月別アーカイブ: 2020年6月

『少年時代』三部作📚

『瀬田貞二子どもの本評論集児童文学論上』報告

お久しぶりです(笑)
マルセル・パニョルの自伝『少年時代』を読みました。
今から100年近く昔のフランス。町の様子や田舎の様子、自然にあふれた山の様子。まざまざと思い描きながら、みずみずしい感受性に、ワクワクしながら、読みました。

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第3章書評など
「少年時代」三部作 1976年

マルセル・パニョル(1895-1974)
フランスの劇作家。
最初に戯曲を書いたのは15歳のとき。
33歳で「トパーズ」が上演され、そののち、「マリウス」「ファニー」「セザール」の三部作で世界的な名声を得る。
その後、映画の製作も多く、51歳でアカデミー・フランセーズの会員になる。
『少年時代』が書かれたのは、60代になってから。1957~59年。

この書評が書かれたころの、日本の児童文学の世界では、子どもから大人への移行期の子どもたちに向けて書かれた文学がない時代でした。
瀬田先生は、第二次世界大戦後、世界では、中高生図書の意義が再検討され、この時期の子どもに向けた本を「橋」ととらえるようになったと書いています。
そして、このマルセル・パニョルの『少年時代』には、「橋」の資格があると。

この三部作は、マルセル・パニョルの初めての散文です。
作者はこう言います。
今はもうすぎさってしまったある時代についての思い出であり、親を偲ぶ子の心のささやかな歌であるにすぎない
それに対して、瀬田先生はこう言います。
引用
日常の細部を淡々とつづっているにすぎない。しかし、抑制のきいた描写は、かえっておしかくした感情の波を私たちの胸底にかきたてずにはおかない。

第一巻『父の大手柄』
第二巻『母のお屋敷』
第三巻『秘めごとの季節』

ネタばれになるので、あらすじは書きませんね。

引用
巻の構成もまた、父(社会)、母(家族)、自己へ、一種の形成への漸層が意図されているだろう。しかし教訓は一切筆にとらない。そのためにここでも、かえって読者は胸にひびくうったえをきくことができる。

マルセルの感受性に共感する部分が随所にあります。
その中で、私が特にあげるなら、山の別荘で友達になった土地の少年リリとの友情が描かれている所。
町に戻って日々を過ごしているマルセルのもとに、ある日、リリから手紙が届きます。初めての手紙。
小学生用のノートを破いた三枚の紙に、字の大きさは不ぞろい、つづりの間違いもいっぱいあって、インクの染みもある手紙です。
マルセルは、何度も読み返し、宝物としてしまっておきます。
そして、町へ行って美しい便箋を買ってきて、下書きをして二度読み返し、清書します。優等生の完璧な手紙です。
その手紙を出そうとして、考えます。それから、ノートの紙をびりびりと引きちぎり、字の大きさを不ぞろいに、つづりの間違いをあちこちにちりばめて、手紙を書き直し、インクの染みまでつけて、投函するのです。

忘れていたことを思い出させてくれる小説でした。
大人にも、もちろんこれから大人になる人たちにも是非読んでもらいたいと思います。

きょうは🌊

きょう6月23日は、沖縄戦の日。
命と日常と戦争について考える日です。
それで、《絵本のこみち》こちら⇒ を更新しました。
沖縄について書かれている絵本を2冊紹介しているので、見てくださいね。

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今日は、久しぶりに図書館の集会室に行きました。
三々五々、訪れてくださって、ちょっとだけお話をして、嬉しかったです。

ひとりで22冊背負って電車で帰ってくださったHさん。ほんとにありがとうございます。すごい力持ち\(@^0^@)/

『おもちホイコラショ』、頑張って書いたので、買ってくださるとうれしいです。応援よろしくお願いします。
今日来られなかった方で、手渡し可能な方も郵送の方も、ご連絡くださいね。

各地の方で、図書館や学校においてくださる場合は、送料無料になります。
本屋さんには置けないけど、たくさんの人に読んでいただきたいと思っています。
よろしくお願いします。

 

 

 

あしたは、るんるん

今日の更新、見てくださいましたかあ~(@^0^)
「カタリネラ―七足の鉄のくつと三本のつえ」、いいでしょ!
いや、自画自賛じゃなくて、おもしろい話が伝わってるんやなあと思って。
今日は、おはなしひろばも渾身の「たにし息子」

いま、再話が楽しい周りに入ってるの。
週に一回といわず、出来たときに出来立てほやほやをアップしていきますね

昨日は部分日食のこと、ここに書こうと思ってたんだけど、京都府南部は曇っていて、ぜんっぜん、見られなかった。
つぎは十年後だって。
残念!

