入門講座第2回の報告です。
はじまりは、村上さんの語りから。
①『さるの海岸見物』語りの森昔話集2ねむりねっこ
②『あなのはなし』おはなしのろうそく4
おはなしと子どもの想像力
①を6年生のお話会のおまけで語られた時「昔話って、ええなぁ~」と涙しそうな子がいたそうです。また別の所で語られた時はひたすら笑って聞いている子もいたそうです。
②は幼稚園で語られるそうです。皆さん、この話からどんな穴を想像しましたか?
一人ひとり違う想像だけれども、一人ひとり全部正解!答えがない!それがおはなしの大事なところ。
子供は目で具体的に見えるものを理解する。でも穴は本来は見えないもの。見えないものだけれど、子供には想像する力がある。話を聞くことで想像力が引き出され、自分が穴になって冒険し楽しむことができる。これが、おはなしの力。
おはなしが展開していく毎に、子どもがついてくるのではない。はじめはそうでもお話がある程度進むと、聞き手は想像力を使ってどんどん先を予想して聞いていく。先の事を予想する力(想像力)は思考力をも引き出す。
では次に2回目のテーマ『おはなしの選び方』をおはなしの3つの要素から考えます。
①語り手の要素から
出来るだけ沢山のテキストを読み、自分の好きなものを見つける。その好きなものの中から最終的に1つに決める事を念頭において読み込む。短いとか覚えやすそう等、外からの形だけで選んではいけない。
②聞き手の要素から
語りは相手に受け入れてもらはなければ成り立たない。年齢・場の雰囲気などいろんな状況を考えて、聞き手にそくした話を選ぶ。聞き手が求める話を選ぶためには、自分を理解させようとするのではなく、相手を理解する。
③おはなし(内容・文章)から
(内容について)人生を肯定的に描いている話である。これは幼い子にはとても大事。なぜなら、子供は自分が主人公になりきって聞くから。たいていはハッピーエンドだが、「鶴にょうぼ」など、そうでない良い話もある。
(文章について)耳に入ってくる言葉だけから想像してストーリーについていくのは、とても高度なこと。故に、耳で聞いて分かり易い事が大切。創作話やその他どんな話でも、耳で聞くための話には、昔話の語法が参考になる。
語法の3つの大事なこと
1⃣筋が単純→幸せな結末に向かって一直線に進む事
2⃣登場人物が少ない
3⃣情景描写・心理描写が最小限→それらが少ないからこそ情景が浮かび、聞き手に想像させる。
※詳しくは語りの森のHPの昔話の語法を参照
受講者からの質問
〇アンデルセン→情景描写が多いので高学年以上で。
〇良い人と悪い人を比べる話→隣りの爺型の話。子供は主人公になって聞くのでOK。自分の欲望(つまり悪者)を消滅するので大切。
〇さるかに・かちかち山など復讐、意地悪をし返す話→そういうこともあるという事を知っている事は大事。
〇おおかみに食べられるおなかを切るなど残酷な話→聞き手は噓話(ファンタジー)と分かっている。子供向け絵本にはオオカミが逃げていくのもあるが、そうすると、またオオカミが来るという不安が残る。かたきの象徴は完全に消滅しなければならない。
〇グリムで、褒美に娘と結婚させるなど、今の時代に有り得ない設定の話→昔は、昔話は口伝えで時代に合わせて更新されてきたが、今はそういうことはない。そういう話だと納得して語ればよい。大事なのはストーリー。主人公が他者の力に支えられて自分の足で幸せになる。これが昔話の基本。
宿題
選びの手順として……必ず声に出して、口にのりやすい話を1つ選び、本文と奥付を2部コピーする(1部は提出)
次回はお話の覚え方!