月別アーカイブ: 2022年5月

ホームズ君🕵️‍♂️ 切りたくもなし

和尚さんが檀家から梨をひとつもらって、それを3人の小僧さんに分けてやります。ひとつしかないから、一番上手に歌を詠んだ者にやるっていうんですね。ただ、歌に条件があって、下の句は「切りたくもあり切りたくもなし」。その上の句を作れっていうんです。

それで小僧さんたちが詠んだ上の句は、こんなのです。
小僧1 うぐいすが踏みちらしたる梅の枝 切りたくもあり切りたくもなし
小僧2 すずり箱長きにあまる筆の軸 切りたくもあり切りたくもなし
小僧3 梨ひとつくれぬ坊主の生首を 切りたくもあり切りたくもなし

和尚さんは腹を立てて、梨を投げつけます。小僧3はそれをキャッチして食べちゃったって話。

話型名は「切りたくもなし」。分布は全国に広がっているそうです。
笑い話の中の狂歌話のひとつです。
狂歌っていうのは、滑稽や社会風刺を詠んだ和歌のこと。
和歌をめぐって風刺したり笑いをとる小咄です。

優雅なのか、お下品なのか、よく分からないけど、おもしろいなあ。
「梨」だから、「切りたくもなし」って、しゃれね。

この小僧さんが詠んだ上の句、ほかの類話にどんなのがあるか調べてみました~
(ひまやね~)

小僧1 十五夜の月にかかりし松の枝
小僧2 寺入りの文庫にあまる筆の軸
小僧3 梨ひとつくれぬ坊主の細首を
山梨県の話

小僧1 月隠す庭の小松の細枝を
小僧2 すずり箱や入りかぬる筆の柄を
小僧3 梨ひとつ惜しむ和尚の生首を
大分県の話

豆腐屋の小僧 今朝とうに豆腐半丁買いにきて
筆屋の小僧 今朝とうに筆を一本買いに来て、筆の毛先が長すぎて
寺の小僧 梨ひとつ惜しむ坊さまの生首を
愛媛県の話

などなどなど。
小僧がふたりしかいない場合とか、和尚さんが小僧3をほめて梨をやるとか、いろんなバリエーションがあります。
ほぼ共通してるのは、松とか梅とか風流なもの筆の軸和尚さんの首、です。

なんで、こんなことを話題にしてるかというとね、先日の再話入門講座で、出雲の「切りたくもなし」が原話として出てね、その狂歌の意味が分かんない~
こんなのです。
小僧1 鶯に踏みにじられた梅の枝
小僧2 父親にけさでもろうた筆の軸
小僧3 梨一つ惜しむ和尚のそっ首を

小僧2が分からない~
けさでもろうた???

「けさで」の意味。
1案 和歌だから、古語を使っていると考えて「け(消)さで」⇒「消さないで」
う~ん、意味不明やね。それに、小僧1「踏みにじられた」は古語なら「踏みにじられし」となるはず。つまり、小僧たちは古語ではなく口語を使っている。
2案 口語なら、地の文を含めぜんぶが土地言葉で語られていることから、「けさで」も土地言葉、つまり方言かもしれない。だれか出雲の土地言葉を教えておくれ~
3案 類話的に見て、筆の軸が長くてじゃまになるって言っていますね。それって、ヒントにならないかな?????
4案 研究者が語り手から聞き取るときに、聞き間違えた。または、書き写すときに書き間違えた。~笑笑笑

と、ヤンの推理は、八方ふさがりです。
ホームズ君、教えておくれ!

