月別アーカイブ: 2017年6月

成長する鉄のハンス 🌲

グリム童話の「鉄のハンス」は、息子が11歳のときに覚えました。
男の子が母親の枕の下から檻のカギを盗ってくる、そこから男の子の成長ストーリーが始まる。
鉄のハンスの父性に支えられながら、自分の力で成長を遂げ、幸せをつかむ。

息子のために覚えたので、プライベートにしか語っていませんでした。
あ、いちどだけ、サークルの勉強会に出したかな?
そのときはこぐま社の『子どもに語るグリムの昔話』で覚えたので、語るのに45分かかりました。

昨年、6年生に語ろうと、古ダンスの奥から引っ張り出してきました。
テキストは変えました。
小峰書店の『語るためのグリム童話』にさらに手を入れ、25分で語れるようにしました。

昨日と一昨日、6年生に合計4回、語りました。

たまたま、今反抗期だよ~!と、顔で宣言している男の子が何人かいました。
わたし(心の中で・・・やった~!)

「おまえはもうお父さんやお母さんには会えない」
「おまえはもうここにいることはできない。世の中へ出ていけ。だが、わたしはおまえが好きだ」
「困ったことがあれば・・・私がおまえを助けてやろう。わたしの力は大きいぞ。おまえが考えているよりずっと大きいのだ」
「おまえの願いは何だ」
鉄のハンスの言葉を、私の声で、その子たちに伝えました。
反抗心はどこへやら、子どもの心奥深くにある思いが、表情に現れていました。

結婚式で、みんなが幸せになったとき、ひとりの子が、「あれ? 鉄のハンスは?」とつぶやきました。
すごいね、まだ話は終わっていないって、ちゃんとわかったんやね。
そこへ、堂々とした王さまが大勢のお供を従えて入ってきたのです。
急に音楽がやんで、とびらというとびらが開くんですよ。すっごい演出! グリムさんに拍手👏
子ども「ハンスとちゃうやん・・・」
わたし「わたしは鉄のハンスだ。おまえが私を救ってくれたのだ」
子どもたち「ハンスや」「ハンスやった」

圧倒的な力で、少年を守ってくれたハンス。
そのハンスに、「おまえが私を救ってくれたのだ」といってもらえたときの、少年の自尊心の高まり。
こうして少年は真の成長を遂げるのです。
おとなは、親は、先生は、鉄のハンスのやり方で、子どもを育てるべきなのだと、深く感じました。

25分、子どもたちはしんと聴きました。
わたし「長かったねえ。みんなすごいねえ。とちゅうコマーシャルもなしでよく聴けたねえ」
子ども「(笑)25分やでぇ」

終わって片付けているとき、ずっとみんなから離れて座っていた反抗期男子が、いすをくるくる回しながらひとこと。
「鉄のハンス!」
わたし「おもしろかった?」
反抗期男子「うん!」

よかった、よかった。

何が正義なのか、何が愛なのか。
昔話を語るたび、子どもから教わります。
わたしのなかの「鉄のハンス」も成長します。

ああ~おもしろかった ❣

今日は図書館のお話会。
子ども2歳から8歳まで17人。おとな7人。

プログラム
「雌牛のブーコラ」 『北欧の昔話』(岩崎美術社)より村上再話 未公開
「ギーギードア」 『おはなしはたのしい』たなかやすこ
『どろだんご』 たなかよしゆき 福音館書店
『おふろだ おふろだ』 わたなべしげお 福音館書店
『バナナです』 川端誠 文化出版局

え? 何がおもしろかったって?
最近常連になった8歳の女の子がね、ああいえばこういうお年頃(笑)
「雌牛のブーコラ」は、男の子が主人公でね。で、つぎのおはなし「ギーギードア」も男の子が主人公でしょ。
わたし「トミーという名前の男の子がいました」
8歳女「また男の子~? 女の子の話がいい!!!」
わたし「・・・❣」
わたし「トミコちゃんという名前の女の子がいました」
みんな「わーわーわー」

「ねえ、トミコちゃん、あなたも大きくなったでしょ・・・」
「あたし、ちっともこわくない・・・」
どこまでいけるかやってみたら、案外いけてね。
一回だけ、「ぼく、ちっとも‥❣」ってやっちゃったら、
8歳女「女の子やのに、ぼくやって~」
わたし(くそっ)

