月別アーカイブ: 2020年10月

おはなし入門講座2回目

入門講座第2回の報告です。

はじまりは、村上さんの語りから。
①『さるの海岸見物』語りの森昔話集2ねむりねっこ
②『あなのはなし』おはなしのろうそく4

おはなしと子どもの想像力
①を6年生のお話会のおまけで語られた時「昔話って、ええなぁ~」と涙しそうな子がいたそうです。また別の所で語られた時はひたすら笑って聞いている子もいたそうです。
②は幼稚園で語られるそうです。皆さん、この話からどんな穴を想像しましたか?
一人ひとり違う想像だけれども、一人ひとり全部正解!答えがない!それがおはなしの大事なところ。

子供は目で具体的に見えるものを理解する。でも穴は本来は見えないもの。見えないものだけれど、子供には想像する力がある。話を聞くことで想像力が引き出され、自分が穴になって冒険し楽しむことができる。これが、おはなしの力。
おはなしが展開していく毎に、子どもがついてくるのではない。はじめはそうでもお話がある程度進むと、聞き手は想像力を使ってどんどん先を予想して聞いていく。先の事を予想する力(想像力)は思考力をも引き出す。

では次に2回目のテーマ『おはなしの選び方』をおはなしの3つの要素から考えます。
①語り手の要素から
出来るだけ沢山のテキストを読み、自分の好きなものを見つける。その好きなものの中から最終的に1つに決める事を念頭において読み込む。短いとか覚えやすそう等、外からの形だけで選んではいけない。
②聞き手の要素から
語りは相手に受け入れてもらはなければ成り立たない。年齢・場の雰囲気などいろんな状況を考えて、聞き手にそくした話を選ぶ。聞き手が求める話を選ぶためには、自分を理解させようとするのではなく、相手を理解する。
③おはなし(内容・文章)から
(内容について)人生を肯定的に描いている話である。これは幼い子にはとても大事。なぜなら、子供は自分が主人公になりきって聞くから。たいていはハッピーエンドだが、「鶴にょうぼ」など、そうでない良い話もある。
(文章について)耳に入ってくる言葉だけから想像してストーリーについていくのは、とても高度なこと。故に、耳で聞いて分かり易い事が大切。創作話やその他どんな話でも、耳で聞くための話には、昔話の語法が参考になる。

語法の3つの大事なこと
1⃣筋が単純→幸せな結末に向かって一直線に進む事
2⃣登場人物が少ない
3⃣情景描写・心理描写が最小限→それらが少ないからこそ情景が浮かび、聞き手に想像させる。
※詳しくは語りの森のHPの昔話の語法を参照

受講者からの質問
〇アンデルセン→情景描写が多いので高学年以上で。
〇良い人と悪い人を比べる話→隣りの爺型の話。子供は主人公になって聞くのでOK。自分の欲望(つまり悪者)を消滅するので大切。
〇さるかに・かちかち山など復讐、意地悪をし返す話→そういうこともあるという事を知っている事は大事。
〇おおかみに食べられるおなかを切るなど残酷な話→聞き手は噓話(ファンタジー)と分かっている。子供向け絵本にはオオカミが逃げていくのもあるが、そうすると、またオオカミが来るという不安が残る。かたきの象徴は完全に消滅しなければならない。
〇グリムで、褒美に娘と結婚させるなど、今の時代に有り得ない設定の話→昔は、昔話は口伝えで時代に合わせて更新されてきたが、今はそういうことはない。そういう話だと納得して語ればよい。大事なのはストーリー。主人公が他者の力に支えられて自分の足で幸せになる。これが昔話の基本。

宿題
選びの手順として……必ず声に出して、口にのりやすい話を1つ選び、本文と奥付を2部コピーする(1部は提出)

次回はお話の覚え方!

昔話の解釈ー七羽の烏7👩👩👩👩👩👩👩

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第1章七羽の烏
いつまでつづく七羽の烏(@^0^)

前回は「七羽のからす」の類話群(代表的なのがグリム「12人兄弟」)の、最後の場面、声の出せない妹が、兄さんたちの着物を編み続け、火あぶりにされる場面での、昔話の簡潔な文体について考えました。
きょうは、まず、同じ場面について、とっても昔話らしい性質のことを書きますね。
青字はリュティさんの文章からの引用ね。