さてさてこの原話を持って来てくださったFさんは、どない解決するのでしょうか~?
楽しみ~

再話って、けっこうこういうことがあるんですね。
それで時間がかかるし、しかも、結局は完成できなかったりもするのです。

でも、「切りたくもなし」、いい再話ができて語れたらいいのにな~
楽しみです\(@^0^@)/

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きょうのHP更新は外国の昔話。
ハンガリーの「ヤーノシュと天までとどく木」
高学年向きの長~いはなしです。

 

 

 

 

5月のプライベートレッスン

最近、日中は真夏の気温の日が続いています。
でも朝晩は寒いと感じるこの気温差がね~~( ;∀;)
今月のプライベートレッスンの報告をします。

1日目
語り
「七羽のからす」『おはなしのろうそく10』東京子ども図書館
テキストを日常語になおす
「一休さんの大きな話」 語りの森HP日本の昔話 → こちら
2日目
テキストを日常語になおす
「聞き耳」『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』語りの森

共通語のテキストを日常語になおすときに、丁寧な敬語をつかっている台詞をどうすべきかという質問がでました。
受講者さんは「丁寧なままでおいておくか、丁寧ではなくなるけれども自分の言葉になおすか、決めかねる」という感じであったと思います。
選択肢は、
話全体を自分の言葉に変える(丁寧ではなくなる)
敬語を使うべき立場の人の台詞だからそのまま生かす
自分がその立場だったらしゃべるであろう自分の丁寧な言葉にする
の3つですね。
そしてそれはどれを選んでもよいそうです。
どれを選ぶかを自分で決めるということは、話の解釈と自分の言葉とをよ~く考えて決めるということでしょうね。
話によって最適と思う言葉を選ぶのはとても難しい。

聞いていて、自分では日常語のテキストに変えることを慣れてきたなと思っていましたが、は~~、やっぱり時々雷に打たれるような(笑)「すんませ~ん、ぬけてました~~」と反省しました。
休んだら気が抜ける。
回し車をまわすハムスター?!(笑)
そんなにかわいいか! と、突っ込まれそうですが、勉強し続けないといけないなと思ったのでした。
また、どんな気付きを得られるか、来月も楽しみです(*^▽^*)

再話入門講座1

先月、再話法勉強会があり、受講者のうち実際に再話してみたいというかたが8人おられました。
その8人のかたに加えてわたしももぐりこみましたので、受講生9人で〝再話入門講座〟が始まりました。
講座は3回セットです。
今回の1回目は、再話法勉強会で教えてもらった通りに原話を探してきて持ちより、みんなの前で読み上げて再話するときの注意点や問題点を挙げてヤンさんにアドヴァイスをもらいました。
2回目は、各自が再話してきたものを検討します。
3回目は、再話を修正して完成形に近づけたものを持って来て最終の検討です。

9話の原話が持ち寄られたのですが当然いろいろな種類の話があります。
再話するときの一般的な注意点として、ヤンさんから以下の説明がありました。
☆長い話は、一本筋の通った話にする。
☆原話の内容に齟齬があるときにどうするか考える。
☆人称を統一する。
☆土地言葉は正確に理解する必要があるのでその努力をする。

他にも細かい注意点はありますが、それは話にもよりますのでまずは以上のことを注意しながら各自が選んだ原話を再話して第2回の勉強会に持って行きます。
みんなどんな再話を持ってこられるか楽しみです(*^▽^*)

それと、本の奥付についてちょっと書かせていただきます。
再話の勉強会で原話を持ち寄るときに、本の奥付をつけるのはとても重要と言いますか、わたしは欲しいとおもっています。
自分が再話の勉強を始めたときに奥付は必ずつけるようにと指導されたのでそのようにしていました。
奥付にある情報が、そのうちに蓄積されてきますと原話を探したり再話したりするときの助けになることが分かってきました。
外国の昔話のシリーズ本ですと、監修者・訳者・編者など複数の名前が載っている場合があります。
それらの人が昔話の研究者なのか、児童文学者なのか、言語の研究者なのか、研究者なら師弟関係の人なのかとかそういうのを勉強会で他の人の原話資料を見せてもらうときに奥付があれば(なんとな~く)分かってきます。
そういうふうにして知った研究者や再話にむくであろう訳者の本を自分で調べることもできるわけです。
自分一人では無理な量の情報を知ることができるので、本のすべての情報が入っている奥付が見たいのです。
わたしはヤンさんから奥付という言葉を初めて聞いたときに何のことか知りませんでした。
これは結構恥ずかしい事なんでしょうね(笑)
しかし今はとっても必要だと思います。
いっしょに勉強するみんなで、貴重な情報を共有し、蓄積したいとこの日改めて思いました(*^^)v