とちゅうでひとりの男の子が、「あれ?これ、ギーギードアや」って。
あ~、トミーがトミコになったら、もう違う話と思ってたのね。

「トミコちゃんはぐっすり眠りましたとさ」

録音忘れたのが返す返すも残念。
こんなギーギードアは、二度とない(笑)
聞き手も語り手も、大笑いしましたとさ。
おしまい

親と先生とのあわいで 💭

小学校の図書館司書のかたがね、こういってくださったの。
「ここの子どもたちは、ずっとおはなしを聞いてるから、本が好き。
聞いて育っていない子どもたちとくらべると、想像力が、ぜんぜんちがいますね」
子どもに本を手渡す仕事のかたから言っていただいて、うれしかった。

そうなのです。
子どもがなかなか本好きにならないってことよく聞きます。
それに、絵本は好きでも、物語本にすんなり移行できるとは限らない、という実態もありますよね。
たいていの親や先生は、そこで頭を悩ませるのね。
絵本が好きなのは、もちろんうれしいことです。
でも人生、絵本の時代だけで終わってしまうのは寂しいよね。
じゃあ、挿絵の多い本を次のステップにできるかといえば、必ずしもそうではない。
やっぱりゾロリで終わる子はいっぱいいる。

あのね、「ことばー(音声)ー想像」の訓練をすれば、文字さえ読めるようになったら、「ことばー(文字)-想像」はとっても簡単なの。
ことばからダイレクトに想像する力が、お話を聞くことで育つのね。
それと、物語は面白いって知ることも、本好きに導いてくれる。

幼稚園の園長先生がおっしゃってました。
「お話を聞くって、想像力が育ちますよね。
わたしたちが、なぜお話会に来ていただくかっていえば、そのためなんですよ。
想像力は、他人を思いやる力ですからね。
思いやりの力を育てたいんです」

中学校でのことです。
わたし「ストーリーテリングは耳からの読書ね。耳で聞いて、しっかり想像してくださいね」
生徒たちの目がきらりんと光って、うんとうなずいた。
彼らは、よくわかっている。
だって、三歳からずっとお話を聞いてきてるんだもの。

ときどき、空を見ながら思うのです。
わたしはいま、子どものときからずっと好きだったことをしているだけ。
先生でもない、親でもない、そのあわいで。
人として、たいせつなことかなと思うのです。
地位も名誉もお金も、無縁だけれど。
うん。これって、きっと、いい人生なんだろうな。

6月 おはなし初級講座

報告が遅くなりました。
6月もおはなし初級講座ありましたよ~。

語りは7つ。
「手なし娘」『子どもに語る日本の昔話③』(こぐま社)
「かも取り権兵衛」『日本の昔話②』(福音館書店)
「ツバメとアブ」『子どもに語るモンゴルの昔話』(こぐま社)
「足折れつばめ」『子どもに語る日本の昔話③(こぐま社)
「おんちょろちょろあなのぞき」『語りの森昔話集①おんちょろちょろ』(語りの森)
「ホットケーキ」『おはなしのろうそく18』(東京子ども図書館)
「かきねの戸」『語りの森昔話集①おんちょろちょろ』(語りの森)

『手なし娘』
こちらは日本の手なし娘です。
作中、「もがれた」(本当は切られた)や「問わず語り」など文学的な表現も多く、少し大きい子でなければ意味が通じないかもしれないという話題が出ました。
娘の手が生えるきっかけをくれた守り本尊はお坊さんの姿で登場するのですが、援助者は人間の姿で現れるものなのだそうです。

『かも取り権兵衛』
これは奇想天外な場面が次々と展開される笑い話ですね。空へ、屋根の上へ、地下世界へ、雲の上へと場面転換も多く、間でできているような話です。
その『間』ですが、二種類あって、場面転換でつくる間と、子どもたちとのやりとりでできる間とがあるそうです。前者は家で練習できますが、後者は子どもの前で語って初めてできる間なのだそうですよ。3年生くらいがいちばん面白がる年齢かもしれません。

『ツバメとアブ』
低学年ではメインに、高学年でもおまけにつかえる由来話のひとつです。
ツバメとアブの関係は少しアリとキリギリスのようでもありますが、考えすぎずにすんなり語った方がいいようです。