救済は最後のぎりぎりの瞬間になってはじめて成し遂げられる。
薪の山に火がつけられた瞬間に白鳥たちが飛んでくる。
その瞬間に、着物が編みあがる。
その瞬間に約束の6年が終わる。
これが、昔話の奇跡なのです。
現実的にはあり得ないことが有無を言わさず当然のこととして起こるのが昔話なのです。なんでやねん!って突っ込んだらあかんのです。
問「なんでやねん!」
答「昔話やからや」
そして、このぎりぎりってのを昔話はとっても好みます。
非常に正確に、大変高い完成度において、成し遂げられます。

いっぽう、最後の片袖だけが出来上がらなかったので、ひとりの兄さんだけは片腕が羽のままだっていう笑えるパターンもあります。ほんま、ぎりぎりですね(笑)
これは、完全性の中の不完全。
昔話は完全であることを好むんだけど、ひとつだけは除外されるっていうのも好きなのです。
知ってる昔話の中に探してごらん。きっとあるから。

えっと、それから、です。
最終、王の悪い母親は、火あぶりにされます。
リュティさんは、こういいます。
悪はわれとわが身を滅ぼし、自分自身の刀で切られる。

ヤンはこれを残酷だとは思いません。
罰の重みは罪の重みに比例します。
そうであってほしいと思います。現実は、そうでないことの方が多いから。
現実の世の中で、私たちは、どれほど、理不尽な事のために悔しい思いをする事でしょう。
せめて、人生を示す昔話のなかでは、悪は悪として罰せられてほしい。

ああ~、きょうも終わらなかった。
次回こそ、ガラス山の鍵をなくした妹が指を切るところ、やりますね。

はい、おしまいヾ(^▽^*)))

 

 

高校生が絵本を📖

高校の保育課程での絵本の読み聞かせ、2回目です。
3年生だから、もうみんな大人ですね。進路の決まっている人もたくさんいるし。
なかには、保育、看護の学校に進む人もいる。
いいなあ。みんなキラキラしている。

はじめにレクチャー。

子どもに絵本を読むときに大切なこと
1、自分の心を動かした本を選ぶこと。
2、子どもに寄り添うこと。子供の成長とか、気持ちとか。
3、本の全てを見せること。しかし、本の世界からはみ出してはいけない。

絵本の読み方
これは、上記3を受けて、本の持ち方やページの開き方、表紙から裏表紙まで全部みせるとか、実際的なことね。
書いてないことまで言ったり、変に演技するのは、NG。これ、はみ出してるのね。

そのあと、1週間で選んできた本を読んでもらったの。
男女合わせて18人。
おもしろかったよ~

みんな、ドキドキする~って言いながら、とっても真面目に、っていうか、誠実に読んでくれて、その本の良さがとっても伝わってきて、よかった。
『おこだでませんように』なんか、男子が読んだんだけど、思わずしいんとなってしまった。

きょうは、高校の学校図書館所蔵の絵本から選んでもらったんだけど、次回は公共図書館で選んでくるのが宿題。
高校所蔵のは、かなり厳選してあるので、そこから選ぶことで、よい絵本の基準が少しはできたかなと、期待してます。

小学生のときに私のおはなしを聞いたって女子がいて、懐かしがってたよ。
覚えててくれてうれしかった。

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今日はHP更新。《外国の昔話》
アメリカインディアンの「とうもろこしおばさん」なんだけど、ちょっと季節はずれ???

 

 

10月度 中級クラス

初級クラスに続き、約8か月ぶりに中級クラスが再開されました!初級クラスで5年間勉強し、進級した私たち5名も加わり、また見学に来られた方もおり、14名での勉強会となりました。

長期休暇でおはなしを温めてこられたのでしょう。すべて15分以上の本格的昔話ばかりで、聞きごたえたっぷりでした。主人公もテーマも国も違うからでしょうか、飽きることなく、おはなしの世界を存分に楽しむことができました。では、報告です。

①まほうの馬 『まほうの馬』/岩波書店

・以前はテキスト通りに覚えたそうですが、今回は語りにくい部分にかなり手を入れられての発表でした。

・何度も登場する「うつくしいエレーナひめ」ですが、『うつくしい』を一部省かれました。「うるわしのエレーナひめ」と訳されている場合もありますが、ロシアの昔話にはよく出てきます。これは「うつくしいエレーナひめ」で一つの言葉(名前)であり、毎回だとしつこく感じるかもしれませんが、削除しなくてもいいのでは、と提案がありました。

また、「おとぎばなしにでもでてこないような、どんなふででもかきあらわせないような」という文言があり、削除されたのですが、これもロシアの昔話特有の言い文句なので、残したほうがいいそうです。

