぼくも見える!」ってうれしそうに言っていた。

ひとりひとりをじっくり見て語れたよ。
あっち向いてる子がいたら、その子のほうに向いて語った。立ってるから、自由に体を向けられるのね。
立ってると、おなかに力が入るから声もしっかりするし。
プラスチックマスクが光っても、体で表情を伝えられるしね。

どうしてもっと早くに気付かなかったんやろ~

わたしのプラスチックのマスクを見て、
子ども「ヒーローのマスクや!」
わたし「シュワッチ!」(古いなあ)
ジェルで手をふいてたら、
子ども「なにしてるの?」
わたし「コロナやっつけてるねん。シュワッチ!」

ただ、いつの年もクラスにひとりは、聴けない子がいる。それでも、周りの子がじょうずに注意したり、先生が抱っこしたりして、少しずつ姿勢ができていくのね。
ところが、今年は、整然と椅子に座ってるもんだから、それができない。
二列目の真ん中で、A君が、孤立して遊んでいた。
少しずつ、少しずつ、根気よく、関わっていこう。

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今日のHP更新は《外国の昔話》
ノルウェーの「海の水はなぜからい」だよん。
けっこう気に入ってるの。
とくに、悪魔がありのようにむらがってくるとことか、ニシンとおかゆが追いかけてくるとことか、語ってて楽しい(❤ ω ❤)

 

 

 

研究クラスの報告(^_^)

今年初めての研究クラスがありましたので報告します(^_^)
なんかね、新型コロナの感染拡大防止のために勉強会がなくなって、元々研究クラスは年に3回でしたから、今年の3月が中止になり、1年ぶりに勉強会をしたんですよ。
広い部屋に少人数で、机やいすを消毒してね、それをやらないと始まらないから。
ほんとに、生活が一変してるから、勉強会も嬉しいやら、戸惑うやら。
そんな中で、一年ぶりに勉強するのは、グリムのKHM55番「ルンペルシュティルツヒェン」です。
レポートでは、主にテキストの比較類話集めをします。
今回は、エーレンベルク稿と初版の比較、7版と2版を基にしたテキストの比較の二つもされていました。
名前を言い当てる話といえば、日本の昔話の「大工と鬼六」が思いつきます。
それにくらべて「ルンペルシュティルツヒェン」は、主人公の娘の命がかかっているとか、子どもを取られるとか、「大工と鬼六」の、〝目玉をくれ〟とは違ってシリアスなような感じを受けます。
しかし、名前を当てる話の類話を見ていくと、名前当てを聞き手といっしょに楽しむ話だというのが分かります。
類話をあたれば、何が大事か話の核を見つけられるんだとお勉強しました(^_^) 類話の数が少ない話もありますので、絶対見つかるわけではないと思いますけどね。 わたしは、自分ひとりでは見つけられないと断言します(笑)
となれば、このおはなしの後半の、いろいろなドイツの名前が出て来る会話の掛け合いをシンプルにリズムよく語る、というのが語りの練習の時の気を付けるところかなと思いました。
わたしは、この話は絶対に覚えられないから、研究クラスでレポートを読ませてもらい、とてもうれしいです。
なぜ覚えないかというと、まず〝ルンペルシュテュルツヒェン〟が言えない(´;ω;`)
そこか!?
そして、リッペンビースト、ハンメルスバーデ、シュヌールバインを次々と言えない(´;ω;`)
またそこか!?
でも、そこなんです。
言えなかったら、どうしようもないですからね。
その努力をする時間で、他の話覚えるわ!という開き直りです<(`^´)>

そして、ヤンさんの語りは、「海の水はなぜからい」でした。
これはヤンさんの再話です。
明日、外国の昔話にアップされるそうなのでみなさんお楽しみに。
この話は知ってる人も多いと思いますが、再話でどんな文章・輪郭になっているのかを確かめましょう(^^)/

呪的逃走話の読み合わせは時間切れでできませんでした。
読みあわせていくのは楽しいけれど、1話が長~~い!
ということで、今後は各自読んできて結果を勉強会で合わせることになりました。
次回は、多分・恐らく・さすがにもう大丈夫だろうと来年の7月に行うことにしました。
レポートの当番はフレッシュ!ルーキーのUさんです!

