月別アーカイブ: 2022年1月

第17回昔話の語法勉強会「お月お星」

コロナの感染者が多くなり、みんな恐怖を感じている日々ですが、感染予防を徹底しつつ予定通り語法勉強会が行われました。

「お月お星」
出典『日本の昔話2したきりすずめ』おざわとしお再話/福音館書店
あらすじ
むかしあるところにお月とお星という仲の良い姉妹がいました。
お月は前妻の娘で、お星は今の母の娘でした。
あるとき母親は、お月を亡き者にしようと思いました。
母親はお星に、毒まんじゅうを食べさせて殺すから、お月の饅頭は食べてはいけないといいました。
お星はそのことをお月に伝えて、お月は難を逃れました。
母親は、こんどはお月の寝ている部屋の梁に登って、槍でお月を突こうと思いました。
母親はお星にお月の近くで寝るなと言い、お星はお月に伝えてまたお月を助けました。
母親は、お月を箱に入れて遠くの山に捨てることにしました。
お星はお月の入れられる箱の底に小さな穴を開けてもらい、お月にけしの種を渡して穴から落とすようにいいました。
一年後、お星がお月をさがしに山に登って行くとけしの花が咲いていて、けしの花を道しるべにお月の居場所を突き止めました。
お月とお星は山を下りて大きな家のおかみさんに助けてもらい、その家に住ませてもらいました。
あるとき旅の六部がその家の前にやって来ました。
その六部は、お月とお星をさがしている二人の父親でした。
父親は悲しみのあまり目が見えなくなっていましたが、泣きながら抱きついたお月とお星の涙が父親の目に入ると目が見えるようになりました。
三人が家に帰ると、母親は後悔のあまり目が見えなくなっていました。
お月の涙が母親の目に入り、母親の目が見えるようになりました。
それから四人で幸せに暮らしました。

最初に中級クラスと日常語クラスで勉強されているYさんが語りを聞かせてくださいました。
そのあと、ヤンさんの講義です。
話型は「お銀小銀」で、妹が姉を助けるタイプです。
反対に、妹が母親といっしょに姉をいじめるタイプの話型があり、それは「糠福米福」です。
「糠福米福」の類話はグリム童話の「灰かぶり」です。
「灰かぶり」は世界中に類話がたくさん分布していて有名ですが、日本では「お銀小銀」の話型の話もこうして伝わっているんですね。
この話は継母の殺害方法の描写が何ともショッキングですから、語るのを躊躇したり敬遠したりする語り手さんがいるそうです。
その気持ちも分からないでもないですが、昔話は基幹動詞を使ってストーリーを進めていきます。
基幹動詞というのは、人間の行動の基本的な動きをあらわす動詞です。
「お月お星」のテキストを見ていきますと、起きる、入る、見る、思う、食べる、呼ぶ、知らせるなどが使われていて、その動詞を補足したり詳しく様子を説明したりしません。
動詞だけでストーリーが先に先にと進んでいきます。
無駄なものがないのでイメージしやすく、鮮明です。
ヤンさんはこれを、「お月お星」は感情を追わず出来事だけを述べていく〝叙事(詩)〟としての迫力ある物語になっていると言われました。
Yさんの語りを聞いているとそれがよく分かりました。
お星がけしの花がぽつぽつと咲いているのを辿っていく場面が鮮やかに浮かびました。
語法については、2月のオンライン語法勉強会のブログで書かせていただこうと思います。
お待ちください<(_ _)>

わたしは「お月お星」が大好きで、原話となった鈴木サツさんの語りもずっと音声資料で聞いていました。
(『鈴木サツ全昔話集と語り』小澤俊夫・他編集/福音館書店)
鈴木サツさんの語りを聞いたあとに『日本の昔話2』のテキストを見ると、伝承の語りの何かが失われているように思い、日常語による語りを勉強し始めていたので、日常語のテキストにして語ろうと思いました。
何か月か格闘しましたが結局挫折しました_| ̄|○
最終的にヤンさんの指導は、『日本の昔話2』のテキストを忠実に覚えて語るのがいいということでした。
その後、「お月お星」を語る場がなかったので覚えないままでしたが、Yさんの語りを聞かせてもらって、ヤンさんの言葉がよく理解できました。
わたしの「この話が好き」という気持ちは邪魔だったし、日常語テキストに変えるのもまだ慣れていなかったし、抒情に流れてしまっていたのでしょう。
この機会に気づけて嬉しかったです。

オンライン語法勉強会「お月お星」は、2月8日(火)の10時からです。
まだ申し込めます。
このページの〝オンライン講座昔話の語法勉強会〟のバナーからどうぞ(^o^)