日本の昔話リニューアルの件📯

今日のHP更新は日本の昔話。
ここんとこ、運定めをテーマにした話を集めて読んでいて、そのなかから再話したのを紹介しています。

人間、自分の生まれてくる場所や時代を選べないやん?
親ガチャなんて言葉は、品がなくていやだけどね。
でも、なんで自分が今ここにいて、あそこでないのか、だれにも説明がつかない。
ヤンは、ひもじい思いをしたり爆撃にあったり、大きな災害にあったり、いまのところしていないし、まったく幸運だと思うのですよ。
それでも、若い頃は不条理を感じて、暗い眼をして、カミュとか、読んだものです(笑)

わたしたちのご先祖たちは、この不条理にどう納得してたんだろうか。
ヒントが欲しくて読んでいます。

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先日、《日本の昔話》もプチ・リニューアルしました。
こちら⇒
見にくくないかなあとちょっと気になっているところ。

關敬吾の昔話大成を参考にして、
動物昔話:「動物たちの話」
本格昔話:「本格昔話」
笑い話:「おかしな話」

と分類して、それに《神話・伝説・古典》を加えました。
神話も伝説も、当然昔話ではないし、
古典は、口承ではなくて、書物に残っている話を語れる形に再話したのもです。

《外国の昔話》所収の数が分類がアンバランスだったけど、日本はもっとアンバランスやね。これは、動物と笑い話以外はぜんぶ本格昔話につっこんだからよ。さらに細かく分類したら、めっちゃややこしくなるからね。しかたがない。

でも、動物たちの話をもう少し増やそうと思っています。
動物のはなしは、幼い子に向くからね。

それから長い話も増やしたいな。
中学校のおはなし会のプログラムを組んだときに、みんな、「レパートリーに日本の長い話がない」って、なんだか反省してたんだけど。でも、だいたいが、日本の昔話は、短い(^∀^●)
グリムは長い。ロシアは、も~~っと長い(笑)

それで、長い話をさがしてます。
きょうの「ねずみの聞き耳ずきん」は12分。まあまあ長いね~

他に、ご希望があれば、ここのコメント欄にどうぞ~

 

 

 

わすれちゃった~😅

きのう、おはなしひろばの更新、完璧に忘れておった<(_ _)>

急な状況の変化についていけなくなったのかな。
ぼちぼちやらないと、どこか、何かが抜けるお年頃なのかな。
でもまあ、ぼちぼちやっても何とかなるお年頃でもあるわな。
深く考えるのはやめよう(^人^)

急な状況の変化って、何かっていったらね。
またお話を語りまくる生活に舞い戻りそうな気配ってこと。
あかん、ストップかけないと!
全面的におはなし会モードになってはいけないぞ。

昨日は午前中、語りのチームで、小中学校の1学期のプログラムを決めたの。
8学年分、バチっと決まったよ。
小学校は、1,2年生が授業、3~6年生が朝学習。
中学校は、授業で、今学期は1,2年生のみだけど、それでも13クラス分だあ。
我が子もお世話になった+なっている、小中学校だから、成長に合わせてプログラムを組むことができるのが、いいね。考えるのが楽しい。

ヤンは、思わず手が出そうになるのをこらえて、小学校の出番はひかえました。
老人は後進に席を譲ろう。
がんばれ、若手たち!
おはなしは、本番で語ることで自分のものになっていくからね。
もちろん、家での練習や勉強会は不可欠だけど、ほんとに自分のものにするには、聞き手の子どもたちが返してくれる栄養たっぷりの空気を吸わないとね。

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おはなしひろばは、「ばらの花とけもの」
美女と野獣の話です。