生まれて初めて語りを聞いたのは30年近く前。
ストーリーテリングがどんなものか、松岡享子さんの本では知っていたのですが、聴いたのはその時が初めてでした。
「ふしぎなオルガン」
リヒャルト・レアンダーの創作童話です。
先生のすんだ美しい声を聴きながら、情景と心情がまざまざと心に浮かびました。
最後の場面では、美しいステンドグラスの教会いっぱいに、オルガンの音が鳴り響きました。
そのときの先生の講座が、語りを始める入口でした。
わたしは、いつかきっと、あんなふうに「ふしぎなオルガン」を語ろうと思いました。
先生に語ることの喜びを教えていただき、ずっと走ってきました。
おはなしで出会った人とは深くわかりあえると信じて、でも、そんなことはないのだということも、人から教えられました。
人生の半分近く語りつづけて、つらいこともいろいろありました。
それでも、子どもに語ることは、何よりも幸せでした。
先生と出会わなければ、この幸せはありませんでした。
先生、ありがとうございました。
最後に聞いた先生のおはなしは「じろはったん」でした。
関西弁がうれしかったです。
今、私の目指すところは、口承の復活です。
そんな話も、いつか聞いて頂けるような気がしていました。
風樹の悲しみ。
「ふしぎなオルガン」は何度か挑戦しましたが、まだ語れません。
もうあきらめて、いつか、雲の上で、もう一度聞かせていただける日を楽しみに待ちます。
先生、わたし、おはなしを続けますね。
ありがとうございました。
合掌