・最後にうつくしいエレーナひめが「ほら、おとうさま、わたしのおむこさんがみつかりました」という言葉は感情をおさえて語りましょう。盛り上がって、ついエレーナひめになって語ってしまう気持ち、分かります。私も好きな場面では、興奮気味に自分の気持ちを押し付けてしまうことがあります。が、語り手は一歩引き冷静になって語る、聞き手が自分のイメージで楽しむことが大切、なんですよね。

②マリアの子 『語るためのグリム童話1』/小峰書店

「子どもに語る グリム童話」では三位一体など、難しい言葉が出てくるので、こちらのテキストを選ばれたそうです。しっかり言葉が入り、情景もイメージできて、おはなしに引き込まれた素敵な語りでした。

あけてはいけないと言われた十三番めのとびらをあけてしまう、女の子。聖母マリアに聞かれても「あけていない」と言うばかりです。言いつけを守らず、うそをついた女の子は下界の荒れ野に捨てられ、口もきけなくされてしまいます。

しかし、王子に拾われ、結婚し、おきさきとなります。子どもを三人産みますが、その度に聖母マリアが現れ、「とびらをあけたか」と聞かれます。が、今回も三回とも「あけていない」とうそをつき、聖母マリアに産まれた子どもを連れ去られてしまいます。口がきけないため、大臣や王子に説明することができず、おきさきが子どもを食べたと疑われ、火あぶりの刑にされます。しかし、火が燃え始めたとき、ついに「とびらをあけた」と正直に答えます。

「おおマリアさま、わたしはとびらをあけました」と言う前に『おきさきの心のなかに強い後悔の気持ちがわきおこり、死ぬ前に白状しようと思いました』と書いていますが、「なぜ白状したか?」は聞き手自身が考えればいいので、削除しましょう、とのアドバイスでした。

嘘を一度もついたことがない人はいないのでないでしょうか。正直に言わなければいけないのに、白状できない気持ち。小学校の高学年で語られるそうですが、子ども達がどんな反応をするか気になります。Kさん、また機会があれば教えてくださいね。

③ドシュマンとドゥースト 『子どもに語る アジアの昔話2』/こぐま社

・イランのおはなしです。タイトルを言ってから、ドゥーストとドシュマンの意味を説明されましたが、余計なことは言わず、ドシュマンは「敵」、ドゥーストは「友」と辞書的な意味を言うだけでいいそうです。

・耳で聞いているので、登場人物が複数名出てくる場面は、誰が言った言葉か分かるように会話文の前に主語をもってきましょう。

例えば、小屋の中でライオン、トラ、オオカミ、キツネが会話する場面があるのですが、

「〇〇〇」とキツネがいった。 → キツネが「〇〇〇」といった。

になります。誰が言った言葉か分かる場面では、主語を言う必要もありません。

・このおはなしの前半は二人で旅をし、後半は「隣の爺譚」型でドシュマンの話としてストーリーが進んでいきますが、

◎ドシュマンは、ドゥーストの幸せな生活がうらやましくて、自分も同じ幸運を得ようと・・・

◎べつのひみつを聞き出し、ドゥーストにおとらず金持ちになれるかもしれない・・・

◎まもなく、ドゥーストがいったとおり、・・・

のように、ドゥーストという言葉が度々出てくるので省きましょう。

・一文に行動が多く書かれており、聞き手はイメージしづらく、語り手は息が続かない文が沢山あります。その場合は二文に分けるといいでしょう。

例えば、Yさんが語りにくかった一文

「ドゥーストは、金貨をポケットにつめられるだけつめて、すぐ馬に乗り、近くの村まで行って、朝になるのを待った」

→「ドゥーストは、金貨をポケットにつめこんだ。そして、馬で近くの村まで行って、朝になるのを待った。」

自分のレパートリーである、「小石投げの名人 タオ・カム」や「マカトのたから貝」(どちらも同じアジアの昔話に集録)にも語りにくい長い一文が多くありますが、このように手を加えればいいのだと勉強になりました。

④シン・シン・ヤンドンマ 『語りの森昔話集』

ブータンの昔話で、シンポという妖怪が出てきます。前半は「大工と鬼六」のような名前当てのおはなしです。後半はシンポに捕らえられたシン・シン・ヤンドンマが、知恵をいかして逃れ、また、他に捕らえられていた人々も逃がしてやり、最後は領主の三人目の息子と結婚します。

久々の語りで、活舌が悪いことを気にされていました。子ども達があまり耳にしない言葉、「わたりどり」や「シンポ」ははっきりと発音しましょう。練習のときからマスクをして、活舌を意識するといいですね。

☆五分次郎 『語りの森HP』(ヤンさんの語り)

日常語での語りで、味付けの違うハンバーグを食べたあと、和菓子のデザートを食べたようなほっこりした気分なりました。

初級クラスでは、なんとなく語りにくかったけれど、どのように変えればいいか分かりませんでした。もしくわ、どうしても語りにくい部分はヤンさんに変えてもらっていましたが、中級では自分で変える作業をするのです。口にのらない言葉、例えばはらっぱ→野原、ごてん→お城と言い換えたり、不要な接続詞や文は削除し、足りないところは付け足す、文の前後を逆にして分かりやすくしたり、三回の繰り返しは同じ言葉でそろえる、などなどです。そして、自分だけのテキストができるのです!