あしたは、ひさしぶりに図書館の集会室に行きます。
新刊『語りの森昔話集4おもちホイコラショ』の発表会だよ~
10時から13時まで、待ってるからね~
みなさんのお顔が拝見できるのがめっちゃ楽しみ(*^▽^*)
あんまりおしゃべりはしないけどね。

コロナ後っていったって、人間、そうそう変われるもんじゃない。
でも、第2波を起こさないように、そろりそろりと参ろう。
よろしく~q(≧▽≦q)

『うみをわたったしろうさぎ』🐇

『瀬田貞二子どもの本評論集児童文学論上』報告

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4章昔話
昔話ノート
『うみをわたったしろうさぎ』余談 1968年

『うみをわたったしろうさぎ』瀬田貞二再話/瀬川康夫画/福音館書店/1968年 こどものとも142号

瀬田先生がもとにした『古事記』ですが、語釈・補注の扱いからみて、主に、岩波の古典文学大系『古事記・祝詞』倉野憲司・武田祐吉校註/1958年(以下、大系本とする)と思われます。ヤンが再話に使っているのもこれです。

瀬田先生は、『古事記』をかなり忠実に翻訳したがところどころ改変しているので、「再話」と呼ぶのがいいと書いています。
改変したのは、うさぎが、因幡の国の竹の林に住んでいたけれど津波で流され、おきの島に流された(それで、因幡の国に帰るためにわにをだました)という部分。
これは、大系本の補注にある『因幡の国風土記』の逸文(『塵袋』鎌倉時代成立の事典)をもとにしています。
『古事記』には、なぜうさぎがおきの島にいたのかが書いていないから改変したそうです。
この部分、ヤンは『古事記』に忠実に再話しているので(笑)、確認してください。こちら⇒《日本の昔話》「いなばの白うさぎ」

さて、戦後しばらく、日本では、神話の復活を拒んだ時代が続いたので、当時は子ども向けのよい神話本がなかったそうです。そのなかで、次の本が挙げられています。
『古事記物語』鈴木三重吉/1920年
『古事記物語』福永武彦/岩波少年文庫/1957年
『カミサマノオハナシ』藤田美津子著/1943年・1966年再刊
ほんとに少ないですね。

この評論が書かれたころ、文部省が、歴史教科書で神話を扱おうと考えました。けれども、戦前回帰を憂う声が上がり、反対を受けていました。瀬田先生は、2つの理由で、歴史の中で神話を知ろうというのは無理だと言います。
1、古代における神話の意味を子どもに知らせるのは困難。
2、神話と史実についての学問的な研究が未発達。

その頃、学問的に『古事記』を見直すものとして、『古事記の世界』西郷信綱/岩波新書/1967年 が、出版されました。
原意識を掘り起こそうという、いわば古代人の肉声発掘作業が」おこなわれていると、瀬田先生は評価しています。
『うみをわたったしろうさぎ』執筆の参考になったとあります。

さて、この物語のテーマを瀬田先生はこうとらえています。
引用
兄神たち、つまり八十神(やそがみ)のでたらめな教え、むしろ残酷ないじわるに対して、大国主がちゃんとした心のこもった治療法を教えているところに、その文化神的性格がうかがえます。

