日別アーカイブ: 2022年10月6日

ローカル列車の旅🚃その3蒜山盆地の昔話との出会い

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蒜山高原には、コロナ前はほぼ毎秋、夏の疲れをいやしに来ていたんですよ。
3年ぶりの蒜山高原です。

今回は、ちょっと目的をもってやって来ました。

『昔話研究資料叢書1蒜山盆地の昔話』稲田浩二・福田晃/三弥井出版/1968年刊
という本があってね、全551頁を通読したんですよ。面白くてねえ!
《日本の昔話》に再話を紹介しています。⇒「へびの天のぼり」「やまんばあと馬子どん」

今まで蒜山高原に来ると、貸自転車でサイクリングロードを走って楽しんでたんだけど、「待てよ」と思った。
栗やアケビをとったり、田の神さんを見つけたりしていたあのあたりが、昔話が語られた舞台だったのではないかあ???

それで、今回は、そこに焦点を当てて景色を楽しもうと思ったの。

この本に載ってる当時の地図を紹介するね。


拡大地図の真ん中あたりに、「川上村」って二重四角で囲んであるでしょ、その右に「上福田」って四角で囲んである。グーグルマップに落とすと、この地域がいつも自転車で回るところ。もう少し川下へも行くけれどね。エル字型に流れているこの川が明連川で、旭川と合流して岡山県を縦断して瀬戸内海まで続いている。

で、「上福田」って書いてあるすぐ下に「鍛冶屋」ってあるでしょ。
ここに、「へびの天のぼり」「やまんばあと馬子どん」を語った立田富之助翁の住まいがあったのです。
けど、グーグルマップには載っていない!
もう鍛冶屋って地名もなくなったんやな、残念やなあと思いながら、上福田の明連川の川岸を走ってたのです。
景色を見せてあげよう。

ね、いやされるでしょ。
この景色の中で、たくさんの昔話が語られてたんですね。

さて、地図でいえば「鍛冶屋」と書いてるもっと下、川の岸に、川上村歴史民俗資料館というのがあって、これまで、いつ行っても閉まってたの。
今回も、ダメもとで行ってみたらやっぱり閉まってた。

帰りかけて、たまたますれ違ったおばさんに、勇気を出して尋ねてみた。
わたし「あの、鍛冶屋というのはどのあたりかわかりますか?」
おばさん「ああ、このあたりよ」
わたし「えっ!?」
おばさん「このあたり、ずうっと鍛冶屋よ」
わたし「えええ~~~!」

このあたりね。
なぜ鍛冶屋をさがしているのか説明すると、おばさんが、資料館の隣にある保険センターに連れて行ってくれました。
そこの人たちと話をして分かったことは、そんな半世紀も前の資料や語り手のことは、だれも覚えていないし、もう伝わっていないんだということでした。
とっても親切に、心当たりに電話もしてくださったんだけど。
でも、旅人へのやさしさと、土地言葉のおしゃべりのあたたかさを、十二分に感じることができました。感謝、感謝です(^///^)

こうして、昔話の景色と土地の人の心ををいただいて、「へびの天のぼり」「やまんばあと馬子どん」はもちろんのこと、資料に載っているすべての話に血肉が通いました。

赤字のローカル列車は廃止されていくかもしれないけれど、昔話の語りは、思いのある人間の手で残っていく、残していきたいと、強く思ったことでした。