どうか、早くワクチンができますように。
みなさんもどうぞお気をつけて、お元気で(^_^)

昔話の解釈ー金の毛が三本ある悪魔2👿

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第3章 金の毛が三本ある悪魔

グリム童話KHM29「金の毛が三本ある悪魔」の話型名。
ATU461「悪魔の三本の毛」+ATU930「予言」

「金の毛が三本ある悪魔」あるいは「三本の金髪をもった悪魔」読みましたか~?
ね、展開が面白いでしょ~

では、いきます!

14歳になったら王さまの娘と結婚すると予言された主人公。
それを知った王さまは、心の悪い人だったので、その予言をくつがえそうと画策します。生まれたばかりの主人公を買い取って、箱に入れて川に流してしまうのです。

これって、いやだね~
自分の手を汚すのが嫌だから、直接殺さないで、川に流す。
白雪姫の母親女王と同じだね。猟師に殺させようとしたり、死ぬとわかっていて森に捨てる。

さて、箱は流れ流れて水車小屋のせきに引っかかり、粉屋の主人夫婦が子どもを拾って育てる。

そのあと、かの有名なウリヤの手紙を含むエピソードが続きます。
ウリヤの手紙については、《昔話雑学》で確認してください。こちら⇒
14年ほどたって、王さまは、たまたま水車小屋を訪れて、りっぱに育った男の子を見つけます。またまた王さまは、男の子を殺そうと画策します。その方法が、ウリヤの手紙といわれるやりかたです。
男の子は、「この手紙を持ってきた若者を殺せ」と書いた手紙を持ってお妃のところへ向かう。
とちゅう、森の中で道に迷い、盗賊のすみかにたどり着き、泊めてもらう。
盗賊の親玉が手紙を盗み読む。
親玉は手紙を破り、「この手紙を持ってきた若者と姫を結婚させよ」と書き換える。
男の子は、翌日、城に行ってお妃に手紙を渡す。
お妃は、手紙の通り、男の子とお姫さまを結婚させる。

主人公は死の危険に陥る(王さまの手紙)が、まさにそのことが主人公を一層充実した高度な生(お姫さまとの結婚)へ導くとリュティさんは言います。
王さまが男の子に手紙を託さなければ、男の子はお姫さまと出会うことなんてなかったんですよ。

そこで、「白雪姫」を思い出してください。
女王が白雪姫を追放しなければ、また、毒りんごで殺そうとしなければ、白雪姫は王子さまと出会うことなんてなかったんですよ。

ほら、「三本の金髪をもった悪魔」は「白雪姫」と同じテーマを扱っているのです。
死の危険に陥った者だけが、死の現実を知った者だけが、人間として完成することができるのです。

リュティさんは、リルケの詩を引用して、昔話というのは、古い神話や儀式や思想を、遊びのような形に変えて、繰り返し違った人物を使って聞き手にわからせようとするのだといいます。

黄泉の国へ入って
竪琴をかなでた者だけが
限りないほめ歌を
うたうことができる。

死者たちといっしょに
けしの実を食べた者は
どんなに低い音色も
もはや聞きのがしはしない。

池に映る影は
消えてゆこうとも
消えぬ形象を知れ。

生と死を知ってはじめて
歌う声は
やさしく永遠となる。

ーリルケ「オウフォイスに寄せるソネット」

さてさて、ウリヤの手紙の部分だけでなく、主人公の男の子は、なんども死と生のあいだを転化していきます。
次回はそのことについて考えます。

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きのうは、おはなしひろばを更新しました。
「おにのつぼ」
どこかで聞いたことあるよ。当ててごらん~

 

11月度 中級クラス

遅くなりましたが、先週火曜にありました中級クラスの報告です。

♬手遊び しのだのもりの~♬

(語り)

①話十両 『日本の昔話3』/福音館書店(ジェニィ)

男が十年間働いて貯めた十両で「命が助かる話」を三つ買うというおはなしです。三つ目の「短気は損気」のはなしの中で、男が我が家に帰ってきて、女房と会話をする場面、会話文だけで語りたいと思い、「」の前後の言葉を削除しました。ヤンさんからは削除してもいいが、家の中からは女房が~の場合は家の中から話していることが分かるように、声の大きさと間を考えて、また、~といつめました。では、問い詰めている気持ちをこめれば、言葉に表さなくても、聞き手に分かるでしょう、とのことでした。本番では意識して語りたいと思います。

