フランスの「手なし娘」 byヤン

4月10日の中級基本講義「手なし娘」の準備を進めています。
見つけた類話は、外国の話16話、日本の話133話。
外国の話は翻訳されているものからしか探せない、しろうとの哀しさです〜
きっと世界中にたくさんあるんでしょうね。
さて、フランスのロワール・アトランティック県で語られた「手なし娘」をご紹
介します。
この話では、娘の手を切りおとすのは、娘の兄です。
兄嫁が義理の妹に嫉妬して、魔女の入れ知恵であることないこと夫にいいつけ、
手を切らせます。
手を切られて森の中に捨てられた娘は、ある国の王に拾われて結婚します。
そして、男の子の双子を生みます。
ひとりは額に太陽をいただき、もうひとりは月をいただいた美しい子たちです。
戦いに出ている王に知らせるため、手紙が送られますが、魔女の策略で手紙が書
き換えられ、娘は双子を連れて城を追いだされます。
この魔女は、かつて兄嫁に、娘の手を切るようにと入れ知恵をした悪者です。
娘はさまよい歩き、池のほとりで水を飲もうとします。
すると、子どもたちが水にずり落ち、そのとたん手が生えて、娘は子どもをすく
いあげます。
近くの農家に身を寄せているところを、王が探し当て、親子四人で城へ帰り、幸
せに暮らします。
ところで、兄は、かつて妹の両手を切りおとして置き去りにしたとき、サンザシ
の棘が足に刺さり、その後、とげが成長して、兄の体を床に固定して、 枝は煙
突から外へ突き出してしまいます。
幸せになった娘が、兄の家にやってきてさわると棘は抜け落ちます。
そして、兄嫁に入れ知恵をした魔女は殺されます。
兄嫁がどうなったかは書かれていません。
ただ、同じフランスのブルターニュの伝承では、兄嫁は、幸せになった妹がやっ
てきたのを見て、階段に細工をして殺そうとしますが、誤って自分が階 段から
落ちて死にます。
この兄嫁は、魔女の入れ知恵ではなく、自分自身が夫に手を切らせています。
さて、このフランスの「手なし娘」、実行犯の兄にも、そそのかした魔女(また
は兄嫁)にも罰が下っていますね。
とくに、娘の手を切らせようとした者には容赦ない死が待っています。
グリム童話ではどうでしょう。
手を切った父親は、財産を手に入れ、何の罰も受けません。
娘を失ったことが罰なのでしょうか?
でも、そうだとは一切書かれていないので、聞き手の思いにゆだねられます。
いっぽう、そそのかした悪魔。
悪魔は神の対極なので、死ぬ(滅びる)ことはありません。
娘は神の力によって幸せになりますから、それで悪魔が負けたことになるので
しょうか?
どちらも主人公の幸せで終わっていますが、悪者が罰せられないというのは、昔
話として何となく居心地が悪い。
考え込んでおります(笑)
講義当日、1時間半では十分に話せないので、ここに書きました。
  ヤン

1 thought on “フランスの「手なし娘」 byヤン

  1. 「悪魔は神の対極なので、死ぬことはありません。」
    なるほど。
    悪魔が死ぬときは、神も死ぬということですね。
    本筋とは関係ありませんが…。

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