第4回おはなし入門講座

雪のちらつく18日に21年度入門講座最終回の発表会が行われました。年をまたぎましたが全員参加で最終回を無事迎えることができました。
プログラムは以下の通りです。

1.三人兄弟
「語るためのグリム童話6鉄のハンス」小沢俊夫監修/小峰書店
2.あちちぷうぷう
「語りの森昔話集4おもちホイコラショ」
3.スワファムの行商人
「イギリスとアイルランドの昔話」石井桃子訳/福音館書店
4.かめのピクニック
「語りの森昔話集2ねむりねっこ」
5.山の上の火
「山の上の火」クーランダーとレスロ文
渡辺茂男訳/岩波書店

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ききみみずきんメンバーの語り
6.しんぺいとうざ
「語りの森昔話集3しんぺいとうざ」
7犬と猫とうろこ玉
「おはなしのろうそく15」東京子ども図書館

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ヤンさんの語り
8.アナンシと五
「子どもに聞かせる世界の民話」実業之日本社

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○受講者さんのお話

Aさん おはなしを覚えて語るのは年齢的に無理かと思っていました。でも発表の期限が決まって覚え方を教わってやってみると実際には覚えることがとても楽しかったです。(ヤンさん:そーでしょー!)入門講座に来るとみなさんに会えてエネルギーもらえるようで楽しみでした。

Bさん 人前にでることは緊張します。でも今回自分で描いた絵を人に見てもらうように発表したい気持ちになりました。
☆語りのあいだ2歳の娘さんはお膝のうえでじーっとお母さんの声に耳を傾けて一心に聴き入っていました。愛おしい素晴らしい時間だなぁと改めて感じました。

Cさん (ナレーションなどのお仕事をされてたそうで)人前に立つことはありましたが事前に全て準備して手ぶらで臨むのが初めてでとても緊張しました。
「手作りのものを届ける」ことの大切さを思い出しました。

Dさん 地理を確かめたりネットで検索しておはなしの中に出てくる石像ならぬ木像が実在することを確かめ写真を見せてくださいました。その探究心がおはなしに奥行きを与えていたことは間違いないと思います。素晴らしいです。
ご本人は一字一句違えずに覚えることが苦痛でした。同じところで止まってしまう。止まるくらいなら同じ意味の言葉に変えても良いのでは?と考えたそうです。
ヤンさんはあくまで練習ではテキスト通りに覚えましょう。今回のテキストは小説のような言葉なので覚えにくかったでしょうとのことでした。

☆テキスト選び難しいですね。Cさんも「読んであまりピンと来ないものも人の語りを聞くとすごく面白かったりする」と言われてました。ホントそうですよね。私もテキストの目利きができるようになりたいと思う毎日です。

Eさん 以前から子供たちに語っていましたが京田辺市に来てヤンさんに出会い衝撃を受け講座のどの言葉も聞き漏らしたくないと思うほどでした。
今小学校で語っていますが入門講座を受けて基本的なことに自信がつきました。
今日の発表会で聞いたみなさんのおはなしは東北などの地方に出向いて聞いた時のような感じを受けました。

○講座を終えて
とかく色々なことが起こりがちな人生ですが全員参加で全4回終了できたこととても素晴らしく嬉しいことでした。また発表会はみなさん緊張されていた(緊張しますよねー!)もののとてもあたたかく味わいのある素敵なおはなし会でした。好きなおはなしを選ばれてそれをひと月かけて覚え育てられた思いが感じられて感動しました(^.^)

★ヤンさんより受講者のみなさんへ
今回1つのおはなしを覚えて語ることで一旦完結しています。でもぜひおはなしを覚えて人前で発表するということをどうぞ続けてください!
今日はみなさんの門出です!

【お知らせ】
ババヤガーより
◉語法の勉強会(お月お星)
1/21(金)10時から13時
京田辺市中央図書館集会室
◉初級クラス
3/1(火)10時から13時
京田辺市中央図書館集会室

ききみみずきんより
◉お集まり(途中入退室自由)
2/15(火)10から13時
京田辺市中央図書館会議室
3/1(火) 〜15時

(コロナ禍につき予定が変更になることがあります)

これからもみなさんとおはなしのご縁が続きますように!