中級クラスでは発表された方から、手を加えたテキストのコピーをもらえます。そのテキストを見ながら勉強しますが、家に帰ってからもこの人はこんな風に手を加えている、と新たな発見や復習もできます(^^♪

次回中級クラスは11月24日(火)、商工会館にて9時~12時です。場所と時間がいつもと違いますので、間違えないようお気をつけください。

昔話の解釈ー七羽の烏6👩👩👩👩👩👩

マックス・リュティ『昔話の解釈』を読む

第1章七羽の烏

なかなか進まへんねえ(笑)
ちょっと急ぎの仕事が入ってね。やっと今日送り出したから、次の仕事の締め切りまでにがんばらなくてはヾ(•ω•`)o

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グリム童話KHM49「六羽の白鳥」とアンデルセンの「野の白鳥」と、口承資料にある類話の三つを比較しています。
口承資料は、スウェーデン生まれでホルシュタイン地方に暮らした74歳になるベント夫人というかたの語りです。リュティさんは、部分的に引用してるだけなので、全文が読みたい。でも、翻訳されたものはどんなに探しても見つからなかったです。残念!

ラストの呪いが解ける直前の場面です。

ベント夫人
王妃は編みに編んだ。荷車の上に乗せられ、その車に罪人用のろばがつけられたときも編んでいたし、車が動き出した時もなお編んでいた。王妃はシャツを全部たずさえていた。町の外れで王妃は焼き殺されることになっていた。そこへ行く途中も王妃は残った袖を編み続けていた。

アンデルセン「野の白鳥」
みすぼらしい馬が王妃の乗った車を引いていた。王妃は粗い麻布の上っ張りを着せられていた。その長いみごとな髪はバラバラになって美しい顔の回りに垂れていた。ほおは死人のように真っ青で、唇がかすかに動いていた。でも指は緑の糸を編み続けていた。死に赴く道すがらも王妃は、手を着けた仕事をやめはしなかった。十枚のチョッキが足もとに置いてあった。今は十一枚目のチョッキを編んでいるところだった。

アンデルセンはかなり書き込んでいますね。
これを、リュティさんは、詳しい描写が、なんと押しつけがましく、弱々しく聞こえることかと言っています。ベント夫人の簡潔で力強い語り口に対して、この大作家(アンデルセン)の言葉がなんとうつろに響くことかと言います。
ベント夫人の語りは、妹の心の苦しみ、自分自身との闘い、疑いと惑いについては一言も触れていないけれど、「編む」という言葉の積み重ねの中に、耐えがたいほどに高められる内面的緊張が表れています。
昔話では、基本動詞を使って行動をあらわす。そして、その行動に内面があらわれるのです。

つぎは、いよいよ火あぶりにされる場面です。

ベント夫人
お妃は一言も口をきかないで、編み続け、とうとう袖を仕上げた。ちょうどそのとき薪に火がつけられた。すると11羽の白鳥がお妃の周りに下りてきて、お妃の膝の上にとまったように見えた。「妹や、さあ、お話し」と、白鳥たちが言った。

グリム「六羽の白鳥」
薪の山の上に立たされ、いよいよ火がつけられるその時、お妃は空を見上げました。すると、六羽の白鳥がこちらへ飛んでくるのが見えました。お妃の心は喜びでいっぱいになり、「ああ、神さま、これで苦しい時が終わりますように」と、心の中でいいました。

グリムでは、妹の内面描写があります。
ベント夫人は、兄たちが助けに飛んでくるときの妹の喜びは語っていません。事柄だけを述べています。
リュティさんは、この場面のグリムの語りを文飾だと批判しています。昔話的でないのです。

とまあこんな感じで、昔話の再話って難しいですね。

次回は、「七羽の烏」にもどって、妹が指を切る場面を考えます。

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今週は日本の昔話を更新しましたよ~

秋の贈り物、おすそわけ~

もひとつ

ふふふ、もうひとつ

ありがと~~~