日別アーカイブ: 2017年2月20日

第5回 昔話の語法勉強会

またまたもっちです。
第5回 昔話の語法勉強会に行ってまいりました~。
ひとつのお話を題材に、テーマを設け、どんな語法が使われているのか勉強する勉強会です。

今回俎上に載せられたお話は、ご存じの方も多いと思います。
「心臓がからだの中にない巨人」です。
「なぜ愚かな末っ子が幸せになれるのか」

勉強会の初っ端からこのテーマについて考えます。
なぜなんでしょう。
末っ子は要領がいいから?
色々考えてみましたが、末っ子が幸せになる話もあれば、一人っ子が幸せになる話もあるんですよね。
末っ子でなければという理由が思いつきません。
と、ここでタイムオーバー。

正解は『主人公だから』でした。
言われてみればそうなんですよね。昔話は主人公が幸せになって終わるのです。
聴き手は主人公に感情移入して聞きますから、主人公に幸せになってほしい。

昔話の語法」(小澤俊夫著、福音館書店刊)のなかに小澤氏がマックス・リュティ氏に「なぜ、末っ子が主人公になるのか」とお尋ねしたという一節があります。
そのとき、リュティ氏は「人は誰でも一度は末っ子だった」とお答えになったそうです。
この場合の末っ子というのは、単なる兄弟の出生順という意味ではなく、最も年少で力がなく知識もない末っ子という意味で、人は誰でも家族の中で、社会の中で、末っ子だった頃があるという意味なのだというようなことを小澤氏は説明されています。
そう考えると、一人っ子も家族の中で一番年少で力がなく知識もない年長者から見て『愚かな末っ子』になるんですね。
そして、それぞれの成長のステージでもまた誰もが一年生という『末っ子』になりますね。
その末っ子が幸せになることは、人は誰でも明るい人生が用意されていると暗に励まされている、そんな気がします。
まるで昔話は人生を表しているかのようですね。主人公がすごく弱く辛く貧しい、そんな立場からものすごい幸せを得ると、聴き手の喜びもひとしおですよね。

さて、このテーマに隠されている今回の勉強会の本題は「孤立性」についてでした。

昔話にでてくるあらゆる人物やモノは孤立して語られていますが、主人公は特別孤立しているように語られます。
孤立的にというのは孤独という意味ではなく、あらゆる背景(環境や設定や生い立ち?)や内面的なものを語らず、その人、その物だけの輪郭を濃く浮き立たせる……そんなイメージを受けました。それは、昔話が極端なものを好んだり、かたい物を好んだり、内面を語らないことだったりといった他の語法とも結びついているようです。確かにその他大勢のものより、イメージが際立つような気がします。
つまり昔話は孤立的なものでできている。
そして、孤立しているからこそ一本のストーリーによって結びついている。
そりゃそうですよね。複雑な人間関係やお国事情、心理描写を細かく語ると、何が本題のストーリーなのか聴き手には伝わりませんものね。
主人公は特別孤立してますから、より強く結びつく能力を持っている。
主人公は援助を受けるための正しい助言者、援助者に出会い、必ず正しいキーを押します。選択を誤りません。
だってそれを聞き手は望んでますからね。

そして孤立しているのは人物やモノだけではなく、エピソードもでした。
子どもの頃は至極当然に受け止めていた白雪姫の三回の繰り返し。
大人になってからは、なぜ白雪姫は前回の失敗を学習しないのか不思議でしたが、これら一つ一つのエピソードは孤立してカプセルのようなものに入っていて、主人公は全体を見通すことはできないのだそうです。
だから同じ出来事を繰り返す。この三回の繰り返しが楽しいんですよね。昔話らしさですよね。固定性ですね♬

今回の勉強会はすごく難しい内容でした。解説を聞いている時には分かった気になっているのですけどね。
レポートを書きながら、これで合ってるのかなと不安ですが、間違っていたらヤンさんがコメントで訂正してくれるはず。(笑)
みなさん、コメント欄も合わせてチェックしてくださいね。

ストーリーは主人公以外には優しくないけれども、正しいキーが押せずに失敗した兄弟を主人公が助けてくれて、みんなが幸せになるおはなしっていいなぁ、優しいなぁと思うのです。

ところで余談ですが、昔話では「言葉の出来事による繰り返し」があります。最初に宣言したことが実現されるのです。
このお話でも、主人公のエスペンが「必ず戻ってきます。六人の兄さんたちも一緒につれて帰ります」と宣言してから旅立ち、本当にそのようになるのですが、神社で願い事を言うときも「〇〇になりますように」ではなく「〇〇できました。ありがとうございます」と先にお礼を言うのが良いと最近耳にしました。神様が先にお礼を言われたので叶えてあげなくちゃと思うのだとか。
そのときはいい言葉で願い事を言った方がいいそうです。病気とか怪我とかマイナスのワードは入れない方がいいそうです。
もしかすると彼岸の存在である神様が言葉による宣言を出来事で繰り返す援助をしてくれるかもしれませんよ。