えっ❓ええっ❓

しばらくなまけてるんですよ。
いやいや、お医者さまがなまけろとおっしゃるもんで。

先々週の土曜日のこと。
ひさびさに一駅電車に乗ってスーパーに買い物に行ったんですよ。
でもねえ、なんだか元気が出なくて、夫が買い物してる間、ずっとベンチに座ってたの。
夕方、熱が38度3分になってたのよ。

今の時期、発熱=コロナって思うでしょ。
私も思った。
でも、年末年始、だあれにも会ってないのね。
娘も帰省しなかったし、息子が2時間ほど帰ってきて月読神社に一緒に初もうで行っただけ。

土曜日の午後だから、病院はやってないし。
府のHPから相談したら、解熱剤飲んで休んでいるようにって。
息が苦しくなったら救急で近くの病院へ行くようにって。
えっ?
それだけ?
コロナ前はもっと手厚く診てもらえたのにねえ。

37度に下がったから、そのまま日曜・月曜(祭日)とすごして、火曜日にやっとかかりつけのお医者さまへ。

血液検査で、これはただの風邪ではない、ウイルス感染だってわかったの。
えっ!

びくびくしながらPCR検査。
コロナは陰性。
もう3日もたって今更コロナって言われてもねえ。
でも、ホッとして帰宅。

翌水曜日の朝、お医者さまから電話。
ちょっと来てくださいって。
えっ!

血液検査の結果が出て、肝臓の数値が異常だって。
さらに検査を受けて、点滴受けて。
サイトなんちゃらっていうウイルスが悪さをしているとのこと。

長いこと生きていると、いろんな病気にかかるもんやなあと、感心しました。

それで、お医者さまが、本読んだりテレビ見たりはいいけど、歌うたったりしないようにっておっしゃってね。とにかくなまけるようにって。

年明けから、ずうっとなまけてるのに、これ以上どうやってなまけるんや???

まあ、このブログ書くだけの元気は出たので、もう大丈夫。と思う。

きょうは、午後から、絵本のこみちを更新します~

 

 

新しい年になりましたよ~🎍

みなさま
つつがなく年を越されましたでしょうか?

わが家は、台所のスポンジがなぜ汚くなるか、言い合い喧嘩で一年を閉じました。
元旦、夫婦で誓いました。
今年はスポンジのことで喧嘩はよそうと。

どうか、みなさまにとって良いお年になりますように、心からお祈りいたします。

『語りの森昔話集』は、元の話(原話)を採録したり翻訳したりした研究者の先生方のOKを頂いて再話(私の文章に)しています。
それで、そのお礼とご批評をいただくために、先生方に出来上がった本をお送りしています。
すると、本、届きましたよ~のお便りをくださいます。
そこに書いてくださっている内容が、含蓄が深いんですよ。
少し紹介しますね。

ロシア文学のN先生から
小学生くらいの子供に読み聞かせてそのまま理解できるような形にすること、それは非常に大切なことです。本来原話は大衆に分かるように語られていたものと思われますが、翻訳者にはなかなかそこまでくだけた形にできないのです。外国語の翻訳者だけでなく、日本の昔話の場合も同様であると思います。(略)原テキストを大胆に改変しても許されると考えています。

このお言葉には、たいへん勇気づけられました。
たいせつな座右の銘です。

ドイツ文学のN先生から
日本ではメルヒエンに教訓をつけるのが、明治以来のグリム導入の初めからありますが、その気配がないのが良いと思いました。

教訓!
昔話に教訓を読み取るっていうのは、せいぜい、明治以降なんだ~
人まねをしてはいけないとか、欲張ってはいけないとか、誠実であれとか。
いろんな昔話をみていると、主人公は必ずしも優等生ではなくて、欠点のある者が右往左往しながら時に助けてもらいながら幸せになるのがほとんど。それがいいなあと思って再話してるんだけど、なんか、昔話観を認めてもらった感じ。うれしい~

日本口承文芸のT先生
T先生からは、最近の御著書をご恵贈いただきました。
『チャンポンと鳴る鼓滝』吉備人出版
その「あとがき」です。
「民話は語り手と聞き手の共同作業の産物」である。同じ語り手による同じ話でも、聞き手によって内容が異なる。長くも短くもなり、また、語られないこともある。そういう意味では、聞き手の役割は大きい。
私は、長い間、口承文芸の採録を行ってきたが、語り手と心を一つにすることが、語りを聞く場合、最も大切なことだと思っている。

聞き手あっての語り、肝に銘じます。
大人どうしの語りの会、語りを引き出す聞き手の力ってあるんですね。きっと、伝承の語り手だけじゃなくて現代の語り手にもあると思います。大いに反省。
それと、やっぱり聞き手の子どもを育てなくっちゃね。
コロナ後の課題やね。

とまあこんなわけで、新年早々まじめ~なおはなしでした。
今年も、語りの森は走って行きますから(青息吐息か?)、どうぞよろしくお願いいたします(❤´艸`❤)