蒲(がま)の花粉には血止めと痛み止めの薬効があるそうです。
大系本注:『和名抄十』(平安時代成立の事典)より

「おきの島」については、沖の島なのか隠岐の島なのか、昔から議論があります。瀬田先生は、「遠くの島」ということでいいではないかと書いています。

「ワニ」については、ワニなのかワニザメなのか議論があると、瀬田先生は書いています。大系本の注にはこうあります。
引用
鰐(わに)、海蛇、鰐鮫(わにざめ)などの諸説があるが、海のワニとあることと、出雲や隠岐の島の方言に鱶(ふか)や鮫をワニと言っていることを考え合わせて、鮫と解するのが穏やかであろう。
なぜ瀬田先生は大系本の「サメ説」を取らなかったのか。それは、マレーシアのカンチル話では、サメではなく、ワニだからだそうです。
みなさん、《外国の昔話》「カンチルとワニ」見てくださいよ~。こちら⇒
瀬田先生が読んだ『南洋文学』宮武正道/弘文堂/1939年 の話とはちょっと違うけど、大筋は同じね。
ヤンは、日本神話ではサメ、現代の東南アジアの昔話ではワニ、それでいいと思っています。昔話を学んでいる私たちは、地域によって、民族によって、同じ話でも人物や小道具が異なるってこと、知ってますよね。

報告はおしまい。
つぎは蛇足。

2011年実施の学習指導要領国語で、戦後初めて「神話」が教材として扱われることになりました。
それで、いま、神話や古事記関係の児童書が、ずいぶんたくさん出ていますね。
教科書に載っているのは、「いなばの白うさぎ」「やまたのおろち」「うみさちやまさち」(ほかにもあるかもしれない)。
読み物、絵本、漫画、事典(図鑑?)。
どれを子どもに手渡せばいいのか、読み比べがたいへんです。
わたしは、元のストーリーが面白いから、できるだけ平易な言葉で正確に訳した本がいいと思っています。
語りの森HPでも、少しずつ増やしていこうと思っています。
『古事記』はもともと口承なんだから、できれば語りの形で子どもたちに手渡したいです。

あ、蛇足の蛇足
古典だから、古典らしい文体でなくてはならないとは思いません。
もしそうなら、『古事記』をそのまま朗読すればいいのです。1300年前の発音で(笑)

おはなし入門講座🤗

梅雨ですね~
しとしと降るのは情緒があるけど、どさっと降るのだけはかんにんしてほしいです。

おはなし会の新型コロナ休暇、長いですね。っていうか、長くなりそうですね。
ヤンはのんびりできるのがありがたいんだけど、せめて週に一回ぐらいは子どもに語りたいなあ。

わが市では、図書館主導でおはなし会が始まって30数年。
おはなしサークルのボランティア活動で、図書館だけでなく、市内の幼稚園、小学校、中学校、学童保育で、定期的なお話会が広がりました。
ヤンはその最初からのメンバーね。子どもが幼稚園児やった。下の子は赤ちゃん!
この30数年で、いちばん頑張れたのは、子どもが小学生の時かな。30~40歳代のころ。
学校や教育委員会や図書館や、あちこちのたくさんの先生方と話し合ってきました。
喧々諤々とね(≧∀≦)ゞ
子どものためにっていう動機が強くって、若いからエネルギーがあったのね。

で、いま。
コロナ休暇が終わっても、ヤンはもうこれまでのようには頑張れない気がする。
四捨五入して70歳だよ(❁´◡`❁)
次の世代にバトンタッチしなくては。
これからは、若いあなたの時代です!

でね、週に一回ぐらい、ヤンさんどこどこへおはなしに来てねって、誘ってもらったら、うれしいな。
そしたら、お茶をずずずっとすすって、はいはいって、語りに行くから。
え?そんな虫のいい話はないって?
ええやんか。長いこと頑張ってきたのはこのためなんやからo(*^@^*)o

長いことやってきたから、みんなにノウハウを教えられるし、ノウハウよりもっと大事な根本も伝えられる。
それがご隠居の仕事やと思う。
ヤンさんどこどこへ勉強会に来てねって、誘ってもらったら、うれしいな。
眼をきらんと光らせて、はいはいってどこでも行くから。

さて、本題 ^_^
今年もおはなし入門講座、やりますよ~
9月~12月
《お問い合わせ》のページ見てください。こちら⇒
主催が「ききみみずきん」ってなってるでしょ。
そう、次の世代のおはなしサークルです。
うれしいなあ。
ヤンは講師として同じことをするんだけど、エネルギーいっぱいの応援団が増えたような気持ち。
ききみみずきんは、図書館分館でおはなし会を担当している図書館サークルです。

フィジカル・ディスタンス(物理的距離)をしっかりとってやりますから、どうぞご応募ください。
新型コロナの第2波が来ないことを祈っての開催です。

ヤンは、今年から、ご隠居道をまっしぐら~(^∀^●)