②仙人のおしえ 『日本の昔話5』/福音館書店

所々に手を入れられましたが、三回の繰り返しは出来るだけ同じ言葉で統一するほうがいいでしょう。また、言葉を付け足す場合、言わなくても分かるときは不要です。昔話は心の葛藤を言葉では表しません。どのような気持ちか?それは聞き手が感じればいいので、正解はありませんし、語り手が決めつけて語ってはいけません。自分の思いは大切ですが、語り手はストーリーを伝えるだけで、心は聞き手にあることを忘れずに。

③あめ玉 『はじめてよむ日本の名作絵どうわ3』/岩崎書店

「ごんぎつね」が有名な新美南吉の作品です。一つしかないあめ玉欲しがる二人の子ども。黒ひげをはやした強そうなお侍が刀で半分にわってくれる、というほっこりするおはなしです。

昔話なら「むかしあるところに~」で聞き手が自分でイメージした世界が作られていきますが、創作は情景描写などが細かに書かれているので、言葉一つ一つを理解し、正確に語らなければなりません。例えば初めの 「春のあたたかい日のこと、わたし舟にふたりの小さな子どもをつれた~」とありますが、あたたかい→どれほど?、わたし舟→どんな大きさの?どんな川を渡る? と状況を細かにイメージする必要があります。

新美南吉の本紹介と合わせて、4年生に語られるそうです。

④まぬけなトッケビ 『おはなしのろうそく30』/東京子ども図書館

3年生に「鬼」をテーマにしたプログラムの一つとして語られたそうです。間を入れて語っている部分がありましたが、間を入れると聞き手が何かとイメージしてしまいますので、一気に語りましょう。

⑤王子さまの耳はロバの耳 『語りの森昔話集4』/語りの森

幼稚園で語りたいと覚えられたそうです。「王子さまの耳はロバの耳だよ」を歌いながら語るか悩まれたそうですが、練習しているうちに自分なりのメロディーができたそうです。とっても自然な感じで、一緒に口ずさみたくなりました。

☆きつね女房 『日本の昔話2』/福音館書店(ヤンさん)

今月から息子の小学校でおはなし会が再開されました。今までは図書室で、床に座った状態でのおはなし会でしたが、コロナ禍で教室で机に座ったソーシャルディスタンスを保ちながらのおはなし会に変更になりました。特に低学年で感じたのは、初級クラスの報告でウーカーさんも書かれていますが、一部の子ども達がおもしろいと感じても、机が離れている物理的距離からその気持ちが回りの子ども達に伝染しにくいのです。クラス全体で理解、笑いが起こりにくい状況で、語り手はさらに技術を磨く必要があると感じました。

1年生に「鳥のみじい」を語ったときに↑のように感じたのですが、昨日、2年生に「はらぺこピエトリン」を語ってきました。去年も2年生に語ったのですが、満足のいく語りができませんでした。大好きなおはなしなのですが、自分の思いが強くでているとヤンさんに指摘され、気を付けたつもりだったのですが、一歩引いて冷静に語れず、大切な言葉も流してしまったのだと思います。今年こそはリベンジ!と思い、語ってきました。

2クラスに語ったのですが、最初のクラスで失敗したところは意識して言葉を立て、後のクラスでは上手くいきました。途中から一番前の端にいる男の子が立ち、真ん中の後ろに座っている男の子の顔を見ながら(相槌をうちながら)おはなしを聞いてくれたので、クラス全体に気持ちが伝わったのかもしれません。思った通りの反応があり、最後はバッコルコが死んで「よっしゃー!」と言っていた子どももおり、楽しんでもらえたと感じました。子ども達とおはなしを通じて、気持ちを共有できるのは本当に幸せですね。図書館のおはなし会再開の目途が立たない中、小学校でおはなしの場を設けてもらえるのは、本当に有難いです。頂いた子ども達の貴重な時間を無駄にしないためにも、これからも語りに磨きをかけたいと思います。

余談が長くなってしまい、すみません・・・もう12月、1年が早い!1月と2月のクラスはお休みですが、久々の語法の勉強会がありますね!「まほうの鏡」楽しみです(^^♪