『足折れツバメ』
いわゆる隣のじい型のお話です。最初の優しいおじいさんは軽く丁寧に。強欲じいさんは、「優しいおじいさんはこうだったけど、こっちはこう」と違いを一語一語イメージできるように押さえて語るのを意識したほうがいいようです。

『おんちょろちょろあなのぞき』
これも笑い話です。子どもと遊んで間を作っていくお話なので、お経もどき部分をお経っぽく演じてもいいようです。

『ホットケーキ』
低年齢~低学年向きのお話なのにわりと長めのお話ですよね。このお話の主人公は誰ですか?
そう、ホットケーキです。ホットケーキが元気にコロコロ転がっていくように、繰り返しを歌うように楽しんで語ればいいようです。

『かきねの戸』
子どもはうんちとかおしっこが好きですね。でもこのお話の中の一番大切なところはなんでしょうか。それは、かきねの戸を外して家を出、落として幸せを掴むこと。
お母さんの思惑とは正反対、かきねの戸をはずして持っていくナンセンスがおかしく思えるのは何年生からでしょうか。

もっちは図書館でかきねの戸をやって、笑ってもらえなかったことがあって、逃げたくなりました。笑い話って本当に難しい…。

初級講座は8月はお休みです。7月、皆様の出席をお待ちしておりますよ~。

6月 日常語の語り勉強会

またまた遅くなりました。

6月6日の日常語の語り勉強会の報告をします。

<語り>

かにかに、こそこそ」『日本の昔話②』 福音館書店 小澤俊夫/再話

心地いい日常語の、ふんわりとした雰囲気で、自然におはなしがすぅ~と入ってきます。

このおはなしでは、おじいさんがかわいがっていたかにを、おばあさんが食べてしまいます。

子どもはカニやカメやザリガニなどを飼ったり育てたりしています。

けっして聞き手がかにになって聞かないように、また、かにに同情しないように、注意して語らなければいけません。

今回は何だかかにがとってもおいしそうに思えましたので、おはなしもとても面白く感じて良かったです。

 

十五夜の月」『子どもと家庭のための奈良の民話三』  村上郁/再話

この語り手さんの日常語もすご~く耳に心地よく、お声も美しく、おはなしがす~~っと心に届いてきます。

奈良の古い古い資料も調べてきちんと再話されているおはなしですので、十五夜の月や、和尚さんと小僧さんのユーモラスなかけあいが目に見えます。

美しく完成です。

 

うりひめの話」 語りの森HP 日本の昔話より

リンクこちら→https://katarinomori13.com/jfolktales.html

今回も助詞の話題が出ました。

日常語に直したとき、文章を切ったり、つなげたりすることがあります。

一つの文を二つに分けた時、助詞を元のまま使うと違和感がでることがあります。

省くのか残すのか、変えるのか・・・ひとつひとつの助詞の意味合いにも注意しましょう。

こちらのおはなしもいよいよ完成です~

 

<テキスト>

半分のにわとり」『語りの森昔話集1おんちょろちょろ』 村上郁/再話

本のお知らせはこちら→https://katarinomori13.com/itiba.html

共通語「鳥のむれ」の「むれ」は、日常ではあまり使いません…

(日常で使う方は「むれ」でいいのですが…(^_^;))

もう少しくだけた普段使いの感じにするとどうなりますか?

私が子どもと話すなら「めっちゃようさん鳥がおってな」かなぁ…

日常語は一人一人語り手さんごとに違います。当たり前ですね。

昔話はそうやってひとりひとりの口伝えで、ずっと昔から人から人の心へ伝わってのこされてきたんやもん。

どの助詞を選ぶのか、どの言葉を選ぶのか、どのおはなしを選ぶのか、何を伝えたいのか、どこを伝えたいのか、、、

自分の心に、そして、伝えたい子どもに、真摯に向き合う作業です。

おっと、どんどん話がそれて長くなる~~~

半分のにわとりって、子どもたちはどんなにわとりを想像するんでしょうね~

(^0^)/覗いてみたいなぁ~

完成が楽しみなおはなしです。

 

今回は4つのおはなしをじっくり取り上げていただきました。

 

梅雨だというのに雨が少ないですね。雨は好きじゃないんですけど、あまりに降らなさ過ぎても心配になります・・・

つぎは7月。よろしくお願いします~(*^_^*)